今年のお買い物を振り返る「2023年ベストバイ」。10人目は「VCM(Vintage Collection Mall)」代表 十倍(とべ)直昭さん。国内最大規模のヴィンテージの祭典を主催する一方で、完全予約制のショップで激レアアイテムの接客もするヴィンテージのプロが「買って良かったもの」は?
目次
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Hermès アレア
FASHIONSNAP(以下、F):まずご紹介いただくヴィンテージアイテムは「エルメス(Hermès)」のアレアですね。
十倍直昭(以下、十倍):フランス語で「ランダム」を意味するモデルで、シェーヌ・ダンクル、ブックルセリエ、サランボという名作ジュエリーの駒をつなげたエルメス初のアイテムです。これはPM(プティ・モデル)というサイズで一番細いモデルなんですけど、実はシェーヌ・ダンクルのTGM(トレ・グランド・モデル)と同じぐらいの大きさだという(笑)。
F:落とし穴ですね(笑)、いつ頃のモデルなんですか?
十倍:マルジェラ(Martin Margiela)期なので、2003年までのマルジェラ期を過ぎた2006年頃に、ジュエリーを担当していたピエール・アルディ(Pierre Hardy)が直接監修したものだと思います。
F:今、マルジェラ期のエルメスジュエリーは大高騰中ですが、おいくらぐらいなんですか?
十倍:多分、市場だと150万ちょっとオーバー。
F:おお(笑)、着けるには勇気がいりますね。
十倍:いや、普通に着けたりしますよ。一番着ける頻度が高いのは、アクロバットというモデルです。このアレアは「近年もの」と呼ばれるヴィンテージエルメスの中でも新しいモデルなんですけど、価格の高騰が著しいですね。2021年ぐらいまでは店頭で少数販売していたようですが、現在では廃盤となり、かなりレアになっちゃいましたね。
F:ここ最近はヴィンテージエルメスのジュエリーの枯渇と値上がりがすごいですよね。これはどうしてなんですか?
十倍:うーん、現行のエルメスがどんどん入手困難になっていって、二次流通市場にお客さんが流れたところから始まった気がしますね。そこで接点を持った人たちがどんどんレアなモノを欲しがった結果、ヴィンテージ熱に火がついたように感じます。
F:なるほど、特に廃盤になったアイテムなどはプレミアがすごいですよね。
十倍:そうなんですよ。廃盤モデルは、それこそ月単位で値段が上がっていくというか。フランスを中心に商品が回っていて、日本だと流通があまりにも少ないんですよね。みんな欲しいけど、品数がないという状態です。
F:十倍さんは渋谷パルコのVCM COLLECTION STORE(完全予約制)でヴィンテージエルメスのジュエリーを販売・接客していますが、そのブームをどう思うんですか?
十倍:やっぱりジュエリーに対するイメージが変わったと感じますね。特に大人のメンズがつけるジュエリーの代表は「クロムハーツ(CHROME HEARTS)」や「ゴローズ(goro's)」だったと思うんですけど、そこにフィットしなかった層がエルメスを選んでいると思います。
F:バイカー系やインディアン系以外ということですね。ユニセックス感やデザイン性もあり、ファッション文脈というところが支持を集めているんですかね。
十倍:そうですね。エルメスは1938年からジュエリーを作っていて歴史も長いですし、デザインがフラットなので、どんなジャンルの人にもなじむ懐の深さがあるんだと思います。年代によって刻印が変わったりするので、レアなものを“掘っていく”楽しみもありますし。
F:いっぱい持ってきていますね(笑)
十倍:すみません(笑)。エルメスジュエリーで人気なのはブレスレットで、次に人気なのがリングなんですけど、「そろそろネックレスが来るんじゃないか」ということで持ってきました。意外にエルメスのネックレスはシンプルなものがあまりないんですよ。これはヘラクレスというモデルで、90年代終わりから2000年ぐらいに作られたモデルなんですけど、「H」がエルメスのHでもあり、名前の通りヘラクレスにも掛かっているという。
F:これもよく着けているんですか?
十倍:そうですね、通常は42センチのモデルがあるんですけど、男性だと人によっては短いんですよね。これはロングモデルの50センチという非常に貴重なアイテムで、本当に何十本に1本しか出てこないようなモデルです。ここに小さな刻印で「50」と書いてあって、今これがエルメスのネックレスの中で一番人気になっています。
F:そしてこれは?
