「SHISEIDO ビオ パフォーマンス セカンドスキン」
Video by: FASHIONSNAP

Beautyインタビュー・対談

資生堂“セカンドスキン”の始まりは、モデルナ社創設者らの門を叩いたことから

 SHISEIDOが、「ビオ パフォーマンス シリーズ」から「SHISEIDO ビオ パフォーマンス セカンドスキン」を10月1日に発売した。8月に発表された際には、「目元のたるみを瞬時にカバーする、セカンドスキン」として話題を集め、発売後は予想を超えて推移する。2018年のプロジェクト立ち上がりから陣頭指揮を執る資生堂 みらい開発研究所 新領域価値開発センターの高橋秀企センター長は、「運命的な出合い」があったからと語る。その出合いとは技術のことなのだが、その技術の生みの親は、今注目を集めるコロナワクチンのモデルナ社を創設した人物でもある。洋服を着替えるように肌を着替える「スキンウェア」発想のセカンドスキンについて、「究極の目元たるみケア製品が完成した」と自信のほどをうかがわせる高橋センター長に、技術取得から製品が完成するまでの開発秘話までを聞いた。

資生堂 みらい開発研究所  新領域価値開発センター 高橋秀企センター長) Image by FASHIONSNAP
資生堂 みらい開発研究所 新領域価値開発センター 高橋秀企センター長)
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―「セカンドスキン」との出合いは?

 英の有名科学誌「ネイチャーマテリアル」で「セカンドスキン」についての論文を読んだのが始まりです。論文での技術は、MIT(マサチューセッツ工科大学)のロバート・ランガー博士やハーバードメディカルのロックス・アンダーソン博士らにより開発され、その後設立されたオリボ社の特許技術です。それは今までにない革新的なものでした。その証拠に日本を始め、海外でもこのニュースは大きく取り挙げられ、研究者たちの間でも話題になっていたんです。ちなみに、ランガー博士は京都賞などの数多くの受賞歴があり、毎年ノーベル賞候補にも挙がる人物で、モデルナ社の創設者でもあります。
 当時、私は資生堂のオープンイノベーション制度を使い、「未来につながるモノやコトを事業化したい」と考えていました。具体的に何をどうしようとは決めておらず、でも今までと同じような製品を作っていては意味がないと。どうせやるなら、外部の技術を使って製品化し、世間を「あっ!」と言わせたい(笑)。その時に思い描いていたのが「洋服を着るように肌を着ることができないか」ということでした。

ー論文を読んですぐに行動に移したのですか?

 論文を読んだとき、自分が思い描いていたことがここにあり、「この技術なら(製品化も)叶えられる」とワクワクしましたね。ただランガー博士にメールを送ったのですがしばらくは音沙汰がなく、気づいたら1年ほど過ぎていました。そろそろ「次の一手を打たなければ」と考えていたところ、オリボ社のスタートアップ事業が立ち上がったと聞き、そのタイミングで再度ご連絡し「会いましょう」となりました。その後、2018年に資生堂がオリボ社から「セカンドスキン」の技術を買収、研究開発チームも移籍したのはご存知だと思います。

―画期的な技術で世界中の企業から注目が集まる中、資生堂とタッグを組んだ「勝因」をどう見ますか? 

 ここだけの話、競合は国内外の大手化粧品会社やOEMメーカーなどで、他社からも引き合いが来ていることは分かっていました。正直、本当にこちらにむいてくれるかどうか自信はありませんでしたね。ですが、だからこそ開き直れたというか。ただ真摯に向き合ったということです。最初から研究員ベースに打ち合わせをはじめ、2回目は私も直接ボストンに伺い、資生堂の技術力やブランドについて説明するとともに、その技術をどう生かしたいかなどを熱く語りました。技術者としての話が尽きないという感じでしょうか。後日談ですが、なぜ我々に決めたのかと聞くと、「最初から研究員が来て、技術レベルや研究の融合の話し合いができたことが良かった」と。そういった企業はほとんどなかったようです。研究者同士の信頼関係が築けたことで技術提携することができたのではないでしょうか。

「目立たなくさせること」と「見えない」差はものすごく大きい

「SHISEIDO ビオパフォーマンス セカンドスキン」
「SHISEIDO ビオパフォーマンス セカンドスキン」

―そもそもですが、「セカンドスキン」のスゴさとは?

 セカンドスキンは反応性のポリマーを含んだジェル状の美容液を塗り、その後もうひとつの美容液を重ねる2剤タイプ。性質の異なる成分が肌の上で反応し、透明で柔軟性の高いフィルム(皮膜)が完成します。実際に試してみると特殊メイクでもしたかのような仕上がりになります。わかりやすく言えば、映画「ミッションインポッシブル」のトム・クルーズがベリベリとマスクを外す、あの世界です(笑)。セカンドスキンについて知れば知るほどその素晴らしさを実感せずにはいられない感じでした。今までの化粧品では決して作ることができなかった皮膜が「第二の皮膚」としていろいろな可能性を持っていることにも驚きました。
 今回は技術の特徴を踏まえ、目の下のたるみにフォーカスした製品を作ることにしました。通常のたるみケアといえばメイクやコンシーラーで目立たなくすることがあっても、時間の経過とともに取れたり、よれたりで悪目立ちしてしまいます。このセカンドスキンは目視では分からない「厚い膜を作る」ことが最大の特長です。皮膚の上に第2の皮膚を作ることで、シミやしわ、たるみなどエイジングサインを「見えなく」し、結果、見た目印象を大きく変えることができるのです。「目立たなくさせること」と「見えない」ことの差は、実はものすごく大きいのです。

―製品化にあたり、苦労した点は?

