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NASA技術で開発した生地を服に 米国ブランド「ミニストリー・オブ・サプライ」の現在地

(左)創業者のアマン・アドヴァニ氏とギハン・アマラシリワルデナ氏(Photo: Tony Loung)/(右)Apollo Raglan Sport Shirtの着用ヴィジュアル

IMAGE by: Ministry of Supply

(左)創業者のアマン・アドヴァニ氏とギハン・アマラシリワルデナ氏(Photo: Tony Loung)/(右)Apollo Raglan Sport Shirtの着用ヴィジュアル

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NASA技術で開発した生地を服に 米国ブランド「ミニストリー・オブ・サプライ」の現在地

(左)創業者のアマン・アドヴァニ氏とギハン・アマラシリワルデナ氏(Photo: Tony Loung)/(右)Apollo Raglan Sport Shirtの着用ヴィジュアル

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 宇宙服にも使われる技術力を武器により快適な機能性オフィスウェアを提案する米国ブランド「ミニストリー・オブ・サプライ(Ministry of Supply、以下MOS)」。コロナ前までは順調に事業を拡大させてきたが、新型コロナウイルスの感染拡大によってビジネスの転換を迫られたブランドの一つだ。一方で、コロナ禍で注目が集まり始めた「ワークレジャー(ワーク+レジャー)」を体現するアイテムをいち早く提案したブランドでもあり、そのユニークな商品開発はヒットしたビジネス書籍「2030年:すべてが『加速』する世界に備えよ」でも取り上げられた。苦境を乗り越え、今年10周年を迎えたブランドが見据えるネクストステップとは?

■「ワークレジャー」とは?
ワーク(仕事)とレジャー(余暇)を組みあわせた造語。在宅やオフィスでの仕事時はもちろん、その後の友人との食事など日常の全てのシーンで着られる服を指す。

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NASAの技術をテキスタイルに

 MOSは、2012年にマサチューセッツ工科大学の同級生だったアマン・アドヴァニ(Aman Advani)氏とギハン・アマラシリワルデナ(Gihan Amarasiriwardena)氏により設立。日常生活や仕事において機能的な服がないことに不満を持っていた両氏は、仲間を集めてそれぞれ起業準備を進める中で、大学の起業センターでの偶然の出会いから意気投合し、共にブランドを作っていくことになったという。創業から10年経った現在、ブランドチームは経営陣の他にデザイナーやエンジニアを含む数十人の規模に成長している。

 MOSアイテムの一番の特徴は、高度なテクノロジーを服に落とし込んでいる点だ。たとえば、代表作となっている「アポロシャツ」では、NASAとの提携により宇宙服と同様の吸熱素材を使用。熱の吸収や発散を行うことで服の温度を一定に保つという。

男女のルック

Apollo Raglan Sport Shirt

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 MOSではこの吸熱素材を基に、防臭機能やコットンピケの19倍の通気性をもつオリジナル生地を開発。アポロシャツの他にも、伸縮性に優れた「キネティック(Kinetic)」シリーズや、洗えるスーツ「ヴェロシティ(Velocity)」シリーズなどユニークなアイテムを展開している。2015年にはキネティックシリーズのスーツを創業者のアマラシリワルデナ氏がハーフマラソンを走る際に着用し、「スーツ着用でのハーフマラソン最速タイム」というギネス記録も達成した。

Kinetic Pull-On

女性の全身ルック

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ストレッチ性がわかるアップカット

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 このように、MOSは創業時から快適な仕事着を提案してきた。ブランドとして目指してきた高機能で快適な仕事着は、近年登場した「ワークレジャー(ワーク+レジャー)」のコンセプトとの親和性が高い。MOSはこのワークレジャー分野で存在感を高めようとしている。