十倍:これは、ピエール・アルディが監修した「幻のネックレス」と言われていて、名前もまだ不明なアイテムです。一説では、フランス語で「ゴチャゴチャ混ぜた」という意味の「ペールメール」と呼ばれるものじゃないかと言われています。アレアのスペシャルネックレス版みたいな感じで、非常に貴重だと思います。
F:これらは全部、今年買われたんですよね? 金額がヤバそうなんですけど(笑)。
十倍:今年初めに買ったモデルが多いので、今の市場より断然安かったですね。本当に一気に今年加速したんですよ、モノによっては3倍とか5倍とか。今じゃなかなか買える金額じゃないので、大切に愛用しています。
F:ちなみに余談なんですが「時計とブレスレットを重ねるべきか、重ねないべきか」についてはどう思いますか?
十倍:ありますね、それ(笑)。「傷がつくんじゃないか」とか言われるんですけど、僕自身はジャストサイズにしてつけていますね。ちょっと長いモデルだと引っかかったりガチャガチャガチャしたりしますけど、ジャストだと動かないので干渉しないんですよね。
Apple 90年代 「Think different」スウェット
F:次は「アップル(Apple)」社のスウェットですね。
十倍:「バレンシアガ(BALENCIAGA)」が2022年ウィンターコレクションで「Be different」とアップルの「Think different」をサンプリングしたアイテムを発表したんですよね。最近ヴィンテージ業界ではサンプリングされたTシャツやスウェットが多いんですが、買っている方の中にはネタ元を知らない人も多くて。それでベースになったアイテムやモチーフの中から、気になったものを集めるようになったんですよね。
F:「Think different」は1997年に発表されたアップルの広告キャンペーンのスローガンですよね。有名ですけど、25年前となると知らない人も多いと思います。
十倍:そうですよね。個人的にアップルモチーフのアイテムが好きで、グッズも集めているんです。カラフルなものが多いんですが、これはブラックベースにホワイトというシンプルなカラーリングが特に気に入っています。バレンシアガの元ネタになったアイテムですし、アップルの中でも一番貴重なスウェットではないかなと思っています。
F:サイズはXLで?
十倍:XLですね。Tシャツにしてもスウェットにしても、やっぱり一番人気のサイズですね。ただ、古着業界でもオーバーサイズブームが少し落ち着いてきて「Lの方が体に合っている」という人が無理にXLを着ることもなくなりました。僕自身は体が大きいので、XLがジャストで着られるのでこのサイズを選んでいます。
F:実際着てみるとLぐらいのサイズ感ですよね。
十倍:やっぱり当時のサイズは小さいんだな、と思います。まぁ、手元に来るまでに乾燥機にかけられて縮んでいることもありますけど。XXLぐらいになると着丈が長くなって、バランスが大分変わるんですよね。
F:これはいつ頃買ったんですか?
十倍:これは今年の春夏に買いましたね。特に僕が気に入っているポイントは、このインクのベタ感。このベタっとした感じが再現するのが非常に難しいらしくて。今の技術でも難しいものが当時はできた、というところが面白いですよね。
F:色はブラックというより墨っぽいですよね。
十倍:「スミクロ」と呼ばれる、ブラックから少しフェードした色ですよね。 こういう「フェード」と呼ばれるものは、ブラックより価値がついたりするんですよね。最近は“雰囲気系”と言われる、穴が開いていたりエイジングしているものの価値が見直されてきて、未使用だからいいというわけでもないんですよね。
Polo Ralph Lauren レザージャケット
F:「ポロ ラルフ ローレン(Polo Ralph Lauren)」の90年代レザーシリーズですね。たくさん買いましたね(笑)。
十倍:この年代のものは大好きで、集めています。90年代に大きめのサイズで作られた「ビックポロ」と呼ばれるものですね。僕自身は90年代の頃のシルエットが体に合うことが多く、特にラルフ ローレンはめちゃくちゃ合うと勝手に思っています(笑)。他のヴィンテージのレザーはほとんど着ないんですけど、ラルフ ローレンと「ギャップ(GAP)」だけは別ですね。
F:形も色々ありますね。
十倍:これは僕が今年推している「カーコート」と呼ばれるもので、こっちが「スイングトップ」。とにかくバリエーションが豊富にあるのが特徴ですね。生産国も中国やシンガポールなど色々あるんですけど、このポルトガル製はレアですね。なぜかは分からないんですけど、ポルトガル製だけは革質がめちゃくちゃいいと言われてるんですよ。
F:珍しいことにポロ ラルフ ローレンを象徴する「ポニー」のマークがありませんね。
十倍:気付きました(笑)?特にこだわっているポイントとしては、全部“ポニーなし”なんですよね。基本的に胸のところにポニーのマークがついていて、その方がポロ ラルフ ローレンらしいんですけど、僕はあまり好きじゃなくて。ポロマニアではこのポニーなしを探している人も多いんですよね。どこのブランドか分からないけど、見る人が見たら「ツウだねぇ」なんてところがまたいいかな、と。
F:これも全部XLでそろえていますね。
十倍:やっぱり90年代はXLが合うんですよね。僕はラルフ ローレンがものすごく好きでシャツもたくさん持っているんですけど、今年改めて元々Lで持ってたものをXLで買い直したりしたんですよね。
F:ちなみに90年代というのはもう「ヴィンテージ」と呼んでいいんですか?
