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なぜ今「パンドラ」に行列ができるのか? 若者を魅了する"意味のあるジュエリー"の価値

文・今井祐衣

パンドラ 表参道フラッグシップ店

Image by: FASHIONSNAP

パンドラ 表参道フラッグシップ店

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パンドラ 表参道フラッグシップ店

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 1982年創業のデンマーク発ジュエリーブランド「パンドラ(PANDORA)」が、日本の若い世代を中心に支持を広げている。日本上陸から15年。原宿や渋谷などの店舗では入店待ちの列ができ、かつてインバウンド客が中心だった顧客構成も、日本のローカル客が約8割を占めるまでに変化。2026年上半期の売上げは、前年比でほぼ倍増しており、100億円規模を見込んでいる。チャームブレスレットの人気が再燃する中、ブランドはどのように日本の消費者との関係を築いてきたのか。パンドラ ジュエリー ジャパンの舘野洋介カントリーマネジャーに、急成長の背景と今後の戦略を聞いた。

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インバウンドからローカルへ 日本市場で広がる支持

──原宿や渋谷の店舗では、入店待ちの列ができている光景をよく見かけます。現在、どのような顧客が中心なのでしょうか?

 中心は20代半ばで、10代から30〜40代へも広がっています。特に大きく変わったのが、インバウンドとローカルのお客様の比率です。2024年にはインバウンドのお客様が半数以上を占めていましたが、2026年上半期を終えたころには比率が逆転し、約8割をローカル客が占めるようになりました。

 インバウンド客の売上自体も前年比で伸び続けていますが、ローカルのお客様の急増によって構成比が変わったんです。海外のお客様が多い表参道店でも、現在は6割程度が日本のお客様です。層は女性が中心ではありますが、日本では男性のお客様がグローバルで見ても比較的多いのも特徴です。

──なぜ、これほど日本の消費者から支持されるようになったのでしょうか?

 最大の要因は、パンドラが「意味のあるジュエリー」であり、「自己表現のためのジュエリー」であるという価値を、きちんと伝えられるようになったことだと思います。

 チャームは、単にデザインが気に入ったから買うものではなく、自分の思い出や好きなもの、大切な人への気持ちなど、一つひとつに意味を込められる。その魅力が日本のお客様にも届き始めたのだと思います。

──ご自身のキャリアと、パンドラに入社した当時の日本市場の状況について教えてください。

 これまで長く、グローバルSPAを中心としたアパレル業界にいました。セールスを軸に、マーケティングPRやマーチャンダイジング、物流などを経験し、前職はH&Mにいました。自分でもリテールマニアだと思っています。昔から、みんなが楽しめるので「安くていいもの」が好きなんです。パンドラにもそこに情熱を感じました。

 2024年に入社し、2025年7月にカントリーヘッド(現地法人の最高責任者)になりました。入社当時、日本では長い間、お客様から十分な支持を得られていない状況が続く一方、既存店が約30店舗だったところから、1年間で約60店舗まで倍増する大規模な出店を進めていました。

 翌週に新店舗がオープンするのに店長が決まっていないこともあり、私自身も約4ヶ月間、店頭に立って接客しました。大変でしたが、お客様がどんな思いで商品を選び、何を説明すればブランドの魅力が伝わるのかを知る機会になりました。

──出店攻勢から、現在はどのような戦略に?

 そうした経験もあり、2025年は新規出店を2店舗に絞り、既存店の運営体制や接客の質を整えることを優先しました。店舗数を増やすこと自体を目的にするのではなく、需要や店舗面積、立地を見ながら、一店一店の出店精度を高める方向へ切り替えたんです。以前は比較的小さな店舗も多く、お客様を長時間お待たせすることもありましたが、現在は地域ごとの需要を踏まえ、より広い店舗への移転やアクセスしやすい場所への出店を進めています。

 今年7月には、大阪・梅田の駅改札前に店舗をオープンしました。パンドラは、クリスマスや誕生日といった特別な日にだけ買うジュエリーではありません。何かを達成した日や、うれしいことがあった日にチャームを一つから買うことができる。だからこそ、通勤や通学の途中に立ち寄れる場所にも可能性があると思っています。

 こうした土台が整ってきたことから、今後は出店を再び加速させます。2026年の国内60店舗から、2030年には150店舗を目指しています。ただし、立地には妥協せず、お客様の生活動線の中で利用しやすい場所を選びながら広げていく方針です。

──日本事業の現在の規模と、グローバルにおける位置付けは?

 2026年上半期、パンドラの日本での売上は前年と比べてほぼ倍増しました。今年10月には、事業拡大に伴い日本オフィスを移転し、新たにショールームも開設しました。事業が着実に成長を続ける中、日本の文化や消費者の特徴にも細やかに目を向けています。

新オフィスに併設するショールーム

Image by: PANDORA

「意味のあるジュエリー」が生む自己表現とリピート

──店舗運営では、どのような部分を整えたのでしょうか?

