これからのファッションシーンを担うデザイナーが、自身のルーツを5つのキーワードから紐解いていく新連載「私のマインドマップ」。
第5回は、ストリートダンサーとして様々な国でコンテストに参加した経験を持つヤンガ幸一郎。パリで服づくりを学び、「ピガール(PIGALLE)」や「Moonyounghee」でモデリストアシスタントとして経験を積んだ後、2017年にオーストリアのチャラヤンが教えるウィーン国立応用美術大学へ進学。2018年にユニクロが支援する「TOMODACHI UNIQLO FELLOWSHIP」を獲得し、ニューヨークのパーソンズ美術大学へ入学。ダンサーだった経験を活かし、人体の動きにフォカースした服作りを心掛けている。
No.5 ヤンガ幸一郎(YANGAデザイナー)
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Image by: YANGA+Sohei Kabe
「ヤンガ幸一郎」のクリエイションを紐解くマインドマップ
デザインする上で軸となる"5つのキーワード"とそこから派生する"3つのワード"を、デザイナー本人がピックアップ。それぞれのキーワードが現在のクリエイションにどのように繋がっているのか、デザイナーの解説と共に紹介していく。
1:バックグラウンド
"キリスト教"、"儒教"と様々な宗教に触れてきた10代
母の影響で、16歳の頃までクリスチャンとして生活していたので、教会で行われる礼拝に毎週末参加していました。一方で父は儒教を信仰していたので、20歳頃までは儒教について色々と教えてもらうなど、さまざまな宗教に触れる環境で育ってきました。
クリスチャンだった頃は、聖書に書かれている内容を基準に生活していたこともあり、週末の礼拝時に友達が遊びに出ていることを知り、羨ましい気持ちがずっとありました。また、自分がハーフということで周りの目が気になることが多々あり、10代の頃は「他の人と同じだったら...」と思うことが多かったですね。
視野が広がったことによる"コンプレックス"からの"解放"
大人になり海外生活で様々な国籍の人たちと交流していく中で、自分のアイデンティティとは何かを見つめ直すことができ、クリスチャンとして生活してきたことや抱えていたコンプレックスもきちんと肯定できるようになりました。今の作品にこういった経験が直接的に反映されているわけではないのですが、自分のルーツを振り返るときに欠かせない要素です。
2:海外生活
日本とフィリピンの"ハーフ"という強み
高校時代まで日本で過ごし、その後マニラ、パリ、ウィーン、ニューヨークと様々な国で生活をしてきました。日本人の父とフィリピンの母の間に生まれたので、最初に海外生活を送ったマニラは僕のルーツに大きく関わっている街です。マニラの中でも僕の故郷はあまり治安の良いエリアではなく、日本とは環境が大きく違っていたのですが、生活することで文化や街への理解も深まり、全く異なる2つの国籍を持つということが、自分の強みなのだと感じるようになりました。
"国民性"に触れることで肯定できた自分の"アイディンティティ"
コンプレックスが多かった自分にとって、海外で様々な"国民性"に触れることが出来たことは本当に大きかったです。例えば、パリには色んな国籍の人がいるので、アイディンティティも様々。そういった環境下でのコミュニケーションでは、人種よりも"言語"と"思想”が重要なのだと感じました。単一民族の日本で育った僕にとっては、そういう環境がとても新鮮でしたね。
3:ストリートダンス
"ジャネット・ジャクソン"の楽曲で巡り合った"ポッピンダンス"
ダンスの楽しさを最初に感じたのは高校時代に遡ります。学園祭でダンスを踊ることがあり、その時にお客さんの視線が一つに集まる感覚が忘れられず、その空間を作りたいという気持ちでダンスにハマっていきました。
ポッピンダンスに出会ったのは、昔から大好きなジャネット・ジャクソン(Janet Jackson)が兄のマイケル・ジャクソン(Michael Jackson)と共演した楽曲「Scream」のMVを見たことがきっかけです。自分が知っているダンスとは違う違和感のある体の動きが気になり、後になってそれが「ポッピンダンス」だと知りました。ポッピンダンスは、人の体を使いながら人間離れした動きや浮遊感を表現するところに面白さがあり、チュートリアルビデオをみながらひたすら練習して習得していましたね。
国籍や言葉を超えて広がるダンスの輪
見た目やルーツなどは関係なく、スキルがあればきちんと評価してくれるのがダンスの世界です。とにかく上手くなりたいという一心で練習し、高校からニューヨーク時代までダンスバトルにもよく出場していました。ダンスを通して国籍や言葉を超えて輪が広がっていくように、これからはストリート文化を好きな人たちが繋がっていけるような空間を、ファッションというフィールドで作り上げていきたいです。
