
ジャンポール・ゴルチエ 2026年春夏コレクション
Image by: ©Launchmetrics Spotlight

ジャンポール・ゴルチエ 2026年春夏コレクション
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パリファッションウィークにおいて、「ジャンポール・ゴルチエ(Jean Paul Gaultier)」は10年の沈黙を破り、プレタポルテが復活した。オランダ出身の気鋭デザイナー、デュラン・ランティンク(Duran Lantink)をクリエイティブディレクターに迎え、ケ・ブランリ美術館の薄暗い地下空間を会場に2026年春夏コレクションが披露された。
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ジャン=ポール・ゴルチエの歴史と功績
ジャン=ポール・ゴルチエは1952年パリ郊外生まれ。専門教育を受けることなく、祖母や母親から裁縫を学び、独学でデザインを習得した彼は、18歳でピエール・カルダン(Pierre Cardin)のアシスタントとしてキャリアをスタートさせた。この時期に日本人アシスタントたちから日本の美意識や繊細さを学んだことが、後の彼のデザイン哲学に大きな影響を与えている。1976年に初のコレクションを発表し、1978年にはオンワード樫山と提携。この協力関係により、ブランドは大きく成長し、1981年には正式にライセンス契約を結んだ。1997年にはオートクチュール部門「GAULTIER PARIS」を設立し、2004年から約8年間は「エルメス(HERMÈS)」のウィメンズデザインも担当するなど、活動の幅を広げた。
ゴルチエの最大の功績のひとつは、ジェンダーの境界を打ち破ったファッション表現であろう。1985年にメンズ用スカートをランウェイに登場させ、従来の性別による服装の枠組みに挑戦。また、コルセットブラジャーをアウターとして再解釈し、マドンナの「ブロンド・アンビション」のツアー衣装を手掛けたことでも知られている。彼の創造性はファッションにとどまらず、映画「フィフス・エレメント」などの衣装デザインや音楽界のアーティスト衣装制作にも及び、カルチャー全体に影響を与えた。その独創的な世界観は、素材の異質な組み合わせや伝統的な服飾技術の革新的な解釈によって特徴づけられている。
2015年にはプレタポルテラインを終了し、ジャン=ポール・ゴルチエは2020年春夏コレクションをもってデザイナーを引退。その後はゲストデザイナー制を導入し、「サカイ(sacai)」の阿部千登勢に始まり、「トム フォード(TOM FORD)」のハイダー・アッカーマン(Haider Ackermann)、「ディーゼル(DIESEL)」、「メゾン マルジェラ(Maison Margiela)」を手掛けるグレン・マーティンス(Glenn Martens)、ロンドンのシモーン・ロシャ(Simone Rocha)とオートクチュールを制作してきた。
クリエイティブディレクターに就任したデュラン・ランティンクとは?
今回クリエイティブディレクターとなったデュラン・ランティンクは、オランダ出身のファッションデザイナーで、2016年に自身の名前を冠したブランド「デュラン ランティンク(DURAN LANTINK)」を始動。既存の服や在庫品などを独特の方法でアップサイクルする作風で支持を集めており、これまで2023年の「アンダム ファッション アワード(ANDAM fashion award)」の特別賞や、2024年の「LVMH Young Fashion Designers Prize」のカール・ラガーフェルド プライズなどを受賞した。

デュラン・ランティンク
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新しい鼓動、新しい出発点、そして新しい自由
そんなランティンクによるジャンポール・ゴルチエでのデビューコレクション「JUNIOR」は、1988年から1994年にかけて展開されカルト的な人気を博した「Junior Gaultier」ラインへの明確なオマージュだった。同ラインはクラブカルチャーに浸透し、若者の自由な表現の場となった伝説的な存在で、ランティンク自身がゴルチエというブランドに初めて魅了された、彼のファッションの原点でもある。

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2026年春夏プレタポルテコレクションで、ランティンクはゴルチエの本質を「楽しく、エネルギッシュで、モダンで、緊急性があり、生き生きとしている」と直感的に捉えた。マリニエール・ストライプは目の錯覚を起こすように再解釈され、ゴルチエの代名詞であるタトゥープリントも披露。歪んだシルエットが生み出すスカートは宙を舞い、トロンプ・ルイユ技法で裸体をプリントしたボディスーツのほか、バーガンディや、マスタードイエロー、スカイブルー、グレーといったゴルチエらしい色使いも目を引いた。

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ランティンクは写真集「Het RoXY Archief, 1988–1999」を重要なインスピレーション源として挙げ、オランダの写真家クレオ・カンペールによる同書は、快楽主義の時代を形作ったアムステルダムの伝説的クラブ「RoXY」を記録しており、ゴルチエ自身も訪れていたという。また、アメリカの詩人でアーティストのジョン・ジョーノの存在も同コレクションに強い影響を与えたといい、同氏の録音作品はランティンクの制作プロセスのサウンドトラックとなり、ショーのサウンドトラックにも取り入れられた。

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ショー終わりに、デュラン・ランティンクとジャン=ポール・ゴルチエは抱擁を交わし、ゴルチエの目には涙も見られた。長きにわたりファッション界を革新してきた伝説的デザイナーから若き後継者へのバトンが、この感動的な瞬間に象徴されていた。
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