これからのファッションシーンを担うデザイナーが、自身のルーツを5つのキーワードから紐解いていく新連載「私のマインドマップ」。
第2回は、2022年春夏シーズンに自身のブランド「フルス(fulss)」をスタートさせた児玉耀(こだま ひかる)。ファッションスクール「ここのがっこう(coconogacco)」を経て、ロンドンのセントラル・セント・マーチンズ (Central Saint Martins)のニット科に進学。在学中には「トム ブラウン(THOM BROWNE)」や「ポーツ1961(Ports 1961)」でインターンを経験した。帰国後スタートした「フルス」では、「その時々の気持ちや、気分を反映させるものづくり」を意識してコレクションを展開している。
No.2:児玉耀(fulss デザイナー)
ADVERTISING
セントラル・セント・マーチンズ 卒業制作
Image by Hikaru Kodama
「児玉耀」のクリエイションを紐解くマインドマップ
デザインする上で軸となる"5つのキーワード"とそこから派生する"3つのワード"を、デザイナー本人がピックアップ。それぞれのキーワードが現在のクリエイションにどのように繋がっているのか、デザイナーの解説と共に紹介していく。
1:ものづくり
- 祖父がきっかけでハマっていった、ビーズ遊びや工作
電車の電動ジオラマ模型が好きだった祖父と小さな頃によく遊んでいて、「シルバニアファミリー」のようなミニチュアの家をオリジナルで作ったりしていました。木を切ってテーブルにしたり紙粘土で食べ物を作ったりと、とても細かな作業だったんですが、それがすごく楽しかったので、もの作りに興味を持つようになりました。そこから細かな作業にハマっていき、紐にビーズを通して遊んだり、手を動かしながら色々なものを作っていましたね。
- 幼少期の"好き"が講じてクリエイションの軸になったニット
服作りにおいても、細かな組織や構造を色々なデザインに落とし込める「ニット」に魅力を感じ、今では自分の服作りの軸になっています。昔の遊びが今に繋がっているので、自分の好きなことは一貫しているなと感じますね。「フルス(fluss)」でもシーズン問わず面白いニットの提案をしていきたいと思っているので、楽しみにしていてください!
2:ファッション
- 婦人雑誌がきっかけとなったファッションへの興味
母親が見ていた婦人雑誌がきっかけでファッションに興味を持ったということもあり、2000年代初頭の大規模な演出のファッションショーを見るのが好きでした。そこからモード誌を読むようになり、いろんなブランドやファッションの情報に触れるようになっていきました。
高校生の頃には、服作りの本を参考にしながら「作ってみたい」と思うものを実際に作るようになりました。婦人雑誌の気になる服を作ってみたり、クリスチャン・ラクロア(Christian Lacroix)の服を真似たり。周りの友達には服作りをしていることを恥ずかしくて言えなかったので、美術室でこっそりと先生に作った服を見てもらっていましたね(笑)。今となっては良い思い出です。
- モードの世界へ導いた3つのブランド
「ジョン・ガリアーノ(John Galliano)」と「アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)」はファッションに興味を持ち始めて一番最初に感化されたデザイナーです。この2人の表現をみたことでファッションデザイナーになりたいと思ったくらい影響を受けました。そして、今でも一番好きなブランド「プラダ(PRADA)」。プラダは賢そうなのにどこかユーモアがあって、そのバランスがとても好きですね。プラダのコレクションは、初見だと「かっこいいのか可愛いのか分からない...」という気持ちになるけど、半年後には毎回「めっちゃ好き」となっているので、その度にプラダの先見性のすごさを実感します。
- ファッションの魅力=コミュニケーション
ファッションの魅力は、言葉で上手く伝えられないものを服を通して伝えることができることだと思います。僕自身ずっと社交的ではなかったんですが、ファッションを通じていろんな人と繋がることができました。
3:デザイン
- ファッションと真剣に向き合った、ここのがっこうとセントマでの時間
大学時代、「ケイスケヨシダ(KEISUKEYOSHIDA)」のデザイナー・吉田くん(吉田圭佑)と同じサークルに通っていたことがきっかけで、ファッションスクール「ここのがっこう」を知りました。そこで初めてクリエイションの組み立て方や、真剣にファッションと向き合っている人に出会えたことで、自分の将来について真面目に考えるようになりました。課題に付いていくのも必死だったので、大学生活の中で一番大変だった時期でしたね(笑)。
