年齢を取り払った「キッカ(CHICCA)」では、次々と新しいメイクの概念を発信。当時、発色が「2/5」という考え方は衝撃を与えたと同時に、メイクが苦手な人ややり過ぎないメイクを求めていた人に、自分らしさを取り入れられるメイクアップアイテムとして高い支持を得た。吉川氏はキッカで、メイクは「自分らしさを手に入れるモノ」「死ぬまで寄り添っていける美の価値観」と語り、多くの人の共感を得ていたが、ブランド誕生から10年で、その歴史に幕が閉じられた。キッカ終了後、立ち上げた自身のブランド「アンミックス(UNMIX)」で、キッカの思いはさらに進化して発信されることになる。連載「美を伝える人」ビューティクリエイター吉川康雄氏(9)
ーアンミックスとキッカの違いはあるのでしょうか?
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キッカを始めて10年ほど経ったころに、美容業界全体が女性に対して一方的に美容の価値観を押し付けているのではないか…。そしてコンプレックスを改善するという、自己否定を根底に植え付けるメッセージをもとに、業界は発展してきたのではないか…、という感覚を持つようになりました。これまでのお粉の文化もそうですが、このままだと既存の価値観を変えようともしない。でも僕は、美容の考えやプロダクトの進化すべき方向を感じていたので、キッカがなくなってもどうしても続けるべきだと思ったのです。
ーアンミックスのコンセプトは?
アンミックスは僕がキッカで進めていこうとしていたところに向かっています。提案する美容は、年齢や職業、ジェンダーなど関係ありません。全ての人に向けて、自分らしさを尊重しつつ、いい感じになれるプロダクトを作りたいと思いました。もしその人自身がインスパイアされ、「私って結構悪くない」って気付けたら、素晴らしいと思いませんか?
ー吉川さんが美容の情報やインタビューなどを発信する「アンミックスラブ(unmixLove)」も話題ですね。
アンミックスラブは実は、アンミックスを構想していたのと同時期に考えていたことだったんですが、キッカの契約が終了してそこから始めたんです。まずはプロダクトなしで、メッセージだけを発信していこうと思ってスタートさせたのがアンミックスラブです。僕が素敵だなって感じた人に連絡して、いろんな生き方で輝く人をインタビューしています。それぞれの生き方には大変なことも、嫌なこともあるはずです。そんな中でも自己を見失わず、どうやって自分を守って生きているのか、そんなことを聞いています。
アンミックスラブの撮影風景
ーインタビューする人はどんな方なのでしょうか?
社会の中で生きている以上、日々さまざまなストレスや“暴力”を受けます。それでどうしようもなく傷ついちゃった人は取材しません。大変な中でもどうにかして自分流に生きている人に登場してもらっています。またインタビューでは、僕の価値観を押し付けないようにしています。なぜなら、生き方は人それぞれで、正解も不正解もないからです。
ーブランドの製品とは関係のない、人にフォーカスしたメディアですね。
キッカの時はプロダクトがメインだったので、製品はあるけれど、こういう人の生き方などを伝える手段はありませんでした。だからアンミックスでは製品はもちろんですが、メッセージを伝える場を設けたかったんです。
ーでは逆にアンミックスの製品についてですが、どのような思いで製品づくりを行っているのでしょうか?
美しくなりたい欲を満たしつつも、健康的であること、無理がないことを叶えるプロダクトですね。とにかく、意味がない美容の目標は取っ払ってあげたい。
ーというとどういうことですか?
つまり、肌が白くある必要もないし、自分が生まれ持った肌色や毛穴、それぞれの存在には意味があるわけです。それを否定してしまったところで、どんどん自分が嫌いになってしまう。背が高くても低くても、胸が大きくても小さくてもなんでもコンプレックスになり得ます。でもコンプレックスに思ってしまうには、誰かから何か言われたり、社会のプレッシャーだったり、外的な要因があるはず。それを完全に消すことは現実的ではないから、やっぱりそういうネガティブな声を自分で“かわせる”ように、自己を育てることも大切です。小さい唇でも、それは自分の個性として、生きていく上で必要なものとして、そのものの良さを感じてもらえる、そんな製品を作り、発信をしていきます。
(文 エディター・ライター北坂映梨、聞き手 福崎明子)
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