今年のお買い物を振り返る「2021年ベストバイ」。10人目は、シンガーソングライターのカネコアヤノさん。今年11月に日本武道館で初のワンマンライブ「カネコアヤノ 日本武道館ワンマンショー 2021」を終え、来年にはバンドツアーとソロ弾き語りツアーを控えているカネコさんは生粋のファッションフリークとしても知られていますが、同企画では服はリストアップはなし。なぜカネコさんは「今年買ってよかったもの」の中に服を入れなかったのでしょうか。その理由とともに、カネコさんの2021年に買って良かったモノ6点を愛猫3匹と暮らすご自宅で聞きました。
目次
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アンティークショップで手に入れた ヴィンテージの椅子
FASHIONSNAO(以下、F):ヴィンテージショップにはよく行くんですか?
カネコ:そんなに行かないかな。「欲しいな」と思った時に立ち寄るか、街をふらふら歩いている時に気になったお店に入るとか。だから行きつけのお店がある訳ではないんですよ。
F:今回はどのような理由で「欲しいな」と思ったんですか?
カネコ:「弾き語りライブ用に椅子を新調したいな」と思って。三宿にある「ザ・グローブ」というアンティークショップで買いました。
F:弾き語りライブをする度に椅子を新調しているんですか?
カネコ:いえ。ずっと使っていた椅子が人からもらったモノなんですけど、座り心地がいいからなんとなく使い続けていたんです。でも「ちゃんと自分で気に入ったモノを買おう」と思い立って。
F:木の座面ですが座り心地は?
カネコ:良くも悪くもないです。見た目もただ四角くて「普通」。ぱっと見、普通の佇まいだからこの椅子が気にいったんだと思います。「なんか普通でいいな」と。
F:よく見ると脚の前後で形違うんですね。
カネコ:そうなんですよ、基本的には普通だけどちょっと変。背もたれが高いところも気に入っています。
F:今回ご自宅にお邪魔していますが、様々な形の椅子が色々なところに置かれていますね。
カネコ:椅子が好きで、集めがちかもしれません。「松本民芸家具」という家具メーカーで購入したものなど、買った場所もそれぞれです。家具は全部そうだと思うんですけどそれぞれに個性があるし、テーブルや椅子は脚があるから生き物っぽい。椅子だけに関していうと人間の身体にフィットするものだから他の家具よりも少しだけ愛着が湧きやすい気がしています。
F:椅子もそうですが、ラグやキャビネットなど、ヴィンテージらしい風合いがある家具が多いですね。
カネコ:ヴィンテージ家具は好きかもしれない。
F:ヴィンテージアイテムは、誰かが使っていたという歴史に想いを馳せることができるのが魅力なのかなと思っています。
カネコ:受け継がれていく感じはありますよね。吉祥寺の「シェモア」というよく行っていた喫茶店が閉店する時に譲り受けた椅子とテーブルがあるんですけど、傷や欠けなど使い込まれていたことが見て取れるし、私も実際に通っていたお店だからどんな雰囲気の人がこの椅子と机を使っていたかを知っている。すごく思い入れがあります。
中村鷹聖の作品 鏡
カネコ:元々家具屋さんの店主だった友人 中村鷹聖さんの展示で一目惚れして購入しました。
F:どのような展示内容だったんですか?
カネコ:古い椅子の座面を張り替える展示で、椅子ができる過程を見せてくれるものでした。展示会場の一番最後にこれがこっそりと置かれていて。一目惚れです。
F:この鏡のフレームも元々は違う家具だったんでしょうか?
カネコ:古い額縁をリメイクしたと聞きました。
F:本来、絵や写真が差し込まれていたところに鏡が入っているということですね。
カネコ:今は「自分の姿を見る」という鏡の用途としては使っていないんですが、将来的にまた違う家に住む時にできるだけ好きなものが揃っていたらいいな、と思っていて。今からコツコツ「素敵だな」と思えるものを集めているんですよ。ヴィンテージ家具を買ったりしているのもその一環なのかも。
F:カネコさんの楽曲「やさしい生活」の中で「家はそんなに豪華じゃなくていい 不便なことが一つくらいある 好きなもので散らかるくらいがいい」という歌詞があります。
カネコ:本当に心からそう思っていて。綺麗かどうかというのは人それぞれだし。自分の好きなものでまとまっていれば、それで良いかなと思っています。
金井悠のマグカップと反射する陶器コップ
F:家具と同じように食器も「素敵だな」と思えるものを集めている最中ですか?
