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【トップに聞く 2021】ワールド 鈴木信輝社長 都心部でも「場所の価値が変化している」

ワールド 鈴木信輝社長

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【トップに聞く 2021】ワールド 鈴木信輝社長 都心部でも「場所の価値が変化している」

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 ウィズコロナ時代の経営の展望を聞く短期連載「トップに聞く 2021」第3回はワールドの鈴木信輝社長。鈴木氏は2020年6月に同職に就任したばかり。「アクアガール(aquagirl)」など5ブランドの終了、低収益店358店の撤退、希望退職募集など大規模の構造改革に着手し、コロナ禍という異例の状況下で大きな転換の局面と向き合っている。業界を牽引してきたワールドが見据える企業像とは。

■鈴木信輝
1974年生まれ。京都大学大学院法学研究科修士課程終了。アンダーセン・コンサルティング(現・アクセンチュア)、ローランドベルガー、企業再生支援機構、ボストンコンサルティング・グループなどを経て、2012年9月にワールドに入社。常務執行役員 構造改革本部本部長、デジタル機能の強化やサービス提供を管掌する「D‐GROWTH」戦略本部、グループ戦略統括など、執行体制の中核メンバーとして年間の利益計画やデジタル事業といった構造改革を担ってきた。2020年6月に前社長の上山健二氏の後任として、グループ専務執行役員から代表取締役 社長執行役員に昇格

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―2020年をひとことで表すなら?

 ひとこと......「大変」、だったと思う。お客様の動き、そして業界が大きく変わったという意味でも「大変」な一年だった。

―感染第3波が到来し、今も大変な状況が続いています。

 11月半ば以降の状況はなかなか厳しい。特に都心部出店の比率が高い事業が多いので、客数減が大きく響いている。逆に郊外は好調。ECも継続的に成長しているが、全体の売上額が上がらなければEC化率が伸びてもあまり意味がない。

―今期のコア営業利益は黒字着地を見込んでいます。

 2020年春夏は粗利を大きく崩したが、秋冬はプロパー販売を軸にしている。粗利率の改善と経費コントロールにも取り組んでいるが、第3波の影響を考えたときに耐えきれるかどうかが問題。

2020年秋冬商品の仕入れは3割削減の方針ですが、2021年春夏商品の計画は?

 保守的に見ているが、前年度の売上水準から意図的に大きく減らすことはしない。

―コロナ禍で好調のブランドは?

 「ワンズテラス(one'sterrace)」「トゥーワントゥーキッチンストア(212 KITCHEN STORE)」といったライフスタイルブランドは堅調。下着ブランドの「リサマリ(Risa Magli)」も相対的に見ると好調だった。

―「ハッシュアッシュ(HusHusH)」「サンカンシオン(3can4on)」「オゾック(OZOC)」「アクアガール」「アナトリエ(anatelier)」の5ブランドが事業を終了します。不採算の要因は何だったのでしょうか。

 それぞれ中身が異なる事業なのでいくつか理由がある。「ハッシュアッシュ」はファミリー向け業態でショッピングセンターを中心に出店してきたが、キッズで言えばナルミヤ・インターナショナルで展開している専業ブランドの方が提案のバリエーションが豊富。業態転換やリブランディングにも何度か取り組んできたが、時代の変化に適応しきれなかった。

 セレクトの要素が強い「アクアガール」に関しては、ネットで何でも買える時代になり、差異化を図るためにオリジナル商品の開発に力を入れてきたが品質を上げきれず、バイイング依存になってしまったのは反省点。また、20年近くの歴史があるが、既存の顧客と新規顧客のバランスをうまく取ることができなかった。これも時代の変化に適応しきれなかったことが要因だと思っている。

―今後もブランドポートフォリオの整理は続けていきますか?

 基本的には進めていく方針だが、どのブランドを対象としているかは具体的に決めていない。ただ、アパレル事業が弱くなっていることは事実として認識している。

―アパレルと非アパレルの構成比率についてはどのように考えていますか?

 利益構成比で5対5を目指すというのは今も変わらないが、それはあくまでアパレル事業がきちんと回復していることが前提。

―ワールドはアパレル最大手の一つとして名を馳せてきました。非アパレルを拡大することへの抵抗はないのでしょうか。

 それはもちろんある。もともと我々が推進してきた構造改革プランは、アパレル事業を維持しながらその他の事業で業績を拡大し、成長していくことで"一本足打法"からの脱却を図るというもの。メッセージ的に「アパレルの構成比を下げる」といった風に捉えられがちだが、アパレル事業が沈んでいいとは思っていない。コロナの流行でアパレル事業の業績が想像以上に落ちたが、逆に(非アパレルに投資する)プラットフォーム事業は利益が改善している。プラットフォーム事業とライフスタイルブランドが成長していなかったら会社の業績としてはもっと酷いことになっていただろう。

―非アパレルに投資していたからこそ、企業として持ち堪えることができたということですね。

 そう思っている。しかし、アパレル以外に資源を充てたことでアパレル事業の変化対応力が弱ってしまったのは反省点。今後は"一周回って"アパレル事業を強化する方針だ。

―具体的なプランは?

