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数千年前の技法で時間とともに育つジュエリーを NY発「プラウニス」のものづくり

聞き手&文・菅原まい

ジーン・プラウニス

Image by: Ryo Nakagawa

ジーン・プラウニス

Image by: Ryo Nakagawa

ジーン・プラウニス

Image by: Ryo Nakagawa

 ニューヨーク発のファインジュエリーブランド「プラウニス(Prounis)」を手掛けるジーン・プラウニス(Jean Prounis)が来日した。古代ギリシャ・ローマのジュエリーや美術を着想源に、深みのある色合いを持つ22Kゴールドを用いてジュエリーを製作するプラウニス。小さな金の粒を連ねた繊細な装飾や、天然石を生かした量感のあるフォルム、手仕事の跡を残すマットな質感が特徴で、身につけるほどに表面が磨かれ、艶やわずかな変形を重ねながら一人ひとり異なる表情へと育っていく。数千年前から受け継がれてきた金細工の技術を取り入れながらも、過去のデザインをそのまま再現するのではなく、現代の日常に馴染むジュエリーへと落とし込んでいる。

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 今回の来日は、ジュエリーブランド「シハラ(Shihara)」がキュレーションする「シハラ ラボ(Shihara Lab)」で開催されたトランクショーに合わせたもの。会場では通常展開するコレクションに加え、日本のシルクコードを組み合わせた日本限定の「Silk Cord Discus Necklace」や、顧客のために一点ずつ制作する「Intaglio Collection」のカスタムオーダーも受け付けた。ブランド設立から9年。古代のジュエリーに魅了された幼少期から、ニューヨークで守り続ける手仕事、そして日本の伝統工芸との出合いまで、ジーンにプラウニスの魅力の根源を聞いた。

プラウニスによるイベント期間中のシハラ ラボ外観

Image by: Ryo Nakagawa

古代ギリシャへの興味から始まったジュエリー作り

 プラウニスのジュエリーデザインは、家族の歴史に深く根差している。幼い頃から絵を描いたり、手を動かして何かを作ったりすることが好きだった同氏は、ギリシャ系の祖父からは古代ギリシャの文化や歴史について教わって育った。祖父の家にはギリシャの歴史や美術に関する本が数多く並び、訪れるたびに一緒に本を開きながら話を聞いたという。そうした時間を重ねるなかで、古代ギリシャのジュエリーをはじめ、建築や美術、長い年月を経て残るものに自然と惹かれていった。

 もう一つ、ブランドの背景にあるのが曽祖父がニューヨークで営んでいたナイトクラブ「ヴェルサイユ」だ。ギリシャからニューヨークへ渡った曽祖父が1930年代に開いた店で、エディット・ピアフをはじめとする著名人が出演し、当時のニューヨークの華やかな社交文化を象徴する場所の一つだった。彼女にとって古代ギリシャの文化と同様に、曽祖父が生きた時代のニューヨークやそこに残された装飾品や記録も、自身のルーツを辿る手掛かりとなっている。

ナイトクラブ「ヴェルサイユ」

Image by: Prounis

 初めてジュエリー製作を学んだのは高校時代。その後、2011年に米ニューヨーク州のスキッドモア大学(Skidmore College)に進学した。当初は生物学を専攻していたが次第にものづくりへの関心が強まり、ジュエリーと金工(Metal and Jewelry Arts)専攻に転向。チェーンメイキングやレプセ、グラニュレーションといった古代から伝わる金細工の技法を習得した。なかでも同氏を惹きつけたのが、小さな金の粒を一つひとつ接合して装飾を生み出すグラニュレーションだった。地金やワイヤーから手作業でジュエリーを組み上げていく古代の技法との出会いによって、幼い頃から親しんできた古代ギリシャの世界と、自身が好きだった「手でものを作ること」が結びついていく。大学時代に培った技術と古代美術への関心は、やがてプラウニスのものづくりの土台となった。

Image by: Prounis

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 卒業後はジュエリーブランドで経験を積み、2017年に自身のブランド「プラウニス」を設立。学生時代に習得した古代の金細工の技法をベースに、古代ギリシャやローマのジュエリーを現代へと置き換えたコレクションを手掛けている。

22Kゴールドと手仕事でつなぐ、数千年前の技術

 ブランドがジュエリーに用いるのは、温かみのある深い色合いを持つ22Kゴールド。一般的なファインジュエリーに用いられる金と比べて純度が高い同素材だが、ジーンが惹かれたのはその色合いだけでなく、古代から受け継がれてきた歴史だった。「歴史上もっとも長く使われてきた金合金の一つ」と話すように、古代美術を所蔵する美術館でも目にすることができ、特に古代ギリシャやローマのジュエリーに多く用いられてきた。学生時代から古代の金細工技法を学んできたジーンにとって、22Kはそのものづくりを現代へとつなぐ素材でもある。

 純度が高い分、柔らかさを持つことも22Kの特徴だ。手作業で加工を重ねることで硬度が増す一方、長く身につければ、わずかに形が変わることもある。同氏は、そうした変化も「素材の個性」と捉える。仕上げたばかりの表面はマットだが、肌や衣服との摩擦によって次第に磨かれ、艶を帯びていく。「身につけることで形や表情が変わっていくことも、22Kの美しさの一部」とジーン。完成した瞬間だけではなく、その後の時間までを含めてジュエリーとして考えている。

Image by: Prounis

Image by: Prounis

 また、プラウニスでは何度でも新たなジュエリーへと生まれ変わる金の循環性に魅力を感じ、リサイクルゴールドを使用している。金は溶かして形を変えても失われることがなく、何千年も前から存在するものの多くが現在まで受け継がれてきた。ジーンは「私たちが使っている金も、かつて歴史的なジュエリーの一部だったかもしれない」と、素材がたどってきた長い時間に思いを巡らせる。