 海外のお客様はすでにブランドをご存じです。一方、日本のお客様からは、一人ひとりに寄り添った接客を求める声が高まっており、そのニーズにお応えするため、スタッフを増員しました。

 そのため、2024年末で約150人だった店舗スタッフを現在は3倍近くとなる約420人まで増やしました。ブランドに興味を持っていただいても、来店時に十分な接客ができなければブランドの魅力は伝わりません。お客様に最高のブランド体験をしていただくためには、現場の「人」への投資が不可欠だと考えています。

──Y2Kやバッグチャーム、「推し活」の流行など、自分の好きなものを可視化するカルチャーとの親和性も高そうです。

 日本では、バッグにぬいぐるみやキーホルダーをたくさん付けている方が多いですよね。自己表現するための手段があれば、そこに自分の好きなものや個性を表現したい気持ちが強いのかもしれません。パンドラも、その手段の一つとして受け入れられているのではないでしょうか。今後はブレスレットだけでなく、ジュエリーのチャームをバッグに付けて、自分なりにカスタマイズするといった楽しみ方も提案していきたいと考えています。

 大切なのは、何を付けるかを自分で決められることだと思います。「みんなが良いと言うから選ぶ」のではなく、「私が好きだから好き」と、自分自身で価値を決め、一つひとつのチャームに自分なりの意味を持たせられる。身近なものに取り入れながら自由に楽しめることも、今の自己表現のあり方と相性が良いと思います。

──ご自身のチャームブレスレットにも、家族との思い出が込められているそうですね。

 2024年に店舗に立っていた頃は仕事が忙しく、子どもたちとゆっくり過ごせるのが天体望遠鏡で月や星を見る時間だったことから、月と星のチャームを買いました。その後、フクロウや息子が好きなツバメ、妻が大学に入り直したことを記念するチャームも加えました。これを10年間かけて集めて、いつか娘や息子、妻に渡したいと思っています。

 こういう楽しみ方も、パンドラにとっては一つの自己表現です。ジュエリーはたまたまその手段というだけなんです。

──チャームを買い足していけることも、リピーターの多さにつながっているのでしょうか?

 以前と比べて、再来店されるお客様の割合も倍のペースで伸びています。何度も店舗に戻ってきていただけることは、私たちが特に大切にしていることです。

 面白いのは、ゴールデンウィークやお盆といった大型連休の後に、かえってお客様が増えることです。休みの間に友人や家族と会って、「友達が持っていた」「プレゼントでもらった」といったことをきっかけに興味を持っていただける。

 最近では、お母様が昔購入したチャームを娘さんが譲り受け、それをきっかけにパンドラを楽しみ始めたという話も聞きます。思い出を受け継ぎながら、そこに新しいチャームを加えていくことができる。そうした楽しみ方が少しずつ広がっているのだと感じます。

チャームの先にある、フルジュエリーブランドへの構想

──現在はチャームとブレスレットが人気ですが、今後の商品戦略は?

 現在、日本における売上の大半を、チャームとブレスレットが占めています。一方、パンドラには、リング、イヤリング・ピアス、ネックレスなど、はるかに幅広い商品カテゴリーがあり、さまざまなデザインコードを取り入れた多彩なコレクションも展開しています。

 例えば「パンドラ タリスマン(Pandora Talisman)」は、モチーフやラテン語の言葉に意味を持たせたコレクションで、今年8月には星座をテーマにした新作も登場しました。また、グローバルですでに展開のあるラボグロウンダイヤモンドについて、パンドラでは、ダイヤモンドの品質を評価する4C(Carat、Color、Clarity、Cut)に、製造時の炭素排出(Carbon Emissions)という視点を加えた「5C」という考え方を提案しています。

 現在はグローバルチームと一緒に消費者調査を行っていて、2〜3年後に日本のお客様へ向けた商品開発を見据えてデータを集めています。

──現在、パンドラでは使用するシルバーとゴールドを100%リサイクル素材に切り替えています。サステナビリティに関して、特に重視していることは何でしょうか?

 パンドラは年間1億1000万点以上のジュエリーを販売する、世界最大のジュエリーブランドです。だからこそ、素材に対する責任も大きいと考えています。シルバーとゴールドは100%リサイクル素材に切り替えたほか、ラボクリエイテッドオパールなど、その他のサステナブルな代替素材の活用も進めています。採掘された天然石は一切使用しておらず、すべての石は人造のものです。これだけ多くの商品を作るブランドだからこそ、限りある資源を新たに採掘し続けるのではなく、循環させながら使っていくことは責任の一つだと思っています。

 また、パンドラのジュエリーは手作業で仕上げています。規模の大きさだけでなく、ものづくりの背景まで含めて責任を持つことも、ブランドとして大切にしている部分です。

──最後に、今後の日本市場の展望を教えてください。日本発の企画を発信していく可能性などもあるのでしょうか?

 「意味のあるジュエリー」「自己表現のためのジュエリー」というパンドラの核は、これからも変わりません。その価値を、いかに多くのお客様に魅力的だと思っていただけるかは、これからも挑戦し続けるテーマです。

 日本には、世界中の人からも愛されているものがありますよね。そうした日本ならではの文化や思い出を、パンドラの形で表現することには大きな可能性があると思っています。実際に、すでにいろいろなプロジェクトが動いています。パンドラはアジア市場ではまだ十分に成功しきれていない部分があります。だからこそ、日本がその先駆けとなることには大きな意味があると思っています。

パンドラ ジュエリー ジャパン 舘野洋介カントリーマネジャー

最終更新日:

文・今井祐衣

Yuui Imai

FASHIONSNAP

千葉県出身。中央大学総合政策学部卒業後、スウェーデンに渡りストックホルム大学ファッション社会学修士課程修了。2015年にレコオーランドに入社。語学とコミュニケーションスキルを生かし、来日デザイナーのインタビューや海外コレクションを担当する一方、広告プランナーとして営業~制作もこなす。北欧と長野をこよなく愛し、LagomでHyggeなムーミン谷のような暮らしに憧れている。

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