ウォルマートのサブスク新特典は写真も送金もパンク修理も無料 暮らしを囲い込む経済圏

ウォルマートの店舗から玄関先へ届けられる日用品。ウォルマート・プラスの無料宅配は、買物時間や荷運びの負担を減らすだけでなく、夜間の駐車場を避けたい利用者に「安全」まで届けるサブスクリプションへ進化している。

ウォルマートの店舗から玄関先へ届けられる日用品。ウォルマート・プラスの無料宅配は、買物時間や荷運びの負担を減らすだけでなく、夜間の駐車場を避けたい利用者に「安全」まで届けるサブスクリプションへ進化している。

ウォルマートの店舗から玄関先へ届けられる日用品。ウォルマート・プラスの無料宅配は、買物時間や荷運びの負担を減らすだけでなく、夜間の駐車場を避けたい利用者に「安全」まで届けるサブスクリプションへ進化している。

「宅配会員」から「生活会員」へ
ウォルマートは14日、サブスクリプション「ウォルマート・プラス(Walmart+)」に写真プリントと金融サービスの店頭特典を追加した。
月額12.95ドル(約2,072円)、年額98ドル(約1万5,680円)という料金は据え置きである。注目すべきは特典の数ではない。
ネット注文を増やすために始まった会員制度が、店舗内のサービスカウンターまで顧客を囲い込む仕組みに変わったことである。
年間300枚の写真が店へ連れ戻す
新特典の1つ目は、毎月25枚の4×6インチ写真を無料でプリントできるサービスだ。年間では最大300枚となる。
利用者は写真を注文後、ウォルマートのアプリにある会員特典ページを開き、会計前にバーコードを提示する。
スマホ内に眠る写真を冷蔵庫やアルバムへ移すという小さな需要を、毎月繰り返す来店理由に変えたのである。
原価の低いプリントを入り口に、額縁、アルバム、文具、誕生日用品まで買物かごへ誘導できる。
金融手数料を四半期ごとに無料化
2つ目は、マネーセンターで対象となる金融サービスを3カ月に1回、手数料なしで利用できる特典である。
小切手の現金化、マネーオーダー、送金、公共料金などの支払い、イーキャッシュへの入金が対象となる。
これらは派手さに欠けるものの、銀行口座を十分に利用できない層には生活インフラである。ウォルマートは買物客の財布を狙うのではなく、財布そのものの役割へ踏み込んでいるのだ。
パンク修理まで会費に入った
既存のオートケア特典では、条件を満たすタイヤのパンク修理が無料となる。通常15ドル(約2,400円)の価値だ。
さらに対象タイヤをバリュー・パッケージ付きで購入すると、ロードハザード保証も追加料金なしで付く。食料品を買うスーパーの会員証でタイヤまで守られる。
冷蔵庫、銀行、クルマという生活の3点を、1つのアプリで束ねる設計である。
本丸は店舗起点の無料宅配
中核特典は、35ドル(約5,600円)以上の注文を店舗から無料で届けるサービスだ。
処方薬を含む注文は最低購入額なしで当日配送にも対応する。
ウォルマートが持つ全米約4,600店は、商品を売る箱であると同時に、顧客の近くに配置された小型物流拠点でもある。
アマゾンに対する最大の武器はウェブサイトではない。米国人口の大半へ近距離で接近できる店舗網である。
店内ではスマホがレジになる
モバイル・スキャン&ゴーでは、会員が商品をスマホで読み取り、専用レーンで会計を終えられる。
写真や金融サービスでも同じアプリの会員証を使うため、宅配、店内購買、サービスカウンターが1つのIDにつながる。
無料特典は善意ではない。いつ、どの店で、何を買い、どのサービスまで使ったのかを理解し、次の利用を促すための投資である。
外食、動画、ガソリン、ペットも接続
会員は参加給油所で1ガロン当たり最大10セント(約16円)の割引を受け、サムズクラブの会員価格でも給油できる。
広告付きのパラマウント・プラスまたはピーコック・プレミアムを選び、90日ごとに切り替えられる。
バーガーキングのデジタル注文は毎日25%引きで、3カ月に1回は商品購入に伴いワッパーが無料となる。
さらにパウプ(Pawp)の獣医専門家へ24時間相談でき、旅行予約ではホテル、レンタカー、アクティビティで最大10%、航空券で2%のウォルマート・キャッシュを獲得できる。
98ドルを回収させる巧妙な算数
ストリーミングだけでも年間最大109ドル(約1万7,440円)相当とされ、年会費98ドルを上回る。
これに宅配、ガソリン、写真、タイヤ修理、外食割引を重ねれば、会員は「退会すると損」と感じる。
SNAP、WIC、メディケイドなどの対象者にはウォルマート・プラス・アシストも用意し、年額49ドル(約7,840円)、月額6.47ドル(約1,035円)と通常料金の半額にする。
低所得層まで会員経済圏へ迎え入れる点が、富裕層寄りの会員制小売とは異なる。
小売業を超えた日常の基本ソフト
ウォルマート・プラスは、アマゾン・プライムの模倣から離れ始めた。
アマゾンがデジタル空間から生活を包むのに対し、ウォルマートは店舗、給油所、薬局、金融窓口、オートセンターという物理拠点から生活へ食い込む。
今回の写真25枚と金融手数料1回は小粒に見える。しかし、会員を月1回、四半期に1回と店舗へ戻す時計を、ウォルマートが暮らしの中に埋め込んだのである。
年会費を取るだけのサブスクリプションではない。4,600店を巨大な生活サービス網へ変える入場証なのだ。
本日のレートは1ドル=160円として換算。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です!
米国の成人2,089人を対象にした調査では、女性の52%、男性の41%が安全上の不安から日没後の大型店の屋外駐車場を避けると回答しました。
65歳以上の女性では63%に達し、昼間でも全体の21%が不安を感じています。
店舗側は照明や警備員、目立つ監視カメラを増やせますが、巨大な駐車場を完全に安心な空間へ変えるのは容易ではありません。
そこで価値を増すのがウォルマート・プラスの無料宅配です。
これまで宅配の売り文句は「時短」や「重い商品を運ばなくてよい」でした。
しかし今後は、暗い駐車場を歩かずに済むという安全のサブスクリプションにもなります。
玄関先まで届く買物袋は、商品だけでなく安心も一緒に運ぶ小さな装甲車のようなものです。
店舗の防犯投資と宅配の拡大は別々の話ではありません。ウォルマートは店舗を守りながら、その店舗を配送拠点に変え、来店をためらう顧客まで取り込めます。
夜の駐車場で待っているのは特売品とは限りませんから、牛乳には配達員と一緒に来てもらうほうが賢明です。
最終更新日:
ADVERTISING
PAST ARTICLES
【激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ】の過去記事
RANKING TOP 10
アクセスランキング