 古代とのつながりは、素材だけにとどまらない。製作には、小さな金の粒を表面に施すグラニュレーションや、一つひとつの輪をつなぐチェーンメイキングなど、古くから受け継がれてきた技法を取り入れている。一方で、必要に応じて鋳造やCADといった現代的な技術も併用。ジーンがこうしたものづくりを表すのが、「made today, but as yesterday(今に生まれ、かつてと同じ手仕事で)」という言葉だ。「ブランドにとって大切なのは、クラフトを守ること」。その考えから、すべてのジュエリーをニューヨークで製作し、チェーンメイキングや石留め、金属加工など、何千年にもわたってジュエリー製作に用いられてきた技術を受け継ぐ。テクノロジーによって手仕事が置き換えられていくなか、職人を育てることに加え、ニューヨークの47丁目を中心とする宝飾産業地区「ジュエリーディストリクト」で活動する職人たちと仕事を続けることも、技術を次世代へ残すために欠かせないと考えている。

日本の伝統工芸と交わるブランドの美学

 ジーンが日本を訪れるなかで目を向けたのが、今も各地に残る工芸の技術だった。「日本の文化や工芸をとても尊敬している。古くからの技術が今も生き続け、一つひとつの工芸に誇りと細やかな配慮がある。過去のものが現在まで大切に受け継がれていることに、とても刺激を受けている」とジーン。長い時間をかけて培われた技術が、現在のものづくりにも息づいていることに惹かれたという。

 その関心は、今回の来日に合わせて製作した限定アイテム「Silk Cord Discus Necklace」にもつながった。9月4日から7日までシハラ ラボで開催されたトランクショーで披露したもので、日本伝統の撚り紐で作られたシルクコードに、22Kゴールドのモチーフと天然石を組み合わせている。100%シルクという素材に加え、丁寧な作りや色彩にも魅力を感じたといい、「自然を思わせる色が多く、素材から色まで一つひとつがよく考えられていると感じた」と振り返る。

Image by: Ryo Nakagawa

Image by: Ryo Nakagawa

 今回の来日は19歳の頃以来2度目で、自身のジュエリーとともに日本を訪れたのは初めて。滞在中には京都にも足を運び、現地の工芸に触れる時間を設けたという。古代ギリシャやローマのジュエリーを起点に、過去の技術を現代へとつないできたジーンは、伝統的な技術が現在の暮らしにも息づく日本のものづくりに、自らの姿勢と通じるものを感じたそうだ。今回の滞在から得た着想は、今後の作品にも生かしていきたいという。

1920〜30年代のニューヨークを着想源に10周年へ

 2017年の設立から、今年9月で9周年を迎えたプラウニス。「9」はブランドを象徴する数字の一つでもある。代表的なモチーフ「Nona」は、9つの金の粒を菱形に配したデザインで、名前もラテン語で「9」を意味する「Nona」に由来する。これを記念して今年10月には、ブランドのルーツを振り返る新コレクション「Modern」の発表を予定している。着想源となったのは、1920〜30年代のニューヨーク。曽祖父がナイトクラブ「ヴェルサイユ」を営んでいた時代に改めて目を向け、当時の人々が身につけていたものや、その時代に至るまでの装飾文化を掘り下げながら製作を進めた。

Duo Nona Pierce(35万2000円)

Image by: Prounis

Small Diamond Nona Pierce(73万7000円)

Image by: Prounis

 10周年以降を見据え、ジュエリーの枠を越えた構想も膨らんでいる。「アーティストとのコラボレーションや雑誌の制作など、ブランドについてたくさんのアイデアがある。シグネチャーコレクションも続けていきたいし、いつか香りにも取り組みたい」とジーン。ジュエリーを軸にしながら、異なる分野のクリエイターとの協業や出版、香りなど、プラウニスの世界観を表現する方法を広げていく考えだ。古代ギリシャやローマから、家族の記憶が残る20世紀のニューヨーク、そしてこれから取り組む新たな表現へ。過去の技術や記憶を参照しながら、それらを現代のジュエリーへとつないできたプラウニス。10周年を目前に、そのものづくりはジュエリーという枠を越え、さらに広がろうとしている。

シハラ ラボのオーナー石原勇太に聞く、プラウニスの魅力

 

Image by: Ryo Nakagawa

プラウニスと出会ったのは、2019年にラスベガスで開催されたジュエリーフェア「COUTURE」でした。最初に見た時からすごくユニークだと思いましたね。一見するとダイナミックなデザインなんですが、フォルムや細部を見るとすごく繊細に作られている。ジュエリーには長い歴史があって、古代ギリシャをはじめ、昔のジュエリーを思わせるものもたくさんあります。ただ、そうした要素を取り入れながら、現代のジュエリーとして成立させるのはすごく難しい。プラウニスには昔ながらの要素がありつつ、そこにジーン自身のテイストやモダンな感覚がしっかり入っている。そのバランスがすごくいいと思っています。ブランドの今後については、「こういうことをしてほしい」という期待は特にありません。ジーン自身が好きなように作り続けてくれることが一番です。(石原勇太)

最終更新日:

聞き手&文・菅原まい

Mai Sugawara

FASHIONSNAP 編集記者

2002年、東京都生まれ。青山学院大学総合文化政策学部卒業後、2025年に新卒でレコオーランドに入社。中学生の頃から編集者を志し、大学生時代は複数の編集部でインターンとして経験を積む。特技は空手。趣味は世界中の美味しそうなお店をGoogleマップに保存すること。圧倒的猫派で、狸サイズの茶トラと茶白を飼っている。

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