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在宅で眺める、ポスト・パンデミックのファッション風景 vol.3 言葉が加わったコレクション BALMUNG、meanswhile

BALMUNG 2021年秋冬コレクション

BALMUNG 2021年秋冬コレクション

Image by: FASHIONSNAP(Ippei Saito)

BALMUNG 2021年秋冬コレクション

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在宅で眺める、ポスト・パンデミックのファッション風景 vol.3 言葉が加わったコレクション BALMUNG、meanswhile

BALMUNG 2021年秋冬コレクション

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Image by: FASHIONSNAP(Ippei Saito)

ファッションエディター
西谷真理子

 「バルムング(BALMUNG)」は今回リアルなショーを発表した。オンライン配信だけでまとめようと思っていたが、例外的にこれを取り上げようと思う。本日(最終回)のテーマは、「言葉」である。

 vol.2のポストにも書いたように、オンライン配信ならではの良さが少しずつ作り手にも、視聴者にもわかってきたのが今シーズンだと思う。秀作はいくつもあるが、これまで紹介した以外では、とてもシンプル、クリーン、そしてダイナミックで、それが服のデザインと呼応していたのがさすが、と思えた「ハイク(HYKE)」(3/18)、それと最終日の3/20の「コウザブロウ(KOZABURO)」も加えたい。こちらは、場所を高野山金剛峯寺南院に設定し、そこで修行僧に扮した3人のモデル(本物の僧侶か!?もしくはダンサーか?)の、森の奥の静謐な空気の中での「日常」を、衣服を変えつつ描いているのだが、それがなんとも美しい、そしておかしい(信仰心が感じられなくて)。お寺をロケ場所に選ぶこと自体は珍しくないが、この全体のストーリーの作りはなかなかだ。

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BALMUNG 2021年秋冬コレクション

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Image by: FASHIONSNAP.COM(Mika Inoue)

 で、バルムングに戻る。東神田の&STUDIOで、モデルを使ったインスタレーションを発表したバルムング。会場には、着色した紙粘土をねじって固めたような物質がビニール袋に入った状態で、いくつか束ねて、段ボールの台の上に設置されている。それが会場に数点置かれた中を、モデルがゆっくりと思い思いに歩き回る。

会場で配られた鈴木操氏による『ファッションの様相についての覚書、BALMUNGからはじめる』

 「言葉」と言ったのは、会場で配られた1枚の紙に印刷された鈴木操氏による『ファッションの様相についての覚書、BALMUNGからはじめる』という小論を紹介したいからだ。プレスリリースではなく、鈴木操というデザイナーHachiの友人のアーティスト(会場に置かれたオブジェの作者)の見解なのだが、とても読みづらい字組の文章(それだけに特異な存在感を放っている)を読んでいくと、バルムングを「現在の複雑なファッション体系を独自に更新する稀有なファッションブランドである」と捉え、「身体的」または「彫刻的」という視点で語られることの多かった従来のファッションとは異なる「パフォーマティブな衣服」という見方でバルムングを評価、さらに、「ノン・ジェンダー」、「ルームウェアやスポーツウェアを由来とする身体の弛緩を肯定するアイテムバリエーション」、「肩からぶら下がっている従来の衣服の構造を放棄するシルエット」と観察・分析していく様子はなかなか興味深い。これまで私は、バルムングを、アート作品を作る感覚で作られた彫刻的な衣服、あるいは、アート作品とともに配置される衣服と見ていたが、鈴木さんの言葉の方が腑に落ちる。このように、ファッション関係者の既存の言葉で掴みきれない新しい服は、ふさわしい語り部を見つけることで、鈴木さんの小論の裏面に書いてあるように、「人新世やAI、思弁的実在論」などのような現代の様々な新しい動きとつながることができるのだろう。

BALMUNG

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BALMUNG 2021年秋冬コレクション

2021 AUTUMN WINTERファッションショー

 もう一つの藤崎尚大の「ミーンズワイル(meanswhile)」は、動画の中に言葉が組み込まれていたところが目を引いた。というか、珍しいと思った。1分半の短い映像は、服が出てくるまでに、水面や地層、岩石のアップや樹々の生茂る斜面などの自然の描写があり、英語のナレーションが、人工物(A)と手が加えられていない自然の存在(B)をめぐる考察を始めるのだ(字幕付き)。最後に語られる「二つ(AとB)の狭間を行き来すること、そこから生まれる可能性を探ること」というのが、ミーンズワイルの服作りの姿勢なのであろう。動画には、もちろん新作の服が流れに溶け込むように何点か登場するが、私はこの絞り込んだ発表の仕方にとても惹かれた。昨年夏のパリメンズの映像の中には、新作コレクションを見せる代わりに、デザイナーが服作りの思いを語るというブランドがいくつかあった。最終的に服を買う人は展示会やショールームでそのラインナップやカラーパレット、素材感をチェックすることはできる。東京でもこんな発表があったことがなんともうれしい。

 在宅視聴者の強みは、最新コレクションを間近で見ることができない代わりに、アーカイブ映像を次々に見ることができる。昨秋(2021春夏)のファッションウィーク初参加のリアルなショー「Error」も、2016春夏、2017春夏、2018春夏のイメージ動画(この時期にはオンライン配信というものはなかった)も視聴し、ルックブックもチェックしたことで、ミーンズワイルというブランドのことをいくらか学習したと思う。 TOKYO FASHION AWARD 2020の特典としてのこの映像は東京に先がけて今シーズンのロンドンファッションウィークで発表された。

meanswhile 2021年秋冬

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