
ファッションとメイクの切っても切れない密接な関係。そんな結びつきの強さがわかるファッションショーのバックステージをレポート。今回は、東京コレクションに参加した「ユウショウコバヤシ(yushokobayashi)」2027年春夏コレクションに潜入。
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Image by: FASHIONSNAP(Koji Hirano)
ユウショウコバヤシ 2027春夏コレクション
人魚姫の物語に着想を得た「Mermaid’s Tears」をテーマに、海の底から地上へと憧れる心と、その先に待つ喪失や痛みを描いたコレクション。デザイナーの小林裕翔が昨年、ファッションアワードの受賞時に「ずっと地下にいると思っていた」と言われた経験を起点に、自らの現在地を“海の底”に重ね、憧れの世界へ進むために払う代償を表現した。ホワイトや淡いブルー、ピンクを基調に、軽やかなコットンニットや立体的なカッティングを組み合わせ、手描きの花や動物、楽器などの“塗り絵”モチーフを随所にプラス。フィナーレでは、自由を手にする一方で痛みを負う人魚姫の姿を描き、物語の余韻を残した。
メイク:丸谷美樹氏
2019年に資生堂へ入社。資生堂ヘアメイクアップアーティストとして、広告や媒体撮影、トレンドメイク・ヘアの提案など幅広く活動する。2023年からUDA氏に師事し、2025年に独立。メイクとヘアの両面から、アーティスティックな視点を取り入れたデザインを提案している。Instagramは@ovmk
「涙とまつげ」が象徴するもの
⎯⎯ 今回のメイクアップのテーマを教えてください。
ユウショウコバヤシの今回のコレクションテーマが「Mermaid’s Tears」ということで、デザイナーが描いている物語をより立体的に表現するため、涙をメイクアップの軸において、「人間に憧れる後先を考えない無鉄砲で少し生意気な人魚の女の子」を作りたいと考案しました。この涙は、レジン(光や化学反応で固まる透明の液体素材)で手作りしているんです。

⎯⎯ レジンのパーツは、どのように仕上げたのでしょうか?
クリアファイルの上にレジンを流し、実際に垂れ具合を調整しながら硬化させています。それぞれのパーツの形・長さ・垂れ具合を変えて作り分けていて、さらに大きさの異なるラメや偏光ラメを混ぜ込んで、色や輝き方も微妙に異なるように調整しました。こうして作ったパーツを、つけまつげ用の糊でのせています。


⎯⎯ モデルによって涙の形が違いますね。
はい。顔の造形や衣装、そのモデルが持つ雰囲気に合わせて繊細な涙を流したり、大泣きしているように見せました。涙が流れ出る目元の印象を強くしたかったので、下まぶたにエッジのあるつけまつげを付けています。下まつげだけを際立たせることで儚い少女らしさを残しつつ、生意気さも生まれると思い、トライしてみました。
⎯⎯ まゆげも淡い仕上がりです。
顔全体のムードとして、反骨心や野暮ったさを取り入れたくて赤みやオレンジみが抜けきれていない昔のブリーチ眉のように仕上げました。眉の印象を抜くことで、ヘアやまつげを際立たせる役割もあります。
今回は「フジコ(Fujiko)」の「マジカルアイブロウカラー 05 アプリコットベージュ」を使用しています。




「泣いた赤み」を再現 日常でも活きる技
⎯⎯ ランウェイメイクとして個性的な部分がありつつも、日常にも取り入れらるポイントがある印象を受けました。
作り込んだ完璧なメイクアップを目指すのではなく、あくまで「透明感のあるアジア人の素肌を生かした肌作り」を意識し、肌のベース自体はとても薄づきに仕上げています。そこにクリームチークで赤みのある血色を与え、感情が昂った時の高揚感やピュアな様子を表現しています。
⎯⎯ チークはどのように入れているのでしょうか?
頬・鼻先・目の下・顎先・人中あたりに入れています。これは泣いている時に赤みが出る部分を想定していて、涙というテーマともつながっています。グラデーションを均一に入れるというよりは、あえてボケ足をムラっぽくさせることで自然な体温を感じられます。