 MITが開発した「セカンドスキン」のクオリティーはかなり高く、技術的には高い完成度と考えていました。だから実は2018年の買収後はすぐに製品化できると思っていましたが、甘かったですね。テスト版を作って肌で試してみると、さまざまな不具合が生じてしまい、課題点を徹底的に洗い出し改善することに。課題は大きく3つありました。1つ目は「仕上がり」。ファンデーションとの相性が良くないこと。2つ目は「効果実感」。海外では効果が出ていても日本人は効果を感じられなかったこと。3つ目は「剥がれ」。膜を強くするとフィルムが剥がれてしまうこと。
 1つ目の「仕上がり」ですが、当初は、肌・セカンドスキン・ファンデーションの順に使用を考えていましたが、ファンデーションとの相性が悪く、セカンドスキンの技術が全く機能せず仕上がりに納得いきませんでした。また、ファンデーションの種類でも仕上がりに差が出て、リキッドはいいのにパウダーがダメとか、バラツキが見られずその解決策が見いだせなかったのです。試行錯誤を繰り返していたのですが、そんなときに美容部員の方から「こんなにきれいに仕上がるならステップの最後に使いたい」とのアドバイスを受け、試しに使用順を肌・ファンデーション・セカンドスキンに変えてみたんです。そしたらきれいに仕上がって、課題をクリアしました。

カール技術の向上に数百以上のポリマーの種類、配合量をテスト

―2つ目は効果実感です。そこはとても重要ですよね。

 2つ目の効果実感は、アメリカの方々で大丈夫だったので、日本人でも当然、実感できると思っていものの、そうではありませんでした。たるみの構造とセカンドスキンの補正効果が十分でないことに要因があり、再度見直す必要がありました。セカンドスキンは膜を作る工程で板状のポリマーが丸くカールする特性があります。身近なもので例えるなら「イカ焼き」ですね。くるんと丸くなる力を応用し、たるみ部分に当てて「たるみを押し込んでフラットにする」ことを強化しました。カール技術を高めるため、数百以上のポリマーの種類や配合量をテストするという、根気が必要な作業が続きました。ようやく見出したのが今回の処方です。この処方により肌のカーブに合わせてポリマーがピッタリと丸まって肌と密着するようになりました。美容液の完成です。
 最後の「剥がれ」も困難を極めた課題でした。特にファンデーションを塗った後はその影響を受けやすく、時間が経つと端から剥がれていきました。接着部分の改良を繰り返したのですが、どれもうまくいきません。そんな中、助けてくれたのは粉の専門家。「下地をスムーズにする特別なパウダーがあるから試してみるといい」とアドバイスをくれたのです。早速、その粉を取り寄せて美容液を塗る前にパウダーを仕込んでみました。そうしたら剥がれることなく、効果が発揮されて。この方のアドバイスがなかったら製品化することはできなかったと思います。なので、私たちは「ゼロステップ」として紙おしろいの形状をプラスすることで、ようやく製品の目処が経ちました。

―発売から2ヶ月ほど過ぎましたが反応はいかがですか?

 製品が完成したときも社内の反応が良く、発売前から手応えを感じていました。販売はECを中心に展開していて、予想を上回る反響の高さに嬉しさと驚きを感じています。今までカバーできなかった涙袋のたるみを「押し込んで見えなくする」ことで、見た目印象を大きく変えることができるとお客さまも実感しているようです。

―今度の展開を教えてください。

 セカンドスキンの研究をしている中で、ほうれい線にも活用できるのではないか、引き上げる力があることも分かったので、製品化を目指して研究に励みたいと思います。今回の製品はたくさんの人の努力、協力で完成することができました。研究者においても、イタリア、タイ、インド、アメリカ、日本とダイバーシティで個性も強い(笑)。文化も異なるため、意見をまとめるのに苦労しましたが、だからこそさまざまな意見があり、アイデアを出し合えたと感じています。今となっては良い思い出ですね。今後も最新の知見と確かな効果実感を与えられる、常にイノベーティブな製品を世に送り出していきたいですね。

S/PARK(資生堂グローバルイノベーションセンター)にて
S/PARK(資生堂グローバルイノベーションセンター)にて

(聞き手・文:長谷川真弓、企画・編集:福崎明子)

■長谷川真弓
美容エディター・ライター 編集プロダクションを経て、広告代理店で化粧品メーカーの営業を7年半担当。化粧品のおもしろさに目覚め、2009年INFASパブリケーションズに入社。美容週刊紙「WWDビューティ」の編集を担当し、2014年にフリーに転身。ビューティにまつわるヒト・コト・モノを精力的に取材している。

■商品情報
「ビオ パフォーマンス セカンドスキン」(税込3万5200円)

■問い合わせ先
電話:0120-587-289

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