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「ミカゲ シン」27年春夏は寝台列車の旅に着想 ルックに金原ひとみ起用、メンズ人気も拡大

佐々木エリカ

 デザイナーの進美影が手掛ける「ミカゲ シン(MIKAGE SHIN)」が、2027年春夏コレクションの展示会を開催し新作を発表した。7月11日、12日、18日、19日の週末4日間は、渋谷のギャラリー「Experiment」で一般向けの受注会を行っている。

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 ミカゲ シンは、デザイナーの進美影が2019年10月にNYで設立したジェンダーレスブランド。哲学的なテーマと構築的なパターン、ストーリーに基づくオリジナルのグラフィックを掛け合わせたデザインが特徴で、「個人の強さと知性を引き出す服」をコンセプトに掲げ、ジェンダーや年齢、国籍にとらわれないコレクションを提案している。2020年9月から拠点を日本に移転。2022年には、日本メンズファッション協会のベストデビュタント賞を受賞した。

27年春夏の着想源は、映画「コンパートメントNo.6」──背景には反戦への思いも

 今季のテーマは、寝台特急での列車旅から着想を得た「SLEEPER JOURNEY」。デザイナーの進は、寝台列車を舞台にしたユホ・クオスマネン監督の映画「コンパートメントNo.6」から強く影響を受けたといい、「日々の戦争のニュースや政治不安に焦燥感や憤りを覚える中で、現実から少し距離を置いてこの作品を繰り返し鑑賞することで、現実を生きるためのエネルギーをもらったことが制作の出発点になった」と語る。

 同作は、1990年代のロシアを舞台に、国籍も生い立ちも異なる不器用な男女が寝台列車に偶然乗り合わせ、反発し合いながらも次第に心を通わせていく物語。ソ連崩壊直前のメランコリックで焦燥的な世界観や、壮大な自然を背景に描かれる非力で不器用な人間たちの温かな交流が、ブランドが近年継続してテーマにしている「時間の痕跡」や「経年変化」「人間の不整然な美しさ」とリンクした。

 SNS上でも政治や社会的なトピックに関して日常的に発信している進。今年5月には、ポップアップと公式オンラインストアで「反戦」のメッセージをあしらった「“No War” Charity T-Shirt」を発売し、約50着が早期完売するなど反響を呼んだ。

 「日本では政治や反戦の話をするのに勇気が必要な空気がありますが、留学先のアメリカでは誰もが当たり前に政治の話をしていた。発信する人が増えれば、みんなも声を上げやすくなるはず。『政治はよくわからない』というファッション好きな若い世代の方たちに、コレクションをきっかけに考えてもらえたら。そして、戦争に反対することは、人間としてクールなことであるという認識がもっと広まってほしい」。そう語る進の思いと映画のムードが、今季のコレクションの土台となっている。

「“No War” Charity T-Shirt」(1万7600円)

Image by: MIKAGE SHIN

 そんなブランドの「知性と反骨精神」を体現するように、今シーズンのルックには小説家の金原ひとみがモデルとして登場。進は「金原さんの知的で媚びない自律的な在り方が、ブランドが長年理想としてきた女性像にぴったりだった」とその理由を語る。

Image by: MIKAGE SHIN

Image by: MIKAGE SHIN

寝台列車の情景を落とし込んだテーラリングやセットアップ

 コレクションには、寝台列車で過ごす人々やその情景を色濃く反映。テーラードジャケットをまとう紳士やスウェット姿の若い旅人、車窓のレースカーテンや食堂車のテーブルクロス、銀食器と小さな花が飾られたテーブル、パジャマに着替えて個室で思い思いの時間を過ごす姿などをデザインの随所に散りばめた。

「ミカゲシン」2027年春夏コレクションのムードボード

Image by: FASHIONSNAP

 ミカゲシンのシグネチャーでもあるテーラリングからは、寝台特急に乗る紳士が着るヴィンテージスーツをイメージした、ピンストライプ地にレースをドッキングしたダブルのテーラードジャケットとパンツのセットアップが登場。列車内でリラックスして過ごせるよう、パンツはテーラード仕立てながらウエストゴムと紐で調整できる仕様に仕上げている。そのほか、パジャマライクなシャツとハーフパンツのセットアップや、同じくブランドのアイコンであるプリーツベルトをレースカーテンのようなデザインに落とし込んだアイテム、錆加工を施した外国通貨風のメタルボタンをあしらったテーラードジャケットやシャツなどをラインナップする。

