

毎年7月のパリ・オートクチュール・ファッションウィーク期間中、各ジュエラーは一年の創造性を凝縮したハイジュエリーコレクションを発表する。今年もまた、卓越したクラフツマンシップと豊かな創意が息づく新作が揃った。潮流として際立ったのは、希少なジェムストーンと鮮やかな半貴石が織りなす大胆なカラーパレット。そして、動植物や建築、神話などの具象的なモチーフを通して、メゾンならではの物語を描き出す表現である。加えて、幾通りにも楽しめるマルチウェア仕様もさらに進化。ハイジュエリーは、卓越した工芸品であると同時に、現代のファッションと軽やかに呼応する存在へと、その領域を拡げ続けている。
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注目7メゾンのマスターピース
ヴァン クリーフ&アーペル「エジプトの魅惑」
「ヴァン クリーフ&アーペル(Van Cleef & Arpels)」が、新作ハイジュエリーコレクションを通して開拓したのは、古代エジプトへの憧憬。1922年にツタンカーメンの墓が発見されたことで、ヨーロッパを中心にエジプトブームが起きた当時のアーカイヴからも着想を得て、ファラオや神々、スカラベ、そして古代エジプトの建築や装飾様式など、さまざまなアプローチで約180点もの作品群を作り上げた。
メゾンのシグネチャーである女性をモチーフにしたクリップは、なんとファラオとクレオパトラに変身。象形文字で秘密のメッセージを込めたというポエティックかつ遊び心あふれる作品も。

(左から)「ファラオ サクレ」クリップ〈RG、 WG、YG、ルビー、 ダイヤモンド〉 、「ミューズ エテルネル」クリップ〈WG、YG、ダイヤモンド〉いずれも参考商品
Image by: Van Cleef & Arpels

「ペイサージュ メルヴェイユー」ブレスレット〈YG、WG、サファイア、ブラックスピネル〉参考商品
Image by: Van Cleef & Arpels
ターコイズやラピスラズリ、カーネリアン、オニキスに加え、1944年に日本で初めて発見されたスギライトというオーナメンタルストーンをグラフィカルに組み合わせ、女神ハトホルへオマージュを捧げた意匠もユニークだ。

「ディスク ソレール」イヤリング〈YG×WG×スギライト×ダイヤモンド〉参考商品
Image by: Van Cleef & Arpels
ショーメ「自然を巡る旅」
創業者マリ=エティエンヌ・ニト(Marie-Étienne Nitot)の時代より続くメゾンコードである自然主義に基づき、単に自然を描写するにとどまらず、植物の香りやフレッシュさなど、その最も繊細な感覚まで余すことなくまでもをデザインに取り入れた「ショーメ(CHAUMET)」。
マダガスカル産の12.09カラットのサファイアをセンターに配したネックレスは、コーヒー豆、湯気や香り、そしてそこから生まれる芳醇な温かさの感情と感覚を表現したもの。芳醇なアロマを、曲線的なアシンメトリーシルエットで表現した大胆なデザインに、多様なセット技法のダイヤモンドがリズミカルに輝く。

「コーヒーアロマ」ネックレス〈WG、サファイア、ダイヤモンド〉2億5410万円(参考価格)
Image by: CHAUMET
ペッパーコーン(胡椒の実)をイメージしたティアラは、ショーメに代々伝わる「フィルクトー」技法によって、極限まで地金を細く繊細にすることで、先端のダイヤモンドがまるで宙に浮いているかのような視覚効果を演出している。

「ペッパーコーン」ティアラ〈WG、ダイヤモンド〉9724万円(参考価格)
Image by: CHAUMET
ヴァニラを自然かつフェミニンに解釈したブローチ。ペンダントトップとしても楽しむ ことができるようトランスフォーム可能な仕様。毎年登場する、ミツバチをモチーフに。

「ビー」ブローチ〈WG、YG、イエローダイヤモンド、ダイヤモンド〉4059万円(参考価格)
Image by: CHAUMET
ブシュロン「人間の多様な美」
「ブシュロン(BOUCHERON)」のクリエイティブ・ディレクター クレール・ショワンヌ(Claire Choisne)による自由なイマジネーションが発揮されるハイジュエリーコレクション「カルトブランシュ(白紙委任)」。今年は「ヒューマン ビーイング(人間)」をテーマに、人と人とのつながり、そして全ての人間が持つ多様な美しさを讃えるため、同一の形状のデザインのネックレスとリングに、全く異なる素材や技巧を取り入れて5つのセットを制作した。
中でも目を引く「レイン」は、卵の殻のように中を空洞にしたロッククリスタルの中に植物由来の特殊なレジンを流し込み、その中に4800石以上ものダイヤモンドをセットして固めることで、まるで宝石が宙に浮いているような視覚効果を演出したもの。マットに仕上げたピンククオーツの上から直接彩色を施した「フラワー」は、細密画家のアレクサンドラ・カルルによるもので、総制作時間は3290時間にも及ぶ。

「レイン」ネックレス〈WG、ロッククリスタル、ホワイトゴールド〉2億328万円(予定価格)
Image by: BOUCHERON

「フラワー」ネックレス〈WG、PG、PT、ピンククォーツ、ダイヤモンド〉2億8380万円(予定価格)
Image by: BOUCHERON
シャネル「幸運のシンボル」
コメット(彗星)やカメリアの花、太陽をはじめ、マドモアゼルが愛したシンボルを鮮やかに描き出した「シャネル(CHANEL)」の最新ハイジュエリー「シーニュ エ サンボル」。


