
Image by: FASHIONSNAP
日本のリユース市場の成長が続いている。市場規模は2009年以降拡大を続けており、2030年の国内市場規模は約4兆円になるという試算もある(リユース経済新聞調べ)。その市場で、現在ゲオホールディングスに次ぐ売上規模を誇るのがコメ兵ホールディングスだ。第二次世界大戦後間もない1947年に愛知県で古着屋「米兵商店」として創業した同社は、その後日本経済の発展と歩みを共にするように宝飾品やカメラ、時計などと取り扱い商品の幅を広げ、1996年には東京・渋谷に進出。2003年にJASDAC、翌年には東証2部と名証2部へ上場。2018年には中国・北京に初の海外店舗を出店するなど拡大を続け、2025年3月末時点で国内で273店舗、海外では5ヵ国28店舗を運営している。
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同社は3月に、九州で初となるジュエリー・ブランドバッグ・時計・衣料の4カテゴリーの商品を扱う「フルスペック店舗」である「KOMEHYO FUKUOKA TENNJIN」を福岡にオープンした。石原卓児 コメ兵ホールディングス社長にインタビューを行い、直近のM&Aの成果やラグジュアリーブランドの価格高騰の影響、今後の海外戦略などについての話を聞いた。
目次
販売チャネルの充実が強気の買い取りを生む
──2025年3月期通期の連結売上高は前年比28.8%増の1589億円。直近の2026年3月期第3四半期は前年同期比で増収増益と好調です。
まず、前期にM&Aでグループに加わった会社が4つあり、その数字が含まれているため、前年対比では大きく数字が伸びているという前提があります。PMI(Post Merger Integration:M&A後の統合プロセス)は上手く進み、それぞれの会社の強みを伸ばせたことで、既存の店舗や会社もしっかりと成長しました。

KOMEHYO FUKUOKA TENNJINの外観
──決算書では収益の押し上げ要因として「買い取りの好調」を挙げています。
我々のグループは、買い取りをして販売するというリユース事業が主軸です。買い取りが好調なのは、しっかり売れる出口、つまり販売チャネルを持っているからです。グループには、消費者向けの小売りに強い会社とBtoBのオークションに強い会社があり、例えば2024年に子会社化した「Rs-JAPAN」は法人向けのオークションを運営しています。買い取ったアイテムの特徴を見極めて、小売りに向くものは小売に、そうでないものはオークションに回す。買い取りと販売の両輪がうまく回っていることが、結果として査定金額を強気で出せる要因となり、買い取りの好調に繋がっています。
また、4年ほど前から強化してきた買い取り専門店の出店効果も表れています。買い取り店舗は、販売店と違ってオープニング効果でいきなり数字が伸びるわけではありません。お客さまに何度も利用していただくことで、徐々に数字が上がっていきます。目安として1年間で1店あたり1億円の買い取りを目指して出店していますが、年数を経てその目標を超える店舗が増えてきたことも、全体の数字を押し上げています。
──コメ兵で買い取りと購入の両方を行うユーザーはどれくらいいるのでしょうか?
現時点で両方のサービスを使っていただいているお客さまはまだ少なく、全体の3割程度です。この比率が50%、80%と高まっていくと、我々のサービスがお客さまの生活のインフラになっていくと考えています。

ラグジュアリー高騰が二次流通にもたらす影響
──国内販売では、どのようなブランドが人気でしょうか。
人気を集めるブランドは、昔から変わりません。バッグは「エルメス(HERMÈS)」「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」「シャネル(CHANEL)」。時計は「ロレックス(ROLEX)」「オメガ(OMEGA)」「カルティエ(Cartier)」。ジュエリーはカルティエ、「ブルガリ(BVLGARI)」「ヴァン クリーフ&アーペル(Van Cleef & Arpels)」といったブランドです。長く人気があるブランドの商品は買い取り金額も強く出せますし、お客さまのニーズも高い。また、リセールしやすいという理由で購入されるお客さまも多いですね。

──近年、そうしたラグジュアリーブランドの一次流通での価格が大幅に上昇していますが、二次流通に影響はあるのでしょうか。
影響はあります。特に円安の影響で、ここ数年は年に2、3回定価が上がるのが当たり前のようになっています。これによって、購入を検討されているお客さまにとっては「今が一番安い」という見え方になりますし、既にお持ちの方にとっては「今が売り時かもしれない」と、売却を考えるきっかけになっています。定価が上がることで、お客さまの購買や売却の動機が生まれていると思います。

──ここまで値上がりすると、ラグジュアリーブランドはもはや一般の消費者には手が届かない別世界の存在になりつつある気もしますが、各ブランドの求心力は今後も続くでしょうか。
かつてのバブル期のように、ラグジュアリーブランドの時計やバッグを5個も10個も持つという方は減るかもしれません。しかし、数は少なくても「ひとつでも良いものを持ちたい」「好きなものには投資したい」というお客さまは、今もしっかりいらっしゃいます。若い方も、自分へのご褒美としてお金をうまく使い分けていますので、そういったニーズは消えないと考えています。

オープン時店内で最高額の商品は3000万円のカルティエの時計
──今の若者にもラグジュアリーブランドは人気。
そうですね。何十万、何百万円もするバッグや時計には手が出なくても、アクセサリーなら数万円で手に入るものもあります。また、リセールを前提に買い物をされる若い方が増えています。スマートフォンで相場を簡単に調べられるので、「この金額なら、売るときに損をすることないだろう」と考えて上手に購入されていますね。

