ティファニー・ゴドイ「ヴォーグ ジャパン」ヘッド・オブ・エディトリアル・コンテント
ティファニー・ゴドイ「ヴォーグ ジャパン」ヘッド・オブ・エディトリアル・コンテント
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Fashionインタビュー・対談

新生「ヴォーグ ジャパン」が目指すものは?新トップのティファニー・ゴドイに直撃

 「ヴォーグ ジャパン(VOGUE JAPAN)」は9月1日、リニューアルを行った10月号を発売した。前任編集長の渡辺三津子氏からバトンを受けて、今年1月にヘッド・オブ・エディトリアル・コンテントに就任したティファニー・ゴドイ(Tiffany Godoy)が指揮をとり、より誌面とデジタルを融合した内容へと刷新。ウェブサイトも同日にリニューアルされた。

 最新号のカバーモデルには、アップル創業者のスティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)の娘で、モデルデビューを果たしたばかりのイブ・ジョブズ(Eve Jobs)を起用。「ファッションズ・ニューワールド」の日本語の見出しが際立つ、新鮮な表紙となった。今回のヘッド・オブ・エディトリアル・コンテントの就任や、「ヴォーグ ジャパン」のリニューアルについてティファニー・ゴドイに話を聞いた。

ティファニー・ゴドイ「ヴォーグ ジャパン」ヘッド・オブ・エディトリアル・コンテント Image by FASHIONSNAP
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ティファニー・ゴドイ(Tiffany Godoy):「ヴォーグ ジャパン」ヘッド・オブ・エディトリアル・コンテント
東京でファッション・エディターとしてキャリアをスタート。ジャーナリスト、エディター、コンサルタント、ポッドキャストクリエイターとして、過去20年間の間、「ヴォーグ」をはじめとする、数多くのメディアに寄稿。書籍「Style Deficit Disorder: Harajuku Street Fashion – Tokyo」を上梓し、マルチメディア・マガジン兼クリエイティブ・スタジオの「The Reality Show」のファウンダーでもある。2022年1月に「ヴォーグジャパン」ヘッド・オブ・エディトリアル・コンテントに就任

日本のファッション媒体でキャリアを積んだティファニー・ゴドイ

ティファニーさんは東京をはじめ、世界のファッションシーンを長くご覧になってきたと思いますが、簡単にこれまでのキャリアについて教えてください。

 大学を卒業して1997年に東京へ来ました。私は日本で社会人生活をスタートさせ、仕事を学んできたので、日本のメディア業界に育てられました。キャリアのスタートは、菅付雅信さんが手掛けていたインディペンデント誌「コンポジット(Composite)」でした。小さい編集部だったので、何でも屋という感じで(笑)。2〜3年ファッションエディターとして下積みをさせていただきましたね。その後、カルチャー誌の「スタジオ・ボイス(STUDIO VOICE)」に移り、ファッション担当に。“紙のインターネット”のような雑誌で、作り方も考え方も日本の雑誌らしく、とても刺激を受けました。それからはインターネットも発達していったので、日本と海外をつなぐ仕事が増え、「ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)」などたくさんの海外の媒体に日本のファッション情報を寄稿して、NHKのファッション番組「トウキョウ・ファッション・エキスプレス(TOKYO FASHION EXPRESS)」では、ナビゲーターも担当。書籍も出版し、ブランディングの仕事も受けていました。

日本の新ブランド「ガーウィン(GURTWEIN)」のジャケットを着用したティファニー・ゴドイ Image by FASHIONSNAP
日本の新ブランド「ガーウィン(GURTWEIN)」のジャケットを着用したティファニー・ゴドイ Image by FASHIONSNAP

自身の媒体「ザ・リアリティ・ショー(The Reality Show Magazine)」を立ち上げて、パリを拠点にされましたね。

 「ザ・リアリティ・ショー」は2010年、クリエイティブディレクターの米津智之さんと共にスタートしました。創刊から雑誌を発行してきましたが、5年前にインスタグラムジンとしてリニューアル。30秒ほどの動画で、ファッションコンテンツを発信してきました。それでラグジュアリーブランドの拠点地であるパリでしっかりと基盤を作るため、パリと日本を行き来する生活をはじめて。新型コロナになってなかなか日本に戻れない時期もありましたが、20年ほどはずっと日本のファッションシーンを見てきましたね。

ヴォーグを発行するコンデナスト(CONDÉ NAST)から、このポストについてお声がけをもらったとき、どのように感じましたか?

