Image by: Katsuya Fujii

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「南極料理人」で話題を集め、「横道世之介」「キツツキと雨」「さかなのこ」などを手掛けてきた映画監督 沖田修一さんの、長編映画デビュー20周年を記念したオリジナル新作映画「さとこはいつも」が9月18日に公開される。同作は、ひょんなきっかけから自分の人生を“物語”として書きはじめる、年齢も育った環境も異なる、同じ「さとこ」という名前の3人の女性たちを描いた物語。同作に登場する「さとこ」の一人で、初恋を持て余し、物語を通して妄想を暴走させていくチャーミングな中学3年生 中井聡子を演じたのは、同作が映像作品デビュー作となった16歳の若手俳優 姫野花春さんだ。
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沖田監督と姫野さんの共通点は、10代から表現活動を始めたことと、本好きであること。お互いのキャリアにとって節目となる作品を共にした2人ならば、本を通してこそ語れることがあるのでは?と、会議室を飛び出して向かったのは小さな古書店。キャリアも世代も異なる2人の、表現における原体験と「物語」から教わったこととは?

Syuichi Okita
映画監督
1977年8月4日生まれ、埼玉県出身。短編映画の自主制作を経て、長編作品『このすばらしきせかい』(06)でデビュー。『南極料理人』(09)が大きな話題となり、2009年度新藤兼人賞金賞を受賞し国内外で高い評価を受ける。『横道世之介』(13)では、第56回ブルーリボン賞最優秀作品賞のほか、第5回TAMA映画賞最優秀作品賞などを受賞。その他の監督作品に、『キツツキと雨』(12)、『モヒカン故郷に帰る』(16)、『モリのいる場所』(18)、『おらおらでひとりいぐも』(20)、『子供はわかってあげない』(21)、『さかなのこ』(22)、ドラマ「0.5の男」(23/WOWOW)、「探偵さん、リュック開いてますよ」(26/EX)などがあり、星野源や乃木坂46のMVも手掛けている。
目次
14歳、スキー場で雨が降ったから撮り始めた映画
⎯⎯ 今作は「言葉」や「物語」が重要なキーワードということで、書店で自由に本を選んでいただきつつ、映画についても話を聞かせてください。
沖田修一(以下、沖田):ずっと前から、「言葉にまつわる映画を作りたい」となんとなく思っていました。女の子が作文を褒められて、ちょっと自分でも書いてみる、そういう話を最初に考えて、そこから少しずつ広げていきました。
⎯⎯ 姫野さんが演じた中井聡子は、まさに「作文を褒められたことをきっかけに物語を書き始める」というキャラクター。姫野さんと聡子には似たところがありますか?
姫野花春(以下、姫野):似ているところばかりでした。ずっと、心の動きがくるくる変わる子だなって。渋いものが好きで、なんだかおじさんみたいだし(笑)。でも、こんなにおもしろく自分の話が書けちゃうなんて素敵だな、羨ましいなと思いながら台本を読んでました。

⎯⎯ 人が創作に夢中になる瞬間は、輝いていて素敵だなと感じました。沖田監督にとっての映像作りの原体験はどこにあるんでしょうか。
沖田:14歳くらいの頃に、友達とスキーに行ったら雨が降ってスキーができなくなってしまいました。その場にビデオカメラがあったので、「暇だしせっかくだから何か撮ってみようよ」と、遊びで撮ってみたのが楽しくて。「自分にも作れるんだ」と思ったのが、最初に映像に興味を持ったきっかけです。三脚の使い方も分からないから、カメラをテープで固定して撮影していたな。そして、今作の撮影に入る前に、今の姫野さんと同年代の頃に撮影した3分ほどの映像を、姫野さんにも観てもらいました。まずは自分から恥をさらけ出そうと(笑)。
姫野:めちゃめちゃ面白かったです!映像の中の監督の姿がなんだか聡子みたいに思えました。そして監督が「こんな感じで映画を作ろう」とおっしゃったのが印象的で。「これだ、これだ、これだ……!」って自分に言い聞かせながら役に向き合いました。

