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インドネシアで日本の在庫を捌くのが難しい理由|コラム-ジャラン ジャラン アジア

IMAGE by: 横堀良男

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インドネシアで日本の在庫を捌くのが難しい理由|コラム-ジャラン ジャラン アジア

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東南アジアの最新情報を綴るコラム「ジャラン ジャラン アジア」。1年間の3分の2以上を東南アジア諸国で過ごし、契約バイヤーのほか、ポップアップショップ、展示会出展、ファッションショーの代理店などを行う横堀良男氏が現地の情報をレポートします。

(文・横堀良男)

 今は東京にいます。秋から冬に移り変わるこの時期は東南アジアに比べてとても寒いですが、ニットを着たり、マフラーを巻いたり、ファッションの幅が広く、楽しい時期でもありますよね。実際の感染者数は別として、街を見ているとコロナも落ち着いてきたように感じます。

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 各国の入国ルールが緩和されてきたり、運休していた国際線が復活してきているのも大きな理由でしょう。「そろそろ海外出張に行けるかな?」と感じている人も多いのではないでしょうか。

 東南アジア諸国の数例を挙げると、タイはワクチン接種なし、PCR検査証明書もなしで入国が可能です。シンガポールはワクチン3回、インドネシアはワクチン2回の接種証明書が必要です。

◇ ◇ ◇

 たまにこのような相談がきます。

 「インドネシアで、日本のアパレル在庫を売れませんか?」

 多くの日本のアパレル企業はシーズン後に残る在庫量と戦っています。店舗が多ければ多いほど製造原価は下がりますが、残る在庫も増えがちです。非常に悩ましい問題ですね。何年もかけて溜まりに溜まった在庫を、経済成長が著しいインドネシアで販売できないかという相談がくるのです。

 しかし、私の見解ではなかなか難しいと思います。

理由1:ファッションの文化慣習の違い

 まず、気候が違います。東南アジアは常夏ですから、基本的にいつも温暖です。当然、秋冬の重いアウター類の販売は難しいです。

 だからと言って、日本からの在庫のTシャツとショートパンツ、ビーチサンダルが年がら年中売れるかというと、それも違います。夏の衣服が売れやすいことは間違いないんですが、それは価格帯が凄く安いものに限ります。日本のブランドの在庫の場合、当然価格帯が安いわけではありません。そうなると、当然ある程度、収入が高い客層に販売を試みるしかないわけです。

 そのターゲットとなりそうな客層は、首都・ジャカルタの中心部の経営者層やマネジャークラスなど。彼らはエアコンの効いたオフィスで働く所謂ホワイトカラーで、シャツやワンピース、スラックス、ジャケットなどを着ています。でもその層は一部に限られているので、経済が伸びいてるからと言って、なんでも売れる訳ではないことは理解していただきたいです。

理由2:インドネシアへの輸出が難しい

 インドネシアは人口2億8千万人で、世界4位の人口を持つ大きな国です。自国の産業を守るため、輸入はかなり制限されており、高い関税がかけられます。

 また、輸入の手続きが煩雑で、日本のようにどんな企業でも輸入ができるわけではありません。税関では貨物検査も頻繁に行われており、詳しく書くと長くなってしまいますが、個人の通販ですら高い関税がかけられることもしばしば起こります。

理由3:トレンドが違う

 インドネシアでも世界的なトレンドは同じように流行ります。だからこそ売れ残ったトレンド商品を販売することが難しかったりします。

 最近のインドネシア、特にジャカルタでは独自のトレンドがあります。例えば、下記画像の中央あたりにチラリと見えているニットのカーディガン。毎日暑いジャカルタの街中で(と言ってもエアコンの効いた高級モールの中で)は、このようなニットカーディガンを着ている人をよく見るようになりました。

 このような国や街独自のトレンドを理解していなければ、その国で販売することはなかなか難しいと思います。現地のトレンドを理解できるバイヤーがいれば良いのですが、経済成長真っ最中のインドネシアでは人材不足の問題もあります。

 ファッション業界全体では小売の企業がまだまだ少なく、若くて経験の少ない人材の獲得が難しいです。日本のバイヤーや店長ってなんでもこなすマルチプレイヤーが多いので(ある意味でブラックなのかもしれませんね)、人材という点では日本企業にとっては商機なのですが、そこに気付いている日本のアパレル関係者は少ないでしょう。個人的な意見ですが、日本の管理職はアジア全体を見てもめちゃくちゃ優秀です。

◇ ◇ ◇

 折角なので、先ほどの写真のお店を紹介したいと思います。

 ジャカルタから車で3時間ほどの距離にあるアパレル工場の街バンドンが発祥のエイチジーエル(HGL/インドネシア語読みではハーゲーエル)。ハッピーゴーラッキー(Happy Go Lucky)というお店があり、その2号店としてHGLが出店されています。

 店舗を構えているのは、日本でいうと東京の中目黒みたいな高級住宅地エリアのクマン(Kemang)。HGLの業態はセレクトショップなので仕入れが中心で、現地の高価格帯のブランドを取り扱っています。海外のブランドはありません。さらに取り扱いの現地ブランドのほとんどに別注をかけており、独自の商品構成を作っています。

 インドネシアは車移動が多いため、ショッピングモール文化なのですが、HGLは路面店です。もともとアパレル専門店は路面店業態が少ないインドネシアですが、ここ6年くらいで路面店が増えつつあります。

 店内にはTシャツが少なく、布帛が多い印象です。奥にはバッグやステーショナリーなどの雑貨のコーナーもあります。このポップなテイストをジャカルタで流行らせたお店として知られており、興味がなくても名前を聞いたことがあるという現地民が多いです。

 彗星のように新業態のセレクトショップが出現するのも、どこか日本の1990年代のようであると思えます。日本の1990年代って有名なセレクトショップや業界人がたくさんいましたよね。あのエネルギー溢れる時代が今、ジャカルタに到来していると感じるんです。

 インドネシアでは、ユニクロ以外の日本のファッション企業を見ることが少ないです。いち早くこの市場に入り込んでいくのはどこの日本企業なのだろうか、と日々考えています。

■コラム「ジャラン ジャラン アジア」バックナンバー

横堀良男

Yokobori Yoshio

東京都江東区出身。高校在学中からアパレル業界で働き始め、 その後、アッシュ・ペー・フランス株式会社に入社。27歳で若手ブランドの営業代行業、showroom SIDEを設立、代表に就任。 32歳で海外進出、現在は1年間の3分の2以上を東南アジア諸国で過ごし、契約バイヤーとして活動。 日本からアジア・アジアから日本のポップアップショップ、展示会出展、ファッションショーの代理店も行う。

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