 メディア大手のコンデナストがヴォーグの大きな変革を進めていることに関心を持っていました。リスクもあると思いますが、時代は変わっていくので、改革を起こすことは必要。紙とウェブの両方を経験してきた中で、私自身これからのメディアの未来について思案していたということもあり、そのタイミングでお声がけ頂き素直にチャレンジしたいと思いました。

アナ・ウィンターとの約束

本国ヴォーグのトップである、アナ・ウィンター(Anna Wintour)さんからはどのような話があったのでしょうか?

 アナさんは2020年に、世界中のヴォーグを統括するチーフ・コンテンツ・オフィサーと、グローバル・エディトリアル・ディレクターに就任されて、各国のヴォーグのリニューアルを図ろうとしていました。海外版は少しずつ刷新をしていき、日本版に着手するのは最後になったそうで。アナさんからは「アナログとデジタルの役割を理解して、グローバルブランドとしてのヴォーグの日本版を作っていって欲しい」と、お声がけをいただき、 「グローバルな視点を持って、日本の市場と日本の文化を理解している人を探していた」と伝えられました。

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アナさんからのリクエストに、ティファニーさんはどのように応えましたか?

 アナさんとはパリコレ中に直接お会いすることになり、対話をしながら、自分の意見をざっくばらんにお伝えしました。「日本はデジタルネイティブな国なので、新しいテクノロジーを使って、クリエイターエコノミーを通したファッションコンテンツを作っていきたい」と。また私は日本のファッションの歴史を勉強して、日本独自の雑誌や写真集にも詳しく、その要素は日本らしいヴォーグを作るために絶対に入れるべきだということも。そうすると、すぐにプランを提出して欲しいと依頼され、パリコレ3日目のとても忙しい日だったんですが、急いでプレゼン資料を作成しました(笑)。

リニューアル号でデジタルシフトが加速

発売したリニューアル号について教えてください。

 「ファッションズ・ニューワールド(Fahion’s new world)」をコンセプトに、全体的にデジタルシフトし、日本語ファーストのデザインになっているのがポイントです。皆さんが欠かさず手にしているスマートフォンとのタッチポイントになるようQRコードも多用しています。意外と知られていませんが、QRコードは日本人が開発したテクノロジーですからね。また今のファッションのニュースをアーカイヴとして価値の高いものにしていくため、情報や文章量も増やしていて。またYouTubeのダイジェスト版も入れていて、オンラインの内容とシンクロするようになっています。

表紙にスティーブ・ジョブズの娘であるイブ・ジョブズを起用した「ヴォーグ ジャパン」10月号 Image by VOGUE JAPAN
表紙にスティーブ・ジョブズの娘であるイブ・ジョブズを起用した「ヴォーグ ジャパン」10月号 Image by VOGUE JAPAN

表紙にスティーブ・ジョブズの娘であるイブ・ジョブズを起用した理由は?

 現代の人々は、iPhoneをはじめ、パソコン上で印刷物のデータを制作するシステムであるDTP(デスクトップパブリッシング)などを開発したアップルのテクノロジーなしでは考えられない生活を送っています。そういった背景にもリスペクトを払いながら、次の世代の新しさを表現できたらと考え、イブさんを起用しました。彼女はスタンフォード大学を卒業後、乗馬の選手として活躍し、今年本格的にモデルとしての活動をスタート。そのため、ヴォーグ ジャパン10月号が彼女初の表紙になります。インタビューではファッションへの興味や、今後この業界で頑張っていきたいという目標について語って頂いています。表紙では「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」を着用してもらったんですが、とても可愛いですし、アイコニックで、「ファッションズ・ニューワールド」を体現していると思います。

