

化学素材メーカーの小松マテーレが、植物由来のバイオマスを原料とした構造タンパク質素材「ブリュード・プロテイン(Brewed Protein)」を手掛けるバイオベンチャーのスパイバー(Spiber)と共同開発した、同素材ベースのコレクションを国内で初公開した。発表したのは、「ブリュード・プロテイン・スキン(Brewed Protein Skin)」と「ブリュード・プロテイン・コーティング(Brewed Protein Coating)」の2種。いずれも2026年度中に量産体制を確立し、2027年度中の販売開始を目指す。
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織物から「樹脂」へ、広がる用途と可能性
両社は、石油資源に依存しない持続可能な新しいビジネスモデルの創出に向けて、2023年10月に共同事業をスタート。ブリュード・プロテインの原糸を用いた織物やニットは数年前から展開してきたが、同素材のタンパク質を利用した「樹脂」の開発は今回が初となる。繊維業界でも先駆的な取り組みであり、加工場としての強みを持ち、さまざまな樹脂メーカーとの開発実績が豊富な小松マテーレだからこそ実現した。
同社の担当者は、「素材を『樹脂』という材料として捉えることで、従来の織物ではカバーできなかった衣料品、雑貨、車両の内装など、用途が格段に広がる。これまでのビジネスの経験からその可能性を確信していたため、今回の樹脂開発に着手した」と背景を語る。

バイオ比率80%を実現、レザーや合皮と異なる次世代スキン素材
今回発表した「ブリュード・プロテイン・スキン」は、バイオベース比率80%を実現した、リアルレザーとも合成皮革とも異なる次世代のスキン素材。染色時の熱や揉み加工によって生まれる自然なシボ感と、独特の風合いや表情が特徴だ。ファーストコレクションでは、樹脂のみを積層して固めた厚手タイプと、オーガニックコットン生地の上に膜を形成させた薄手タイプの2種を、グロスとマット2つの表面加工で展開する。

「ブリュード・プロテイン・スキン」
同素材の「バイオベース比率80%」という数値は、フィルム状の樹脂としては画期的なものだという。小松マテーレの従来の透湿防水フィルムでは、バイオベースのポリウレタン比率は最高50%に留まっていたが、今回はそれを大幅に更新。織物と異なり、フィルム状の樹脂で高いバイオ比率を実装するのは技術的に難易度が高く、世の中の「100%バイオ」を謳う製品の多くがまだ実装に至っていないのが現状だという。

型押しではなく、染色工程で自然に生まれるシボ感が特徴。
この高い比率を可能にしたのが、スパイバーが持つ技術の柔軟性だ。求める機能に合わせて遺伝子レベルで設計されたプロテインに、別のバイオポリマーを組み合わせることで今回の80%という数値を達成した。現在は、組み合わせるポリマー側に一部石油由来成分が含まれるため合計80%となっているが、担当者は「今後は組み合わせる素材の純度をより高め、将来的には100%の達成を目指したい」と意欲を示す。
同素材は、衣料やレザーグッズ、小物といったファッション用途をはじめ、将来的には家具や自動車の内装など、より高いスペックが求められる用途への展開拡大も見据え、現在は耐用年数や加水分解への耐久性などの強化を進めている。展示会ではすでに手応えを感じているという。「スパイバーとの共同開発という点や、素材そのものが持つ可能性に対して大きな期待が寄せられている」。
機能性と循環型ものづくりを両立する、次世代コーティング
もう一方の「ブリュード・プロテイン・コーティング」は、石油由来のポリウレタンやポリアクリル素材に代わる、バイオベース比率80%のコーティング素材。アウトドアやスポーツウェア、ライフスタイル製品への使用を想定している。従来、ダウンジャケットなどに用いるナイロン素材には、羽毛の吹き出し防止や防風性を高めるためにポリウレタン等のコーティングを施すのが一般的だが、それをよりサステナブルな素材へと代替することができる。
一般的なコーティングと比較して遜色ない防風性を備えるほか、ブリュード・プロテイン由来の滑らかな質感が特徴。さらに、循環型ものづくりの可能性を示唆する。「従来のコーティングは、生地との分離が難しいという課題があったが、この樹脂は分離して生地をリサイクルに回すことも可能になる」。

ブリュード・プロテイン・コーティングを施したテキスタイル
小松マテーレは、今年5月に発表した工場再編プロジェクト「factoRe100(ファクトーレ100)」において、ブリュード・プロテインをはじめとする新規次世代材料を使用した「石油資源に依存しないサステナブルな素材開発と社会実装」を中核テーマの一つに据えている。中期経営計画でも次世代素材開発を重要目標に掲げて推進しており、今後も全社的に持続可能なものづくりと事業発展に注力していく構えだ。
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