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【トップに聞く 2021】三陽商会 大江伸治社長 ラブレスの不振は「素人遊びの結果だ」

三陽商会 大江伸治社長

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【トップに聞く 2021】三陽商会 大江伸治社長 ラブレスの不振は「素人遊びの結果だ」

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 新型コロナウイルス感染症が全世界で猛威を振るった2020年。アパレル業界にも影響を及ぼし、業界再編の動きが加速している。第3波の到来で収束の目処が未だ立たない現状をアパレル企業のトップはどう捉え、2021年をどのように見据えるのか。ウィズコロナ時代の経営の展望を聞く短期連載「トップに聞く 2021」第1回は、三陽商会の大江伸治社長。

■大江伸治
1947年生まれ。京都大学卒業後、三井物産に入社し繊維部門を歴任。2007年にゴールドウインの取締役専務執行役員に着任し、業績回復に貢献した。その実績が買われ、2020年3月に三陽商会に入社。同社副社長を経て同年5月に社長に昇格した。

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―大江氏にとって三陽商会の社長就任1年目となった2020年はどんな年になりましたか?

 非常に苦難と苦渋に満ちた一年だったというのが率直な実感。夏の感染第2波はそこまでダメージが大きくなかったのでこのまま徐々に市場が正常化していくと思っていたが、11月に入ってから第3波がやってきた。3月の第1波を"カウンターパンチ"とするなら、第3波はまさに"ボディブロー"。ずしっとダメージを食らってしまった。まさに新型コロナウイルスに翻弄された一年だった。

―再建に向けて再生プランに着手し始めたところでコロナの感染が拡大しました。

 当初は1年で完結する再生プランを打ち立てていたが、コロナの影響で内容を2年計画に見直した。事業構造改革は非常に順調で、今期については第3波の影響もあり粗利率のみ目標を下回りそうだが、それ以外の数字は計画以上の成果を出せたと感じている。あとは売り上げさえ回復すればあっぱれだ。それを踏まえると今年は挑戦の一年、あるいは手応えのある一年という側面もあった。

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―今秋冬、そして2021年春夏商品の仕入れはどのように対応していますか?

 冬向けの商品はプロパー販売を徹底してきたが、第3波で動きが鈍いので軌道修正する必要がある。来期の仕入れは期初の見込み発注をできるだけ抑え、期中に入ってから状況に応じてコントロールしていく方針だ。来春夏商品についてはトータルで70億〜80億円を見積もっている。来年1、2月ですでに20億円分の仕入れが確定しているが、シーズンが始まり店頭状況を見ながら最終決定していく。

―コロナ禍で店頭売上に大きなダメージがありましたが、ECの売上は伸長していますね。

 ECの3〜8月期の売上高は前年比118%で推移していて好調だ。EC化率は前年の12.7%から24.4%に上昇したが、その後店頭売上が多少上がったので今期は累計で20%くらいになるだろう。

―EC化率は他社と比較すると低水準の印象があります。

 我々の商品は、ECの画面上の"記号(情報)"で商品価値を判断していただくものではなく、実際にリアル店舗で販売員との接客・会話を通じて、かつ商品に触れて試着してはじめて商品価値をご理解いただけるものだと思っている。あくまでもリアル店舗が主軸でECがそれを補完するというスタンスは今後も変えるつもりはない。

―リアル店舗を主軸に据えるのはコロナ禍では不利に感じますが。

 ブランドビジネスはコンセプト、フィロソフィー、世界観、そしてブランドに込めた思いをきちんと表現してお客さんに認知していただくことが重要。リアル店舗はその表現のツールとしては欠かせないものですから、一過性の環境で軸をぶらすことはしない。リアル店舗を縮小して基軸をECにシフトする企業もあるが、ECがリアル店舗の売り上げを補完できているかというと全くできていない。僕はどう考えてもその戦略は無理があるのではないかと思っている。

―"百貨店依存"が業績に影響しているという見方もあります。

 百貨店については今期計画していた約160店舗の撤退がほぼ完了している。とはいえ僕は百貨店そのものを否定する気は全くなく、坪当たりの売上は最低でも20〜30万円、売り場によっては100万円を売り上げるところもあり、守っていきたいマーケットでもある。百貨店ビジネスが儲からないのは売り場ではなくオペレーションに問題があるので、今後はオペレーションマネジメントをきっちり変えていくつもりだ。ただし成長市場ではないので、そこに変わる売り場としては直営店とECを徹底していく。前期の百貨店の売上構成比は62%だが、今期は55%、2年後には50%を切るのでは。

―不採算事業の「ラブレス」「キャスト」が不振となった要因についてはどのように分析されていますか?

