二宮啓による「ノワール ケイ ニノミヤ（noir kei ninomiya）」が2年半ぶりにパリファッションウィークに参加し、2023年春夏コレクションのショーを現地で行った。舞台は、ルーヴル美術館のプロテスタント寺院。「幼い頃の自由な感覚」が、独創的で迫力のあるコレクションピースに惜しみなく注ぎ込まれた。

　ショーの冒頭でインパクトを与えたのは、 大きなハートを象ったような立体的なドレス。小さなピースを繋ぎ合わせるブランドならではの手法で、曲線を描く造形が身体から突き出るように作られている。黒いピースは顔まで侵食し、異世界の生物を想像させる。

　続くルックも、チュールをチューブ状にした無数のパーツが身体から溢れ出るように腰から上を覆った。

伝統的な英国のテーラリングがベースに

　ベースになっているのは、英国のテーラリングだ。クラシックな千鳥格子やグレンチェックのジャケットやドレスにレイヤードするように、黒い造花が突き出したコルセットやハーネスが合わせられている。サスペンダークリップを繋ぎ合わせたようなハーネス、ボディーバッグなどのアクセサリーはUKロックの雰囲気だ。

桑田卓郎による王冠のようなヘッドピース

　 特徴的なヘッドピースは、陶芸家の桑田卓郎がこのショーのための制作した作品。桑田らしい色使いと、突起状の装飾をあしらったピースは、アーティスティックなメイクと相まって遊び心が感じられる。モデルの白髪のアフロヘアに王冠のように合わせられ、風格を漂わせた。コレクションに唯一差し込まれたブルーのカラーも高貴な印象を与える。

ハンターとのコラボブーツが登場

　シューズは、英国王室御用達として知られる「ハンター（Hunter）」との初のコラボレーションによるレインブーツ。花のモチーフや、メタルリングを重ねたハーネスを付けたショートブーツとロングブーツの4型が登場した。ハーネスは取り外すことができ、シンプルなブラックブーツとしても着用することができるという。今季のボトムスは、ショートパンツやミニ丈のバルーンスカートなどが多く、ブーツスタイルにフィットしそうだ。

浮遊する髪の毛ドレス

　ラストに登場した2体は、綿や羽のような白い束が、モデルの身体の周りを浮遊するドレス。よく見ると、ウェーブした白髪のウィッグを束にして吊るしている。モデルが歩くたび揺れ動き、オーラをまとうように神々しくも見える。

　ショーの後に二宮は「幼い頃に思い描いた変なもの、不思議なものを見たときに感じる高揚感を、エネルギーにして表現したかった」と今回のクリエイションについて振り返っている。型破りなアイデアを凝縮しながらも、英国の伝統的な要素を掛け合わせることで、現実と非日常を融合した提案となった。

　ノワール ケイ ニノミヤは、2年半前の2020-21年秋冬コレクションでパリファッションウィークの公式スケジュール入りを果たしたが、その翌シーズンから新型コロナウイルスの影響で東京での発表に切り替えていた。今回再びパリに戻ってきたことについて「世界中から集まった方々と久しぶりに会うことができ、異なる文化や価値観を持った人々が発表して、それを見てもらえる場は、価値のあることだと思います」と二宮。ダイナミックなクリエイションが与えるインパクトはフィジカルの醍醐味。見る人のイマジネーションを掻き立て、心を動かす創造力がランウェイに現れていた。

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noir kei ninomiya 2023年春夏コレクション

2023 SPRING SUMMERファッションショー

ファッション リポーター

大杉真心

Mami Osugi

文化女子大学（現文化学園大学）とニューヨーク州立ファッション工科大学（FIT）でファッションデザインを学び、ファッションブランドやセレクトショップで販売職を経験。「WWD JAPAN」で記者として、海外コレクション、デザイナーズブランド、バッグ＆シューズの取材を担当する。2019年にフェムテック分野を開拓し、ブランドや起業家取材を行う。21年8月に独立し、ファッションとフェムテックを軸に執筆、編集、企画に携わる。22年4月に文化学園大学の非常勤講師に就任。

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