ここのがっこうで「リトゥンアフターワーズ(writtenafterwards)」の山縣さん(山縣良和)や「ミキオサカベ(MIKIOSAKABE)」の坂部さん(坂部三樹郎)など、海外の学校で勉強した人たちの考え方に影響を受けたこと、そしてジョン・ガリアーノやアレキサンダー・マックイーンといったデザイナーを輩出しているという憧れもあり、大学卒業後はセントラル・セント・マーチンズ (Central Saint Martins)への進学を決めました。
- 経験を蓄積、「トム・ブラウン」と「ポーツ1961」でインターン
セントラル・セント・マーチンズ在学中に「トム ブラウン」と「ポーツ 1961」でインターンシップをしました。「トム ブラウン」では、オリジナル生地の開発に3ヶ月程携わることができ、生地が出来るまでの流れを一通り経験させてもらいました。
「ポーツ 1961」は小さな会社だったこともあり、デザイン作業にも参加させてもらいました。思い出深いエピソードといえば、会社のゴミ箱の中にあった端切れがとても可愛くて、承諾をもらって持ち帰り、その端切れを自分が持っていたポロシャツに付けてみたんですよ。それを後日会社に着ていったらとても好評で、実際のコレクションでこのポロシャツに似たアイテムが登場したんです。そういう柔軟なところも小さな会社ならではで、とても居心地が良かったです。
4:ロンドン
- 友達と交流を深めた公園とビール
セントラル・セント・マーチンズに通うまでロンドンには行ったことがなかったので、好きかどうか分からないままロンドンに住むことになりました。最初の1年は思うようにいかない事の連続で、ずっと日本に帰りたいと思っていました(笑)。ただ、少しずつコミュニケーションが取れるようになり、2年目以降はロンドンの街を楽しめるようになりました。友達も少しずつ出来るようになり、休日になると公園に集まってビールを片手に何気ない会話をしたりしてましたね。そのお陰でビールがめちゃくちゃ好きになりました(笑)。
- ロンドンで感じた自由な精神性
ロンドンでは年齢や出身を聞かれることがあまりなく対等に接してくれるので、人の目を気にすることが以前より少なくなったなと思います。道端に変な物が落ちていたり、マーケットでも雑多にいろんなものが並べられていたり。いろんなモノやコトを受け入れてくれる土壌があるお陰で、とても気持ちが楽になりましたね。
- 芸術が溢れる街で洗練された感性
ロンドンは美術館がとにかく沢山あり、無料で開放しているところも多くあります。そこで見たものが良い蓄積となって、自分の美意識が洗練された気がしています。今はパソコンで何でも調べることが出来ますが、実際に見た時の迫力や質感はやはり生で見ないと分からないですからね。見たいと思う作品が近くにあるという環境はとても贅沢でした。
5:人
- 大学の先輩でもある吉田圭佑・中里周子という存在
ケイスケヨシダの吉田くんは先でも話したように大学の先輩で、当時唯一ファッションについて深く話しが出来た人です。吉田くんのお陰で真剣に将来のことを考えるようになりました。もう1人の大学の先輩・のりぴー(中里周子/BORING AFTERNOON)はここのがっこうがきっかけで仲良くなりました。彼女の作品がとても好きだったので制作を手伝うようになったんですが、エピソードが沢山ありすぎて選べないくらい濃い時間を過ごしましたね。いろんな人と協力しながら1つの作品を創り上げていくグルーブ感は、近くで見ていてとても刺激的でした。
- ロンドン時代をともに過ごした盟友・小林裕翔
裕翔くん(小林裕翔/yushokobayashiデザイナー)とは同い年で、セントラル・セント・マーチンズに入学した年も一緒。そして最終学年の1年間ルームシェアをしたロンドン生活に欠かせない存在です。最終学年は卒業制作があるので、学生生活の中でも一番大変なんですが、自分と同じように制作に向かう裕翔くんがいてくれたことが刺激になり、なんとか乗り切ることができました。朝起きるとお弁当を作ってくれていたこともあって、そういう日常が嬉しかったですね。
今は裕翔くんも東京をベースに活動していて、たまに飲みに行ったりする仲です。これからもお互い切磋琢磨出来る仲間でいられるように、フルスとしての活動も頑張って行きたいなと思います。
■次世代デザイナー連載「私のマインドマップ」
>>No.1:向祐平(Munited Kingdomai YUHEIデザイナー)
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