 "勝たせる"事業をより明確にしていく。例えば「シューラルー(SHOO・LA・RUE)」はいま400店舗近くあるが、さらに出店を加速させていくし、フランチャイズ店舗も増やしていく。一方で厳しいブランドは店舗を広げるのではなく、選ばれるブランドにするためにブランド力を高める。それでも収益改善が見込めない事業については統廃合を進めるといった具合に、これまで以上にメリハリをはっきりとつけていく。

シューラルーの店舗

シューラルーの店舗

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―シューラルーの強みとは?

 2000円台〜という低価格帯と、3世代をカバーできるMDの幅広さにあると思う。

―年齢層がかなり幅広いですね。

 昔のように年代で区切るのではなく広い世代に受け入れられる提案をしないと、ブランドを運営していくには難しいと感じている。ただ、ブランディングもすごく大事。特に価格帯が高くなればなるほど、個性がないブランドは生き残れない。

―その状況下で今後はどのように戦っていくのでしょうか。

 ワールドはもともとのDNAが「多業態・多ブランド」なので、"いろいろある方が楽しい"というのが根本にある。我々はユニクロにはなれないが、やはりファッションに多様性は必要だと思っているし、そこだけは旗を降ろすつもりはない。個性が強い小規模のブランドがあってもいいし、価格帯が安くてもテイストがはっきりしたブランドがあってもいい。グループとしては全体のビジネスが成り立てば良いと考えている。

―今後の出店戦略について教えてください。

 全体のバランスを見ながら現状維持もしくは出店を拡大する。ブランドの内訳は大きく変わるだろう。新規出店については地方を含む郊外がキーワードになる。

都心部には出店しないのでしょうか。

 出店しないわけではないが、場所の価値が変わってきているので出店エリアやブランドを慎重に見極めている。昔は収益性が高かったところが今も維持しているとは限らない。これはアフターコロナ以降に関しても同様の考えだ。

―都心部では特に百貨店がインバウンド減で苦境を強いられていますが。

 "百貨店はもうダメだ"という認識が広がっているようだが、我々はそう思っていない。百貨店には顧客がしっかりついている。顧客をゼロから積み上げるのは大変なこと。それがベースとなっている以上はビジネスとしては成り立つので「百貨店だから引く」ということは考えていない。一方で厳しくなっていくフロアやブランドがあると思うので、撤退するべきところは躊躇なく決断していく。

―集客力は回復すると考えていますか?

 モビリティの調査を見ていると、人の動きがコロナ以前とだいぶ違う。福岡などの地方都市は公共交通機関の利用者が減っていて、購買行動が戻らない可能性がある。都心部はテレワークが進んで通勤が減っている状況なので、商業施設の厳しさは今年もある程度続くだろう。だからといって完全撤退は考えていない。

―M&Aの計画についてはいかがでしょうか。

 昨年までラクサスなどリユースやシェアリングサービスを展開する企業を買収し、カテゴリーを強化した。いまは新規でM&Aを実施するよりも、これらの基盤を固めていくことに注力していく。

―2021年もアパレル業界は苦戦が続きそうです。

 業界内で再編が続き、変化に時間をかけることが許されなくなっているが、逆に大きく変化するにはいいチャンス。企業改革を進めているという点においてはプラスに働いていると感じている。今は新しいことに挑戦し続けるしかない。人が服を着なくなるわけではないですし、この流れに対応できた企業が総取りしていくだろう。

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―コロナの先にあるワールドが目指す企業像は?

 ファッションの多様性に貢献できる企業グループでありたい。例えばブランドを作るという直接的なことでもいいし、プラットフォーム事業で取り組んでいるような個人の若手クリエイターや他社のブランド立ち上げをサポートすることでもいい。結果的にファッション産業のなかで様々な側面からジェネレートしていくようなグループでありたいと思う。

―展示会の中止が余儀なくされる状況が続いています。最後に、若手クリエイターやブランドにメッセージがあればお願いします。

 変化のタイミングというのは新しい提案が通る確率が高くなる。我々でいうと昨年に始めたオフプライス事業は、5年前なら許されなかったビジネスモデルだったはず。今は苦しい時期だと思うが、苦しいときこそ表現を続けることを諦めないでほしい。

(聞き手:伊藤真帆)

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