アンダーカバー2021-22年秋冬コレクション
Image by: FASHIONSNAP(Issei Saito)
単独ショーとしては19年ぶりの開催となった「アンダーカバー(UNDERCOVER)」東京コレクション。モード界におけるストーリーテラーとも言えるデザイナー高橋盾が、このコロナ禍のショーで何を見せるのか。スタート前の照明を落とした会場内は、静かな熱気に包まれていた。タイトルは「CREEP VERY」。
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■序章: パジャマ姿の子どもたち
ショーが幕を開け、最初に登場したのは子どもたち。パジャマ姿でうつむきながらフラフラと歩き、表情には生気がない。よく見ると、羽織ったニットや重ね着風のトロンプルイユのパジャマに、怪しげな影がデザインされていた。これらは庵野秀明のアニメ・映画作品「エヴァンゲリオン」に登場する使徒のシルエット。この時点で気づいていた観客はほとんどいなかったかもしれないが、10人の子どもたちは次のシーンに続くエヴァコラボの序章だった。
■MEN'S SHOW: アングラなエヴァの世界
暗転したランウェイに赤い点が見えた。白一色のルックのヘッドライトの光で、脳天は緑色に光っている。ヘッドピースはエヴァンゲリオン零号機を想起させ、パイロットの綾波レイが着用する白のプラグスーツからカラーイメージを抽出したようだ。壁にはアニメーションが投影され、曲は宇多田ヒカルの「桜流し」をMARS89がリミックス。
続いて初号機、弐号機、そしてプラグスーツといった代表的なモチーフがアレンジされ、シーンの終盤は黒一色のスタイル。エヴァにまつわるスケッチ風のプリントが、ブラックライトで浮かび上がるギミックが施されていた。いずれもエヴァをそのまま落とし込むのではなく、アンダーカバー流にひねりを加えてアンダーグラウンドな雰囲気を残している。
なお、エヴァのパートは「MEN'S SHOW」と題されていた。アンダーカバーは1月に2021-22年秋冬メンズコレクションを発表済みだが、今回のショーでは全く異なるもうひとつのメンズコレクションを見せたようだ。
■WOMEN'S SHOW: ダークの中の美しさ
ショーの後半はウィメンズコレクション。序盤はコラージュの手法を取り入れたニットのシリーズで、異なるインターシャ柄を一着の中で組み合わせたり、パッチワークを乗せたり。異素材のレイヤードルックは、PVC素材をシールドのようにフロントに取り入れたスタイルが目を引いた。
天井に星空のような照明が灯ると、装いが華やかに。ウエストに巻いた太いサテンのリボンはバックスタイルでフリルに変化。印象的だったのはニットとサテンで表現した赤い薔薇の花束のようなルックだ。
ビビッドカラーのタキシードスタイルにはフェザーをふんだんに。過剰なまでにチュールが施されたダウンは大輪の花のよう。終盤に向かうにつれて、よりドラマチックなデザインに変化していく。
しかし、美しさの中にダークな一面が潜んでいるのがアンダーカバーならでは。中盤に登場した6体は、メンズの2021-22年秋冬コレクションと連動したマーカス・アッケーソン(Markus Akesson)のシリーズ。不穏なムードの絵画作品を取り入れている。
花のモチーフが目立つ一方で、終盤のブラックがベースの2体には、カッターで切り取ったような蛾の絵柄が全身を覆う。ビジューによって徐々に浸食されていくようなメーキャップも、ダークな美しさを反映していた。曲はショーのテーマとも重なるRADIOHEADの「CREEP」を、トム・ヨーク(Thom Yorke)がリミックスした。
■願いと希望のメッセージ
「私達が日々抱える不安や悩み、その先にあって欲しいと願う希望。今の時代、常に相反する感情を抱えて生きている全ての人々に向けて作った世界観です。服のデザインとは別の次元の話ですが、それを感じ取って貰えたら光栄です」(高橋盾)
今この時代にショーを開催する意味が、メッセージからも受け取れる。美しいものを求めていたのだと気づかされるような、重々しく鮮やかなファンタジーが強烈なインパクトを残した。
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