Image by: ユナイテッドアローズ

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2016年に誕生した韓国・ソウル発のウィメンズバッグブランド「オソイ(OSOI)」。上質でエッジの効いたモード感のあるテイストとユニークなフォルム、適度な遊び心がありながらも使い勝手の良いデザインで人気を集めてきた同ブランドは、2024年11月にユナイテッドアローズと日本国内の独占販売契約を結び、2025年春夏シーズンから新たな歩みをスタートした。
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“パリパリ(빨리빨리/早く早く)文化”が根付く韓国で「遅い」という対照的な言葉を掲げてきた同ブランドは、現在はヨーロッパやアメリカ、アジアなど世界約30ヶ国で展開し、グローバルの売上はブランド立ち上げ当初の約50倍に拡大しているという。今、なぜ「オソイ」は世界で売れているのか。その背景を探るべく、日本での新たな門出に際して来日した「オソイ」CEO兼クリエイティブディレクターのヒージン・カン(Hee Jin Kang)氏に話を聞いた。

「OSOI」CEO兼クリエイティブディレクターのヒージン・カン氏
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ファストな文化の中で貫く「自分のペース」
シューズデザイナーからキャリアをスタートしたヒージン・カン氏は、2016年にウィメンズ向けのバッグ・シューズブランドとして「オソイ」を設立。日本語の「遅い」を語源とするブランド名には、何事もスピード感が重視され、トレンドの移り変わりも非常に早い韓国で、「少しゆっくりでも自分たちのペースを守りたい、上質なモノ作りをしていきたい」との思いが込められている。
「私は少しスローな性格なので、韓国のファストな流れがあまり得意ではなく、自分のペースで少しずつ進んでいきたいという気持ちが強いんです。そこで、『遅い』という意味の言葉を探していたときに日本語のこの言葉を知って。ローマ字表記にした際のグラフィックとしての佇まいや言葉の音の響きにも魅力を感じ、『OSOI』と名付けました」とカン氏。世界的な流れやトレンドは適宜取り入れながらも、長く愛される上質で安定感のあるものづくりやブランドづくりを目指しているという。

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差別化の鍵は「高い商品力 × 合理的価格」
オソイのプロダクトの特徴は、曲線的でボリューム感のあるモダンなシルエットと、独自開発のハードウェアによる機能性を兼ね備えたデザインだ。デザインのインスピレーション源は、建築やアート、映画、家具など多岐にわたるというが、なかでもバウハウスから着想を得ているというブランド独自の「ハードウェア」は、プロダクトにミニマルな装飾性と機能的な構造を与えており、他ブランド製品との差別化にも繋がる大きな強みとなっている。
ブランド設立当初からのベストセラーである、食パンからヒントを得た丸みのあるフォルムの「BROT」シリーズは、まさにオソイらしい特徴が詰まった代表的なアイテム。ヒンジとフレームを用いた上蓋が2段階で大きく開く開閉構造は、特許も取得している。

ヒンジとフレームによる特許取得の開閉構造をもつ「BROT」シリーズのバッグ。開口部は完全に開き切ることができる。
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サイドの金具を引き上げることでストラップの長さが変化する「TONI MINI バッグ」。
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「ブランド全体としては、曲線とボリュームのあるシルエットに直線的でミニマルな装飾が融合した、バランスの取れたデザインを意識しています。特にハードウェアは、ブランドの強いアイデンティティの一つ。誰が見ても『オソイだ』と分かるほどアイコニックな要素になっていますし、他のブランドには真似できない独自の仕組みだと思っています。ものづくりのクオリティに関しては、本当に自信と誇りを持っていますね」とカン氏は話す。
そして、数多あるバッグブランドの中で、オソイが今世界中で支持を集めつつある一番の理由は、その合理的な価格設定だ。感度の高いデザインと独自の機能性、牛革素材を用いたクオリティの高いものづくりでありながら、中心価格帯は3万〜5万円とリーズナブル。価格設定は「利益率重視」ではなく、あくまで「デザインと製品の価値に応じて決める」というスタンスを採用している。

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近年は、世界的な原材料価格や製造コスト高騰により、ラグジュアリーブランドを中心に大幅な製品価格の値上げが相次いでいる。しかし、オソイも同様の影響を大きく受けながらも、商品価格には極力反映しない努力を続けているという。
一方で、2024年秋冬シーズンでは既存の価格帯より30%ほど高い価格帯の新作バッグを展開したところ、韓国国内やパリでのポップアップ含め世界的に好調な売上を記録。1シーズンで3回リオーダーが入るほど好評を得たといい、「商品力や独自性のあるデザインを備えた商品であれば、多少価格が高くても選んでもらえる」という手応えも感じているようだ。

