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【服好き必聴アーティスト】アーロ・パークス編 ディオールやグッチも注目

アーロ・パークスのポートレート写真

Image by: (c) BIG NOTHING

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【服好き必聴アーティスト】アーロ・パークス編 ディオールやグッチも注目

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 機材や環境の発達により、1日で数百~数千曲がリリースされる昨今の音楽産業。歓迎すべきことではあるものの、その膨大すぎる量がゆえ自ら触手を伸ばすことを躊躇い、真に評価を受けるべきアーティストとの邂逅が消失し、気付けば過去のお気に入りばかりをリピート再生している......という状況に心当たりがある方に向け、月に1回"ファッションシーンとの親和性も高い"アップカミングなアーティストを紹介する連載【服好き必聴アーティスト】がスタート。(文:Internet BoyFriends)

 早耳な音楽フリークの方々にとっては既に知られた存在が登場するだろうが、復習も兼ねてファッション的新情報を得られるという心持ちで読み進めていただければ幸いだ。記念すべき第1回は、「フジロック・フェスティバル'22(FUJI ROCK FESTIVAL'22)」 への出演も決まっているロンドン出身の若き女性シンガーソングライターのアーロ・パークス(Arlo Parks)。ソプラノ・ヴォイスと叙情的歌詞に加え、アイコニックな短髪姿でも熱視線を浴びるライジングスターに迫る。

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 まずは、序章としてバックボーンから触れたい。アーロ・パークスこと本名アナイス・オルワトウィン・エステル・マリニョ(Anais Oluwatoyin Estelle Marinho)は、ウィロー・スミス(Willow Smith)やリル・パンプ(Lil Pump)と同じく2000年生まれの21歳。ナイジェリア(2分の1)、チャド(4分の1)、フランス(4分の1)の血を引き、数多のUKロックスターたちがライブを行った「ハマースミス・アポロ(Hammersmith Apollo)」を擁する西ロンドンのハマースミスで生を受けた。幼い頃おてんば娘だった彼女は、母親の影響で伝説的ジャズミュージシャンのチェット・ベイカー(Chet Baker)らのライブ映像をYouTubeで楽しみ、7~8歳の頃には感情を整理・解放するために短編小説と詩を書き、スポークン・ワード(詩や物語を"話す"パフォーマンス)に傾倒。この趣味は10代になっても続き、お気に入りの詩人にアレン・ギンズバーグ(Allen Ginsberg)とジム・モリソン(Jim Morrison)の2人を挙げ、パティ・スミス(Patti Smith)の「ジャスト・キッズ(Just Kids )」や村上春樹の「ノルウェイの森」、シルヴィア・プラス(Sylvia Plath)の「ベル・ジャー(The Bell Jar)」を愛読していたという。このように、早い時期から多様なメディアを経て文学的感性と知見を養っていたことで、後にUK随一のストーリーテラーとしての才能が花開く。

アーロ・パークスのポートレート写真

 そして13~14歳の頃、クラシックピアノを学ぶ傍らザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンド(The Velvet Underground)に感化され独学でガレージバンド(GarageBand)での作曲に着手。この当時、英国国内ではUKインディーの星キング・クルール(King Krule)、トム・ミッシュ(Tom Misch)、ロイル・カーナー(Loyle Carner)、ジョーダン・ラカイ(Jordan Rakei)ら注目株が同時多発的に台頭したタイミングで、内なる才能を秘めていた彼女はこのムーブメントにも触発されたのだろう。ちなみにアーロ・パークスという名は、キング・クルールと稀代のR&B歌手フランク・オーシャン(Frank Ocean)の語感に倣ったもので、人生初のライブ観戦はロイル・カーナーだそうだ。その後、17歳の時にバイセクシュアルであることを自認し、頭髪を刈り上げ、あくまで趣味の一環として書いていた詩にビートを付け始めたことでベッドルームミュージシャンとしてのキャリアを本格的にスタートさせることに。

