今年のお買い物を振り返る「2023年ベストバイ」。3人目は、スタイリストのコギソマナさん。モード誌や広告を中心に活躍し、今年は「メゾンスペシャル(MAISON SPECIAL)」とのコラボレーション商品を発売。「今日も明日も服が好き♡」をモットーに発信するインスタグラムでは、ハイブランドや新進気鋭のデザイナーズブランド、古着などをミックスした私服コーディネートが注目を集めています。今年は初めてパリコレクションを訪れて、ショーを巡りながら買い物も楽しんだというコギソさんが選ぶ、今年の買って良かったモノとは?
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JACQUEMUS フリンジドレス
Image by: FASHIONSNAP
FASHIONSNAP(以下、F):1品目は「ジャックムス(JACQUEMUS)」のフリンジドレスですね。どちらで購入されましたか?
コギソマナ(以下、コギソ):今年3月に初めてパリコレクションに行きました。その時に出会った特別な1着です。ブランドの旗艦店でゲットしました。
F:連日行列を作っているモンテーニュ通りのブティックですね。
コギソ:初めてのパリコレは毎日がきらきらしていて、スケジュールを詰め込みすぎてしまい、閉店ギリギリでお店の列に並びました。でも、私の前で「入店はここまで」と言われてしまって。「ファッションウィークで忙しくて、今日しか見られない!」と困っていたら、「入れてあげるよ」と優しいスタッフさんにお店に入れてもらえました。
F: 閉店間際でしっかり買い物ができたんですね。
コギソ:店員さんたちも、閉店ギリギリで駆け込んだアジア人がスペシャルを買うなんて思っていなかったんじゃないかと(笑)。せっかくだったら日本で買えないピースを買いたいと、るんるんしながらこのドレスを試着しました。扱っているサイズが1つしかなかったんですけど、着てみたらぴったり。店員さんたちが「パーフェクト!」と盛り上げてくれて。25万円くらいで、値段はかわいくなかったんですが......。初めてのパリコレ記念にと思い切って買いました。帰り際にはバッグに入っていた日本のチョコレートをお店のスタッフさんに配って仲良くなって、楽しい時間が過ごせました。
F:どんなときに着用されますか?
コギソ:特別な日に着たいと思っています。着るとラフィアが抜けちゃうので(笑)。これからもこれを着るたびに初めてのパリコレのきらきらした瞬間を思い出せるだろうし、ずっと似合う自分でいたいな。と思っています。9月の東京ファッションウィーク中、10月の2回目のパリコレの時に着ました。
Dries Van Noten スカート
Image by: FASHIONSNAP
F:「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」の2019年春夏から。ウロコのようなスカートですね。
コギソ: こちらは10月にパリコレへ行ったときに出合いました。前のシーズンはバタバタして、現地のお店を見る時間があまり取れなかったんですが、2回目はもうちょっとうまく回れるようになりました。知り合いにおすすめしてもらったヴィンテージショップの「プレジール・パラス(Plaisir Palace)」というお店で見つけて。
F:ブランドヴィンテージを扱っている注目の店舗ですね。
コギソ:とっても素敵なお店で、オーナーのおじさんの提案が「それ!それ!そう来たか!」という感じでテンションが上がりました。いろいろ試着させてもらったんですが、「これも一緒に着てみてね」と奥から出して来てくれるお洋服がこれもほんと可愛くって。
F:このスカートにはどのような思い出がありますか?
コギソ:これはショーウィンドウに飾られていて、オーナーさんのお気に入りの一着のようでした。購入時に包んでくれたときにスカートを大切に撫でながら「グッバイ」と声をかけていて、淋しそうな顔をされていて。だから、スマホの翻訳機能を使って「私は服がスーパー大好きだから大事にするよ。安心してね」って伝えて。見せたら笑顔を見せてくれました。スカートと一緒にオーナーさんのお洋服への愛もいっぱい受け取らせてもらいました。
F:なんと素敵な話!
コギソ:めぐりあいですね。この服を着るたびに、あのオーナーさんのことを思い出して温かい気持ちになります。私が着られなくなったら、大切に着てくれる人に繋ぎたい。こんな風にお洋服が大事にされていていることは、パリのいいところ。たくさんの人におすすめしたいですし、お気に入りのお店になりました。
pillings パンツ
F:お次は村上亮太デザイナーによる「ピリングス(pillings)」の2024年春夏のパンツですね。
コギソ:3月にパリコレに行った後、“今の東コレはどうなっているのだろう?”と思って、東京ファッションウィークを追いかける一週間を作りました。たくさんのショーを見せて頂いた中でもピリングスの2023-24年秋冬のショーは「うわあ」と、とても心が動きました。
F:いいショーでしたよね。穴があいたニットと毛玉だらけのパンツを着たモデルたちが自分自身を抱きしめながら、街灯の下を歩く演出も印象的でした。
コギソ:東コレではショー後に行われるデザイナーさんへの囲みインタビューも参加するようにしました。目の前で直接作り手さんの思いを聞くことで、よりブランドやコレクションを身近に感じられて、服についても理解が深まって。ショーを見せてもらったお礼として私ができることは、少しでも洋服を購入させてもらって、ブランドが続いていく応援をすること。そう考えて、ショー後の展示会へも前よりもっと行くようになりました。
F: このパンツの購入の決め手は?