十倍:そうですね。90年代は完全にもう「ヴィンテージ」という認識になっていますね。今は1920年代から1990年代ぐらいまでを指すんですよ。2000年あたりを過ぎると「アーカイヴ」と呼ばれたりしますね。90年代って僕らが10~20歳だった時代なので、新品を店頭で見たこともあったと思うんですよね。それが巡り巡ってヴィンテージとして手元にあるのは感慨深いです。
F:確かに。「ヴィンテージ」と聞くと60~80年代のほうが価値が高そうに思うんですけど、十倍さんは90年代が好きですよね。
十倍:価値としては古いものにも惹かれるんですけど、90年代はシルエットがすごく今っぽいんですよね。実際、90年代を求める方って“コレクトする”というよりも“着る”という心持ちの人が多い印象ですね。それに70年とか80年になってくると、革の品質が保てなくなってくるんですよね。硬かったり重かったりするので、この年代の方がやっぱり良いものが多かったりします。
F:なるほど、確かに状態のことを考えると90年代という感じになりますね。
十倍:それに、ボタンもオリジナルのものを作ったりするんですけど、まだグローバルでちゃんと統制がとれていなかったのか、モノによって金具がシルバーだったりゴールドだったりと、同じ型なのにディテールが生産国によって変わるんですよ。そこも面白いですね。
F:なかなか今じゃありえないですよね。「リーバイス®(Levi's®)」のヴィンテージに近い気がします。
十倍:やっぱりヴィンテージって、当時いい加減な管理だったものも多いんですよね(笑)。その“いい加減さ”のお陰で、まだ見たことのない素材や仕様を掘っていく楽しみもあって、すごく良いと思っています。特にこの年代のポロはまだ買える価格なので、個人的にどんどん掘っていきたいなと思っています。
STÜSSY 90年代ファーストデニムジャケット506XX型
F:次は「ステューシー(STÜSSY)」のファーストデニムジャケットですね。これはレアですね。
十倍:このネタ元は、皆さんご存じの「リーバイスファースト」と呼ばれる506XXという形なんですけど、リーバイスが最初に作ったデニムジャケットのことです。ポケットが1つで、プリーツと後ろの「シンチバック」と呼ばれるバックルがファーストの特徴です。本当のファーストは「短丈ボックス」という短い丈で、ボックスシルエットなんですよね。そのシルエットがどうしても体型に合わないので、これで代替しようと思って買いました。
F:十倍さんならオリジナルを買うのかと思いましたが。ステューシーの激レアモデルで、代替もすごいですね(笑)。
十倍:本当ならオリジナルの506XXも欲しいんですけど、サイズ的に「スプリットバック」と呼ばれる大きいサイズのものはかなり高騰していて(笑)。それと当時の作り的にサイズが小さく、僕はなかなか合わないんですよね。とはいえ、このステューシーの「レッドライン」で作られたモデルは名作なので、比べるのもアレですけど(笑)。オマージュというには完成度が高くて、純粋にデニムとして見ても素晴らしいと思います。色もインディゴが濃くて、ここに“耳”がついてて、着てみて触りながら「なるほどなぁ」って感心しています。
F:細かい部分を見ていくと、かなり作り込まれている感じがしますね。
シンチバック
十倍:これはかなり忠実に再現されていると思います。「シンチバック」と呼ばれる部分は若干ステューシーのオリジナルではあるんですけど。リーバイスのファーストは1942年から46年まで「大戦モデル」と呼ばれるモデルになって、ポケットのフラップがなくなったり省略されたりするんです。その後に作ったファーストはスライドバックルになるんですよね。前期型はそこが針なんですが、引っかかったりしてソファーや椅子などを傷つけたりするということで変更されたんです。なので、後期型からサンプリングしているところもリーバイスをうまく表現していて面白いなと。オリジナルと復刻モデルだとオリジナルの方に惹かれる人が多いと思うんですけど、これは逆にステューシーなりの解釈が引き立ちます。
F:シリアルナンバーが入ってるんですね。
十倍:手書きのシリアルナンバーなんですが、このモデルはシリアルナンバーが必ず入りますね。僕のは3桁台です。4桁のものはあまり見たことがないので、もしかしたらかなりリミテッドで作っていたのかも。特にXLは非常に数が限られたモデルで、「自分が着られるサイズでいいファースト型のものはないかな」と思っていたときに出会って買いました。
F:オールドステューシーも価格が高騰していますよね。ヴィンテージはもちろん、最近は「オールド〇〇」みたいなムーブメントも来ていますよね。
十倍:さっきのラルフ ローレンや「ギャップ(GAP)」もそうですけど、最近だとオールド「ユニクロ(UNIQLO)」も登場していますよね。何年か前から注目していて、オールドで最初に人気になったのはステューシーじゃないかな、と思います。
F:ちなみに着心地は?
