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ファッションショーの裏側をレポート 「パイオニア デニム」のヘアメイクができるまで

文・平松将

 ファッションとメイクの切っても切れない密接な関係。そんな結びつきの強さがわかるファッションショーのバックステージをレポート。今回は、合同展示「トラノイ トウキョウ(TRANOÏ TOKYO)」で開催された「パイオニア デニム(PIONEER DENIM)」の2027年春夏コレクションのバックステージをレポート。メイクアップは「M•A•C」チームが手掛け、同ブランドのシニア アーティストの池田ハリス留美子氏が統括。ヘアは、サロン「トニーアンドガイ ジャパン(TONI&GUY JAPAN)」CEOの雑賀英敏氏が指揮した。今回のメイクにおける特徴や、私たちが“真似”できるポイントなどを聞いた。

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Image by: FASHIONSNAP

「パイオニア デニム」2027年春夏コレクション
パイオニア デニムは、バングラデッシュを拠点に糸からデニム生地、縫製、洗いまでを一貫して手がける垂直統合型のデニムメーカー。次世代素材の開発や、環境負荷を抑えた製造技術を追求している。同コレクションでは、エイジング加工や、ブリーチ加工など、長年培った生産・加工技術を落とし込んだアイテムが登場した。

メイク:池田ハリス留美子氏

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◾️池田ハリス留美子
東京を拠点に活動するメイクアップアーティスト。「M•A•C」のシニア アーティストとして国内外のファッションショーや広告など、幅広い現場で活躍している。現在はパリやニューヨーク、東京などのコレクションでバックステージに参加するほか、セミナーやメイク提案を通じてブランドのクリエティブを発信している。Instagramは@rumikoikedaharrismakeup

嵐の中を前に進む女性を表現

⎯⎯ 今回のランウェイにおけるメイクアップテーマを教えてください。

 今回のテーマは「ストーム(嵐)」。デニムが持つタフさやストリート感を軸に、嵐の中を前へ進む女性を表現しました。

 デニムの素材感を生かしながら、ラインはあえて完璧に引き切らず、境目を少しずらすように仕上げています。大胆な印象の中にも、デニムの微妙な折れや抜け感と呼応するようなニュアンスを加えました。

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⎯⎯具体的にメイクのどこに落とし込みましたか?

 アイラインやリップには強い色を使い、ストリート感とタフさを表現しました。一方で、肌は作り込みすぎず、素肌のようなリアルな質感を残しています。

 すべてのパーツを強調するのではなく、どこをドレスアップし、どこをドレスダウンするかを意識しました。今回は目元と口元をポイントにし、それ以外はクリーンに抑えることで、全体のバランスを取っています。

⎯⎯ 特に難しかった点は?

 事前の情報が限られているなか、現場で手探りしながら方向性を築き上げたことです。チーム全員が同じイメージを共有しながら、デザイナーの意図を受け取り、ジャズのセッションのように仕上げていきました。

 どこまで強く見せるのか、どこで抑えるのか。そのギリギリのバランスを探る作業が、今回の大きなチャレンジでした。

⎯⎯ ヘア・メイクの間では、どのようにコミュニケーションを心がけましたか?

 今回は、力強いアイラインを仕上げるプロセスなど、メイクにおいて極めて繊細な集中力が求められる場面がありました。そういうときは、ヘアも同時に手を入れようとするのではなく、メイクの進行状況に応じて動いてもらうなど、お互いがスムーズかつ心地よく作業できるタイミングや間合いを図ることを大切にしていました。

 また、ショーを絶対に成功させたいという思いがあるからこそ、必要なことは遠慮せずに伝えるようにしています。雑賀さんの仕事に対する姿勢は、ロジカルに美しいものをつくること。私もその姿勢を見習い、雑賀さんの意図をくみ取りながら、ヘア・メイクをより良くするために何ができるかを考えています。互いの仕事を尊重し、意見を出し合いながらベストを尽くすことが、ケミストリーにつながっているのだと思います。

アクセントカラーは“バランス”が大切

⎯⎯ アイラインと黒いリップが印象的でした。

 強いアイラインは、前へ進んでいくスピード感や、風が流れるような動きを意識しています。ラインをきれいに整えすぎず、少しスライドさせることで、ストリートらしい崩しを加えました。

 黒いリップは、ぼかしてしまうとメッセージが弱くなるため、輪郭をきちんと取って仕上げています。アイライナーとリップを揃えたのは、靴とバッグを合わせるような感覚です。たまにはセットアップでもいいんじゃないかという私からのメッセージでもあります(笑)。

⎯⎯ 今回のキーアイテムを教えてください。

 「M・A・C スタジオ ラディアンス セラム クッション ファンデーション SPF50+」(全7色、ケース付き7700円、レフィル5830円)です。表面に何かを重ねたような艶ではなく、内側から発光するような、自然でリアルなツヤを作ってくれます。軽くさらっとしていて肌になじみやすく、日常にもランウェイにも使える質感です。強いアイラインやリップを生かすためにも、ベースメイクは丁寧に仕上げる上で、重宝しました。

⎯⎯ 今回のランウェイメイクで普段に活かせるポイントはありますか?