4:コスチュームリメイク
コスチュームルールへの違和感から生まれた"服への興味"
ダンスバトル出場を重ねる中で、出場者の服装に一定のルールがあることに気がつきました。多くの人がTシャツにパンツスタイル。ちょっと奇抜な格好をすると、ストリートダンスではなくコンテンポラリーダンスにカテゴライズされてしまう現実がとても嫌でした。
そういった状況に対し、アンダーグラウンドなダンスミュージックをポップシーンへ押し上げていったダフトパンク (Daft Punk)のように、ストリートダンスのルールを踏まえつつ、別の視点から新たなダンスコスチュームを提案することもできるのではないかと思うようになりました。
職業訓練校やアシスタント経験を経て学んだ"服作りの基礎"
服作りを始めるまでファッションについての知識はほとんどない状態だったんですが、服にも歴史が深くありそれを知っていくのがとても楽しくて。気がづいたらファッションの世界にどっぷりハマっていました(笑)。コスチュームを作りたいという目的があったので、まずは職業訓練校で服作りの基礎を学び、その後パリで1年半程ブランドのアシスタントなどをしながら経験を積んでいきました。
5 : パーソンズ
パーソンズで学んだ"DIY精神"と"言葉"の重要性
パーソンズ美術大学へはユニクロの支援枠「TOMODACHI-UNIQLO FELLOWSHIP」を利用して入学しました。パーソンズでは、とにかく自分の手を動かすことを求められました。素材サンプルなどもすべて自分で作るので、本当に毎週追い込まれていましたね(笑)。
パーソンズで一番学んだことは「言葉で伝えること」の大切さです。毎週行われるプレゼンでは、仕上げていったサンプルのクオリティではなく、それが出来るまでの過程や自分自身の考えてについて問われます。例えば「無駄な服をなぜ作り続けるの?」などです(笑)。それに答えるために、"自分を伝える言葉"を発見できるようになったことは、パーソンズに入って良かったと思えることですね。
動きの可能性を模索した卒業コレクション
ダンサーだった経験を踏まえ、"身体性"をテーマに卒業コレクションを制作しました。ダンスや人体の動きを追求していく過程をGIFや動画、コラージュで記録し、そのドキュメンテーションを元に、黒のボディスーツを着た自分の体に素材を当てながらデザインを決めていきました。ルックにはその制作過程のアイデアがそのまま活かされています。ロバート・ロンゴ(ROBERT LONGO)の「Men In the Cities」のように、静止画の中でも身体のエネルギーを感じられるような写真を撮りたかったので、ルック撮影中は音楽を流してみんなで踊りながら進めました。
ポッピンダンスに影響を与えたダフトパンクの「Around the World」のMVに登場する幾何学的な演出がとても好きで、動きの可能性を幾何学模様を用いて表現しました。柄をプリントしたメッシュ素材を二重にすることで、動いた時にモアレのような模様が浮かび上がるのが特徴です。
ファッションとダンスの融合
実は新型コロナウイルスの影響で、毎年開催されている校内のファッションショーが開催できなくなり、卒業コレクションを見せる機会がなくなってしまったんです。自分の初となるコレクションになるので、何とか見てもらう機会を作れないかと思い、同じくユニクロの支援でパーソンズに通っていたMÖSHIと一緒に、4月22日から3日間のエキシビションを開催することにしました。最新コレクションのコンセプトと深く繋がったダンスパフォーマンスも行う予定で、自分がファッションを通して作りたかった"空間"を見せれたらよいなと思っています。ぜひ遊びに来てください!
■MÖSHI & Kou Yanga EXHIBITION 2022
期間: 2022年4月22日(金)〜24日(日) 13:00〜21:00
会場: KATA
入場無料
■MÖSHI & Kou Yanga EXHIBITION 2022 OPENING PARTY
日程: 2022年4月22日 金曜日
時間: OPEN 18:00 / LIVE START 18:30 / CLOSE 21:00
会場: Time Out Cafe & Diner
LIVE: MÖSHI、Kou Yanga (DANCE PERFORMANCE)
GUEST: ASOBOiSM and more…
料金: 前売り:2500円(税込/1drink別)
>>イベント詳細
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ヤンガ幸一郎 >>Instagram
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