東急不動産が開発を推進している新複合施設「フォレストゲート代官山(Forestgate Daikanyama)」の内部が、10月19日の開業に先立って公開された。同施設はMAIN棟とTENOHA棟の2棟で構成され、MAIN棟のデザインを建築家の隈研吾、グリーンデザインをソルソ(SOLSO)が担当。落ち着いた街の雰囲気に溶け込む都会の森を体現したという。内覧会では説明会も開かれ、同施設のプロジェクトの狙いについて語られた。
フォレストゲート代官山は5年間限定の複合施設「テノハ ダイカンヤマ(TENOHA DAIKANYAMA)」が開業していたエリアを含む代官山町119番地一帯で開発。東急不動産は1955年に日本初の外国人向け高級賃貸住宅「代官山東急アパート」が誕生して以来、代官山のまちづくりの一翼を担っている。フォレストゲート代官山では代官山が持つカルチャーのアップデートを目指すとし、食・緑・環境サステナブルを軸にした「職・住・遊 近接の新しいライフスタイル」をコンセプトに掲げる。食は商業エリアのテナントで、緑は建築やランドスケープデザインで、環境サステナブルはシェアオフィスやTENOHA棟で取り組むサーキュラーエコノミー活動「サーティー(CIRTY)」で体現していく。
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MAIN棟:感度の高い代官山エリアを象徴するテナントを誘致
MAIN棟は地下2階、地上10階建てで、商業施設のほかに賃貸住宅、シェアオフィスが入居している。延床面積は約2万2000平方メートル。隈が手掛けたMAIN棟は木箱を積み上げたような形状で、「垂直の森」を表現。施設の構造上、メインストリートの八幡通りへ通り抜けられる道を設けており、「駅から穴を抜けて街に出る洞窟空間」をイメージしたという。代官山は隈にとっても学生時代に来街する機会が多かったことから思い入れのある街だとし、今回のプロジェクトでは「2年をかけて楽しみながら仕事をした」と回顧。デザインにあたっては「代官山は隠れ家っぽさがあり、好きな街。来街者が増え、ある意味で“都会”になってしまったが、静けさを再生したいという思いで作った」と狙いを話した。ソルソによるグリーンデザインでは、代官山が多様性のある街であることから、400種類の植物を採用した。
外観
Image by: FASHIONSNAP
地下1階〜地上2階の商業フロアには、「ブルーボトルコーヒー(Blue Bottle Coffee)」(2023年12月オープン)や「ザ・ガーデン自由が丘」(2023年12月オープン)、パレスホテルが手掛ける新業態のブーランジュリー「エトヌンク(Et Nunc)」(2024年4月オープン予定)、パティスリーとサロン・ド・テを展開する「ペイサージュ(PAYSAGE)」(オープン日未定)といった飲食店のほか、「アメリヴィンテージ(Ameri VINTAGE)」(2023年10月19日オープン)や「金子眼鏡店」(2023年10月19日オープン)、「ジョー マローン ロンドン(JOMALONE LONDON)」(2023年12月オープン)といったファッション・ビューティ関連のテナントが揃う。いずれも路面店に見えるような店構えで、営業時間もコアタイムを設けることでモール型の施設で見られる縛りをなくし、自由度の高い店舗営業ができる環境を整えた。テナントの誘致については代官山エリアにゆかりがあり、相性が合うブランドを選定しているという。ジョー マローン ロンドンは旗艦店をオープン。これまで百貨店がメインの販路だったが、「ブランドを表現する場として適している」として出店が決まった。また、イートクリエーターと東急不動産による新会社 日本食品総合研究所が新しい食文化づくりに挑戦するプラットフォームとして、テストキッチン「調理室」やカフェ&ワインバー「喫茶室」、グローサリー「食品庫」もオープン。地上3階にはシェアオフィスが入居する。
SOLSO HOME
Image by: FASHIONSNAP