⎯⎯ 初期衝動のきらめきですね。
沖田:本当にそんな感じです。たった5分の映像を作るのすら大変だったので、世の中の2時間ある映画がみんなすごく思えてきて、映画を観るようになりました。元々映画を観る家庭でもなかったし、映画が好きな子どもでもなかったんですが、映画との接点は観ることよりも、作ることのほうが先にありました。


⎯⎯ 姫野さんの俳優として表現活動の「初期衝動」は?
姫野:母の薦めるままに地元のミュージックスクールのようなところに通いはじめました。初めは体験だけのつもりだったのに、気づいたら母が入会手続きを終えていて(笑)。みんなと一緒に歌の練習をする中で、自分が今後やりたいことは歌だけじゃないのかもしれないという気持ちが漠然と湧いてきました。そして、ふと聡子がお話を書き始めたシーンのように、「お芝居をやってみたい、かも知れない」と思って。お芝居をするためには事務所に入る必要があるのかなと考えて、今の事務所のオーディションを受けました。
沖田:確かに、映画でも聡子は「かも知れない」って言ってるなあ。



姫野「(角田光代の本を見つけて)角田光代さん、すごく好きです。初めてちゃんと読んだ小説が『八日目の蝉』でした」
沖田「すごいね!あ、僕が姫野さんくらいの年齢の時に読んでいた『ムッシュー』(J・P・トゥーサン)がありました。懐かしいな」

⎯⎯ 先ほど沖田監督から「恥をさらけ出した」という言葉がありました。物語を作ることも、演技をすることも、自分の内面をさらけ出す必要があると思いますが、恥ずかしさや照れはありますか?
沖田・姫野:恥ずかしいですよね。
⎯⎯ それでも何かを表現したいと思う原動力はどこにある?
沖田:良いものができたらいいなという気持ちだけです。ずっと同じ日常が続く中で、「今日はちょっと変わった日だな」と思う日があって、その1日のことがなぜか忘れられない。それを何か形に残そうという発想から、物語や、映画を作っている気がします。
姫野:役としてカメラの前に立つと、考えていた通りにいかない、自分をコントロールできないような感覚がすごくおもしろかったです。自分がコントロールできる範囲を飛び越えて、物語が勝手にどこかへ飛んでいっちゃった、みたいな。どうしても、演じている時は楽しくても、出来上がった映像の中の自分を見ると「かっこ悪いな」という気持ちが先行してしまいます。でも、映像の中の自分はすっごく楽しそうだから、「もういいや!」って思えるんです。


姫野「どうしよう!時間が足りない!もっとゆっくり改めてお買い物に来たいです!」

制限時間15分、ふたりが選んだ本は?
⎯⎯ おつかれさまでした。それでは早速、相手にお薦めしたい本や、今気になった本を紹介してください。
沖田監督が選んだ3冊
沖田:灰谷健次郎の「兎の眼」は、初めて読んだ小説です。小学校の隣の席の中村くんが読んでいて、それまで俺は活字の本を一切読んだことがなかったんですけど、「(中村くんは)なんでこんな本を読んでるんだろう」と思って自分も読んでみたら面白くて。初めて好きになった活字の本ですね。

沖田監督が選んだ3冊
姫野:どういう話なんですか?
沖田:大阪の下町の柄の悪い小学生たちの話。そこに女性の先生が赴任してきて。冒頭が結構ショッキングなんだよね……。
姫野:(1ページ目を読む)なるほど。古本特有の文字の小ささも相まって、“良い気持ち悪さ”、ですね……!
沖田:そうだね(笑)。気持ち悪いんだけど面白くて。夏休みに学生向けの推薦図書に選ばれると表紙が変わったりするので、今でもそういった新しいカバーデザインを見つけたらつい買ってしまうくらい大好きなんです。あとは、姫野さんくらいの年齢の頃に夢中になっていたジョン・アーヴィングの「ガープの世界」。映画も小説もどちらも好きです。懐かしかったのと、好きな作品なのでぜひ読んでみて欲しいと思ったので選びました。

