「HIGAN」を運営する大崎龍之介氏と宮本理一氏
Image by: FASHIONSNAP
3月9日、高円寺にオープンした古着屋「HIGAN」。フリルシャツやベルボトムなど70年代のヴィンテージアイテムを中心に、「メゾン マルジェラ(Maison Margiela)」のアーティザナルラインや「ヘルムート・ラング(Helmut Lang )」のアーカイヴなどをラインナップしている。いわゆるレギュラー古着と呼ばれるアイテムがほとんど見当たらない同店は、古着屋の激戦区である高円寺でもひときわ異彩を放っている。
運営するのは若冠25歳の2人組。大阪でヴィンテージの買取りや古着屋のスタッフをしていた宮本理一氏と、理学療法士の専門学校を卒業した後、ヴィンテージのバイヤーやスタイリストとして活動する大崎龍之介氏だ。買い付けの基準を「自分達がイケてると感じるか」の1点のみだと説明する2人が思う古着屋のあるべき姿とは。
25歳の2人が手掛ける古着屋「HIGAN」とは?
ADVERTISING
ー古着屋「彼岸」の由来は?入口のドアに貼ってある遊戯王カードと関係がありそうですが(笑)。
大崎:入口に貼ってあるカードは「彼岸の旅人 ダンテ」という遊戯王カードです。僕は小学校から専門学校時代まで大会に出場するくらい遊戯王が好きでした。当時最後に使っていた時のデッキが「彼岸」というテーマで、遊戯王をやらなくなってからもずっとこのカードはiPhoneケースの裏側に入れていたんです。2人でお店の名前を決めるために喫茶店で話してる時にこのカードが目に留まって、そこから「彼岸」って良いねとなりました(笑)
宮本:もちろんそれ以外の理由もあります。イタリアの詩人ダンテ・アリギエーリの「神曲」の中で舞台になっている地獄のような場所が「彼岸」という名前で、25歳で古着屋の激戦区である高円寺への出店というのは簡単なことじゃないと思うし、「地獄編」からスタートなのかなと。それで「HIGAN」という名前にしました。
「HIGAN」
Image by: FASHIOSNAP
ー2人で古着屋を開くにあたった経緯は?
大崎:実は僕たち元々すごく仲が良かったとかではなくて、お店を出す前は計10回も会っていないんです。共通の友人を介して知り合ったのですが、僕がどうしても理一とお店を出したいから大阪から上京してこいと半年くらいアプローチしてやっと実現したんです。
宮本:僕たちはタイプが真逆なんですよね。龍之介は直感でガンガン突き進んでいくタイプだからびっくりするようなアイデアだったりを出してくれるけど、一方僕は結構慎重派なのでそこでちょうど良いバランスが取れているんだと思います。ただファッションに関する感覚は驚くほど一致していて、買い付けに行っても意見が割れたりすることはほとんどありません。
「HIGAN」を運営する大崎龍之介氏と宮本理一氏
Image by: FASHIONSNAP
買い付けの基準は売れるかではなく、自分達がかっこいいと思うか
ー店頭には70年代のヴィンテージやデザイナーズブランドのアーカイヴなどが並んでいます。バイイングにおいてのこだわりは?
大崎:70年代のヴィンテージやデザイナーズブランドのアーカイヴにこだわっている訳ではなくて。僕たちの趣味嗜好だけを反映させた結果、このラインナップになっているだけです。例えばこの間夏物の商品を求めて、買い付けに行った際にTシャツをほとんど買わなかったら、ディラーの方に「なんでTシャツを買わないんだ?」と聞かれたんですね。そこで僕はノースリーブ、理一は長袖ばかり夏に着るから買い付けてないんだって認識して(笑)。売れるか売れないかの基準ではなく、自分達が好きなものばかり買い付けていることがこのお店の最大の魅力かなと思っています。
宮本:売れ残っても全部自分が欲しいと思う服ばかりなので、お店は家のクローゼットみたいな感覚です。今たまたま世間でフレアパンツだったり70年代のスタイルが流行っていますが、僕自身は5、6年前からずっとフレアデニムやフリルシャツを愛用していて。トレンドを意識して買い付けている訳ではないんです。
大崎:僕も70年代のスタイルは好きなんですが、それだけというより古着とデザイナーズブランドを混ぜたスタイルだったり、デザイナーズのアーカイヴも好きなので、結果的にお店はこのようなラインナップになっていますね。
ー好きなものだけ買い付けることがお店の魅力に繋がる。
大崎:そうですね。自分達が本気でかっこいいなと思ったものを提案しているからこそ、ひとつひとつのアイテムに対してちゃんと熱量を込められるのかなと。
宮本:今の若い人達って服の買い方が賢くなっていると思うんです。フリマアプリだったりサンプルセールだったりで服を安く買う方法をたくさん知っている。その中でHIGANの尖った商品にしっかりお金を払って貰うなら、自分達が本気でかっこいいと思ったものじゃないと提案できないなって。
「HIGAN」のアイテム
Image by: FASHIONSNAP
ーその結果がエッジの効いたセレクトになっているんですね。客層や売れ行きはいかがですか。
大崎:客層については圧倒的に若い人が多く、10代後半から20代前半の人が中心です。「エッジの効いたアイテムは売れないよ」とよく言われるのですが、うちだと尖ったものほどよく売れますね。売れ行きも順調です。大量に入荷があったタイミングで、たくさんのお客さんが来てくれて1日で30万円以上売り上げることができました。
宮本:アイテムだと、個人的にポップコーントップスに注目していて。普段から着用しているんですが、今HIGANでもかなり押し出しているアイテムです。本来はウィメンズのアイテムですし、スタイリングもかなり難しいのですが、わざわざポップコーントップスを買いに来てくれるお客さんもいて。HIGANからポップコーントップスムーブメントが起こせないかと密かに目論んでいるところです。
宮本:商売をしていく上で売上とやりたい事のバランスを取るというのは非常に大切な事だと思います。でも多くの古着屋が売上を重視しているからこそ、あえてやりたい事をやるという方向に振り切ることで、そこに需要があると思う。
大崎:どこの古着屋も数は少ないけど、ある程度70年代のアイテムって取り扱っているじゃないですか。それはなぜかというと必ず一定数の需要があるから。でも70年代の服に狂った人たちはそれじゃ満足できなくて何店舗も古着屋を回って自分の好きなアイテムを探している。実際に僕達がそうでした。じゃあ数は多くないけど一定数いる層にターゲットを絞ったら商売として成立するんじゃないかなと。実際にそういうお客さんがうちのお店には集まっているし、高感度な人達から支持を得られていると思います。それが僕達が思う古着屋のあるべき姿なんです。
ーHIGANの今後の展望を教えて下さい。
大崎:これからも自分達のスタイルは変えずに、自分達がかっこいいなと感じるものを提案し続けていきたいです。もちろん僕達の感覚もアップデートされていくから、それに合わせてお店も変わっていくとは思います。でも自分達が本当にかっこいいと感じたものを提案していく、このスタイルを変えるつもりはありません。
宮本:自分達の感覚に共鳴してお店に来てくれる人がいる限りはそれに応えていきたいです。
(聞き手:志摩将人)
ADVERTISING
PAST ARTICLES
【インタビュー・対談】の過去記事
RELATED ARTICLE
関連記事
READ ALSO
あわせて読みたい
RANKING TOP 10
アクセスランキング
MM6 Maison Margiela 2025 Spring Summer