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中国の高級モールで「ゴールドウイン」拡大 ラグジュアリー失速でも“プレミアムスポーツ”好調

文&写真五十君花実

杭州万象城にある「ゴールドウイン」店舗画像

杭州万象城の「ゴールドウイン」。隣は「MM6 メゾン マルジェラ」

Image by: FASHIONSNAP

杭州万象城にある「ゴールドウイン」店舗画像

杭州万象城の「ゴールドウイン」。隣は「MM6 メゾン マルジェラ」

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杭州万象城にある「ゴールドウイン」店舗画像

杭州万象城の「ゴールドウイン」。隣は「MM6 メゾン マルジェラ」

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 中国ではここ数年、「ラグジュアリーの失速」が語られてきた。不動産不況を背景に高級ブランド各社が苦戦を強いられる一方、対照的に成長を続けているのがスポーツ・アウトドア市場だ。なかでも存在感を増しているのが、“プレミアムスポーツ”と呼ばれる、機能性はもちろん、世界観や接客サービスも含めて従来のスポーツブランドよりも高い付加価値を提供するブランド群。中国企業アンタスポーツ傘下のアメアスポーツによる「アークテリクス(ARC'TERYX)」がその代表格だが、ゴールドウインのオリジナルブランド「ゴールドウイン(Goldwin)」も、まさにその領域で成長を目指している。2033年3月期に中国売上高300億円を掲げる「ゴールドウイン」は、中国でどのようなポジションを築きつつあるのか。現地店舗を取材した。

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テック富裕層の日常着として浸透

 上海から高速鉄道で約1時間。浙江省・杭州の高級ショッピングモール「杭州万象城」を訪ねると、1階には「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」、「ディオール(DIOR)」、「グッチ(GUCCI)」、「カルティエ(Cartier)」などのラグジュアリーブランドがずらり。「ゴールドウイン」が2025年1月に出店した中国4店目の店舗も、このモール内にある。

 杭州はアリババ(Alibaba)本社をはじめ、新興IT企業が集積する中国有数のテック都市で、人口規模は1200万人超。若いテック富裕層や新中間層が多く、「ゴールドウイン」にとっても重要市場となっている。実際に同店は、中国1号店で政府関係者を顧客に多数抱えるという北京店、2024年9月にオープンした上海1号店と並び、中国の直営14店のうちでトップクラスの売り上げを誇るという。

杭州万象城の外観画像
杭州万象城の内観画像

「グッチ」や「カルティエ」のファサードが目を引く杭州万象城の外観

 興味深いのは出店フロアだ。同モールでは3階にスポーツブランドを集積しており、「ニューバランス(NEW BALANCE)」、米VFコーポレーションによる「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」、アンタスポーツが運営する「フィラ(FILA)」や「コーロンスポーツ(KOLON SPORTS)」、「フーディニ(HOUDINI)」、中国のアウトドアブランド「カイラス(KAILAS)」などが出店している。一方で、「ゴールドウイン」はラグジュアリーやコンテンポラリーラグジュアリーが並ぶ2階に出店。隣接区画は「MM6 メゾン マルジェラ(MM6 Maison Margiela)」だ。やや場所は離れるが、同じフロアには「アークテリクス」、アディダスとヨウジヤマモトの協業ブランド「Y-3」も店を構える。

 このフロア構成こそ、中国における“プレミアムスポーツ”市場を象徴している。つまり、コンテンポラリーラグジュアリーブランドと並ぶ感度や品質、世界観があって、パフォーマンスウェアとしてだけでなく、カジュアルウェアとしても着用できることが“プレミアムスポーツ”ブランドの条件。中国では日本ほどオフィスでのスーツ着用が根付いていないといい、“プレミアムスポーツ”はテック富裕層や新中間層の男性を中心に、日常着として広がっている。

効率よりも世界観や体験価値を重視

 店舗内に足を踏み入れると、壁面から吊るしたラックや木製テーブルに商品をゆとりを持って陳列している。パンツの裾を結ぶマネキンのスタイリングを含め、VMDが東京・丸の内店や直前に訪れた韓国・ソウルの店舗ときっちり統一されていたのが印象的だ。店舗奥のレジ前は毛足の長いカーペットを敷いたサロンスペース。ソファも設置し、「担当スタッフが別のお客さまを接客している際にはここで待っていただき、レジ待ちの間には飲み物を提供しています」と販売スタッフは説明する。

 ラックを増やし、店頭の商品密度を高めた方が売り場の効率は上がる。しかしその選択はせず、ゆったりと商品を見られる空間作りを優先している。内装デザインのテーマは「地層の美」。壁面に使った中国産の砂岩パネルなどで、分かりやすい華やかさではなく静かな重厚感を表現した。こうした細部へのこだわりは、ソフト面でも徹底している。渡辺貴生社長が自ら現地に足を運び、中国の販売スタッフにゴールドウイン社の歴史や、もの作りに対する考え方を伝える機会を設けているという。

杭州の「ゴールドウイン」店舗画像
杭州の「ゴールドウイン」店舗画像
杭州の「ゴールドウイン」店舗画像
杭州の「ゴールドウイン」店舗画像
杭州の「ゴールドウイン」店舗画像
杭州の「ゴールドウイン」店舗画像

杭州の「ゴールドウイン」店舗。店頭に陳列する商品数をあえて抑えている

 店頭体験を通じてブランド価値を伝えようとする姿勢は、同社の成長の歴史とも重なる。今でこそあらゆるグローバルスポーツブランドがDtoC(直営店)を成長戦略の柱に据えているが、ほんの10年ほど前までは、スポーツブランドの商売は卸が主戦場だった。そんな中で、いち早く直営店を出店して差別化すると共に、高い利益率につなげてきた企業がゴールドウインだ。同社は1985年に、「ザ・ノース・フェイス」の直営店として「ウェザーステーション」を原宿に出店。渡辺社長も折に触れて直営店ビジネスへの思い入れを口にする。

