
ニューヨークファッションウィークは2月11日の公式スケジュール開始とともに幕を開け、60以上のブランドがショーやプレゼンテーションを披露した。
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アメリカでは今年1月にサックス・フィフス・アベニューを有する親会社のサックス・グローバルがChapter 11(連邦破産法第11章)を申請したため、米国のファッション小売業界に不安が広がっていた。ファッションウィークの公式カレンダーを見ると、「トム・ブラウン(THOM BROWNE)」など常連の老舗ブランドの名が消えていたが、開幕に先駆けて「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」や「ラルフ ローレン(Ralph Lauren)」といったニューヨークを代表するブランドがコレクションを発表している。それでも市場に漂う緊張感を反映するかのように、大規模なパーティーや派手な演出は抑制され、総じて静かなシーズンとなった。こうした社会状況を背景に、ブランドイメージを誇示するよりも顧客のニーズに真摯に向き合い、実需に即したリアルクローズへと軸足を置くブランドが増えている印象だ。
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Ralph Lauren

Image by: ©Launchmetrics Spotlight

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「ラルフ ローレン(Ralph Lauren)」の会場となったのは、歴史的建造物内に位置するギャラリースペース。今シーズンは50以上におよぶカスタム素材がコレクションに用いられたこともあり、会場の重厚な絨毯やカーテン、ペイントが施された壁面からも、ブランドが重視するクラフトマンシップが感じられた。自ら人生を切り拓く自信に満ちた女性の反骨精神から着想を得た今季は、彼女たちがまとうパーソナリティに溢れた装いの冒険を描き出した。ベルベットやツイード、ガラスビーズ刺繍など、多様なテクスチャーの素材使いが、装いに奥行きをもたらす。
ブランドを象徴するスーツも、柔らかな素材使いによって官能性を帯びた仕上がりとなった。光を受けて煌めくビーズ装飾や、ハンドワークによるメタリックメッシュは、柔らかさを湛えた甲冑のように、凛とした強さをまとう女性像を形づくる。多彩な素材と高度なクラフトマンシップが交錯する本コレクションは、ブランドの表現の奥行きを強く印象づけるとともに、今なおニューヨークのファッションシーンを牽引する存在であることを改めて示した。
Calvin Klein Collection

Image by: Courtesy of Calvin Klein

Image by: Courtesy of Calvin Klein

Image by: Courtesy of Calvin Klein
ヴェロニカ・レオーニ(Veronica Leoni)がクリエイティブ・ディレクターに就任して3シーズン目となる「カルバン ・クライン コレクション(Calvin Klein Collection)」2026年秋冬は、メゾンがグローバルブランドへと飛躍を遂げた70年代後半から80年代に着想を得た。アーカイヴを紐解き、ブランドのDNAをより深く理解しようと試みた今季は、肉体美への執着が孕む危うさと、享楽性を帯びたエレガンスを同時に描き出している。
程よい緊張感をまとったクリーンで都会的なミニマリズムは健在で、コレクションはモノトーンを基調に展開された。身体を覆うルックは、構築的なフォルムや柔らかな素材使いによって、その立体感を際立たせる。得意とするスーツは細く長いシルエットで、腕の美しさを強調するノースリーブのスーツも印象的だ。背中を大胆にカットアウトしたドレスやコートから、ブランドのアイコンであるアンダーウェアが覗く。あえて露出することで装いの一部として機能し、身体美を強調する重要なアクセントとなった。76年にブランドが初めてランウェイで発表したデニムのオマージュも。当時、カジュアルだったデニムをモードへと昇華させた身体美を強調するクリーンでミニマルなデザインは、今なお瑞々しさを失わない。
ASHLYN

Image by: ©Launchmetrics Spotlight

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「アシュリン(ASHLYN)」を手掛けるアシュリン・パーク(Ashlynn Park)は、2025年に「ヴォーグ・ファッション基金」と「アメリカン・エマージング・デザイナー・オブ・ザ・イヤー」を受賞し、ニューヨークで着実に成功への歩みを進めているデザイナーの一人だ。
注目の集まる今シーズンのテーマは「ヴァナキュラー(Vernacular)」。「土着の」「人々の暮らしの中に根付いたもの」を意味する言葉だ。ショーノートは、シーズンテーマと呼応するかのように「日常から生まれた形。それが、私の考える服づくりの言語です」と締めくくられている。韓国出身のパークは、アメリカの多様な文化からも着想を得ながら、身体を引き立て、感覚を豊かにする服づくりを志向する。彼女にとってそれこそが、日常に根差したデザインと同義なのだ。
得意とする複雑なパターンから生まれる立体的なフォルムや、あえて内部構造を見せたテーラードは、「ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)」でパタンナーとして活躍した経歴に裏打ちされた、これまで積み重ねてきたキャリアがあってこその技だ。多彩な素材と緻密なパターンワークが融合したアシュリンらしい造形は、抑制と解放がせめぎ合う絶妙なバランスの上に成り立つ。その均衡は、最終的に日常使いを想起させるリアリティへと着地している。
Lii

Image by: ©Launchmetrics Spotlight

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若干25歳のデザイナー、ゼイン・リー(Zane Li)が手がける「リー(Lii)」は、今シーズンでデビュー4シーズン目を迎えるフレッシュなブランドだ。先日には2026年の「LVMHプライズ」セミファイナリストにも選出され、その存在感は一層高まりつつある。
今季は、ジョナサン・グレイザー監督による映画「アンダー・ザ・スキン 種の捕食」(2013年)から着想を得た。都市における孤独や女性性をめぐる葛藤といったテーマに触発され、身体を「隠されるもの」であると同時に「さらされるもの」として捉え直した。守られているようでいて、静かに露わになる、そんな両義性を帯びた存在としての身体を考察したコレクションとなっている。
スポーティーなディテールに鮮やかな色彩のアクセントを効かせるリーのアプローチは、今季も一貫している。ショルダーラインをのぞかせながらも身体を包み込むドレスや、存在感のあるファーベストは、どこかに“何か”を秘めたミステリアスな女性像を想起させる。立体的なフォルムと折り紙のような構築性は、動きの中でこそ真価を発揮し、リーの造形美を印象づけた。
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