アトモス創業者 本明秀文氏
Image by: FASHIONSNAP
原材料価格や物流費の高まりによる値上げラッシュが続く中、スニーカー業界も値上げに踏み切る。スニーカーセレクトショップ「アトモス(atmos)」創設者の本明秀文氏によると、2023年にはほとんどのモデルが約10〜20%増の価格で販売されるという。値上がりの影響を受けて、本明氏は「2年ほどスニーカー業界は低迷するだろう」と警鐘を鳴らす。
値上がりによって、アトモスで取り扱っている多くのスニーカーが2万円前後となり、高額なモデルでは4万円近くに及ぶものも出てくるという。本明氏は「人々の給料は簡単に上がらないから、買い手や購入足数が減っていく。4万円まで上がるともはやスニーカーを買う感覚ではない」と不満を口にする。
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また、アトモスの過去の売上高の推移からスニーカー市場全体を分析。2009年までは売上高が20億円程度だったが、2010年度から売上高が大きく伸び始め、2021年のアトモスの売上高は210億円と、約10年間で10倍以上の成長を遂げた。成長した理由について本明氏は「2008年の9月にリーマンショックが起き、金融緩和によってお金が増えてスニーカーに投資する人が増えたため」と説明する。しかし、「これからアメリカの米連邦準備制度理事会(FRB)がどんどん金融引き締めを行うだろうから、市場からお金がなくなっていく。どのくらいの規模で影響が出るかまだわからないが、確実にスニーカーの売れ行きはスローになっている」と話す。日本のマーケットについても触れ、「アパレルを見ていても皆んな1シーズンだけ着られる安いものを買っていて、過当競争が起きている。だから給料が上がらない。日本銀行が金利を上げて、借りたお金で生き延びているような企業を減らして、生産性を上げていくべきだと思う」と語る。
さらに現在スニーカー業界が抱える課題についても言及した。2015年頃からスニーカーブームを迎え、スニーカー市場に多くの企業が参入。大手メーカーも積極的に商品を展開し、毎日のように新商品が発売されている。しかし、ブームが落ち着き始めたため本明氏は「商品が多すぎて、いくらマニアといえどここまでの数は買えない。知り合いのコレクターもコンプリートすることを諦めて手放す人が増えてきた」と売れ行き不調な理由を解説。しかし、メーカーは売れないとわかっていても作り続けないといけないジレンマを抱えていると説明する。「資本主義の難しいところで、メーカーで勤めている人はストックオプション制度で株価をあげないと給料が上がらないことが多い。だから売上を伸ばすために、余っていても商品を作って売り続けるしかない」と本明氏は語る。売れ行き不調にも関わらず増え続ける新商品によって近い将来市場がパンクし、2年ほどスニーカー市場が低迷すると予測しているという。
そんな中、本明氏は「オン(On)」や「ホカ オネオネ(HOKA ONE ONE)」「サロモン(SALOMON)」といったブランドに注目していると話す。ブランドの共通点には「特化しているポイントがあって、ブランドの信者がいること」を挙げる。履き心地など特化した強みがあるブランドが好まれる傾向にあり、さらにブランド力が強いことから多少の値上げでも動じずに買い続けてくれるファンがいるのだという。実際にオンやホカ オネオネ、サロモンの3ブランドはアトモスでも売れ行きが好調だ。
「しかし、アトモスくらいの規模になるとそういったブランドだけでは売上規模を保てない。結局は大手ブランドが売れなければ厳しい」と本明氏。維持するために、期待するのはインバウンド消費の復活だ。「インバウンド頼みにならざるを得ない。市場全体の安定もインバウンドにかかっていると言っても過言ではない」とし、円安の影響や入国者数上限の引き上げで外国人観光客が増えるかどうかに、国内スニーカー市場の命運はかかっているという。
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