
Image by: FASHIONSNAP
古着の楽しみ方は、人それぞれ。でも、だからこそ「どう楽しめばいいのか、わからない」という人も少なくないのでは。連載「ようこそ古着沼へ」では、古着を愛し続けてきた玄人たちが見出した、その人ならではの古着の楽しみ方を紹介します。
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連載のホストを務めるのは、「ブーン(Boon)」をはじめとするファッション誌でライターやエディターとして活躍してきたアクタガワタカトシさん、全国に店舗を展開する古着屋「フラミンゴ(Flamingo)」代表の植木勝也さん、東京・原宿の老舗古着屋「ベルベルジン(BerBerJin)」の店長としてシーンを牽引する藤原裕さんです。
なぜか青が見つからない空母の作業服
──前回は、皆さんが古着に関する仕事を始めるきっかけとなったアイテムについてお話いただきました。連載2回目となる今回は、今ハマっている古着をご紹介いただきます。まずは植木さん、お願いします。
植木勝也(以下、植木):いきなりマニアックなアイテムで恐縮ですが(笑)、僕がずっと収集し続けている、US NAVY(アメリカ海軍)のデッキクルージャージーとベストです。フライトデッキクルーと呼ばれる空母の甲板作業員の制服で、このカラーバリエーションの多さから「カラーギャング」とも呼ばれています。

植木「最初に買ったのはイエローのジャージーで、確か500円くらいでした」
藤原裕(以下、藤原):凄い量ですね(笑)。
植木:詳しく説明しちゃってよろしいでしょうか(笑)。カラーは全部で7色ありますが、色によって役割が違うんです。白は現場監督のような役割で、安全管理や品質検査を担当しています。紫は給油。茶色が一番レアで、航空機のメンテナンスやオペレーションなどをする人。黄色は誘導担当で、着艦する航空機に指示をする人。赤が危険物の管理や火災時の消火、救護などを行う人。緑はカタパルトなどの保守や運用をする人です。そして、青が機体の移動や車輪の固定などを行う人。ハードな肉体労働が中心なので、配属されたばかりの若手が担当することが多いそうです。いわゆる“下っ端”ですね。
アクタガワタカトシ(以下、アクタガワ):そこまで細かく決まっているんですね。

フライトデッキクルーの仕事模様は映画「トップガン」のオープニングシーンでも描かれている
──青が下っ端ということは、市場で出回っている数が多いんですか?でも、今回は青のジャージーはお持ちいただいていないようですね。
植木:青は特にレアって訳ではないんですが、何故か僕には見つけられないんです。1970〜80年代の青が欲しくてこの15年間ずっと探し続けているのに、一着も手に入れられていません。ですので、この記事を読んでいる方が見つけたら、是非僕に教えてください(笑)。
──アイテムごとにボディに施されているステンシルが違いますね。
植木:ステンシルは、所属する空母とその人のランクを表しています。ランクはE1からE9までの9段階で、E1〜3は下級兵、E4〜6は現場のチームリーダーやベテラン勢である下士官、そしてE7〜9は現場と幹部を繋ぐチーフ的な役割の上級下士官。例えば、この「SCPO」というステンシルはE8の上級兵曹長(Senior Chief Petty Officer)を表していて、かなりレアなアイテムです。

植木「『SCPO』より偉いのが『MCPO』(Master Chief Petty Officer・最上級上等兵曹)です」
植木:「T」はトレーニング、つまり実戦部隊を育てる学校に所属している人であることを表しており、これもなかなか出てきません。僕は車やバイクが好きなので、冬場はこのジャージーの上にオイルドジャケットを羽織り、ボトムスにペインターパンツなんかを穿いて運転を楽しんでいます。

LSOは着艦指導官(Landing Signal Officer)を表す

植木:ベストも同じく7色展開なんですが、あの「コールマン(Coleman)」*が作った個体もあるんですよ。コールマンが、「スターンズ(STEARNS)」**というアウトドア系の会社を買収した時期に、軍からのオーダーを受けて納品していたみたいです。
*1900年に米国でランプのリース業者として創業。その後ストーブやクーラーボックスをはじめとするアウトドアグッズやアパレルの製造も手掛けるようになった。
**1927年に自動車用品メーカーとして創業。1940年代からライフジャケットなどのマリングッズや、アウトドアグッズなどを手掛けるようになった。2008年にコールマンの親会社が買収。