コギソ: 囲みインタビューで、デザイナーの村上さんが葛藤しながらこのコレクションを制作したと語っていて。ジャーナリストの人に「なぜシルエットの美しくないパンツを作ったのか」と質問をされたときに「どうしようもないパンツを作りたかった」と答えていたのが印象に残ったんです。
F: どんなときに着用されますか?
コギソ: どうしようもないときって誰にでもあると思うんです。頑張りすぎて、身体も心ももうすぐ限界…ってとき。そういうときにこのパンツが助けてくれます。ある日、疲れて、ボロボロの状態でこのパンツを穿いて、コンビニの焼き鳥を食べながら車を運転していたら、タレをパンツに落としちゃって。でも、「この子は汚れてもいい。どんどん汚れて、一緒に育っていこう」ってなんか笑っちゃって、心が優しくなれたんです。汚れても大丈夫と思える服はなかなかないですし、「どうしようもない」ことがこのパンツにとっても幸せだと感じました。
F:東コレを見るようになって何か気付きはありましたか?
コギソ:今までスタイリストとして、「既存のルックからどうしたら面白いスタイリングになるのかな?」とお洋服と向き合ってきました。しかし、「それを作り手さんはどう思うんだろう」と考えた時期があって。そこでピリングスの村上さんに「勝手にスタイリングを変えられて、嫌じゃない?」と聞いてみました。すると「スタイリストさんはスタイリングのプロだから、僕たちも思いつかないような服の可能性も広げてくれて、それはそれで嬉しいです。みんなそれぞれのプロですからね」と言ってもらえて、ホッとしました。お洋服を見る角度が少し広がった気持ちになりました。
KANAKO SAKAI ブーツ
F:こちらは「カナコサカイ(KANAKO SAKAI)」が8月の東コレで発表した2024年春夏コレクションのブーツですね。店頭に並ぶのは来春のはずですが......もうコギソさんはゲットされたのですか?
コギソ:ショー後の展示会に伺ったときに、このブーツをオーダーしようとしていました。その際にデザイナーのカナコさんにパリコレに行く話をしたら、ショー用に作ったサンプルがいくつかあるので、先に購入させてもらえることになって。その代わりに「パリで宣伝してきてね!」と言われたので、しっかりパリの街で「カナコサカイ」と叫んできました(笑)。ミッションコンプリートできたと思います。
F:それはすごいですね! きっとデザイナーのカナコさんも喜んでくれているでしょう。
コギソ:カナコさんはお会いする前は、綺麗でかっこいい服を作られているので気取った人だと思っていたんです(笑)。しかし、展示会で話してみたら、気さくでパッションがあり、すぐに意気投合。このブーツはとっても綺麗に紙に包んで、手書きの素敵なお手紙を入れて送ってくれました。ブーツを包んでくれているカナコさんを想像してニヤニヤしちゃいました。カナコさんが大事に作ったブーツこれから私が大事にしていきます。
Image by: FASHIONSNAP
F:日本らしい縁起のいいモチーフが描かれているのも素敵ですよね。
コギソ:鶴や富士山、波などの刺繍が入っています。実は東京からパリへの飛行機でも履いていて、空港に降り立ったら、「ハルノブムラタ」デザイナーの村田晴信さんにばったりお会いしました。パリで一人で大荷物を持って移動するのは心細かったんですが、村田さんとパリ市内までおしゃべりしながら一緒に行けてラッキーでした。ぴかぴかのこのブーツがきっとラッキーを連れて来てくれたんだな。って思っています。これからもいい出会いが巡ってくるような気がします。
kodori ぞうり
F:こちらは京都祇園の老舗履物匠の「ない藤」によるブランド「コドリ(kodori)」のぞうりですね。先ほどのブーツに引き続き、ゴールドです。
コギソ:足元はその人の人柄が出ると思うんです。光った靴は“今日は何者?“という不思議な雰囲気が出るので好きです。コーディネートの外しにもちょうどよくって。また下駄や草履など日本の履物を洋服に合わせるのも大好きです。ちょっとした違和感が私っぽいのかなと。日本人に生まれたので日本の文化を繋いでいくものとして大事にしたいと思っています。
F:このぞうりにはどのように出合ったのですか?
