左)玉井健太郎 右)山縣良和
Image by: FASHIONSNAP

Fashion インタビュー・対談

【対談】リトゥンアフターワーズを作った2人が振り返る10年とこれから

左)玉井健太郎 右)山縣良和
左)玉井健太郎 右)山縣良和
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 今から10年前、「ヨーロッパで出会った新人たち」という展覧会を機にデビューした「リトゥンアフターワーズ(writtenafterwards)」。デザイナー山縣良和と現在は「アシードンクラウド(ASEEDONCLOUD)」のデザイナーとして活躍する玉井健太郎が立ち上げたブランドで、"ゴミ"や"神様"のコレクションなどが国内ファッションシーンで話題を集めてきた。今年11月に行われたファッションショー「after wars」では報道陣に囲まれたモデルや山が登場するなど、アウトサイダーとしての表現を追求。次の10年に向けて、山縣は「今後これまでとは違ったアプローチでファッションデザインに取り組んでいきたい」と口にする。"元女房役"玉井健太郎と語る、リトゥンアフターワーズの10年とこれから。

 

山々はファッション?


−ショーを見てどう思いましたか?

玉井:良和の前だと喋りにくいですね(笑)。ただ全体を通して思ったことは、リサーチ元がわかるものが結構多かったということですかね。一番好きなのはやっぱり1体目です。

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−モデルが記者に囲まれたルックですね

玉井:1体目がきた瞬間「うわ、なんか来た」って思わず口にしていましたね(笑)。ショーが始まるまでは、どういうスタンスで入り込めばいいのかわからなかったんですが、1体目のルックが歩いてきたときに、「これは俯瞰してみなければいけないショーなのかな」と感じて。ピントを緩めて、モデルを囲む記者達も含めて1体としてショーを見なければいけないんだろうなと。ただそこで調整したら、2体目は普通に一人で歩いてきたんでこれは結構難解だなと思いましたね(笑)。

山縣:ショーは一応3つのパートに分かれていて。ルックもそれぞれそのパートに合わせて出す順番を決めたんだよね。

玉井:1体目はネタ帳にストックしていたものなの?個人的にはモデルを担いで出てきた「リック・オウエンス(RICK OWENS)」2016年春夏ウィメンズコレクションを日本人として分かりやすい方法で表現したのかなと。そういう風に見えただけ?

山縣:ショーの数カ月前に思いついたかな。具体的な着想源はある日、報道ステーションで見た記者団に囲まれた稲田元防衛大臣の姿で。すごいものをまとってる(記者団)なと(笑)。

玉井:その辺りのファッションの捉え方が良和らしい。個人的にはどのルックが一番好きなの?

山縣:やっぱり1体目だね。写真が上がってきてなんだこれって(笑)。こんなのファッションショーで見たこと無いなって。

−この報道陣の人たち全部ひっくるめてファッションなんですよね?

山縣:そうです。今回のショーにはそもそも「装飾は流転する」という東京都庭園美術館からのお題があって、是非この機会に装飾の解釈をアップデートしたいなと考えました。ファッションショーというフォーマットを考えた時に、日本人の装飾には1体目のような集団性の装いも含まれるのではないかと思ったんです。

玉井:それを掘り下げていって、最終的には山に行き着いた。

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山縣:日本の集団性のルーツは山だっていう。

玉井:理解できてなかったら最後の山はすごい謎だからね。ちなみにあれ3つもいる?

山縣:"山々"にしたかったんだよ(笑)。最後に山々に囲まれてフィナーレがある。山々に囲まれた中で人の集団性が生まれるイメージ。

玉井:なるほど(笑)。フィナーレの最後に山が後ろのモデルに追い越されていたけどあれも狙い?結構シュールだったけど。

山縣:事前に演出家の方から「絶対山が戻るのに時間かかりますよ」と言われていたので、じゃあもう抜いていく演出にしてしまおうと。だから予定通りの演出。

玉井:フィナーレで前のルックが抜かれていくっていうのは見たことないから、個人的には好きな演出だったな。

−あの山はどこに保管しているんですか?

山縣:実は既にほとんど解体してしまっていて。ただ一つは美術家の黒瀬陽平君が一旦保管してくれていて、どこかのタイミングで紹介してくれることになりそうです。

玉井:じゃあまたどこかで見ることができるんだ。ギャラリーでの展示だとまた違った印象に見えそうだね。

−ショーのインビテーションも戦争と関係があるんでしょうか?