植木「ベストはパイピングがあるものと、ないものが存在しています」

植木:このベストには救命胴衣の役割もあって、海に落ちたら水を感知してガスが膨張することで、浮力を確保できるようになっているんですよ。この緑のベストはデッドストックなので、着用する前に取り外す黄色いラベルが付いています。ラベルには「膨張装置とバッテリーを用意する必要がある」というような注意書きが記載されています。

藤原「こういうタグを見ると、テンションが上がりますよね」

──ジャージーとベストを一緒に着るときは、それぞれの色を合わせているんですか?
植木:はい、色は絶対に合わせるようにしています。今一番気に入っているのは緑色ですね。緑色はフェード(褪色)すると、とても雰囲気が良くなるんですよ。今日持ってきているなかで最も古いのが1972年のもの。ベトナム戦争の頃ですね。僕は1960年代のものも所有していますが、光沢のあるレーヨン系の生地や、低い襟、ベルクロのディテールなど、仕様がかなり違います。その後、70年代になると生地は伸縮性のあるコットンジャージーに、襟もモックネック型になります。市場には1970〜80年代のものが多く出回っていますね。時代によって襟の仕様が異なっていて、時代が浅くなればなるほどネックが長くなるんです。最近製造されたものはタートルネックみたいになっているほか、難燃素材の生地が用いられるなど、機能面でも進化が見られるのが面白いです。

植木「昔からステンシルが入ったアイテムが大好きでした」
植木:古着でも、同じアイテムでこれだけのカラーバリエーションがあるのって珍しいと思うんですよ。そして、なかなか市場に出てこない希少なアイテムにも関わらず、それほど高価ではない。レアなステンシルが入っているものなど、一部の古いジャージーは数万円することもありますが、年代や希少性にこだわらなければ、数千円で買えます。ベストはフラミンゴだと1万5800円くらいで販売してます。
藤原:ベルベルジンでも同じくらいで出してますね。
植木:ですので、集め甲斐があると思いますよ。是非皆さん集めてみてください(笑)。
ハマり続けている永遠の定番、チャンピオン
──続いては藤原さん、お願いします。
藤原:「今、ハマっている」というよりも「長年ずっとハマり続けている」と表現したほうが正しいかもしれません。僕の永遠の定番ブランドである「チャンピオン(Champion)」のリバースウィーブ(REVERSE WEAVE)です。

藤原「チャンピオンは古着を着るようになった頃からずっと好きです」
藤原:地元の高知から一緒に上京してきた友達が3人いるんですが、そのひとりから「太って着られなくなってしまったリバースウィーブが何着かあるので、ベルベルジンで販売してもらえないか?」と連絡がありまして。その中のひとつがこの黒のリバースウィーブなんですが、実は僕がその友達の20歳の誕生日プレゼントとしてあげたものなんです。僕は当時、5800円くらいで買ったはずです。
植木:それが今では10万円以上になっていますもんね。

藤原「黒はヴィンテージ古着では希少なので、基本的に人気が高いんです」
藤原:チャンピオンのスウェットの多くは胸元に「C」のロゴ刺繍が施されていますが、これはその刺繍がないもので、古着業界では「目なし」と言われます。大学のスポーツチーム名などをプリントするために製造されたものですね。チャンピオンのスウェットは時代によってタグの仕様が変わっているのですが、僕は1980年代のトリコタグ*のリバースウィーブが特に好きなんです。チャンピオンのスウェットは買っては売ってを繰り返して、今手元にあるのはかなり厳選した40枚ほどです。
*1980年代に製造されたアイテムに付く、青・白・赤のトリコロールカラーでデザインされたタグ

