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国立新美術館は日本現代アートをグローバルに発信する拠点となるのか——文化庁が新設したアート・コミュニケーションセンター(仮称)の展望

国立新美術館

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国立新美術館は日本現代アートをグローバルに発信する拠点となるのか——文化庁が新設したアート・コミュニケーションセンター(仮称)の展望

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 文化庁が2021年度から文化審議会に文化経済部会を新たに設置。アートの美術的・学術的価値、経済的価値、社会的価値をバランスよく向上させる「アート振興ワーキンググループ」を設け、施策の一環として「アート・コミュニケーションセンター(仮称)」を立ち上げた。「アート・コミュニケーションセンター(仮称)」とは一体何なのか。国が目指す、日本現代アートのあり方と課題はどのような点にあるのか。3月11日に開催されたプレス記者会見の中で、アート・コミュニケーションセンター(仮称)の説明がされるとともに、有識者によるディスカッションが行われた。

 文化庁内で初めて国内の現代アートにおける検討会が開かれたのは2014年度。同会で論点を整理した上で、2018年度からはこれまで重要視されていなかった世界における現代日本アートの評価向上に取り組む「アートプラットォーム事業」を開始。5年間掛けて、国内外関係者のネットワーク構築や、重要資料の翻訳や発信、国内美術館に収蔵されている情報の可視化などが行われ、成果物としてアートプラットフォームジャパン(Art Platform Japan)がローンチされた。そして、2021年度から抜本的な機能強化の一環として日本国内の現代アートを振興すべく「アート・コミュニケーションセンター(仮称)」に予算措置が行われた。

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 端的にいえば、アート・コミュニケーションセンター(仮称)は「国内にある7つの国立美術館を繋げる機能である」とアート・コミュニケーションセンター(仮称)のエグゼクティブ・アドバイザーで森美術館館長の片岡真実は説明。具体的に3つの目的が提言された。

※東京国立近代美術館、国立西洋美術館、京都国立近代美術館、国立国際美術館、国立新美術館、国立映画アーカイブ、国立工芸館(東京国立近代美術館)

それぞれ特徴を持って独自のプログラムを行ってきた国立美術館に、アート・コミュニケーションセンター(仮称)という機能をいれる。国際的にも様々な事業の窓口(ゲートキーパー)かつハブになることで、日本のアート振興に寄与する。
ーアート・コミュニケーションセンター(仮称) のエグゼクティブ・アドバイザー 片岡真実

アート・コミュニケーションセンター(仮称)の目的

■国内美術館が収蔵している作品のの情報集約とデジタル化を進める。あわせて国内外への発信を行い、美術作品や資料活用に係る国内美術館のハブになる。

■情報の発信拠点として国際的なネットワークの構築と効果的な情報発信の推進。特に現存作家の戦略的な支援を行う。

教育、医療、福祉、ビジネス、観光など多様な社会連帯の推進により、アートの社会的価値の向上を目指す。

 国内美術館の横串組織化を目指すアート・コミュニケーションセンター(仮称)の提言を受けて、滋賀県立美術館のディレクター(館長)で約20年間国立近代美術館に勤務していた保坂健二朗は「どうしても日本のキュレーターは館単位で考えてしまう現状がある。その『館思考』をそろそろ変えてみて、シナジー効果が得られるかどうかを試すタイミングだと思う」と評価した。

 また文化庁は、同時代収集の重要性を改めて明確にした上で、美術品の寄贈における税制の優遇処置を進めることを発表。現在の日本現代アートの課題として、国際的な評価を得ることが出来るナショナルコレクションが形成されづらい実情が説明された。税制の優遇処置の背景として、国際的な評価が高まった高額な作品は日本の美術館では購入が難しく、このままでは日本の作家であっても代表作のほとんどが海外の美術館に収蔵されかねない点、コレクターは国立美術館よりも現代作家の優品が集まりやすいが、コレクターが逝去した場合にコレクションの意思が遺族に引き継がれていることが少ない点、現在の日本国内では美術館等にコレクションを寄贈する際、購入時から値上がりした分に税金がかかる仕組みがあるため遺族がコレクターの収集品を寄贈しづらく優れた作品が海外に寄贈されやすい点などが挙げられた。

 ディスカッションに参加した「THE CREATIVE FUND, LLP」代表パートナーの小池藍は民間の立場から「欧米では美術館と大コレクターの距離感は密である」とした上で「欧米のように、日本でも美術館とコレクターが関われるということを周知していくためのプログラムが必要なのではないか」と話した。

日本のコレクターの大部分が「美術館と関われる機会がある」ということを知らないように思う。欧米ではコレクターと美術館の連帯は密で、キュレーターから助言をもらったり、あるいは共にアートフェアに出向くことで次に購入する作品を決めたりしている。日本でもそのようなプログラムや事例を作り上げることで、国内コレクターに美術館とコレクターが関われるということを知ってもらえるのではないだろうか。
ーTHE CREATIVE FUND, LLP 代表パートナー 小池藍

 国が推進する新たなシステム「アート・コミュニケーションセンター(仮称)」。現代美術家で京都芸術大学や東京藝術大学で教鞭を取る椿昇は「プラットフォームはOSだ」と例え、「OSというのは常にアップデートがされ続けるもの。組織が常にバージョンアップを繰り返せるか、というところに全ては懸かっているのではないだろうか」という見解を示した。これを受け、日本現代アート委員会副座長で国立国際美術館学芸課長の植松由佳は「アート・コミュニケーションセンター(仮称)が立ち上がった時に、私たちがこれまでしてきた運営の強みとどう関わらせることができるのかが重要」と続け「海外と組織や予算の規模が違う中でも、アップデートをし続けることが必要」と総括した。

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