⎯⎯ 普段のメイクにも取り入れられる要素ですか?
フレッシュで可愛らしい印象が欲しい時には、チークの入れ方はすぐに取り入れられると思います。下まつげのボリュームアップや、眉を普段より明るくすることでちょっとした変化を楽しむことができます。マスカラ1本で挑戦できます。
ヘア:nanako azuma氏
2019年にヘアスタイリストのJun Goto氏より独立。現在は東京をベースに定期的に渡仏をしながら、ウィメンズ・メンズを問わず、国内外のファッション誌や広告等幅広く手掛ける。Instagramは@nanakohair___
人魚とパンキッシュ、2つのイメージを1つのヘアに宿す
⎯⎯ 今回のショーでは、とても印象的なウェーブヘアが目を引きました。
コレクションテーマが人魚姫から着想があり、今までのユウショウコバヤシのショーにはなかったバンドアーティストを採用していることに新鮮な印象を受け、そこからインスピレーションが広がりました。そこで、パンキッシュな雰囲気と人魚姫の世界観をうまくミックスできればと思ったんです。
前髪はパツッと短めにカットしつつ、ギザギザに仕上げることでリズム感を出しています。さらに色の違う前髪を部分的に付けて、鱗のような質感を表現。デザイナーから「人間になりたくて頑張って変身した感が可愛い」というコメントをいただき、その観点が印象的でさらにイメージが湧きました。

⎯⎯ 後ろに付いているアイテムも気になりました。エクステですか?
エクステと、衣装に使われている毛糸を組み合わせて作ったものです。後ろ姿にもう少し表情が欲しいと思って急きょ制作したのですが、ベールのようにふわっとかぶる感じにしたくて。大きく編んだ毛糸をかけると、それが人魚の宝物みたいにも見えてきませんか?

⎯⎯ モデルの髪に施されたウェーブは、日常でも再現できますか?
三連ウェーブアイロンがあれば意外と簡単ですが、自宅にあるストレートアイロンやカールアイロンで代用する場合は少し時間がかかるかもしれません。
今回のウェーブは波が細かいので、通常のアイロンで再現しようとすると、1ヶ所ずつ丁寧に角度を変えながら挟んでいく必要があります。

「1回に挟む毛束は大体このくらい。今回のヘアでは細かくカールをかけていますが、自宅で挑戦する場合は、もう少し大胆な巻き方でゆるやかなウェーブを目指すのが良いかもしれません」(nanako氏)
「大きく作る」潮流が、最前線で動き始めている
⎯⎯ ヘアスタイルのトレンドについて、最近感じていることはありますか?
日常のスタイルとはまた少し違うかもしれませんが、撮影の現場ではヘアを大きく作ったり、少し印象づけることを求められます。少し前まではナチュラルなテクスチャーや写真全体になじませるようにバランスをとるヘアを作ることが多かったのですが、最近は大きめのフォルムや少し違和感をつける機会が増えていますね。今回のショーには大きくわけて2つのヘアを作ったのですが、もうひとつの大きなボブヘアのスタイルは、そのトレンドも取り入れながら、ランウェイが単調にならないようにできるいいアイデアなのではと思い提案しました。
また、ユウショウコバヤシにはブレないコミュニティがあり、その唯一無二な世界観を大切にしながら、ヘアやメイクで世界観とトレンドがうまく調和できる役目になるといいなと思いながら、いつもヘアデザインを考えています。

ヘアはモデルの顔つきに左右される
⎯⎯ 今回のコレクション含め、さまざまなモデルのヘアを作る際はどのようなことを意識していますか?
とにかく顔をよく見ます。頭の形、おでこの形、そして髪が少し動いたときにどう顔が見えるか。例えば同じパツンとした前髪でも、シャープに見える人もいれば、幼く見える人もいます。その違いを鏡の中で探し出すことが、何より大切だと思っています。鏡をよく見ながら「このモデルにこの髪型をしたらどうなるか」を常にイメージする、その作業が一人ひとりのヘアを作る土台になっています。

⎯⎯ 同じテーマの中でも、モデルさんによって微妙な違いが生まれているということですね。
そうです。テーマは共通していても、その人の顔立ちに最も映えるかたちは異なります。そこを丁寧に見ていくことが、ヘアスタイリストとしての仕事だと思っています。
photography: FASHIONSNAP(Ippei Saito)
最終更新日:
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