 生産は主に米国のサプライヤーやOEMを活用するが、日本企業が開発したプロダクトや素材も同社のものづくりに大きく貢献している。マスクやブレザーの製造では島精機のホールガーメント横編機を使用。生地は瀧定名古屋や東レ、スタイレムからも調達している。中心価格帯はブレザー300ドル(約4.2万円)、パンツ150ドル(約2.1万円)、シャツも100ドル(約1.4万円)台だ。

コロナでオンラインにシフト

 軌道に乗っていたMOSのビジネスは、コロナ禍によって大きな変化を迎えた。ピーク時に6店舗あったリアル店舗は、ボストンにある旗艦店以外の店舗はコロナ禍に閉店を余儀なくされた。ブランドの売上実績は非公表としているが、米ニューヨーク・タイムズの報道によると、2017年から2019年までの売上高は毎年2桁成長を続け、2020年には2200万ドル(約31億円)を見込んでいたが、コロナの影響で着地は1200万ドル(約17億円)と予想を下回る結果となった。売上が低下している状況で、固定費が増加する路面店拡大の戦略を続けていくことは難しい。アドヴァニ氏は「今後はサプライチェーンをさらに整備した上で、オンラインでの購買体験を充実させたい」とし、路面店の拡大戦略からオンラインへの転換を進めている。

 主要顧客層はホワイトカラーの男女で、コロナ禍を経ても大きな変化はないようだが、在宅勤務が広がったことにより需要は以前とは異なっている。コロナ禍以前はオフィス向けのフォーマルなデザインのラインナップが中心だったが、近年は職場でも自宅でも快適に着用できるデザインを増やすなど、顧客の生活変化に対応している。「MOSは状況にあわせてビジネスを適応させていくことが得意」とアドヴァニ氏は前向きだ。

広がるワークレジャー市場

 ワークレジャー市場はさらなる成長が見込まれ、アスレジャーの次のトレンドとしても注目を集めている。「ルルレモン(lululemon)」や「ローン(RHONE)」といった勢いのあるブランドも機能性素材を使用したアイテムを打ち出し、ワークレジャースタイルを提案するなど競合も増えつつある。アスレジャーのトレンドではスポーツウェアメーカーの存在が目立ったが、ワークレジャーではよりオフィスウェアに近い立ち位置のブランドも参入してくると予想されるため、競争はさらに厳しくなるだろう。

 このような市場環境の中での具体的な成長へのマイルストーンとして、MOSは2022年から2027年までの5年間でワークレジャー分野をリードするブランドになることを掲げた「5ヶ年計画」を発表した。ワークレジャー分野のアイテムの充実やMOSの強みである技術への研究開発投資を拡大するほか、新規顧客層開拓などを目的にMOSのアイテムがセットで手に入る「Starter Kit」を無償で配布。また、創業当初から実践している環境への配慮や持続可能なものづくりは続けていくとし、今後はヴィーガンレザーを用いた新商品の開発にも注力する考えだ。

スーツ姿で走る男性

Aero Zero Dress Shirt

 ワークレジャー分野を狙う企業は大手を含めて多く、ブランディングや技術力で勝負をしてきたMOSの相手は手強い。しかし、店舗の縮小や受注生産を含めた在庫圧縮によりさらに筋肉質な事業体制を構築することで、多くの資金を開発や購買体験の向上に充てることができる。顧客の裾野を広げると同時に、既存顧客に対しても技術力を背景にした新商品開発を続けることで差別化をいかに図るかが、最終的なブランドヴィジョンである「科学の力で服をより機能的なものにする」という創業者たちの思いを叶える鍵になるだろう。

※日本円は11月15日時点のレートで換算

高山 純

Jun Takayama

慶應義塾大学法学部卒業。在学中は「Keio Fashion Creator」や「ファッションビジネス研究会」の代表を務める。卒業後、外資系コンサルティング会社及び投資ファンドにてM&Aやファッションブランドへの投資業務などを担当。LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン勤務を経て、2022年8月よりパーソンズ美術大学ファッション経営修士課程に日本人として初めて留学中。

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