 バランスですね。アクセントとして強い色を目元に使うときは、肌をできるだけクリーンに整えることで、際立たせることができます。黒いリップのような印象的な色も、ほかのパーツを抑えれば、クラシックで洗練された雰囲気に仕上がります。

ヘア:雑賀英敏氏

◾️雑賀英敏
ヘアサロン「トニーアンドガイ ジャパン」の代表を務めるヘアスタイリスト。1996年に渡英し同社に入社後、インターナショナルアーティスティックチームの一員として世界各地のファッションショーやコレクションのバックステージに参加。ロンドンアカデミーで教育にも携わった経験をもつ。帰国後は日本法人を率いながらショーやヴィジュアル制作、セミナーなどを通じて国内外でヘアデザインを発信する。Instagramは@hsaiga

アグレッシブさと完璧すぎない崩し

⎯⎯ ヘアのテーマを教えてください。

 メイクと同じく、「ストーム」がテーマです。嵐の中を歩き、雨や風に打たれ、セットが崩れてしまったような状態をイメージし、完璧すぎない崩しを入れました。

⎯⎯ 今回のルックは、ヘアスタイルから力強さが伝わってきました。どのような意図で作り上げられたのでしょうか?

 オールバックをベースに、前髪を後ろへ流し、風を受けたような動きを加えています。ただ乱れているだけではなく、クリーンな部分を残しながら、ウェットな質感とドライな質感を組み合わせています。デザイナーがモデル1人ひとりに、「怒りを持って歩いてほしい」と話す姿を見ていたので、そういうアグレッシブなニュアンスも追加しました。

⎯⎯ 難しかった点は?

 ラフさと、整いの塩梅ですね。ただ髪を乱すだけではボサボサに見えてしまいます。健康的な髪の状態をつくったうえで崩すことが、最も重要で難しいポイントでした。

⎯⎯ あえてアンバランスにしているようにも見えました。

 ヘアを大きくするのか、コンパクトにするのか。偏りを出すのか、出さないのか。そういったところを、意図的に毛束単位で調節しています。例えば、ヘアを大きくするのか、コンパクトにするのか。偏りを出すのか、出さないのか。そういったところを、意図的に毛束単位で調節しました。また、ドライやウェットといった質感のバランスにもこだわっています。

スタイリングは先に土台を作る

⎯⎯当日は雨でジメジメしており、スタイリングがやりにくい環境だったかと思います。どのように作っていきましたか?

 いきなりジェルやワックスをつけるのではなく、まずムースなどでベースをつくり、髪の流れを整えてから乾かします。その後、仕上げ剤を加えて質感を調整しました。先に土台をつくることで、自然に崩しやすくなり、スタイリングもしやすくなります。特に、湿度が高い環境だったため、時間の経過による髪の変化も計算しながら仕上げています。

⎯⎯ 日常にも応用できますか?

 もちろんです。特別な日のお出かけなどには、いきなりワックスをつけるのではなく、まず髪のコンディションを整えてから仕上げ剤を使うと、より自然でスタイリングしやすい形をつくれます。ムースはウェットな印象があるかもしれませんが、ドライなスタイルにしたい時には、つけた後に乾かせば大丈夫です。

 意外と土台の大切さは意識されていませんが、ショーでは仕上げを最後の15分ほどで一気に行う一方、その前の土台づくりにはかなり時間をかけています。日常のスタイリングでも、最後の仕上げだけでなく、その前のベースづくりを意識してみてください。

⎯⎯ 今回のキーアイテムは?

 「ダイソン(Dyson)」の「エアラップ マルチスタイラー&ドライヤー」(4万8500円)と、「アルティス(ULTYS)」の「リペアオイル」(80mL 4950円)です。ブラシがついたドライヤーは、オールバックにするときに重宝します。スタイリング技術を補助してくれるので、経験年数にかかわらず、同じ形に仕上げるうえでも助けになりました。オイルは、健康的な髪を崩すという上で、そもそもの髪の状態を整えるために使用しました。


最終更新日:

文・平松将

Sho Hiramatsu

FASHIONSNAP 編集記者

青山学院大学経営学部卒業後、大手事業会社を経て文化服装学院に入学。服作りを学んだ後にレコオーランドに入社。
ファッション、アート、カルチャーに加え、人々の暮らしなどにも関心を持つ。日課としてジャーナルとメモをつける記録愛好家兼トレーニー。骨格筋量41.4kg

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