十倍:着心地ばっちりです。本家のものだとこんな大きいものは絶対に手に入らないので、「このサイズがない」というのもやっぱりいいですよね。
F:これは何年代なんですか?
十倍:これもやっぱり90年ですね(笑)。
オールドSNOOPY 缶バッジなど
F:次が一番難解を極めると思われるオールド缶バッジです。さっき十倍さんがいじっている姿を見たんですけど、ニヤニヤしていましたね(笑)。
十倍:そうでした(笑)?たくさん持ってきた中で個人的に気に入っているのはこのスヌーピー(SNOOPY)シリーズですね。
F:なぜスヌーピーなんですか?
十倍:ほんとは猫好きなんですけど、犬で唯一好きなキャラクターがスヌーピーなんですよね。アメリカのヴィンテージのキャラクターと言ったらミッキーとかポパイとかですけど、個人的にはスヌーピーですね。ヴィンテージ業界では、スヌーピーのスウェットも非常に人気ですしね。
F:去年、文化服装学院で開催されたNIGOさんのアーカイヴ展「未来は過去にある”THE FUTURE IS IN THE PAST”-NIGO’s VINTAGE ARCHIVE-」でも多く展示されていましたね。
十倍:スウェットも好きなんですけど、他のグッズも調べたときにバッジを見つけて。今日もつけていますけど、コーディネイトの“ハズし”になるというか。すごくハマって今年たくさん買ってしまいました。
F:この中でもレアなモノはどれですか?
アストロノーツ
十倍:うーん、これかな。アポロが月に行った時に、スヌーピーがNASAとコラボした「アストロノーツ」と呼ばれているものですね。1960年代に発売された「ピーナッツ(PEANUTS)」のオフィシャルのものなんですけど、カプセル部分の状態を保っているものがすごく珍しいんですよね。ほとんどのものはないか、割れているか、という状態なので。あとこの「SNOOPY FOR PRESIDENT」もすごく気に入ってますね。ちなみに藤原ヒロシさんもこれをこよなく愛していて、昔よくつけていたんですよね。
F:なるほど。
十倍:このタイプは復刻が多く出回っているんですけど、これはちゃんとここに「ユニオン」という刻印が入っている本物で、スヌーピーミュージアムにも寄贈されたバッジなんですよ。80年代に復刻しているんですけど、これは当時のオリジナルで非常に気に入っています。っていうか全然話が盛り上がらないですね(笑)。
F:正直、もうよく分からないです(笑)。ちなみに缶バッジとピンバッジなら、どちらが好きなんですか?
十倍:僕は缶バッジの方が好きですね。缶バッジだとヴィンテージTシャツと同じモチーフや柄が、同年代にリリースされていることが多いんですよね。なので高騰しているTシャツは無理でも、バッジならまだまだ買いやすいですし、買うなら今のうちかなと。
F:ヴィンテージTシャツの高騰はすごいですからね。オールドバッジの年代などを判別する方法はあるんですか?
十倍:作っている会社名が刻印されていることが多いので、そこから判別しますね。あとはプリントなどもありますけど、一番分かりやすいのは「バッジの針がどう収まっているか」ですね。針の部分はどんどん進化してバッジの中に収まるようになるんですが、一番古いものは思いきり針が出るんですよね。
年代ごとに針の形状が変化
F:怪我したりしないんですか?
十倍:一度、針が手に刺さって血だらけになったことがあるので、ピアスのキャッチを「アマゾン(Amazon)」で買って先端に刺しています。これをやったところ「非常にいいじゃないか、それ」と、周りの人たちも同じようにしていますね。
Levi's® ヴィンテージ小物
F:最後はリーバイスのヴィンテージ小物です。これは売っていたものなんですか?
十倍:当時売っていたものやノベルティで配っていたものなどですね。このバッジもそうなんですけど、非売品だったものを集めるのが個人的に好きなんですよね。このトートバックは「BIG E」の生地を使っていたりと、年代によって素材が変わるのも面白いですよね。
F:特に気に入っているものはどれでしょう?
