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【インタビュー】今後の課題は物流パニック 増収増益のマッシュHD近藤社長がコロナ禍に思うこと

 「スナイデル(SNIDEL)」や「ジェラート ピケ(gelato pique)」を展開するマッシュホールディングスが、2021年8月期の連結決算において売上高899億円(前期比18%増)を計上し、増収増益を達成した。ジェラート ピケはコラボレーションアイテムが即日完売し、スナイデルでは新作コレクションが先行予約初日に約6600万円の売上を達成するなど、展開ブランドがコロナ禍でも熱視線を浴び続けるが、近藤広幸社長は手応えを感じる一方で「一息ついたという感覚は全くない」と緊張感を緩めない経営姿勢を示す。まるごとコロナ禍となった2021年8月期を振り返ってもらうとともに、足元の状況や第6波への懸念、喫緊の課題、そして今期デビューを控える新ブランドの狙いなど、今期の進捗を聞いた。

■マッシュホールディングス 2021年8月期通期実績
売上高:899億円(前期比18%増)
国内・海外の増減率:国内 同17%増/海外 同23%増
※利益高は非公表だが黒字確保

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―2021年8月期は通期でコロナ禍に見舞われましたが、売上高は899億円となり、前年実績および計画値を上回りました。この1年を振り返って、率直な感想は?

 先が見えない中で仮説を立てて先回りして変化しなければいけない年だったと思います。そこに対しての手応えはありました。

―実際にどのような仮説を立てて施策に落とし込んだのでしょうか?

 「店舗の売上が前々年の水準に戻り、なおかつ反動で大きく売り上げが伸びる」ということは全く考えず、引き続き非常に厳しい状態にあるだろうと思っていました。また、生産背景に対しては原価率や物流費の向上など、外からは見えないところで経費がかかることも想定していました。それらすべてに対してカバーしながら前々年の決算に打ち勝っていくには、デジタルを駆使したサービスや情報発信の強化、そして商品の企画力が肝になると考えました。特にコラボレーションやEC限定商品の販売といったイベントは前々年度(2019年度)よりも2〜3倍多く仕掛けました。

年始のFASHIONSNAPのインタビューでも若手社員からアイデアを積極的に募っているというお話がありましたね。

 まさにそれも成果につながった施策の一つですね。刺さった企画とそうでなかった企画の反省や対策ができていましたから、SNSを活用した情報発信を含めて伸ばすべきところを伸ばしていけたという実感があります。

―好調だった事業と苦戦した事業について教えてください。

 「ジェラート ピケ」は引き続き好調で前年比35%増、それから「スナイデル」は同41%増と飛躍しました。この2ブランドは情報発信に関してもかなり技術の向上ができていて、様々な仕掛けが奏功したという手応えがあります。

 逆に苦戦した事業は、スニーカーがメインの「スニーカーズ バイ エミ(sneakers by emmi)」が物流面に問題があり、売り上げが大きく下がってしまいました。アパレルを展開する「エミ(emmi)」はウェルネスへの関心の高まりもあって同47%増と好調でしたから、売れ筋商品を用意できなかったことなどが一因となっていると捉えています。

―業界内でもスニーカーやバッグに関しては「来年にはほとんど商品がない状態になるのではないか」という声もあがっていると聞いています。

 全体的にスニーカーの売上は構成比はまだ低い状態ですので業績へのインパクトはあまり大きくはなく、エミのオリジナルウェアや雑貨で売り上げを補っていくなど臨機応変に対応していこうと思っています。

マッシュホールディングス 近藤広幸社長

Imaged by FASHIONSNAP

―2021年度はコスメに関する取り組みが多かった印象ですが、売上増につながったのでしょうか?

 ビューティ関連の売り上げは横ばいでしたね。施策や仕掛け方が時代に対する変化にうまく対応できていませんでした。単純にマスクが浸透したから伸び率が一番高かったルージュが売れなくなった、といった言い訳には飽きてしまったので、甘えずにやっていきたいと思います。

◆2021年度のビューティ分野の取り組み
スナイデルのコスメブランド「スナイデル ビューティ」デビュー
「ジェラート ピケ オム」のコスメライン立ち上げ
「トーン」スキンケアラインのリニューアル
酒蔵とスキンケアブランド始動

―コロナ禍での増収増益という結果に達成感はありますか?

 やるべきことは全部やりきれたと捉えていますが、一息ついたという感覚は全くないですね。2022年はさらに進化していかなければならないですし、世界的に生産の現場で人件費や物流費の向上、物流のパニックが起きている点も気になっています。対応力が試されるだろうと思っています。

―国内に製造拠点をシフトする考えはありますか?

 国内にシフトして商品の品質が良くなったり、フェアプライスが保てるのであればいいんですけど、国内に戻すことによってモノの表現が狭まることを懸念しています。特にニットに関しては、日本で作れないような技術をもった工場が海外にはありますから。海外の生産拠点に対する情報収集や研究はもちろん継続して取り組みますが、物流費が上がったとしても、工夫してコストを抑えながら一番いいものをフェアプライスでお届けする。顧客重視でものづくりをしていくというスタンスは今後も変わらないと思います。

マッシュホールディングス 近藤広幸社長

Imaged by FASHIONSNAP

―2022年度の通期業績予想は?