姫野さんが選んだ3冊
姫野:私から監督に選んだのは、山田詠美さんの「ぼくは勉強ができない」と、リチャード・バックの「かもめのジョナサン」です。

姫野さんが選んだ3冊
沖田:僕らが若い頃に流行った作品じゃない?でも、タイトルは知っていても内容はよく知らないかも。
姫野:山田詠美さんの作品は、私の周りでも好きな人が多いですよ。難しく書かれていなくて、読みやすいのに面白い。周りから薦められて読んでみたら面白かったので好きな本になりました。「かもめのジョナサン」は15歳くらい年上の方から「バイブルなんだ」と言われてお薦めしていただいて。寝る前に読み始めたら、「明日もこれまた絶対読もう」と思うくらい冒頭に惹き込まれました。まだ途中までしか読めていないんですけど、ここで見かけたということは「今こそ読むべき」ということなんですかね(笑)。ちょっと時間がなくて選びきれなかったけれど、自分用には絵が好きな「星の王子さま」を選びました。
⎯⎯ 本や映画などから受けた影響が自身の表現に活きたことはありますか?
沖田:僕は本や映画から影響を受けることは多いですね。
姫野:最近だと、山田太一さんの作品がすごく面白くて、作品そのものからも影響を受けています。あと、山崎努さんが「山田さんの作品では、役者は言葉に縛られる代わりに身体の自由を得る」とおっしゃっていて、その言葉もすごく面白いなと思って。お芝居の見え方が新しくなるような感じがしました。
沖田:山田太一、面白いよね。俺も「早春スケッチブック」の台本を家のトイレに置いて時々読み返してる。家中のいろんなところに本を置いているんだけど、最近トイレに本を置くのが好きで(笑)。
姫野:トイレに?!家族は何も言わないんですか?
沖田:家族もトイレで本を読んでるね。娘は最近自分の漫画を持ち込んでるみたい。
一同:(笑)

朗らかで柔らかな空気を纏う沖田監督と、聡明な雰囲気が印象的な姫野さん。撮影の合間も本や家事、映画の話がとめどなく続いた。
<訪れたのは……🚶📕🐾「本と喫茶パラード」>

喫茶スペースを併設した一部新刊も取り扱う古書店。小説だけでなく写真集や絵本、漫画なども幅広く揃う。撮影は移転前の渋谷の店舗で実施。現在は移転のため一時閉店中。再開についての情報は公式インスタグラムへ🔗
移転先所在地:東京都世田谷区上馬4-41-4
Instagram
photography: Katsuya Fujii, styling: Shoh Sasaki, hair & makeup: Yuko Aika
◾️さとこはいつも
<STORY>
同級生に恋する鼻炎持ちの中学3年生・ソフト部所属の中井聡子(15歳)。姪っ子と韓国カルチャーLOVE!映画配給会社の宣伝部でバリバリ仕事しつつ、6年目になる不倫が倦怠期を迎えている西田沙都子(35歳)。子育てがひと段落、ようやく自分の時間ができた飯島里子(55歳)。三者三様、まったく違う人生を歩む 【さとこ】 たち...。それぞれに降りかかる出来事や運命的な出会いをきっかけに、自分の人生を“物語”として書き始めたとき、3人の「さとこ」たちが少しずつめぐり合っていき⎯⎯!?
有村架純
石田ひかり 姫野花春
黒田大輔 宮部純子 泉有乃 大月美里果 小川冬晴
青木柚 川瀬陽太 島田桃依 中井友望 中村優子
細田佳央太 鳴海唯 髙田万作 古舘寛治
吉田羊 オダギリジョー 筒井道隆
監督・脚本 沖田修一
音楽 柴田聡子
主題歌 折坂悠太 「シミレ(feat.柴田聡子)」
製作幹事 アミューズクリエイティブスタジオ
配給 ハピネットファントム・スタジオ 制作プロダクション オフィス・シロウズ
助成 文化庁文化芸術振興費補助金(日本映画製作支援事業) 独立行政法人日本芸術文化振興会 ©2026 「さとこはいつも」製作委員会
公式サイト
9月18日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
最終更新日:
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