国策でスポーツ市場振興、産業規模を7年で2倍に

 EC大国・中国でも、「ゴールドウイン」のそうした考え方は変わらない。細部まで作り込んだ店舗を入り口に、“プレミアムスポーツ”ブランドとしての認知を広げようとしている。背景にあるのが、中国スポーツ市場の著しい成長だ。

 中国政府はこの10年ほど、内需拡大策の一環としてスポーツ産業振興を進めている。JETROによると、中国国務院は2023年のスポーツ産業規模が前年比10.3%増の3兆6700億元(約73兆4000億円)に達したと昨秋発表した。スポーツ用品だけでなく、キャンプ場やスキー場などの運営も含めた数字だ。政府は2030年までに、この数字を約2倍の7兆元(約140兆円)超にまで拡大する方針を掲げている。コロナ禍以降の健康意識の高まりや、中間層が増えて余暇にキャンプや登山などのアクティビティを楽しむ傾向が広がりつつあることも、市場拡大を後押ししている。

 中国市場の成長を取り込むことで、ゴールドウイン社は2024年3月期に32億円だった「ゴールドウイン」の国内外での売上高を、2033年3月期には510億円まで引き上げることを目指している(2026年3月期実績は65億円)。うち、300億円を中国が担う計画で、その時点での中国の直営店は70店となる見通し。それに向けて、2026年3月期は中国で5店、2027年3月期は6店を新規出店。この5月には上海2号店として、「プラザ66」にも出店した。同モールは「エルメス(HERMÈS)」、「シャネル(CHANEL)」、「ルイ・ヴィトン」の御三家が揃う、上海を代表するラグジュアリーモールとして知られる。

杭州万象城の内観画像
杭州万象城の内観画像

杭州万象城2階の「アークテリクス」と「Y-3」

目指すはマスではなく”グローバルニッチ”

 ゴールドウイン社の主力ブランドは「ザ・ノース・フェイス」だが、同社が保有する「ザ・ノース・フェイス」の商標権は日本と韓国に限られる。すでに両国合計での小売売上高は2000億円規模に達しており、企業としてのさらなる成長には、地理的制約のない自社ブランド「ゴールドウイン」の成長が欠かせない。もっとも、中国売上高300億円、直営店70店という中期目標は、競合と比較すると決して野心的で途方もない数字というわけでもない。「アークテリクス」の中国売上高は1500億円規模とも言われており、“プレミアムスポーツ”市場を強く意識している日本の「デサント(DESCENTE)」も、アンタスポーツとの合弁事業で中国での小売売上高を100億元(約2000億円)まで拡大している。

 300億円という目標設定は、マス市場ではなく“グローバルニッチ”と呼ぶポジションを目指す「ゴールドウイン」ゆえの戦略でもある。「ゴールドウイン」事業全体では2028年3月期での黒字化を見込むが、中国事業はそれに先駆けて2025年12月期に黒字化を達成。中国での挑戦は、今後同社が「ザ・ノース・フェイス」のみに依らない成長ストーリーを描けるかの分岐点となる。

杭州万象城3階のスポーツフロアに並ぶブランド群
杭州万象城3階のスポーツフロアに並ぶブランド群
杭州万象城3階のスポーツフロアに並ぶブランド群
杭州万象城3階のスポーツフロアに並ぶブランド群
杭州万象城3階のスポーツフロアに並ぶブランド群
杭州万象城3階のスポーツフロアに並ぶブランド群
杭州万象城3階のスポーツフロアに並ぶブランド群

杭州万象城3階スポーツフロアの「ニューバランス」

ゴールドウインチャイナ 齊藤武CEOに聞く

 ゴールドウインの中国事業を担うゴールドウインチャイナの齊藤武CEOに話を聞いた。元商社マンで中国経験が長い齊藤CEOは、中国スポーツ産業界の要人や政府関係者たちともつながっている。

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齊藤武CEO

 中国は広大で、1級・2級都市以外でも、行ってみればそこにしかないマーケットがあり、富裕層のお客さまがいる。例えばウルムチは中国最深部の新疆ウイグル自治区にある街だが、400万規模の人口を抱えている。ただ、EC配送には時間がかかるため実店舗に対するニーズが強く、「ゴールドウイン」も現地百貨店と提携しコーナー展開を始めた。中国は都市によって気候が異なり、求められる商品も差が大きい。各店の店長からお客さまの声を集めることで、MD分析につなげている。

 北京や上海、杭州の店舗には、年間10万円以上購入するVIP顧客がそれぞれ1000人以上おり、顧客比率が最も高い北京店の最上位顧客は、年間約20万元(約400万円)購入する。現状の中国での直営店舗数は、アウトレット2店とポップアップ1店を含め14店。これまでは高級モール内に出店してきたが、路面店の出店も目指している。

最終更新日:

FASHIONSNAP ディレクター

五十君花実

Hanami Isogimi

1983年愛知県出身、早稲田大学政治経済学部卒。繊研新聞記者、WWDJAPAN副編集長、編集委員を経て、25年10月から現職。山スキー、登山、ラン、SUPを愛するアウトドア派。ビジネスからクリエイション、ライフスタイルまで、多様な切り口でファッションを取材。音声、動画、コミュニティーなど、活字以外のアウトプットも模索中。

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