 売上高は990億円を目指します。昨対比では10%の増加率を見込んでいます。

―達成の鍵となる戦略は?

 基本に忠実に、商品力・サービス・デジタルの向上に取り組むことでしょうか。

―日本国内ではコロナの感染が縮小していますが、足元の状況は?

 堅調に推移していて、予算を上回っている状況です。

―経済活動が活発化する一方で、第6波の懸念も出ていますが。

 第6波、第7波が来ようが来なかろうが、我々は波が来るたびに学習してきたので準備はできています。ただ、海外のサプライチェーンの労働環境がコロナによってこれ以上悪化するのは心苦しいですね。物流拠点で働く方々がまた出勤できないとなってくると大変なことになるし、そういったことに関して収束を心から願うしかないですね。

―2022年春夏シーズンには2つの新ブランドが続いてデビューする予定です。

 メンズブランド「アウール(AOURE)」に関しては、ネクタイやシャツ、革靴ではないオフィススタイルが広まる一方で、私服に近いファッションを求められて困る人も多いと思います。百貨店に行って接客を受けて言われるがままに買っても、なぜか評判が悪かったり、結構な散財になっちゃったり。そういった方々に対してはなくてはならないブランドになると確信しています。初年度は百貨店や高感度ファッションビルに4〜5店舗の出店する予定です。

 ウィメンズの新ブランド「ミースロエ(MIESROHE)」は、ファッショントレンドを追求していくのではなく、自立した女性に向けて、縫製も生地も納得するレベルでただのシンプルではない“哲学的で奥行きのある服”を提案していきます。抽象的な表現にはなりましたが、意外と市場にはないんですよね。もし刺さればそのコンセプトを完成度が高く体現できたと言えますし、強いブランドになるんじゃないかと。新ブランドのデビューは実店舗の出店がセットになっていましたが、ミースロエはモチベーションの高いお客様を取り込んでいきたいという考えから、まずは展示会とECのみで展開していきます。これは我々としても初の試みになりますが、あくまでもミースロエのみでの話で、今期も様々なブランドで出店を計画しています。

―2021年度は51店舗純増しました。今期の計画は?

 具体的な数字は決めていませんが、店舗展開の方針は変えておらず、引き続きチャンスがあれば出店を前向きに検討していきたいと思っています。

―コロナ禍の出店はリスクがあるように捉えられる部分もありますが、実際に出店して感じたことはありますか?

 飲食店に関しては正直なところ簡単ではなかったですね。ファッションやビューティに関しても苦戦した部分ももちろんありますが、長期的に見た時にチャンスだと感じられるオファーをたくさんいただいたので、今は苦しいかもしれないけど、きっと1、2年後には血肉になるだろうという出店も多くできたと感じています。

―まもなく2022年がやってきますが、どんな1年にされたいですか?

 正常ではない期間が2年も続いたので、社会的にも「気分をポジティブに持ちたい」「子どもたちに希望を見せたい」といった、気持ちよく元気になりたいというムードが強くなると思います。ですから、会社としてはポジティブを素直に共有して明るく楽しくいきたい方々の後押しになるような施策を打ち出して徹底的にサポートできる1年間にしたいなと。

マッシュホールディングス 近藤広幸社長

Imaged by FASHIONSNAP

―コロナを機に新しい市場に注目が集まっていますが、近藤社長がいま気になっているモノ・コトはありますか?

 アバターのファッションに関しても興味がありますし、サステナビリティに関する取り組みや技術も取り入れていきたいという思いもあります。外部企業の新しい技術を活用したコラボレーションも前向きに検討していきたいですね。また、Eコマースの発展やデジタルツール、アプリの開発を含め自社でどんどん研究して、新しいファッションに対するプレゼンテーションをしていきたいです。「越境EC」という言葉がなくなって世界中でもっとフラットに売れるようになるかもしれないし、電子マネー化が進んでいけばうまくいくでしょうから、そういった時代が来てほしいと思いながら準備をしていきたいですね。

―これからは海外の売り上げを伸ばしていきたい?

 伸ばしていきたいですね。そのためにEコマースの世界の壁を取り払うには技術革命が必要になると思っているので、それを狙いながらどうやって海外の人に伝えることができるか、販売戦略も研究していきたいです。

―国内市場は天井が見えているという感覚もあったりするのでしょうか?

 2021年度で言うと、このコロナ禍の中でファッションカテゴリーは24%伸びていますし、「ウサギオンライン(USAGI ONLINE)」の売り上げの大半がファッションです。マッシュスタイルラボで79億円、ウサギオンラインで21億円がそれぞれ増えているので、合計するとファッションの売り上げが1年間で100億円伸びたことになります。これを踏まえると、まだ成長の余地はある。我々はまだ900億円規模の企業ですし、日本国内の内需に応えていくことで売り上げを拡大していけるのではないかと考えています。

(聞き手:伊藤真帆、長岡史織)

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