
Image by: FASHIONSNAP

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歴史的な背景を持つ、ヴィンテージ古着。製造された年代が古いものや希少性が高いものが一般的に珍重されていますが、ヴィンテージの楽しみ方はそれだけではありません。この連載では、さまざまな視点でヴィンテージ古着の楽しみ方が味わえるアイテムを、国内最大規模のヴィンテージの祭典を主催するVCM代表 十倍直昭が「令和のマストバイヴィンテージ」として毎週金曜日に紹介。第96回は「オルテガ(ORTEGA'S)」チマヨベスト編。
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入植者と土着文化が交わって生まれたアメリカの象徴
今回ピックアップしたチマヨベストのチマヨとは、アメリカ中西部のニューメキシコ州にある地名のこと。そして、オルテガとは17世紀末にスペインからチマヨに入植した一家の名前です。当時、経済的に停滞していたスペインから新天地を求めてアメリカにやってきたオルテガ家が、過酷な辺境の地で自給自足していくために習得した技術のひとつが機織りでした。特徴のある幾何学的な柄のデザインは、彼らが入植する以前から現地に住んでいたナバホ族やプエブロ族といった先住民が作り出したモチーフが原型となっています。つまり、チマヨベストはスペインからの入植者と、アメリカの伝統文化が交わって生まれたアイテムと言えるでしょう。

当初、オルテガ家は自分たちが使う衣服や毛布、敷物などを手作りしていましたが、19世紀後半に近隣に鉄道が開通してたことで周辺に増えた移住者たちが、先住民の伝統が感じられる製品を求めるようになりました。オルテガ家はその需要に応えるためにチマヨに雑貨店を開き、店内に織機を設置して織物の販売を開始。第二次世界大戦後になると、アメリカにモータリゼーションの時代が到来します。一般家庭に自動車が普及するようになり、ニューメキシコを訪れる観光客が急増したので、オルテガ家は事業をさらに拡大し、織物を使った衣料品やバッグなどを販売するようになりました。こういった経緯を経て、オルテガのアイテムは広く知られるようになり、あの「ラルフ ローレン(Ralph Lauren)」も幾度となくサンプリングするなど、アメリカを象徴する存在になったのです。

柄は「自然への畏敬の念」や「家族のアイデンティティ」を表現している
「日本初のストリートファッション」渋カジブームで人気に
アメリカにおける地方の民芸品のような存在だったオルテガのアイテムが、日本でファッションアイテムとして普及するきっかけになったのが、1980年代後半の「渋カジ」ブームです。渋カジは、渋谷に集まる高校生たちから自然発生した、日本初のストリートファッションと言われています。渋カジは、「リーバイス(Levi’s®)」の501、「レッドウイング(RED WING)」のワークブーツ、「バンソン(vanson)」の革ジャンなど、アメリカブランドのアイテムが軸となっており、そこにスパイスとして加えられたのが、チマヨベストのようなアメリカの土着的なデザインのアイテムでした。

アメリカの土着文化に強い繋がりを持つ「ゴローズ(goro's)」も、渋カジを語るうえで欠かせないブランドのひとつ。ゴローズの創設者である高橋吾郎さんは1939年に東京で生まれ、中学生のときに知り合った在日米軍兵からレザークラフトの手ほどきを受けました。ベルトやバッグを作るようになった彼は、36歳のときに雑誌の取材を通してネイティブアメリカンと知り合ったことをきっかけに、本格的なインディアンジュエリーを作るようになります。渋カジ登場以前から、ゴローズは本格的なバイカーやインディアンジュエリー愛好家たちから強い支持を受けていましたが、渋カジが日本全国に広まったことに伴い、その人気と知名度が飛躍的に高まりました。吾郎さんは2013年に亡くなりましたが、今もなお原宿のゴローズ店舗には彼が遺したブランドのアイテムを求める人々が長い列をつくっています。
チマヨベストにはレッドやブルー、グリーンなど、鮮やかな色のカラーバリエーションがありますが、個人的にはこのブラックが一番気に入っています。ウエスタンシャツやジーンズなど、ウエスタンやアメカジのアイテムとの相性は抜群。僕は、シャツやスラックスなどのキレイ目アイテムとコーディネートすることで生まれる違和感を楽しんでいます。存在感があるアイテムなので、女性が着てもカワイイと思いますよ。

レザーの紐を編み込んで作ったバスケットボタン
昨今は多くのヴィンテージアイテムが高騰してしまいましたが、オルテガのチマヨベストはまだそれほど高騰しておらず、サイズや色によってはお手頃な価格のものも見つかります。年代や状態にもよりますが、ユーズドならば3万円くらいから入手可能。新品の定価は8万円前後なので、かなりお買い得だと思います。ネイティブ感が強いので抵抗がある方も少なくないかもしれませんが、着てみると意外と合わせやすいので、是非一度挑戦してみてください。

編集:山田耕史 語り:十倍直昭
最終更新日:
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