高価格帯ながら人気を博した24年秋冬の新作「BROCLE」シリーズのバッグ
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カン氏は、「オソイの商品は、装飾やディテール、クオリティまで丁寧に作り込んでいるため、そうした部分は適切に価格に反映しています。でも、今後も意図的に価格を引き上げるつもりはなく、商品力に見合ったリーズナブルな価格を維持していきたいと考えています」とものづくりへの自負を強調しながらも、価格設定に対するスタンスは揺らがないようだ。
飛躍のきっかけは「コロナ禍」
2016年の創業から3年間ほどは、韓国国内を中心に“ステップ・バイ・ステップ”の着実な歩みを続けてきたというオソイ。大きな飛躍のきっかけとなったのは、意外にも「コロナ禍」だという。
元々、創業当時から将来的なグローバル展開を視野に入れていた同ブランドは、2019年ごろからグローバルセールスショールームを通じて海外展開を本格化。「エッセンス(SSENSE)」や「エンドクロージング(End Clothing)」、英高級百貨店チェーン「セルフリッジズ(Selfridges)」、ユナイテッドアローズをはじめ、ヨーロッパやイギリス、アメリカ、日本、中国など、世界30社以上と卸での取引をスタートした。

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その後、コロナ禍で世界的に国外への移動が難しくなったことから、韓国国内ではオンライン市場に、海外向けはホールセールに注力し展開を拡大したことで、国内・海外ともに売上が大きく成長。現在では、世界約30ヶ国・50ヶ所以上の卸先で展開しており、海外売上が全体のほぼ半分を占める。今年3月には、タイでCentral Groupと独占契約を結んで販売を開始したほか、台湾、中国、香港、マレーシアへの進出方法についても、現在協議を進めているという。
今、日本でユナイテッドアローズとタッグを組む理由
ブランド売上の50%を構成する海外売上の中で、現在最も大きい15%のシェアを占めるのが日本だ。当初から、日本市場をブランドの最大マーケットの一つと位置付けていたというカン氏。「日本を訪れる度に感じる“ファッションの国”という印象や、“長く継続していく精神”をもつ日本の価値観は、自分自身やブランドととても相性が良いと思っていました」との言葉通り、オソイは、これまでユナイテッドアローズをはじめ約30ヶ所のセレクトショップで展開し、日本市場での存在感を着実に築いてきた。

「OSOI」2025年春ルック
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そのような中、オソイは2024年11月にユナイテッドアローズと日本国内の独占販売契約を締結し、2月20日からユナイテッドアローズ傘下ブランドとして国内展開をスタート。今回、同社とタッグを組んだ背景について、カン氏は「近年は、日本のお客さまが韓国にオソイの商品を買いに来てくださるケースが多く、ブランドの購買客の第1位が日本人のお客様であることも多かったんです。そういった背景から、私たちの初期からのホールセールパートナーであり、最も売上シェアの高かったユナイテッドアローズとより深く連携し、ブランドをもっと日本で定着させていくにはどうすべきかを相談した結果、独占販売契約を結ぶことになりました」と説明する。

「OSOI」2025年春ルック
Image by: ユナイテッドアローズ

「OSOI」2025年春ルック
Image by: ユナイテッドアローズ
一方、中期経営計画の主要戦略の一つとして「UA MULTI戦略:新規事業開発を通じて業容とお客様層を拡大していく取り組み」を掲げるユナイテッドアローズも、これまで主軸としてきた「洋服」以外のカテゴリーの新規事業を模索していた中で、オソイと利害やタイミングが一致。今回の独占販売契約に至ったという。実際には、オソイとユナイテッドアローズの間に商社のMNインターファッションが入り、オソイがグローバルブランディングとマーケティングを、ユナイテッドアローズが日本国内でのブランディングと小売を、MNインターファッションが流通管理とマネージメントを担い、3社協力体制のもと、日本でのさらなるビジネス拡大を目指す。
現在は、ユナイテッドアローズのオンラインストアに加え、全国26店舗でオソイのアイテムの取り扱いをスタート。渋谷スクランブルスクエア店や名古屋駅店をはじめとした全国14店舗では、常設コーナーを設置し展開している。今後は、路面店やインショップの出店もスピード感を持って進めていくといい、年内には都内・首都圏エリアに初の単独店舗となる路面店の出店を計画。路面店は、ブランドの世界観やアイデンティティ、プロダクトのパフォーマンスを実際に体感できるような空間となる予定だという。

「OSOI」2025年夏ルック
Image by: ユナイテッドアローズ

日本限定展開の「ショルダーバッグ」
Image by: ユナイテッドアローズ
カン氏は、「日本はファッションの歴史が深く、尊敬すべき企業がたくさんある国ですが、まさにユナイテッドアローズはそんな素晴らしいファッション企業の一つ。日本における展開力やノウハウを信頼していますし、日本市場にフィットしたマーケティングやPR面でのサポートに期待しています。この体制でなら、オソイというブランドを日本でしっかりと定着させていけるのではないかと考えています」と期待を寄せる。日本での売上目標は非公開だが、将来的には韓国市場と同規模の成長も見据えているという。
今後の目標や展望について訊ねると、「まずは、日本でのユナイテッドアローズとの取り組みが良いスタートになることを願うとともに、よりブランドのアイデンティティを豊かに表現すべく、今後はバッグとシューズに留まらず、さらに幅広いカテゴリーへとブランドを拡げていく予定です」とカン氏。現在、日本ではバッグのみの展開だが、今後はユナイテッドアローズ内のオンラインストアで、シューズコレクションのテスト展開なども視野に入れる。「そして、私は本当にファッションが好きなので、バッグとシューズだけでは表現しきれないことにもどかしさを感じていて。だから、いつか自分らしいセレクトと世界観が詰まったセレクトショップを作ることが、私の将来的な目標の一つです」とにこやかに話した。

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