コギソ:最初はプレスショールームで知ったのですが、その後伊勢丹新宿店のポップアップストアにお伺いしました。その時に店頭に立っていたのが創業家の内藤さんの息子さんでした。たくさんお話をする中で、足元にも似合う、似合わないがあり、似合うぞうりを選んでもらうことを“お誂(あつら)え”と呼ぶと教えてもらいました。
F:こちらのゴールドのぞうりは、内藤さんに“お誂え“してもらったんですね。
コギソ:「コギソさんにはこちらです」とお持ちいただいたのが、お店で一番ぴかぴかなこの子でした。「ぴかんぴかん大好きです!」と盛り上がって。内藤さんにいろんな事を教えてもらいました。デザインだけでなく、履き心地のよさや姿勢について、メンテナンスをしながらずっと一緒に履いていってもらいたいと。いつか京都のお店に行って、そちらでも新しい一足をお誂えしてもらいたいと思っています。
IONDOCTOR パンツ型ウォーマー
Image by: FASHIONSNAP
F:こちらは「イオンドクター(IONDOCTOR)」の パンツ型ウォーマーですね。このアイテムには、どのように出合ったのですか?
コギソ:ビューティ関連の仕事をしたときに、むくみ対策としてこのアイテムが紹介されていたのを見て知りました。気がついたら、現場でご一緒する女優さんが皆、イオンドクターのレッグウォーマーを愛用されていることに気がついて。
F:着用感はどんな感じですか?
コギソ:すっごく温かくって包み込んでくれる感じです。おうちに帰ってこれを着ると、はい。オフ〜。にスイッチが切り替わります。今日も1日よくがんばったね。と、心がほっとします。体が限界のときはこっそり撮影にもはいて行っちゃいますが(笑)。大好きなのでお世話になったモデルちゃんや友人、家族にもよく贈ってみんな喜んでくれます。特に妊婦の友人が大絶賛で「身体が楽になったよ」と話してくれました。
F:秋冬に大活躍するアイテムですね。
コギソ:今年の頭に購入して、本当に温かくて体が楽になるのでもう手放せないアイテムです。服を綺麗に着たいし、肌見せファッションを冬でもしたいので。見た目は地味ですが…むくみも取れて温かいのが私にぴったりです。
今年を振り返って
F:今年の買い物を振り返ってみていかがですか?
コギソ:服の買い方が変わってきたように思います。前にカラーコートがマイブームのときには、持っていない色をどんどん集め、あれも欲しい、これも欲しいとたくさんお洋服を購入していました。どれも大事なのでもうそんなに増やすことが出来なくなってきて、今は「ずっと一緒に生きていこうね」と思える特別な服を買うようになりました。
F:それはファッションショーを見に行くようになったり、展示会でデザイナーさんとお話しする機会が増えたりしたことが理由にあるのでしょうか。
コギソ:はい。洋服には作っている人が本当によく表れるな、ということを感じて。その背景を知るようになってから、「もっとお洋服が大好き!もっと大事にしたい!」と思うようになりました。ショーで見た服を購入した後には、初めて着る時は手持ちの服でランウェイのルックを真似したスタイリング。1回目は「これが正解の着方だよね」というブランドさんが提案する着方を取り入れて。その後2回目、3回目は自分流にアレンジしていくようになりました。私の好みだけではなく、作り手さんの気持ちも感じていたいなと思っています。
F:今年はコギソさんと「メゾンスペシャル(MAISON SPECIAL)」とのコラボレーションアイテムも発表されましたね。
コギソ:そうですね。中でも特にお気に入りはグローブです。私はなんだかベージュの透け感のあるアイテムが好きで。肌みたいなグローブが作りたかったんです。 シンプルなTシャツを着ていてもこのグローブを合わせれば、いつもよりちょっぴりおしゃれになれる。「コーディネートが楽しい!」と思ってもらえるような、誰かのふりかけになれるようなアイテムにしたかったんです。初めてお洋服を作る側を経験させてもらって、知らなかった事をたくさん教えてもらって、またお洋服の世界が広がりました。こんな経験をさせて頂いて、ブランドのみなさんに感謝しています。次は服を美しく見せるためのインナーを作ってみたいですね。できれば、メイドインジャパンで。
Image by: FASHIONSNAP
F:来年はどんな年にしたいですか?
コギソ:このまま自分らしいお仕事ができる一年にしたいですね。わたしの強みは、ギャルやコンサバ、モードと様々なジャンルを渡ってきたので、いろんなお洋服の引き出しがあることです。引き出しをがっちゃんがっちゃんと開けて、私らしく混ぜていける一年にしたいです。
F:やってみたいことは?
コギソ:全ての写真が笑っているファッションストーリーを作りたいです。やっぱり私はご機嫌な服が好きで、服にはパワーがあると思います。みんながご機嫌なファッションを思いっきり楽しんでいて、でもなんだか身近に感じられるビジュアルに携わりたいです。あと、アーティストさんのお仕事もしてみたい。今までとは違うファッションの表現方法と出合って、私の中のファッションの世界をもっと広げていきたいです。
■コギソマナ
スタイリスト。2008年に独立後は、主に雑誌をメインにファッションからビューティまで幅広く活動。リアルブランドとハイブランドをミックスしたスタイリングを得意とし、自由で個性的なスタイリングは、本人の私服でも日々表現している。インスタグラムでは日々自分のコーディネートを更新中。その独特なレイヤードや色使いで注目を集める。
インスタグラム:@kogisonofuku
■2023年ベストバイ
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