他の店舗ではあまり扱わない「カシオ(CASIO)」などの時計も若者に向けて揃える
──直近のインバウンド消費の状況はいかがでしょうか。
インバウンドによる売上高自体は伸びています。ただ、国別で見ると変化があり、中国からのお客さまは客数ベースでは減っています。しかし、購買意欲の高い方が多く、客単価は上がっているので、売上高としては前年と比べてトントンといったところです。今、全体を押し上げてくれているのは、アメリカやタイ、フィリピンといった国のお客さまです。特にアメリカのお客さまはここ数年で増えました。欧米のお客さまは「良いものを適正な価格で買いたい」というニーズが強い傾向にあります。
──インバウンド客が好むデザインに変化はありますか?以前はブランドロゴを大きくあしらったものが人気だった印象です。
確かに数年前までは、はっきりとブランドがわかるものが人気でしたが、今は少しさりげないシンプルなデザインのほうが受けが良い、という流れはあるようです。

百貨店との連携で切り開いた新たな買い取りルート
──J.フロント リテイリングとの合弁で展開されている買い取り専門店「めぐらす(MEGRUS)」が好調に推移しています。
出店はほぼ計画通りで進んでおり、買い取りも順調です。同店の強みは、百貨店という「館」が持つお客さまとの信頼関係です。特に名古屋の松坂屋の店舗は、外商のお客さまが非常に多いため、外商担当の方に我々のスタッフが帯同してご自宅に伺い、買い取りをさせていただくケースがあります。「馴染みの外商さんが連れてきた」ということでお客さまも安心してくださり、おひとりで数千万円分を売ってくださる方もいらっしゃいます。また、代金を現金ではなく百貨店の商品券で受け取られる方もいます。その商品券でまた館内でお買い物をしてくださる。こうした連携は、我々にとって非常に有効な仕入れルートだと考えています。まだ屋号の認知度が低いという課題はありますが、良いスタートが切れていると感じています。

──いち早くAIによる真贋鑑定を導入されましたが、今後AIと人間による鑑定はどのように棲み分けられていくのでしょうか。
AI鑑定の開発を始めたのは2017年頃です。「イミテーションのレベルが上がりすぎていて、真贋がわかりづらくなっている」という現場からの声が多くなってきたのがきっかけでした。このような状況では多店舗展開が難しくなりますし、何よりバイヤーが買い取りに消極的になってしまう。また、間違って偽物を販売してしまえば大変なことになります。そうした背景からAI開発をスタートし、2018年頃から導入を始めました。AIの導入によって査定時間を短縮できましたし、バイヤーの心理的な安全性も担保できるようになりました。ただ、エルメスのように手作業の工程が多いために個体差があるブランドは、AIに教師データを読み込ませることが難しい。また、手触りや匂い、経験値から生まれる「何か違う」という感覚は、AIにはまだ真似できません。今後も人とAIの両方を使ったハイブリッドで進めていきます。

オープン記念イベントではバイヤーがAIを活用してバッグを鑑定する様子が披露された
──セカンドストリートを擁する業界1位のゲオホールディングスをはじめ、多くのリユース業界の競合企業が海外展開を加速していますが、その中でどのように差別化を図っていくのでしょうか。
多くの企業は、日本で仕入れた商品を海外に送って販売するモデルだと思います。我々は基本的にそれをせず、現地で買い取り、現地で販売する「地産地消」のビジネスモデルを徹底しています。ローカルのスタッフを雇用し、現地の人とチームを組んで事業を進めるのが大きな特徴です。

「コム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)」をはじめとした日本のデザイナーズブランドの売れ行きも引き続き好調だという
──2025年10月にアメリカのオフィスで個人買い取りを開始されましたが、手応えはいかがですか。
非常に良いスタートが切れました。特に開始した10月は想定以上に買い取りができて、日本から行ったスタッフ2人だけでは業務が回らないほどでした。
──アメリカにはこれまで、そういった買い取り業者が少なかったのでしょうか。
数が少なかったことに加え、お客さまから商品を預かって販売する「委託」形態が一般的でした。我々のようにその場で査定してすぐに現金化できるサービスはあまりなかったので、日本で当たり前にやっていることが、海外では特別なサービスとして差別化に繋がっています。
──日本人はモノの扱いが丁寧なので、「ユーズドインジャパン」のリユースアイテムがインバウンド客に人気だと聞きますが、アメリカで買い取った商品の状態はどうですか。
当初は我々も、状態の悪いものが多いのではないかと想定していました。しかし、いざ始めてみると、ひどい状態のものは持ち込み自体がほとんどありません。お客さまが「日本のコメ兵」を知って来てくださっているからか、きれいなものが多いですね。多くの方が新宿や銀座に大きな店があることをご存知で、それが安心感に繋がり、信頼の近道になっていると感じます。

「長く使える良いもの」こそがブランドの条件
──数々の名品を見てこられた石原社長が考える「良いブランドの条件」とは何でしょうか。
メーカーさんが長い年月をかけて、長く使える良い商品を作り続けていることだと思います。それによって信頼が増し、ブランドになっていく。リセール市場でもそうした商品は評価が高いです。すぐに壊れてしまうようなものでは、お客さまはがっかりしてしまいますよね。メンテナンスができて、多少雑に扱っても壊れない、型崩れしない。そうしたモノの良さが根底にあることが、長く支持されるブランドの条件ではないでしょうか。
──個人的に思い入れのあるアイテムはありますか?
最近、1954年製のオメガの時計を購入しました。キャリバーが非常に良いと言われているモデルです。なぜそれだけ長く使われ続けているかというと、メンテナンスがしやすいからです。職人さんが世代交代しても、技術を繋いでいける。私も大事に扱い、メンテナンスも続けて、次の時代の人に繋げていきたいですね。

取材時に石原社長が着用していた時計は「シェルマン(Shellman)」。999本限定で発売当時は買えなかったが、後年コメ兵で購入したという
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