藤原「胸にも袖にもロゴ刺繍がないものも『目なし』と呼ばれています」
藤原:Tシャツは、デカラン*タグが付いた1950年代のもの。ベルベルジンで働き始めた22歳のときに、常連さんが10枚くらいチャンピオンを持ってきてくれたんですが、「これはプリントが入っていないから安くでいいよ」と言って、7800円で売ってくれたんです。そのとき初めて実物のデカランを見たので、とても興奮したことをよく覚えています(笑)。
*1930〜50年代に製造されたアイテムに付く、ランナーがあしらわれた大きいサイズのタグ

デカランタグのアイテムは年代が古いこともあり非常に希少
藤原:チャンピオンのTシャツは本当に大好きで、200枚以上所有していたんですが、ベルベルジンの10周年記念と15周年のときに、うちの社長から「周年記念なんだから、お前が持っている良いチャンピオンを出せよ」と言われまして(笑)。そのときに染み込みプリント*など、希少なアイテムを数多く出しました。でもこれはお客さまから譲っていただいたという思い出もあるので、特に大事にしていますね。
*水性インクを繊維の内部まで染み込ませたプリント技法

藤原「『目なし』は大学生協でも売られていたことから、英語で大学生協を意味する『ブックストア』とも呼ばれています」
アクタガワ:裕君の結婚式で過去の写真を編集したムービーが流れたんですが、裕君はほぼ全ての写真でスクール系のプリントが入ったグレーのチャンピオンを着てたよね(笑)。
藤原:好きなんですよ、本当に(笑)。最近は、これまで集めてきたヴィンテージを参考にした復刻版の企画に関わらせてもらうようになりました。チャンピオン愛好家として、大変名誉なことだと思っています。
100足以上所有していたチャックテイラー
──もう一点は、リバースウィーブと同じく永遠の定番アイテムと言われる「コンバース(CONVERSE)」の「チャックテイラー(CHUCK TAYLOR)」ですね。
藤原:東京に出てきた18〜19歳くらいのときに、高円寺の古着屋で買ったものです。当時、「ロッドマーズ(ROD MARS)」という古着屋さんがあったんですが、その店舗の奥にあった小さな古着屋さんで、ワゴンセールになっていたのを購入しました。US 11〜13(約29〜31cm)という大きめサイズしかなかったんですが、5800円均一。僕は10がジャストなんですが、12くらいまではなんとか履ける。あと、あの頃はあえて大きいサイズのスニーカーを履く「デカ履き」が関西を中心に流行っていて、それにちょっと憧れていたというのもありました。

植木「このパープル、凄くいい色ですよね」
藤原:僕はそのとき、このパープルの他にレッドとマスタードを買いました。もっと買いたかったのですが、お金がなくて。その次の週に、同じ高知県出身の同僚をその古着屋に連れて行って、「お前も買っておけば?」と3足くらい買わせました(笑)。でも、その後同僚はほとんど履かなかったので、僕が買い取って。同僚が履いたユーズドだということで、5000円で譲り受けました(笑)。
一時期はチャックテイラーを100足以上所有していましたが、そんなに多く持っていても、僕の生涯で履くことはないだろうと(笑)。今手元にあるのはホワイトとレッドと、このパープルの3足だけ。パープルはトゥが硬化してカチカチになっていますが、手放せないですね。やはりスニーカーは「リーバイス(Levi’s)」の「501」に合うようなベーシックなデザインのものが好きです。

藤原「昔は『ヴィンテージを数多くを所有している人が勝ち』みたいな雰囲気がありましたね」
“ボロ”に目覚めるきっかけとなったスウェットパンツ
──最後はアクタガワさん、お願いします。
アクタガワ:前回植木くんが“ボロ”を色々紹介してくれましたが、僕が初めて「ボロっていいな」と感じたのがこの「プーマ(PUMA)」のプリントが入った「スプルース(SPRUCE)」のスウェットパンツです。「ジャンピン ジャップ フラッシュ(JUMPIN' JAP FLASH)」で3000円くらいだったと思います。今は中目黒にお店がありますが、1990年代は麻布で卸売をやっていて、僕はそこでスニーカーの値付けの手伝いをしていたんですよ。このパンツは、お店で普通に買ったのか、値付けのギャラ代わりに貰ったのかは覚えていないんですが(笑)。

