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【連載:美を伝える人】キッカやアンミックスでカリスマ的人気の吉川康雄氏(2) 音楽への道が無くなったから、選んだ美容の道

(1)から続く

 幼少期は普通の明るい男の子、学生時代はゲーム感覚で勉強に没頭し、勉強の次はバンドに熱中。高校卒業を前に、レッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)やジミー・ヘンドリックス(Jimi Hendrix)、デヴィッド・ボーイ(David Bowie)にも夢中になったという。バンドマンを夢見て上京した吉川氏に待ち受けていた現実とは。連載「美を伝える人」ビューティクリエイター吉川康雄氏(2)

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ー上京後は音楽にのめり込んだんですね?

 ベースをやってたんだけど、実は当時、楽譜が読めるわけでもなく、耳コピで音楽をやっていたんですよ。今では当たり前だけど、サンピックっていう親指で弾くベースに、「これは何だ!」って思ってやるんだけどできない。練習した曲はうまく弾けるけど、自分で新しいものを作り出せない…。フラストレーションになっていったんです。もっと自由になれるはずなのに、自由になれない。それで苦しくなってしまって…。

 今になって思うと、ロックミュージシャンの天才と言われた人たちは、ある意味、“でたらめ”で弾いていたんじゃないかと思う。本当に。当時は、この人たちはなんでこんなに自由に弾いてるんだ?って思ってたけど、実は限られたコードの中で自由に弾いていたんじゃないか。でもそれが凄すぎて、とてもじゃないけどやっていけない。辞めたときは正直言って、重荷から逃れられて、どこかスッキリした気持ちでもありました。

リラックスできるというご自宅から
リラックスできるというご自宅から
光が差し込むワークプレイス
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ーそれで美容の道を選んだ?

 音楽を諦めたけど、親には美容学校に行くと言って上京していたので。その美容学校も最初は音楽の影響で真面目に通わず、1年半で卒業できるところを2年かかってしまって。

ーその2年で「将来は美容の道へ」と思ったのですか?

 いえ、美容学校はどうにか卒業した感じでしたから…。ただ音楽を止めた自分が情けなくて、二度と同じことをしたくないと自分の中で誓ったんです。音楽の道がなくなったから、美容の道を選んだ感じでしたね。

ー美容に興味があったわけではなかったと。

 振り返れば、その時から自由に何かを作りたいという思いがあったんだと思う。音楽は完コピしかできなかったから、そこに自由はなくてやめてしまったけれど、美容だったら自分の頭の中にふっと思い浮かんだものを表現できるのかもしれない、と思ったというのもありますね。

ー無事に美容学校を卒業でき、美容師免許も取れたのですね。

 美容学校も決して面白くはありませんでした(笑)。生きた人間ではなくウィッグを相手にヘアカットの練習をするので、とにかくつまらなかった。ただ卒業してから原宿にある「ウプサ」という美容院で働くことになり、そこで今まで見たことのない技術やヘアスタイルを目の当たりにして、次第に美容の道が面白く見えてきたんですよ。

ー原宿という街も刺激的だったのでは?

 1970年代当時の原宿は今のように人が集まる街じゃなく、個性的な洋服を身にまとったモデルがちらほら歩いている感じだったけど、とにかくおしゃれな街だな、と思ったんですよね。

ー美容室ウプサでも、おしゃれで個性的な人々に日々囲まれていたのではないでしょうか。

 そうですね。渡辺サブロオや舘ひろしらといった有名人が来るようなお店でしたからね。女優・俳優の撮影の準備を美容院で行っていたわけですが、ウィッグ相手にパーマの練習をしていた学生のころとは全く異なる世界での仕事でした。見たことのないスタイルを次から次へと生み出す先輩の姿を見て、「ここでとことんやるぞ!」と思うようになっていったんです。

ー美容室ウプサで経験を積んだのですね。

 しばらくアシスタントとして働いていたのですが、ある日オーナーがヘアメイクの仕事に進むと言って、ウプサを(渡辺)サブロオさんに売ったんです。サブロオさんとは面識もあったし、当然私もそのまま残れるものだと思っていたら、なんと追い出されてしまって(笑)。

ーなんと!それは大変でしたね。

 だから新しく働く場を探して、当時「パルコ」などのキャンペーンのヘアメイクを担当していた川邊サチコさんが乃木坂で運営していた「カクティ」という美容室を紹介されて、そこで働くようになりました。カクティで店頭に立ちつつ、川邊さんが多くのファッションショーを担当していましたので、年に2回、春夏と秋冬のファッションショーの手伝いしたりして…。でもショーの仕事はいつもバタバタして忙しく、流されていくようであまり好きになれなかったんですよね。

(3)に続く

(文 エディター・ライター北坂映梨、聞き手 福崎明子)

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