ヴィンテージバンダナ
十倍:このバンダナですかね。赤もあるんですけど、僕はこの色が気に入ってて。僕はバンダナを毎日持ち歩くんですよ。ハンカチとして、汗を拭いたりしていますね。
F:これは自宅で洗うんですか?
十倍:毎日洗って、干しています。さすがに乾燥機にはかけないですが。ちなみにこのトレーもリーバイスです。
ヴィンテージトレー
F:え! これもですか?
十倍:当時販促用で作っていたもので、ちゃんとオリジナルの刻印が入っています。このトレーシリーズは、リーバイス以外にもあるんですけど、結構コレクターがいる分野なんですよね。70年代終わりぐらいに作ったものかな。デニムを買ってくれたお客さんにノベルティとして配ったものだと思うんですけど、予想以上にクオリティが高いんですよね。実はこれと同じものを2枚持っているんですけど、状態が綺麗なものを今年買い直したんです。あとこれも凄いですよ。
F:いわゆる「サドルマン(SADDLEMEN)」のバッジですね。これも販促用なんですか?
十倍:いや、これは50年代ぐらいにリーバイスの中で優秀な社員さんに配っていたバッジなんです。シルバーも存在するんですけど、さらに優秀な人にだけ10k製のゴールドのものを渡していたんですよね。このゴールドが本当に出回らないんですよ。欲しいなと思っているところに出てきたので、速攻で買いました(笑)。
サドルマンバッジ
F:一番優秀な社員でも手放すんですね(笑)。
十倍:もう70年前のことですから(笑)。僕もヴィンテージを志す者として、 当時のリーバイスの優秀な社員さんにあやかろうと。
F:実際に使うんですか?
十倍:普通に使いますよ。
F:素朴な疑問なのですが、バッジを付けて服に穴が開くことについてはどう思っているんですか?
十倍:付けちゃいけない服もありますね。なので一度付けたら、その穴にもう一度通すという技術が必要ですね。着る度にバッジ類は替えるので、家に帰ったらバッジを外して、また朝にその日の気分でバッジを付けるときは集中して針を通しますね。
F:それを付けて、リーバイスの人との打ち合わせに行ったことはあるんですか?
十倍:まだないです(笑)。付けて行ったら採用してもらえるかもですね(笑)。
今年を振り返って
F:今年はVCMも大きく成長されて、ヴィンテージ業界の中心にいたと思うんですけど、 今年一年を振り返ってみてどうでした?
十倍:そうですね、今年は本当にヴィンテージをたくさん見た年でした。デニムやスウェットなどはもちろん、ジュエリーから小物までとにかく見て触って、自分が好きなものがどんどんアップデートされた気がしますね。バッジは去年はこんなに買っていなかったですし、価値のあるもの、自分が本当に好きなものというのが更に発見できたというか。「ウィンテージってこうだよね」と思い込んでいたものが「まだまだこんなのがあるんだ!」となりました。
F:来年は、どういう年にしたいですか?
十倍:来年はさらにヴィンテージにのめり込もうかな、と思っています。VCMをやっていて一番聞かれるのが、「次は何を買ったらいいんでしょう」という質問なんですよね。ヴィンテージがあまりにも広大なので、どこから入っていいか迷っちゃうんですよね。それを解決できるような何かが来年できたらいいなと思っています。
F:いいですね! 最後にズバリ、来年来るヴィンテージアイテムは?
十倍:うーん、まだまだTシャツ、スウェットは人気だとは思いますし、オールドステューシーやギャップ系も人気が出ていますしね。「ブランドアーカイヴ」と呼ばれる分野はまだまだ価値が再認識されていないものが多いです。自分のクローゼットに眠っている「あー、これ買ったなぁ」みたいなものに実は価値が出てきてたりしますからね。正直、個人的には缶バッジ推しなんですけどね(笑)。
F:缶バッジブームの到来を祈りましょう(笑)。ありがとうございました!
■十倍直昭
Grimoire inc.代表。2008年 Vintage Select Shop「Grimoire」をオープンしたのち、2021年にはヴィンテージ総合プラットフォーム "VCM (Vintage Collection Mall)" を立ち上げ、日本最大級のヴィンテージの祭典「VCM VINTAGE MARKET」を主催。また渋谷パルコにて、マーケット型ショップの「VCM MARKET BOOTH」やアポイントメント制ショップ「VCM COLLECTION STORE」、イベントスペースとして「VCM GALLEY」を運営。
インスタグラム:@naoaki_tobe、@vcm_vintagecollectionmall
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