 2015年春夏にバーバリーのライセンス事業を終了して以降、当社内に「売上を補完しなくてはいけない」という強迫観念のようなものがあったと思う。マッキントッシュを後継ブランドと位置付け規模を拡大したが、それだけでは補完できないということで「ラブレス」「キャスト」も店舗数や品番を馬鹿みたいに広げ、途方もない売上計画で大量に在庫が余ってしまった。

 特にラブレスはあれもこれもと仕入れてしまったために5000品番もある状態になっていた。そもそもセレクトショップの競争力の根幹となるのは編集力。編集力というのはブランドディレクションをきっちり立て、商品を集約するということ。それを忘れ、無計画に量だけを増やしたことでキャラクターが曖昧になってしまった。一時はエッジの効いたこだわり商品でちょっとした話題を瞬間的に呼んだらしいが、今はコンセプトが二転三転しているでしょう? 1匹の魚を大きな網で捕るという、リスクがないと思われたやり方で最大のリスクを冒してしまった。これは素人遊びの結果だ。

―現時点で事業継続できる見通しでしょうか。

 ラブレスはまず原点に立ち返るために既存の15店舗のうち8店舗を閉店する。販管費は半分以下に、品番数は5000から1000ほどに減らし、スリム化とローコスト化を推進している。ただあまりにも品番数が多く、1点も売れずにキャリーオーバーになった商品もあり、お恥ずかしい話だが廃棄処分対象となっている。また、調子の悪い店舗がまだあり、引き続き注視していかなくてはいけない状況だ。

 キャストは店舗数を3分の1に減らし、今秋冬から新体制でスタートして以降は調子を上げてきている。MDを徹底すれば来期の営業損益はブレイクイーブン(損益均衡)を目指せるだろう。

―今後注力するブランドは?

 「マッキントッシュ ロンドン」「クレストブリッジ」「エポカ」「ポール・スチュアート」の4つはコアブランドとして発展させていきたい。

 「三陽山長」や「エス エッセンシャルズ」については「SANYO」の社名を打ち出していく。これまでも三陽山長の店内に「100年コート」を置くなどしてきたが、SANYOを冠としたショップの中に我々が誇るブランドをいくつか揃え、MDにも工夫を取り入れ、品質の高いものを展開していく。最終的にはひとつのベンチマークとなることを目指していきたい。

―ミドルアッパー層により注力していくということでしょうか。

 ミドルアッパー市場のプレーヤーの数は減っているので、取れる島は相対的には減らないはずだ。三陽商会が守るべきマーケットはそこにあると考えている。ただ将来的にはキャストのような若者向けのブランドや、ラブレスのようなセレクト型のビジネスモデルはチャレンジしてもいいと思う。個人的には時々のトレンドに左右される小規模のビジネスモデルが、果たして当社に合っているのかと疑問に思う部分はあるが。

―大江社長にとって「三陽商会の復活」はどこに位置付けていますか?

 まず黒字化は前提で、いまはスタートラインにも立てていない。黒字化を達成した後、僕がどこまで経営に携わるかは正直わからない(笑)。一つの切符がもらえるとしたら、売上規模はともかくとして、営業利益率10%、粗利率55%、販管費率45%の水準を達成することが一つの目標になるだろう。これは私がゴールドウインに在籍していた頃の水準でもある。販管費率については来期に47%、粗利率は50%に到達する見込みで、実現性のある数字だと思っている。

―2021年のアパレル業界の展望と、御社の経営戦略について教えてください。

 はっきり言ってプレーヤーは相当淘汰され、脱落者が増えるだろう。我々が得意とするミドルアッパー市場もレナウンのように会社ごと消えてしまったプレーヤーもいれば、価格訴求型あるいはトレンド訴求型にシフトしていくプレーヤーもいる。市場が縮小することはあるかもしれないが、なくなることはないと僕は思っている。本当の意味でミドルアッパー市場で愚直に戦っているプレーヤーはあまりいない。このマーケットで事業を効率化し、そしてクリエイティビティを磨き、良心的で品位の高い商品を真面目に作っていくことが我々のやるべきことだ。

―大江社長が考える「クリエイティビティ」とは何でしょう。

 「無から有を生み出す」こと。それは商品、企画、機能、品質、店舗、ブランド、ビジネスモデル、あらゆるものを新たに生み出していくというパワーであり、そのものを磨いていくことだ。ただ、奇抜な新機軸にこだわりすぎるのではなく「SANYO」の持ち味やアセット、リソースをしっかりと守りながら応用していく。オーソドックスをきっちりと守っていくことが三陽商会にふさわしいと僕は思っている。

(聞き手:伊藤真帆)

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