カネコ:食器皿は買いたいんですけど、料理をあまりしないので思いとどまっちゃうんですよね。だからその分、マグカップやコップをよく買うかも。お酒もお茶も結構飲むから数が多くあっても困らないですし。
F:今回はその中でもコップを2つ用意してもらいました。2個とも陶器なんですね。
カネコ:マグカップの方は、渋谷PARCOを歩いていたら金井悠さんという方が展示をやっていて購入しました。
F:金井さんは「出土した玩具」をテーマに食器やオブジェなど制作されています。元々金井さんのことはご存知だったんですか?
カネコ:いえ。直感的に「好きだ、欲しい」と思って買いました。
F:取っ手とボディが一体となった独特な形です。
カネコ:コロンとした独特のフォルムは存在感もあるし、鈍く光っているから見た目は重そうなんですけど、使いやすい。
カネコ:こっちはアリアンヌ・ハルバーグ(Marianne Hallberg)の食器か花瓶を買おうと、トンカチストア(Tonkachi Store)公式オンラインストアを物色していたら見つけました。
F:これも、たまたま出会ったコップなんですね。
カネコ:出会ったというよりは、「キラキラしていてかわいいからこれも一緒に買った」という感じなんです。届いたらめっちゃよかった。
F:口縁が真円じゃないんですね。少しだけ歪んでいます。
カネコ:そうそう。そこもお気に入りポイントです。
F:出してもらったどちらのコップにも光沢感があります。
カネコ:光るものが好きなんですよね。
F:カネコさんは「光」にまつわる歌詞や楽曲も数多くリリースされていますし、部屋にもスワロフスキーや石など、部屋のいたる所で光を受けて反射するものを見かけます。部屋の日当たりもよく、飼い猫の名前も「日の出」「晩」と、やはり光や陽の明かりを連想させます。
カネコ:部屋を探す時に「猫が飼える日当たりの良いところ」を条件にしていました。光というものがずっと好きで。当たり前なことかもしれませんが「日が差し、影が落ちる」という自然現象と、自然現象の中で暮らす人間が世の中にはいる。「光」というのは自然現象と暮らしの中間に在るものだなあ、ということは考えます。
F:石は拾ったものが多いんですか?
カネコ:拾った石もあるし、買ったものも、花壇から持って来ちゃったものもある。レコーディングの際に訪れた伊豆で見つけたものもありますよ。
AHLEM 眼鏡
F:「アーレム(AHLEM)」は、ロサンゼルス発のアイウェアブランド。「アクネ ストゥディオズ(ACNE STUDIOS)」や「ミュウミュウ(MIU MIU)」などでキャリアを積んだアーレム・マナイ・プラット(Ahlem Manai Platt)がデザイナーを務めています。
カネコ:アーレムの眼鏡がずっと欲しくて。展示会に行く機会があって購入しました。キャットアイフレームですがあまりきつい印象にならないし、メガネのつる先がくるんと丸まっているのもたまらない。
F:眼鏡の色もゴールドで光るものですね。
カネコ:たしかに。アクセサリーもゴールドをよく身に付けます。シルバーは私には似合わない気がして。
F:今日のコーデにもぴったりです。ちなみにそのワンピースはどこのブランドですか?
カネコ:「セシリー・バンセン(Cecilie Bahnsen)」です。セシリーもすごく好きなブランドで、おばあちゃんになってからも着たいからちょっとずつ集めているんですよ。もう1着同じような生地の黒いワンピースを持っています。
F:ワンピースが多いんですか?
