
スペインファッションの次世代を担う「ソニア カラスコ(SONIA CARRASCO)」が、日本で初のショーを行った。「Rakuten Fashion Week TOKYO 2027 S/S」による海外ブランド招致の一環で実現したもので、6月にパリファッションウィークで披露した2027年春夏コレクション「ACT II: SOBREMESA」のショー構成を新たに組み直し、“再演”した。
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デザイナーのソニア・カラスコ(Sonia Carrasco)は、1988年にスペインのバレンシアで生まれ、マドリードのデザイン学校 Istituto Europeo di Design Madrid(IED)でファッションデザインを学んだ。卒業後は「アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)」で経験を積み、フィービー・ファイロ(Phoebe Philo)率いる「セリーヌ(CÉLINE)」でアシスタントデザイナーとして携わった。2019年にバルセロナを拠点に自身のブランドをスタート。立ち上げから一貫してメイドインスペインを追求し、一部を除いてすべてスペイン産の素材を採用するほか、イタリアのウールなどスーツ生地を使う場合も縫製はスペインで行うなど徹底している。2026年秋冬シーズンから、パリファッションウィークの公式スケジュールで発表している。

2027年春夏コレクションのテーマ「ACT II: SOBREMESA」に用いた「SOBREMESA」は、スペイン語で「食後に家族や友人と会話を楽しむ楽しい時間」を表す言葉。パリのショーでは会場を貫くように長い食卓を設置し、フィナーレでモデルがその上を歩くという大胆な演出で注目を集めた。前回の2026年秋冬コレクションのショーでは、織機や制作途中の洋服によるインスタレーションとランウェイを融合するなど、美しいコレクションは常に誰かの創造性と手仕事によって生み出されることを空間全体で提示してきた。
グリッド調に並べられた椅子。ショー演出はPRODUCTION Hが担当
東京でのショーに際し、古代ギリシアの都市メガロポリスのテルシリオン(議事堂)が着想源となった。機械や重機などがない時代に建築されたこの建物は、調和と均整を兼ね備えたデザインで当時の超大都市システムを象徴している。実際のショー会場ではテルシリオンの均質な構造を観客の椅子の配置によって再現しながら、“秩序から逸脱”するような要素を取り入れたという。長い直線状のランウェイではなく、客席を数席ずつのブロックに分け、モデルがそれらの隙間を縫うように歩いていく演出によって、有機的でしなやかな動線を生み出したのが特徴。これについてソニアは「秩序的で“完璧な構造”とも言える建築をベースにしながら、モデルが観客の直近をすり抜けるように歩くことで、構造を打ち破るような自由なムードを表現したかったのです」と説明する。


この「構造的秩序と自由の対比」は、ソニアの服作りにも反映されており、今季のクリエイションは「衣服の内側には何があるべきか」という問いからスタートしている。ジャケットやベストでは、衿裏の表地と芯地を縫い合わせるハ刺しをテキスタイルのように組み合わせ、ポイントとしてしつけ縫いのようなステッチをあしらい、ショルダーパッドの中身が覗くようなカッティングを施すなどのギミックが特徴だ。これらのディテールは本来の機能や仕立ての目的を損なうことなく配しており、ソニアによればこうしたアプローチは、「“脱構築”的な表現がしたかったのではなく、内部構造をごく自然に表面化する新たな均衡の探究」なのだという。また、内側の要素を表出させたデザインは、創作の過程を重要視するブランドの姿勢を具現化したものでもある。


伝統的なテーラリングに新たなコードを与えるスーチングのほか、ニットもブランドを象徴するアイテム。スーツ類と連動するように白いステッチを施したローゲージニットのカットソー、ショートパンツ、カーディガンのニットルックをワードローブのアクセントとして差し込んだ。加えて、100%シルクの糸を用いたフリンジスカートのようにハンドクラフトな印象とともにコレクションに流動性を与える実験的なアイテムも目を引いた。

ロールアップのスタイリングや、ハンズインポケットといったポージングによってリラクシーなムードを演出。ポプリン生地のシャツ、ショーツ、スカートのスタイリングでは、ポケットに手を入れることでAラインシルエットを強調。過度なボディストラクチャーや装飾性によってスタイルを作るのではなく、着る人の身体と連動してファッションは確立されるというソニアの感性を浮かび上がらせていた。




空間演出の音楽もソニアが手掛け、コレクションのテーマである「対比」や「流動性」を表現。力強いドラムが鳴り響くロック調のメロディと、優美なクラシックテイストの音楽が交錯し、調和と開放感のある自由なムードが高められていく。フィナーレではリヒャルト・ワーグナーの楽劇「ラインの黄金」第4場における「ヴァルハラ城への神々の入場」が壮大なエンディングを彩った。
実はブランドにとって日本は最大のマーケットのひとつで、ブランド設立当初から取り扱いされている。ソニア自身も日本のマーケットに対し「新しいブランドを発見し、支援する何か特別なものがある」と語っており、今回のショーによってより深い結びつきを得られることに喜びを示した。

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