「Eugene」のミュージックビデオは、ロイル・カーナーと彼の弟がディレクションしている。

 どこかあどけなさの残る透き通ったソプラノ・ヴォイスと叙情的歌詞はたちまち評判を呼び、デモ音源を制作し始めた2018年中に1stシングル「Cola」をリリース。翌2019年にはデビューEP「Super Sad Generation」と2ndEP「Super Sad Generation」を完成させ、その間にはミニステージながら「グラストンベリー・フェスティバル(Glastonbury Festival)」に出演し、UK若手アーティストの登竜門である「BBC」が選ぶ期待の新人「Sound Of」の2020年版にもノミネートされるなど、幸先のよい出だしを切った。しかし、ご存知の通り2020年にパンデミックが襲来。初のヨーロッパツアーを断念せざるを得なくなったりとネガティブな面もあったが、ステイホーム期間をアーティストとしての階段を急ピッチで駆け上がっている自身と向き合う時間としたことで、「Eugene」や「Black Dog」といったヒットシングルが誕生し、予てから構想していたデビューアルバムにも十分すぎるほど時間を割くことに成功したのだ。そして2021年1月、「この作品は、私の思春期とそれを形作った人々を取り巻く一連のヴィネットで、個人的なポートレイト。ストーリーテリングとノスタルジアに根ざしていて、普遍的なものと特異なもの、その両方を感じてほしい」という思いが込められたデビューアルバム「Collapsed in Sunbeams」がリリースを迎えた。

【今週のマストチューン】

Arlo Parks、NOT WONK、Ms.Machine〜2021年1月第5週〜

CULTUREマストチューン

 ジャジーでUKソウルのようなサウンドとベッドルームポップの空気感を巧みに行き来し、"同世代の声"とも言える若さがもたらす脆弱性や混乱などの内省的な想いを詩的に綴った全12曲は、イングランド国内にとどまらず世界各国で軒並み高い評価を獲得。全英アルバムチャートでの3位を皮切りに、その年にイングランドおよびアイルランドで制作された最も優れたアルバムに対して贈られるマーキュリー・プライズを受賞、音楽メディア「コンシークエンス・オブ・サウンド(Consequence of Sound)」が選ぶアルバム・オブ・ザ・イヤー2021で3位、グラミー賞で最優秀オルタナティヴ・ミュージック・アルバム賞にノミネート(最優秀新人賞も)など、2021年の音楽シーンに強烈なインパクトを残した。また本人も英国で最も権威ある音楽賞ブリット・アワードで最優秀新人賞を受賞。彼女は批評家と世界の同志から確かに評価され、2021年はまさに"アーロ・パークス、ここにあり"だった。

アーロ・パークスのポートレート写真

 2022年に入ってからも、ビリー・アイリッシュ(Billie Eilish)やハリー・スタイルズ(Harry Styles)のツアー公演のオープニングに抜擢されるなど、さらなる活躍が期待される彼女だが、今後はファッションシーンでも目にする機会が増えるだろう。というのも、スケートカルチャーに影響を受けたユルめのリラックススタイルと短髪姿から、ファッション的な側面でもクローズアップされることがしばしば。既に「ディオール(Dior)」のショーにゲストとして招待されているだけでなく、アレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)による「グッチ(GUCCI)」の短編映画「OVERTURE of that Never Ended(終わらなかったものの序曲)」に出演し、「ナイキ(NIKE)」の「エア マックス(AIR MAX)」シリーズのキャンペーンモデルにも起用されるなど、メゾン系からスポーツブランドまでジャンルに捉われない活躍を見せ始めている。今年の「フジロック」に参加される方々は、彼女の日本初となるパフォーマンスをステージ衣装にも注目しながら楽しんではいかがだろうか。

クリエイティブコレクティブ

インターネット・ボーイフレンズ

Internet BoyFriends

東京とロンドンを拠点に活動するエディターやライター、スタイリスト、フォトグラファー、グラフィックデザイナーが所属。

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