表紙のデザインも明朝体で縦に見出しが入るなど、がらっと変わりましたね。

 これまで英語の見出しが入っていたんですが、日本語を全面的に前に持ってきたほうがかっこいいと思うんです。そのため、英語は「VOGUE」と「EVE JOBS」だけに留めました。「VOGUE」のロゴも遊びの効いた3D風にしています。ピンクのバブルガムのような明るくてポップなイメージで、私たちの未来を明るく前向きに捉える、楽観的な視点と遊び心を反映した色に仕上げています。

また新たにアバターも登場していますね。

 6次元からやってきたジェンダーニュートラルな「S六S(シックス)」というアバターを作りました。最新号のロゴの上に座っているんですが、ヴォーグ ジャパンのデジタルアイコンとして、今後も誌面やウェブに登場させていきます。制作はバーチャルヒューマンのメメ(Meme)を手掛けているアタリ(atali)で、米津さんや編集部など沢山の人の意見を取り入れて制作しました。

アバターの「S六S(シックス)」が掲出されたイベントヴィジュアル Image by コンデナスト・ジャパン
アバターの「S六S(シックス)」が掲出されたイベントヴィジュアル Image by コンデナスト・ジャパン

誌面だけでなく、オンラインのリニューアルも並行して行っていますね。

 先駆けて、8月25日にインスタグラムをリニューアルしました。ソーシャルマガジンのようにしていく考えで、インスタグラムの独自企画を更新していきます。ウェブサイトは、最新号発売の9月1日からアップデートして、よりヴィジュアルを見せていくサイトに変わっていきます。すでにYouTubeも成功していますが、来年には短編のオリジナル番組を公開する予定です。ヴォーグのワンブランドがシンクロするように、それぞれの発信の仕方を変えながら多角的に見せていきます。

ヴォーグ ジャパンが目指すものとは?

動画などをはじめ、新しいクリエイターたちがヴォーグの制作に携わっているそうですね。

 若い世代の気鋭のクリエイターたちがどんどん入ってきています。フランスやイタリア版も、まだ無名の面白いフォトグラファーやスタイリストを積極的に起用していて。グローバルでチャレンジが進んでいるので、私たちも価値のある新しいことに挑戦したいと思います。

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9月17日には新イベントを行う予定ですね。

 はい。1日限りのリアルイベント「ヴォーグ・アライブ(VOGUE ALIVE)」を表参道ヒルズ 本館B3F スペース オーで開催します。新しいヴォーグ ジャパンの世界観を体感していただけるよう、トークショーやARコンテンツなどの企画も用意しています。

今後、「ヴォーグ ジャパン」が目指していくこととは?

 まず新しい「ヴォーグ ジャパン」ブランドのアイデンティティをしっかり作ること。コラボレーションをしても、ぱっと見で「ヴォーグ ジャパン」らしさが分かるようなオンリーワンなものにしていきたい。またユーザーとコミュニケーションをとって、ユーザーの興味のある、役立つ情報を発信して、時間やお金を使う価値がある媒体にしていかなければならないと考えています。また、日本のクリエイターや職人と関わりながら、新しいビジネスチャンスも生み出していきたい。エネルギーを感じられるヴォーグ ジャパンにしていくことが大切だと思っています。

鈴木正文のポートレート

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大杉真心(Mami Osugi)
ファッション リポーター

文化女子大学(現文化学園大学)とニューヨーク州立ファッション工科大学(FIT)でファッションデザインを学び、ファッションブランドやセレクトショップで販売職を経験。「WWD JAPAN」で記者として、海外コレクション、デザイナーズブランド、バッグ&シューズの取材を担当する。2019年にフェムテック分野を開拓し、ブランドや起業家取材を行う。21年8月に独立し、ファッションとフェムテックを軸に執筆、編集、企画に携わる。22年4月に文化学園大学の非常勤講師に就任。

    VOGUE ALIVE サイト

    VOGUE JAPAN (ヴォーグジャパン) 2022年 10月号
    著: Condé Nast Japan (コンデナスト・ジャパン)
    編集: VOGUE JAPAN編集部
    メーカー: コンデナストジャパン
    発売日: 2022/09/01
    価格: ¥611(2022/09/01現在)

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