アクタガワ「このパンツはポケットがなくて不便なので、あまり穿いていません(笑)」

──ブランドロゴが大きく入っていますが、このスウェットパンツに合わせるシューズはどう選んでいますか?
アクタガワ:プーマのスウェットに「アディダス(adidas)」のスニーカーだと食い合わせが悪い*ですよね(笑)。だから、「ニューバランス(New Balance)」とか。プーマのウェアにプーマのシューズを合わせるのは、ちょっと気恥ずかしいですね。
──気恥ずかしいという感覚、とてもよくわかります(笑)。
アクタガワ:日焼けしたネイビーのスウェットは「ヴォイス(VOICE)」**で買ったものです。1万円くらいだったかな。実は一度、フェードが気になってダイロンで染めたんですが、着ていたらまた色が抜けてきて。最初はもっと色が薄かったんですよ。
*「ダスラー兄弟商会」を創業・共同経営していた兄弟が仲違いをして、兄のアドルフ・ダスラー(Adolf Dassler)がアディダスを、弟のルドルフ・ダスラー(Rudolf Dassler)がプーマをそれぞれ立ち上げた。
**「N.ハリウッド(N.HOOLYWOOD)」のデザイナー尾花大輔も勤務していた原宿の老舗古着屋。2014年に閉店し、跡地では現在「ベルベルジン コレクティブ(BerBerJin Collective)」が営業している。

フロントの首元に汗止めのガゼットがあしらわれた「前V」と呼ばれるディティール

植木:1990年代にこんなにフェードしたスウェットを売っていたのは珍しいですね。あの頃だと、これだけフェードしたアイテムはピック(買い付け)すらしなさそうです。
アクタガワ:当時はそうでしたね。でも、モノ自体は希少なヴィンテージだから、店頭に置いていたんでしょうね。

アクタガワ:ボロ繋がりで言うと、今着ているシャツは最近買ったものですが、ちょうどいい具合のボロって見つけるのが難しいんですよ。ボロを着るときは、「グッチ(GUCCI)」のようなラグジュアリーブランドのアイテムと合わせたりして、バランスを取るようにしています。
植木:トップスのボロはいいんですが、ボトムスのボロは難しいですよね。





アメリカのワークブランド「ビッグ ジェス(BIG JESS)」のシャツ
古着屋ビジネスの基礎はフリマで学んだ
アクタガワ:先日、世田谷公園のフリーマーケットで見つけたボロの1950年代のパンツが良かったんですが、値段を見ると思っていたよりもかなり高くてびっくりしてしまいました。
植木:1990年代、世田谷公園のフリマは穴場でしたよね。
アクタガワ:世田谷公園で安く買ったものを、明治公園のフリマで転売しているヤツもいたね(笑)。あと東急文化会館*の屋上でやってたフリマもあったよね。
植木:あそこは良かったですよね。僕らの年代の古着屋はみんなフリマ出身ですよね。フリマで商売のイロハを覚えました。ミッチー**もクリちゃん***もフリマ常連組。ミッチーは中学生のときからフリマに来てたよね。
──皆さんは今もフリマに行ったりするんですか?
植木:出店は久しくしていませんが、日本でもアメリカでもフリマにはよく行きますよ。やっぱり楽しいですね。お店の什器をフリマで買うのが大好きなんですよ。
アクタガワ:今は大井競馬場のフリマがアツいみたいですね。古着がまた盛り上がっているように、フリマカルチャーもまた脚光を浴びるかもしれないですね。
*1956年に開業した商業施設。2003年に閉業し、跡地に2012年に渋谷ヒカリエが開業した。
**古着屋「デザートスノー(DESERT SNOW)」鈴木道雄 社長
***古着屋「ミスタークリーン(Mr. Clean)」 栗原道彦 店主

連載のイントロダクションとしてお届けしたアクタガワさん、植木さん、藤原さんによる鼎談は今回でおしまい。次回からはゲストを迎え、4人でよりディープな古着トークをお届けします。お楽しみに!
最終更新日:
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