地上4〜10階に設ける57戸の賃貸住宅では1〜3LDKのほかメゾネットタイプを用意。賃料は月50万〜400万円としている。一部住戸では隈に加えて、ソルソを手掛ける齊藤太一、食の分野で活動する平野紗季子の計3人を迎えた「ライフスタイル提案住戸」を企画。隈は「半分くつろぎ半分整う家」をテーマに「布にくるまれていたいという根源的欲求が満たされる空間」を、齊藤はグリーンを充実させた「森のすみか」を、平野はベランダでハーブを育てることができる「All day Dining House」をそれぞれ表現した。ライフスタイル提案住戸に関しては家具が備え付けられており、そのまま使用できるという。
隈研吾による住戸
Image by: FASHIONSNAP
◾️MAIN棟 テナント
<B1階>
・ザ・ガーデン自由が丘(2023年12月オープン予定)
<1階>
・SOLSO HOME
・アメリヴィンテージ(Ameri VINTAGE)
・金子眼鏡店
・ブルーボトルコーヒー(Blue Bottle Coffee)(2023年12月オープン予定)
・ジョー マローン ロンドン(JO MALONE LONDON)(2023年12月オープン予定)
・ラ・バーズ・ドゥ・ シェ・リュイ(LA BASE de Chez Lui)(2024年3月オープン予定)
・ミッドツリー(MIDTREE)(2024年8月オープン予定)
・エトヌンク(Et Nunc)(2024年4月オープン予定)
<2階>
・あやこいとう クリニック(2023年12月開業予定)
<1〜2階>
・日本食品総合研究所(研究所、調理室、食品庫、喫茶室)
・ペイサージュ(PAYSAGE)(オープン日未定)
<3階>
・ビジネスエアポー ト代官山(Business-Airport Daikanyama)
TENOHA棟:「サステナブルな街・代官山」のイメージを訴求
TENOHA棟は「WE ARE GREEN」をスローガンに掲げ、サーキュラーエコノミー活動のサーティーをメインに「サステナブルな街・代官山」のイメージを訴求するための活動拠点と位置付ける。建物は間伐材を利用した木造2階建てにすることでサステナブル建築を体現したという。延床面積は200平方メートル。運営はソルソのグループ会社RGBが手掛け、メンバーとして「ニューメイクラボ(NewMake Labo)」などが参加する。施設内にはオールディカフェ「CIRCULAR CAFE」、屋上菜園「GREEN&FARM」、サーキュアーを知るためのイベントスペースなどを配置し、ウェブメディアと連動してサーキュラーに関する情報発信を強化。開業後は定期的なイベント開催を予定している。
「代官山のポテンシャルは高い」
代官山エリアは新型コロナウイルス感染拡大前から店舗の撤退が続いており、寂れつつある印象もあるが、東急不動産の執行役員で渋谷エリアの開発プロジェクトを担う黒川泰宏氏は「代官山のポテンシャルは高い」と言葉に力を込める。「中目黒や恵比寿からも徒歩圏内でありながら落ち着きがある。数々の店舗が撤退されたこともあり、街の良さが認知されにくくなっているが、実際に感度の高い方々は街にたくさんいらっしゃる」(同氏)。フォレストゲート代官山ではこれまでのカルチャーをただ引き継ぐのではなく、残しながらもアップデートしていくことを目的とし、「職住遊」が融合したライフスタイルを提案していくことで“カルチャーのアップデート”を図っていきたい考え。同氏は「いまの代官山の街に合う施設ができたと思っている。微力ながら街に貢献していきたい」と意欲を示した。など、開業後に目標とする売上高や来館者数などの数字は非公表としている。
東急不動産は「広域渋谷圏(Greater SHIBUYA)のまちづくり」として、渋谷エリアでフォレストゲート代官山のほかに「渋谷サクラステージ(Shibuya Sakura Stage)」(11月30日竣工予定)、「東急プラザ原宿『ハラカド』」(2024年春開業予定)、代々木公園Park-PFI計画(2025年供用開始予定)の開発を進めている。都市開発を通じて渋谷エリアの魅力向上を目指す。
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