カネコ:ワンピースばっかりですね。でもデニムも大好きですよ。
F:すごい!本当にワンピースだらけですね。
カネコ:ワンピースは着ただけで「ソレ」になるから好きなんですよね。可愛いものが結局好きなんです。小花柄やフリルなど、シルバニアファミリーやリカちゃん人形に着せ替えていた服みたいなデザインに惹かれます。
F:何着あるか数えた事はありますか?
カネコ:怖くてないですね……。
F:いつ頃から「服が好き」と自覚しましたか?
カネコ:高校生かな。1人で原宿に行くようになったり、古着屋さんを巡り始めたのがその頃。同じ時期にライブハウスにも通うようになったんですが、フロアにいるお客さんの格好がとってもかわいくて強烈に憧れましたね。「お金がない中でどうやっておしゃれをするか」を1番考えたのもそのくらいだったし、通学していた高校がすごい厳しいこともあって、制服でおしゃれをするというのができなかったんですよ。だから私服でどうにか「おしゃれ欲」を満たすしかなかった。
F:好きな服のテイストは今と昔とでは違いますか?
カネコ:結局、変わっていないですね。高校生の時からずっと白いタイツを履いているし。根本が変わってなさすぎる。高校生の時に憧れていたものを、今もずっと着ています。それこそライブでもよく着ている「フタツククリ(FUTATSUKUKURI)」は、私が大学生の時にストリートスナップに載っている子が着ていて憧れていたんです。「ケイスケカンダ(keisuke kanda)」も変わらずずっと好き。
F:逆に今、気になっているブランドとかありますか?
カネコ:「ホラー・ヴァキュイ(HORROR VACUI)」はいつか着たい。
F:ラッフルやフラワープリントを用いたフェミニンなブランドとして知られていますよね。ホラー・ヴァキュイの定番品ともいえるブラウスを狙っているんですか?
カネコ:まだ一度も着たことがないので迷っています。ワンピースか、ブラウスか。色や柄でも悩んでいます。
カネコ:あとはやっぱり「ヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)」のデザインはキュンとします。
カネコ:そういえば、最近になってジャージーを集め始めました。デニムの上はもちろん、スカートの上に着てもかわいいし。結構万能アイテムであるということに気がついたんです。
F:これは「ローブ ド シャンブル コム デ ギャルソン(robe de chambre COMME des GARÇONS)」のトラックジャケットですね。1981年から2004年まで発売されていたデイリーウェアラインです。
カネコ:色違いで3着持っています。トラックジャケットはもう少し集めたくて、古着屋などで物色しています。
F:カネコさんはライブの度に印象が変わりますよね。ブーツカットジーンズにスニーカーを合わせたクールな装いも、フリルがあしらわれたドレスを着たとびっきりキュートな時もある。
カネコ:嬉しい。カッコいい服も、ぶりぶりの服も好きだから両方着ていたいんですよね。
F:ライブ衣装は私服ですか?
カネコ:バンドセットの時は私服が多いですね。弾き語りの時は信頼しているデザイナーの方たちに作ってもらったりしています。
F:弾き語りとバンド編成で衣装を分けようと思った理由は?
カネコ:バンドは、みんなでスタジオに入っている「楽しい」の延長線上にずっとある気がしていて。私たちが「楽しい」と思いながらやっていることに意味があるのかな、と。だから「スタジオに入っている時の自分のままステージに上がっちゃいたい」という気持ちがあるんですよね。別に着込まなくてもいいというか。この間の「カネコアヤノ 日本武道館ワンマンショー 2021」は、衣装を作ってもらったんですが「基本的には自分の私服をベースにして欲しい」とお願いしました。
F:なるほど。弾き語りは基本的に衣装なんですね。
カネコ:弾き語りは日常のままだと歌えないくらい集中しないとというか、曲を演奏することやライブをすることに向き合いすぎるんですよね。だから「武装」が必要になる。バンドはメンバーに守られているという安心材料があるんですけど、弾き語りは責任が自分にしかないから。「甲冑着ておく」みたいな感覚が近いのかな。
F:冒頭の椅子もその中の一つですか?
カネコ:そうだと思う。戦いに備えて、どれだけ自分が安心できるものを揃えられるのか、というところがあります。
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