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2026年秋冬オートクチュールを総括──手仕事とテクノロジーを融合、新時代のラグジュアリーへ

小湊千恵美

 歴史あるオートクチュールの世界に変化が訪れている。最高峰の技術による仕立てや華やかな世界観はそのままに、より現代的な視点で最先端のもの作りへと進化。7月にパリで開催された2026年秋冬オートクチュールファッションウィークでは、各メゾンが提示する新たなラグジュアリーの輪郭が、より鮮明になった。今シーズンを象徴する4つのキーワード「クチュールメゾンの新時代」「手仕事とテクノロジーの融合」「物語が宿る服」「クチュールという彫刻」を軸に、主要メゾンのコレクションを総括する。

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クチュールメゾンの新時代

 新クリエイティブディレクターによる注目のオートクチュールデビューとなったのは2ブランド。「バレンシアガ(BALENCIAGA)」は、ピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)の就任から1年を経て、同氏が手掛けるオートクチュールコレクションのデビューに至った。

BALENCIAGA

Image by: ©Launchmetrics Spotlight

 創設者クリストバル・バレンシアガのシルエットを継承しつつ、新たな技術を取り入れて再定義。ピッチョーリならではの鮮やかな色彩と、ワードローブの視点でポケットといった機能性を取り入れるなど、現代の“ネオ・クチュール”を創造した。

 「ジャンポール・ゴルチエ(Jean Paul Gaultier)」を手掛けるデュラン・ランティンク(Duran Lantink)初のオートクチュールでは、創設者ゴルチエの象徴的なコードを、3Dプリントなどを用いて挑戦的なフォルムに仕立て直した。

Jean Paul Gaultier ©Launchmetrics Spotlight

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Jean Paul Gaultier 2026年秋冬オートクチュールコレクション

2026 AUTUMN WINTER HAUTE COUTURE COLLECTIONルックブック

 また、「シャネル(CHANEL)」、「ディオール(Dior)」、そして「ジョルジオ アルマーニ プリヴェ(GIORGIO ARMANI PRIVÉ)」は、それぞれ新クリエイティブディレクターによる2シーズン目のオートクチュールコレクションを披露。デビューシーズンからさらに一歩進んで、メゾンとアトリエが描くヴィジョンを色濃く示している。

GIORGIO ARMANI PRIVÉ

Image by: Courtesy of Giorgio Armani

GIORGIO ARMANI PRIVÉ 2026年秋冬オートクチュール

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GIORGIO ARMANI PRIVÉ 2026年秋冬コレクション

2026 AUTUMN WINTER HAUTE COUTURE COLLECTIONファッションショー

手仕事とテクノロジーの融合

 オートクチュールの手仕事と、最先端のテクノロジーが出合った。近未来的な表現で知られる「イリス ヴァン ヘルぺン(Iris Van Herpen)」は、ドレスのパーツに発生させた稲妻や、物質の第4の状態であるプラズマをデザインとして取り入れ、サイエンスとクチュールを融合させた。「スキャパレリ(Schiaparelli)」は伝統的なオートクチュールの技法に合成素材を取り入れ、またLEDにより光るボディスなど、実験的な表現を試みている。

Iris Van Herpen ©Launchmetrics Spotlight

Iris Van Herpen  2025年秋冬オートクチュール

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Iris Van Herpen 2026年秋冬オートクチュールコレクション

2026 AUTUMN WINTER HAUTE COUTURE COLLECTIONファッションショー

Schiaparelli ©Launchmetrics Spotlight

Schiaparelli 26年春夏クチュール

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Schiaparelli 2026年秋冬オートクチュールコレクション

2026 AUTUMN WINTER HAUTE COUTURE COLLECTIONファッションショー

 バレンシアガは、モデルの身体を3Dデジタルスキャンし構造に反映。コルセットなどの装具を用いずとも、身体にフィットしつつ浮遊するようなシルエットを実現した。また、バイオエンジニアリングによる再生可能なシルク代替素材「AMSilk」といった先進素材を導入している。

BALENCIAGAのAMSilkを用いたドレス

Image by: ©Launchmetrics Spotlight

 日本から唯一、パリのオートクチュールにゲストデザイナーとして参加している「ユイマ ナカザト(YUIMA NAKAZATO)」は今シーズン、デビューから10周年を迎えた。パーツを組み上げて縫製せずに仕上げる、ブランドならではの革新的な服作りを陶器を用いて表現。また今回はエプソン(EPSON)とYKKとの取り組みにより、廃衣類を再生したファスナーを用いて、循環型クチュールの可能性に挑んだ。

YUIMA NAKAZATO ©Launchmetrics Spotlight

YUIMA NAKAZATO 26年秋冬

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YUIMA NAKAZATO 2026年秋冬オートクチュールコレクション

2026 AUTUMN WINTER HAUTE COUTURE COLLECTIONファッションショー

物語が宿る服

 マチュー・ブレイジー(Matthieu Blazy)が手掛けるシャネルの着想源となったのは、「ジャックと豆の木」や「3びきのくま」といったおとぎ話。「オズの魔法使い」の“かかし”を思わせるスタイルも登場した。シルクモスリンをベースとした軽やかな仕立てのスーツやドレスに、ギピュールレースや刺繍を重ね、繊細なディテールやアクセサリーに至るまで、夢のような物語性が宿っている。

CHANEL ©Launchmetrics Spotlight

 香港出身の「ロバート ウン(ROBERT WUN)」は、「CHILDSPLAY(子どもの遊び/たわいもないこと)」をテーマに無垢な本質と向き合った。飛び散った絵の具を刺繍で表現し、幾何学的なフォルムは折り紙や積み木のよう。計300個以上の風船を飾ったラスト2ルックは、喜びに溢れながらも脆く儚い子ども時代を象徴している。

ROBERT WUN ©Launchmetrics Spotlight

ROBERT WUN 26年秋冬クチュール

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ROBERT WUN 2026年秋冬オートクチュールコレクション

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クチュールという彫刻

 ディオールは、クリエイティブディレクターのジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)が敬愛するアメリカ人彫刻家リンダ・ベングリス(Lynda Benglis)から着想を得た。作品に見られるプリーツや、1970年代に発表された「ピーコック(Peacock)」シリーズの扇とチャームなど、素材やフォルムをオートクチュールに置き換えて探求している。

Dior ©Launchmetrics Spotlight

 ジョルジオ アルマーニ プリヴェはコレクションの後半で、幾何学フォルムをイヴニングドレスに取り入れた。また、アーカイヴのシルエットを踏襲しながらも内部の構造から刷新したバレンシアガ、クラシカルなドレスに捻りを加えてデフォルメしたジャンポール・ゴルチエなど、彫刻的なアプローチが際立つシーズンとなった。

GIORGIO ARMANI PRIVÉ

BALENCIAGA

Jean Paul Gaultier

©Launchmetrics Spotlight

最終更新日:

文・小湊千恵美

Chiemi Kominato

FASHIONSNAP ファッションディレクター

山梨県出身。文化服装学院卒業後、アパレルデザイン会社で企画、生産、デザイナーのアシスタントを経験。出産を経て、育児中にウェブデザインを学びFASHIONSNAPに参加。レコオーランドの社員1人目となる。編集記者、編集長を経て、2018年よりラグジュアリー領域/海外コレクションを統括するファッションディレクターに就任。年間60日以上が出張で海外を飛び回る日々だが、気力と体力には自信あり。

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