山縣:今回のショーのタイトルは「after wars」なんですが、インビテーションには僕が撮った軍艦島の写真をコラージュしてあるんです。僕らの世代にとって原爆は、想像の域を出ません。なので、"戦後"をテーマにするにあたり、実際に僕が見た風景で表現をしたほうが実際にリアリティーがあると思って。今年、長崎を訪れた際、軍艦島にも伺いました。もちろん廃墟と化した軍艦島は戦後の象徴的な場所ですが、それはあくまで歴史の中での一層に過ぎないので、剥がしてカーテンみたいにして、未来は明るいほうがいいと思ったので花を散りばめたビジュアルに仕上げました。

inv-20171209_001.jpgインビテーションビジュアル

玉井:リアカーはやっぱり「火垂るの墓」が着想源?

山縣:そう。上野の不忍池にいたリアカーを引いている人を見て「火垂るの墓」を思い出したのでリアカーのルックを作ってみたり、軍服をルーツに持つ学ランで日本の集団性を暗示させるルックを出したり。あともう一つ加えたリアリティが日本の植民地だったインドネシア。実際インドネシアに仕事で行った際に、多くのインスピレーションを得た。そこでインドネシアの方にモデルを頼む事を決めた。今回は日本だけを掘り下げるのではなくて、日本とアジアの関係性も描いた。ヘアのアイデアもインドネシアの原住民のスタイルから。全体のカラーリングは戦前、戦中、戦後を生きた代表的な画家マリー・ローランサン(Marie Laurencin)から着想を得ていて。集団性でもいくつかのバリエーションを作りたいと思って、ドラゴンクエストの棺桶を採用したんだよね。

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玉井:なるほどドラクエか。棺桶を見た時になんでいきなり和じゃなくて洋なんだろうと思ったんだよね。

山縣:リアリティのある集団性のバリエーションを増やしたいなと考えたんだよね。そして山。集団性をまとう日本人の本質的な部分は山にあると考え、それで着物の山を作ろうと。戦前、戦中、戦後で着物から洋服になったっていう歴史があって、いろいろ調べていくと、大震災や、大空襲の時に着物だと走りにくいから逃げ遅れるということで洋服を着るようになっていったという話もあるくらいで。そういった背景を踏まえて、焼け焦げた着物を集めて山にしたんだよね。

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−観覧者には谷川俊太郎さんの詩が配られました

山縣:戦後を象徴するアニメ作品「鉄腕アトム」のオープニングテーマの歌詞を書いた谷川俊太郎さんにどうしても作って欲しかったんです。これまでのブランドの活動や今回のテーマ等を説明して、「谷川さんの言葉が欲しいんです」と依頼して快く引き受けてくださって。「十二の問いかけ」というタイトルなんですが、「どうして言葉が欲しいのか」という僕の依頼から詩はスタートしているんです。

yamagata-tamai-2017-12-0428.jpg−今回のショーで一番表現したかったことは?

山縣:日本人の個性としての集団性は裏を返すととても危険だということです。結局集団性が戦争を生んでいるので。例えば東京ではハロウィンが数年前から流行っているじゃないですか。渋谷の街は変な格好をした人で埋め尽くされていますが、最近はみんな変な格好をしてるから目立てないので、集団で変な格好をして目立とうとするという人が増えているんですよね。日本のファッションを考える上で、この集団性というものが表現の本質としてあるのではないかと考えたんです。

玉井:テーマ的に、加減を間違えれば大バッシングにも繋がりかねなかったよね。

山縣:だから自分の政治的スタンスのようなものは一切出さず、客観的に捉えるということに集中して。もちろん戦争には反対という部分は残しているけど。

−山縣さんはファッションという言葉をどう定義しているんですか?

山縣:装いですね。

玉井:でも一般的な装いとは違うでしょ?一般的な装いという意味と、良和の言う装いは違う気がする。時間や記憶なんかも装いの中に入ってる。

山縣:要は何をくっつけるかだと思ってるんだよね、ファッションって。服の装いなのか、人の装いなのか、人々の装いなのか、街の装いなのか。そこまで考えていくとあらゆるものが装いに見えてくる。ここにあるパソコンだって装いの一部分になるんだよね。

玉井:僕の場合は人と洋服の関係が装いだから、そこが良和と違う。

山縣:大袈裟に言うと服の装い、人の装い、人々の装い、地球、宇宙、さらに時空を超えて時の装い。それを今度は縮小していくと、皮膚の装い、細胞、原子、素粒子と、結局人もよくよく考えたら細胞が合体して作られているわけで、僕の中では最小単位で考えたら全てが装いになり得る。

−組み合わせることで何でもファッションになる

山縣:そう思います。ただ束ねることで生まれる危険性というものが存在します。例えばヒトラーがそうです。元々ヒトラーは美大でアートを勉強した人物で、アートとかデザインの力を理解して鉤十字などをファッションに使い独裁性を高めました。昔はそういうファッションやデザインの力を知って政治的にコントロールした歴史もありますよね。そのためそれぞれが自由に装うという、多種多様な価値観を認めあい、混在する世の中であることが実は平和への一歩なんだと思います。

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