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「女性が力強さを感じるために男性的である必要はない」ジバンシィが描く、本当の意味での力強い女性らしさ

2026年春夏コレクションをレポート

2026年春夏コレクション

Image by: GIVENCHY

2026年春夏コレクション

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 「女性であることの複雑さ、女性性、そして女性が持つ感情的知性を肯定し、受け入れることがさまざまなノイズが多い現代社会において極めて重要で、力強さを感じるために男性的特質を纏う必要はなく、女性特有の表現こそが真のエンパワーメントにつながる」とショー後のバックステージで話したのは「ジバンシィ(GIVENCHY)」のアーティスティック・ディレクター、サラ・バートン(Sarah Burton)。たしかに現代社会、とりわけビジネスや政界において、女性は自らの本質を抑圧し、男性的価値観に順応すること、男性的でいることが、出世への近道だという暗黙の前提がある。

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 しかしながら、バートン氏はこうした時代錯誤的な男性中心主義的価値観に対峙し、「力強い女性性」とは何かという本質的問いに真摯に向き合うことを選んだ。パリの歴史的建造物を舞台に発表されたジバンシィ2026年春夏ウィメンズコレクションは、テーラリングの構築的様式を解体し、肌の露出という表現を通じて、軽やかさと解放感を表現する挑戦的試みであった。その創造的過程は、着衣と脱衣という女性特有の美学的語彙の探求から始まったという。

 「Powerful femininity」を主題に掲げた2026年春夏コレクションは、一般的にパワフルな女性像を表現する際に散見される男性的要素を意図的に排除し、女性特有の要素こそが真の強さを生み出すという哲学が貫かれていた。構造的テーラリングと流動的ドレスの巧みな調和により、女性の身体が持つ自然な曲線美を讃えるデザインが随所に見られた。

 コレクションの中核をなすのは、テーラリングとドレスのデザインを並置し、女性の身体が持つ曲線美を強調するという手法。テーラードドレスは鎖骨や背中など、女性の身体の美しさを称える部分に焦点を当て、構築的でありながらも、ウエストやヒップなどは身体の輪郭に沿うよう精緻に仕立てられていた。前シーズンから継承された立ち襟はトレンチコートにも採用され、今季さらに洗練され、鎖骨のラインを一層美しく強調するデザインへと昇華していた。

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 「親密さ(intimacy)」と「官能性(sensuality)」は、コレクション全体を貫く重要な美学的基盤だ。部分的な肌の露出は、エロティシズムを肯定的文脈において再評価する試みであり、それは女性の持つ本質的魅力の一部として称揚されるべきものであるという力強い宣言であった。身体の曲線に沿って優美にドレープされたドレスは、着用者の動きによって絶えず異なる表情を見せる、生命力に満ちたデザインとなっていた。

 素材選択と組み合わせにおいても、バートン氏の審美眼が遺憾なく発揮された。透ける素材と不透明な素材の対置、柔和なシルクの流動性と構築的ウールの堅牢さの融合など、一見すると相反する要素を卓越した感性で調和させることにより、女性性の複層的表現を成し遂げていた。「女性の身体が持つ曲線美を強調することで、女性性の美しさを称える衣服を創造したい。エレガンスとパワーは相反するものではなく、むしろ相補的な関係にある」というバートンの言葉は、このコレクションの本質を如実に物語っている。

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 サテンステッチ刺繍をあしらったコートやピンクサテンのケープバックドレス、シアー素材で作られたボウドレス、ブラックレザーのボンバージャケットなど得意の360度デザインも健在。前下がりのライダースジャケットは後ろに膨らみを持たせ、前面からのヴィジュアルインパクトのみならず、側面や背面からの視点も緻密に計算され、全方位的な美しさが表現されていた。

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 着衣と脱衣という女性特有の美学的語彙を探求し、その間に生まれる繊細な緊張関係こそが真の女性性の表現であるというバートンの洞察は、布地の重なりと露出の絶妙なバランス、構築と解体の往還を通して、単なる衣服の提案を超えた、現代社会における女性性の在り方についての考察を体現した。ジバンシィの2026年春夏コレクションは、覆うことと露わにすることの二元性の中に女性であることの複雑性と美しさを見出し、真の強靭さは女性性そのものの中に宿るという力強いメッセージであり、サラ・バートンの指揮下で新時代を迎えたジバンシィの方向性を明瞭に示すものとなった。

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GIVENCHY -Women's- 2026年春夏コレクション

2026 SPRING SUMMERファッションショー


FASHIONSNAP ディレクター

芳之内史也

Fumiya Yoshinouchi

1986年、愛媛県生まれ。立命館大学経営学部卒業後、レコオーランドに入社。東京を中心に、ミラノ、パリのファッションウィークを担当。国内若手デザイナーの発掘と育成をメディアのスタンスから行っている。2020年にはOTB主催「ITS 2020」でITS Press Choice Award審査員を、2019年から2023年までASIA FASHION COLLECTIONの審査員を務める。

最終更新日:

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