Image by: CHANEL
象徴的なコメットをサイドに配した「アンプリメ バンドゥ」リングは、ダイヤモンドの輝きと、石座の側面にターコイズとクリソプレーズ、レッドラッカーをアクセントに添え、クラシックなデザインをモダンにアップデートさせた。センターに輝くのは、5.15カラット、Dカラー、フローレス、タイプ2aのエメラルドカットダイヤモンドだ。

「アンプリメ バンドゥ」リング〈PT、WG、ダイヤモンド、ターコイズ、 クリソプレーズ、レッドラッカー〉1億8953万円(参考価格)
Image by: CHANEL
マドモアゼルが生前こよなく愛したリオン(獅子)を描いたレリーフ状のモチーフが連なる「リオン マジストラル」は、上部を取り外してショートネックレスとして着用できるほか、取り外した2つのパーツはそれぞれシンメトリーなデザインのブレスレットとしても着用可能。センターにはコロンビア産の6.21カラットのノンオイル(=内部の傷を含浸処理していない)エメラルドをセットしている。

「リオン マジストラル」ネックレス〈YG、RG、PT、ダイヤモンド、エメラルド〉8億2687万円(参考価格)
Image by: CHANEL
ミキモト「宇宙の煌めき」
パリ・オートクチュール協会に正式に加盟する、日本で唯一のジュエラーである「ミキモト(MIKIMOTO)」。最新ハイジュエリーコレクション「レクラ」は、静寂な宇宙空間で天体や銀河が放つ煌めきを表現した。
中でも存在感を示すのは、約20mmの白蝶真珠をセンターに配し、異なるカットのダイヤモンドとマザー・オブ・パールを放射線状に拡げたネックレス。3連パールの繋ぎ目にはダイヤモンドのパーツを取り入れ、リズミカルなバランスを完成させた。

「レクラ オリジネル」ネックレス〈WG、 白蝶真珠、アコヤ真珠、ダイヤモンド、マザー・オブ・パール〉1億円
Image by: MIKIMOTO
1920年代のフラッパーを想わせるヘッドジュエリーは、ミキモトならではの高い職人技が際立つ。夜空に瞬く星を想わせるダイヤモンドのモチーフと、アコヤ真珠、白蝶真珠をフレキシブルな構造で組み立て、頭のカーブに添うように仕立てた、オートクチュールさながらの独創的なクリエイションだ。

「レクラ ステレール」ヘッドジュエリー〈WG、アコヤ真珠、白蝶真珠、ダイヤモンド〉2億円
Image by: MIKIMOTO
フレッド「黄金の光」
今年で創業90周年を迎える「フレッド(FRED)」は、創業者フレッド・サミュエル(Fred Samuel)が愛したフレンチ・リヴィエラの夜明けから日没へと移ろう陽の光を、5つのチャプター、計15点の作品で表現した。
コレクションの白眉は、眩いばかりのゴールデンアワーの輝きを表現したネックレス。センターに配したのは、2代目アンリ・サミュエル(Henri Samuel)の時代にあたる1977年にメゾンが入手した、101.57カラットの伝説的なイエローダイヤモンド「ソレイユ ドール」。放射線状に広がるイエローゴールドの地金に、1000石以上のダイヤモンドを散りばめた。

「ソレイユ ドール ゴールデンライト」トランスフォーマブル ネックレス〈YG 、イエローダイヤモンド、ホワイトダイヤモンド〉3億3220万円 ※販売される作品はセンターストーンが11.25カラットのイエローダイヤモンドになります
Image by: FRED
月の光を受けて煌めく水面のような輝きを宿した、アシンメトリーなイヤーカフは、 1978年に制作されたアーカイヴに着想を得たもの。タンザナイトの立て爪には、陽極酸化処理を施したブルーチタンを用いている。

「ムーンライト リフレクション」トランスフォーマブル イヤーカフ〈WG、チタン、ダイヤモンド、タンザナイト〉2483万8000円
Image by: FRED
エルメス「馬が描く風景」
メゾンのルーツである馬具、そして馬を揶揄的に表現した「エルメス(HERMÈS)」の新作オートビジュトリー(ハイジュエリー)。銜(くつわ)や蹄(あぶみ)、銜(ハミ)といった定番のモチーフから、ウエスタンブーツやテンガロンハットといった遊び心あふれるモチーフまで、実に幅広い90点余りの作品が揃う。


Image by: Christophe Coënon
投げ縄を巻きつけたようなブレスレットは、先端にバゲットカットのダイヤモンドのフリンジをあしらうことで、レザーのようなしなやかな動きを表現。一方で、まるで手綱が風に揺蕩うような躍動感をとらえたネックレスは、フラットな構造に、ダイヤモンドとグレースピネル、ブラックスピネルで描いたグラデーションによりトロンプルイユのような視覚効果を生み出している。

ブレスレット〈WG、ダイヤモンド〉1億620万5000円(予定価格)
Image by: Guido Mocafico

ネックレス〈PG、ダイヤモンド、グレースピネル、ブラックスピネル〉1億2950万3000円(予定価格)
Image by: Guido Mocafico
鞍をそのままブレスレットへと昇華させた作品は、アンティークの蒐集家であった3代目エミール・エルメス(Émile Hermès)が私蔵していた、18世紀の鞍を小型化し再現したものだ。

ブレスレット〈YG、WG、チタン、ブラックセラミックコーティング、ダイヤモンド〉1億4776万3000円(予定価格)
Image by: Guido Mocafico
最終更新日:
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