パリ・ファッションウィーク6日目の夕刻、マレ地区の歴史的建造物「ル カロー デュ タンプル」の周辺に多くの観客やセレブリティらが集っていた。この場所で開催されたのが「アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)」による注目の2024年春夏コレクション。クリエイティブディレクターを13年間にわたり務めてきたサラ・バートン(Sarah Burton)の集大成と言える特別なショーが繰り広げられた。
「このショーは、女性に力を与えることを常に願い続けたリー・アレキサンダー・マックイーンとの思い出と、Alexander McQueenチームの情熱と誠実さ、才能に捧げます」サラ・バートン
ショーノートに綴られた言葉の通り、今回のコレクションはブランド創設者であるリー・アレキサンダー・マックイーンと、同氏の遺志を受け継いできたサラ・バートン、2人のクリエイティビティが融合。「ANATOMY II」をテーマに、先シーズンに続き女性の身体にフォーカスしたコレクションとなった。
2人のデザインが融合したテーラード
そのコンセプトを象徴するのが、モデルのカイア・ガーバー(Kaia Gerber)が着用したファーストルック。胸元のスリットはリー、スプリットの入ったショルダーはサラと、一体のテーラードルックに2人の特徴的なデザインが融合している。また、構築的なデニムジャケットやレザーのコルセットといった、ウエストを強調したシルエットはコレクションの随所に反映された。
女性の身体とバラの花
目の覚めるような赤は、ブラッドレッドと呼ばれマックイーン独特の血のような真っ赤なバラの色。神秘的な身体へのフォーカスは、骨を想起させる手編みのニットドレスや、臓器のモチーフの刺繍などに見ることができる。一見するとグロテスクだが、ダークな中に美を見出すアレキサンダー・マックイーンならではの世界観を体現している。
アート作品と呼応するクチュールドレス
ショー会場には、ポーランド人アーティスト マグダレーナ・アバカノヴィッチ(Magdalena Abakanowicz)の代表作である巨大なファイバーアートシリーズ「アバカン」を展示。フリンジドレスや糸を張り巡らせた刺繍のジャケットなど、作品と呼応するアーティスティックなアプローチも注目を浴びた。
また、総レースや総刺繍のドレスなど、繊細なクチュールピースの数々が観客を魅了。ブランドにとってアイコン的な存在のナオミ・キャンベル(Naomi Campbell)が、シルバービーズの刺繍とフリンジで制作されたドレスをまとい、ラストルックのモデルを務めた。
注目のバッグや大ぶりのアクセサリー
アイコンバッグ「ピーク」の新作として、クロコダイルの型押しレザーを使用したバッグが登場。そして赤が印象的なパンプスやミュール、バラを象った大ぶりのピアスなど、コレクションテーマと連動するアクセサリーが印象的なスタイリングに仕上げた。
世界中から集った華やかなセレブリティ
ショーには、ケイト・ブランシェット(Cate Blanchett)やエル・ファニング(Elle Fanning)といった、ブランドとつながりが深いセレブリティらが多く来場。アジアからはストレイキッズ(Stray Kids)のアイエン(I.N)が出席し、集まったファンから大きな声援を浴びた。
ケイト・ブランシェット
日本から参加した三吉彩花は「テーラードや花のようなドレスがとても綺麗で、ショーを堪能しました。マックイーンが大好きなので、最後は涙が出るほど感動しました」と話し、スタンディングオベーションとなったフィナーレのシーンを振り返った。また、大平修蔵は「全てが美しくて素晴らしいのはもちろん、マックイーンとサラが多くの人に愛されているということを感じました」と話し、ブランドの魅力と芸術的な側面に触れた。
なお、サラ・バートンは2024年春夏コレクションの発表をもってアレキサンダー・マックイーンのクリエイティブディレクターを退任する。26年にわたりブランドに貢献したサラによる特別なショーを、多くの観客が見守った。
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