ファーフェッチCEOのジョゼ・ネヴェス(José Neves)氏
Image by: Farfetch
創業から10年が経ち、現在は日本を含む190ヶ国でサービスを展開している「ファーフェッチ(Farfetch)」。コロナ禍の"巣ごもり消費"が追い風となった一方で、アマゾンなど新規参入企業が増えたラグジュアリーEC市場はレッドオーシャン化しつつある。ファーフェッチCEOのジョゼ・ネヴェス(José Neves)氏は"チャプター2"と位置付けるこれからの10年をどのように見据えているのか。
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ファーフェッチは2008年に設立し、今年10月時点で取り扱いブランド数が3500を超える規模に成長した。2019年には「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー™(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH™)」などを擁するミラノ拠点のニューガーズグループ(New Guards Group)を買収。その後、ニューガーズグループは「アンブッシュ(AMBUSH®)」と「オープニングセレモニー(OPENING CEREMONY)」を傘下に収めるなど、勢力を拡大しつつある。
新型コロナウイルスの感染拡大はアパレル小売業界にとって大打撃となったが、ファーフェッチは"巣ごもり消費"の加速が好機となり、2020年第2四半期のEC事業のGMV(総流通総額)は6.5億ドル(約685億円)、成長率は前年比約35%増。新規顧客の獲得数は50万人、アプリのインストール数は昨年比2倍以上だったという。特にホームウェアのカテゴリーと、ファインジュエリーやタイムレスなアイテムが大幅に売り上げを伸ばし、市場別ではEMEA(欧州・中東・アフリカ)や中国本土を含むAPAC(アジア太平洋地域)、アメリカ地域で特に好調な業績を収めた。ネヴェス氏は「私たちのビジネスモデルがコロナ禍においても強靭なものであることを証明できた」と振り返り、仏「プランタン(Printemps)」もファーフェッチへの出店を開始するなど、実店舗の通常営業が困難となった百貨店のビジネスサポートの役割も担うことができたという。
米コンサルティング会社「Bain & Company」の調査によると、ラグジュアリー市場のEC化率は最大30%に伸長すると予測されており、アマゾンがラグジュアリーECプラットフォームを開設するなど市場はすでに熱を帯びているが、ネヴェス氏は「競合他社に負けないブランドとの強固なリレーションシップを築いてきた」と自信を示す。そして市場のシェアを確保するため、今後はオンラインとオフラインをシームレスにつないだ購買体験を提供する「OMO(Online Merges with Offline)」をテーマにした「ストア・オブ・ザ・フューチャー」を重要な事業の一つと位置付ける。
ストア・オブ・ザ・フューチャー事業では「シャネル(CHANEL)」を専属パートナーに迎え、未来型店舗の開発プロジェクトを昨年春ごろから推進している。未来型店舗では専用アプリとコネクテッドミラーを活用し、パーソナルな接客を行うことで顧客エンゲージメントを高める狙いがある。ラグジュアリーリテール業界においては初となった取り組みについて、ネヴェス氏は「新型コロナウイルスの感染拡大を機に店舗の客足が落ち込む中、1平方フィートあたりの売上を最適化する方法を見つけるための重大な施策となる」と捉える。今年末までにはイギリスのセレクトショップ「ブラウンズ(Browns)」でも新たな施策の導入を予定。なお、シャネル以外のブランドとの専属パートナー契約を締結する計画については回答を控えた。
"ヴィジョンを伝えていく10年"と位置付ける「チャプター2」でネヴェス氏が目指すのは、ラグジュアリーファッションのグローバルプラットフォームとして業界全体のシステムの基幹を担うこと。「私たちはファッションを愛していて、ファッション業界に対して革新的なテクノロジーをもたらすことに意欲がある。この思想をもって、チャプター2は継続的な顧客への献身、持続可能なイノベーション、継続的な成長、そして世界最高クラスのソリューションをパートナーへと提供していく」。
また、今年9月にはリブランディングの一環としてロゴを刷新し、新たなモノグラム「the FARFETCH Fuse」を発表。「FARFETCH」の2つの「F」を融合しモダナイズさせたデザインで、ラグジュアリーファッションを取り揃えたマーケットプレイスとしての訴求を強化していくという。
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