Image by: MIKAGE SHIN

「錆デニム」「有松絞り」シグネチャーシリーズの新作も

 ブランドで人気の高いシグネチャーシリーズの新作も豊富に展開。バストラインにワイヤーが入った立体的な造形が特徴の「ボディスカルプチャー(Body Sculpture)」シリーズからは、Tシャツとピンストライプのパフスリーブシャツが新たに登場する。

Image by: MIKAGE SHIN

Image by: MIKAGE SHIN

 デザイナーが国内外で撮り溜めた錆や塗装剥げの写真を転写プリントした「錆デニム」シリーズも健在。今季は、累計200本以上が完売したアーカイヴ「青銅錆デニム」にウォッシュ加工を加えてアップデートしたグリーンや、コンクリートの塗装剥げをイメージしたブラック、金属の塗装剥げと錆の汚れを掛け合わせたブルーの3色をラインナップする。加えて、ウォッシュとブリーチを施したインディゴデニムにコーヒーをかけ、ライターで縁を炙ることで生み出したというユニークな加工が特徴の転写プリントデニム「Heat-Scorched Bleach Denim」も新登場する。

「Heat-Scorched Bleach Denim」

Image by: MIKAGE SHIN

 また愛知県の伝統工芸である、職人の手仕事による有松絞りのトゲのデザインが特徴のドレスラインからは、ドレス、スカート、パンツ、エプロンビスチェ、バッグを展開する。元々はXGやPerfumeをはじめとしたアーティストの衣装として同様の加工素材を用いていたが、2026年秋冬シーズンから一般向けの「ドレスライン」として提案をスタート。アーティストの着用衣装とリンクする“概念コーデ”でライブに行くファンをはじめ、モードでアバンギャルドなアイテムを好む男性客からも好評を得ているという。

Image by: MIKAGE SHIN

卸先の約7割はメンズ 拡大する男性客からの支持

 元々はウィメンズをメインターゲットにスタートしたミカゲ シンだが、ジェンダーレスな世界観やデザインと、メンズブランドのウェアにはあまり見られないディテールやギミックが男性客を惹きつけ、着実に支持を拡大している。現在では、20〜30店舗の卸先の約7割をメンズのセレクトショップが構成。ブランドの公式ECの売り上げの約6割、受注会やポップアップなどのリアルイベントに来店する顧客の約9割を男性が占めている。

 特に男性客には、袖がボタンやファスナーで開閉できたり、襟が2wayにアレンジできたりといったジャケットやシャツの仕様をはじめ、メンズには少ないシアー素材や光沢素材のシャツ、独創性の高い加工を施すことでモードな表情に仕上げたデニムやスウェットといったカジュアルウェアなどが好評だという。

Image by: MIKAGE SHIN

Image by: MIKAGE SHIN

 顧客とのコミュニケーションから新たなアイテムが生まれることも多く、元々はスカートに付属していたプリーツベルトは、「単体で欲しい」という男性客の声に応えて商品化。「スカートの着用には抵抗があるが、スタイリングのアクセントとして楽しみたい」というファッション感度の高い層に人気を博しているという。こうしたメンズ需要の高まりを受け、今季はテーラリングやカットソーのショーツ型セットアップを増やすなど、アイテム構成にも変化が見られた。

メンズに人気のスカートベルト

MIKAGE SHIN 27年春夏

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最終更新日:

■MIKAGE SHIN Spring / Summer 2027 Collection Exhibition "Sleeper Journey"
日程:2026年7月11日(土)、12日(日)、18日(土)、19日(日)
場所:Experiment
所在地:東京都渋谷区神南1-9-7 1F
時間:12:00〜20:00

公式サイト公式Instagram

文・佐々木エリカ

Erika Sasaki

FASHIONSNAP 編集記者

埼玉県出身。早稲田大学国際教養学部卒業後、国内大手アパレルメーカー、ケリング傘下ブランドのMDなどを経験した後、2023年にレコオーランドに入社。現在はウィメンズのデザイナーズブランドを中心に、サステナビリティやSDGs、教育分野も担当。ファッションやカルチャーに加えてジェンダーや社会問題にまつわるトピックにも関心があるため、その接点を見出し、思考や議論のきっかけとなるような発信をしていけたらと願っている。

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