坂部三樹郎が監修を務めるフットウェアブランド「グラウンズ(grounds)」が9⽉2⽇、ブランド初となる旗艦店「grounds STORE 001」を原宿にオープンする。好調に売上を伸ばしており、海外メゾンと肩を並べるためのブランディングを開始したという。ブランド発足から4年、同氏が語るグラウンズの今後の展望とは?
デビューから4年で旗艦店オープン。グラウンズの今
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ーブランド立ち上げから4年が経ちました。
設立から4年、試行錯誤はあったものの、順調にこれていると思います。売上は7億円規模にまで成長しました。
ー若い女性層を中心に、街で履いてる人をよく見かけます。
最近は30代の層も増えてきました。やはり女性が多いですが、それでも女性7:男性3くらいの割合ですね。
ー現在グラウンズは何人で運営している?
海外を含めて35人で、うち10人がデザインを担当しています。
ーデザイナーがかなり多いですね。新しい型はどれくらいのスピードで出しているのでしょうか。
海外メゾンのデザインチームですら5人しかいないところもあるので、クリエイションにかなり特化したチーム作りができていると思います。それこそ海外のデザイナーにも入ってもらっていますし。
新しい型は、ソールに関してはワンシーズンに1つ出すようにしています。基本的にはソールやアッパーのカラーや素材をちょっとずつ新しく変えたりして、アップデートを図っていますね。
ー当初は3Dプリントのシューズを展開されていましたが、現在も使用していますか?
今はもう使用していません。プロトタイプの時は3Dプリントを使うこともありますが、商品化のタイミングでは使っていないです。やはりまだ強度や生産量の制約が多いので。
ー「人間と重力の関係に変化をもたらす」をブランドのテーマに掲げていますが、今回オープンする旗艦店にも反映されているのでしょうか?
はい。たとえば、床にグレーチングを使用して浮いている感覚になれるよう設計したり。内装は「ダイケイ・ミルズ(DAIKEI MILLS)」にお願いしました。民家を選んだのは、雰囲気が怖くてどよんとしていて、それがいいなと思ったからです。民家の良さを残しつつ、浮遊感を感じさせるようなディテールを取り入れ、解放感を表現するため外観にはサボテンを配置しました。民家に引っ張られすぎるのも嫌だったので、 ニュートラルな空間に見せるための工夫をしましたね。
ー原宿という場所へのこだわりは?キャットストリートの一本裏という立地ですが。
やはり、ファッションにおいて原宿より大事な場所は見当たらないなと。原宿は、グローバルでもかなり特殊な位置にあると思っていて、日本の中で1番変わった場所で好きなんです。キャットストリートという点も大事で、ショッピング感が強いところだとやはりファンタジーは生まれないんですよね。
ーショップを作る上で一番こだわったところは?
入口ですね。何事も最初からファンタジーだとつまらなくて、日常の延長にファンタジーがあることが大事だなと。日常とファンタジーが交差する点が一番クリエイション的に難しいと考えていて、日常から地続きのファンタジーを作らないとみんなわからないし、やっぱり面白くない。だから、ファンタジーに現実味を帯びさせるため、その点となる入り口作りにはこだわりました。
grounds STORE 001
Image by: grounds
ー「日常の延長にファンタジーがあること」というのは坂部三樹郎のクリエイションに通ずるテーマですね。
日常とファンタジーが交差する点というのは、ジブリの「千と千尋の神隠し」で言うと、千尋の両親が屋台でご飯を勝手に食べて豚になってしまうシーンで。僕は「千と千尋の神隠し」ではあのシーンに一番惹かれますし、あれこそがクリエイションの醍醐味だと考えています。僕が通ったアントワープ王立芸術アカデミーでは、ベースにあるのがシュルレアリスム的思考で、その影響も多分にあるんですが、ファッションをデザインするなら、現実をどう地続きにさせるかっていうアングルが大事だと思っています。
ーそれをグラウンズのお店で体現した。
そうです。日本人だけでなく、外国人観光客の方にも面白いと思ってもらえるような店づくりを心がけましたね。
ー海外顧客も増えましたか?
かなり伸びていて、今1番多いのは中国、次いでアメリカ。急上昇しているのは韓国やシンガポールで、イギリスは一定ですが根強く人気です。
ーECサイトと実店舗で売れるものに違いがある?
はい。オンラインの方では、白黒を筆頭にはっきりとしたカラー、実店舗ではニュアンスカラーが人気です。
ー旗艦店ではどういった商品を?
旗艦店では80種類ほどを常時置く予定で、シーズンのものをベースに、コラボアイテムも揃えます。オープン時には「ベルンハルト・ ウィルヘルム(Bernhard Willhelm)」とコラボしたシューズを展開します。
ー現在、自社ECと卸の売上構成は?
卸の方が多いですね。現在、海外も入れれば卸先は100店舗以上あります。
ー年間で何足ほど生産しているんですか?
中国とインドネシアの工場で、年間3万足、月に3000足くらい生産しています。ただ服と比べると多く聞こえるかもしれませんが、3000足というのは靴業界では少なくて。月に2〜3万足作っている企業もあるので、生産数はまだまだ多くはないんですよ。
ー店名に001とありますが、今後も出店を加速していく?
海外を含め5店舗ほど出店する計画です。もちろん001の様子を見てからにはなりますが。店舗を増やして、オンラインも活性化させ、来年はパリでプレゼンテーションをしたいなと思っています。今はまだプロダクトとしての側面が強いグラウンズですが、ファッション性を持たせていくというのが来期からの目標です。
「メゾンブランドにしたい」上場を視野に入れるグラウンズの展望
ーファッション性を持たせていくということですが、服の発表も計画している?
パリでのプレゼンテーションでは服も見せたいなと。ただ売るかどうかはまだ決めていません。
「グラウンズ(grounds)」2023年春夏コレクション
ー生産の拠点を中国とインドネシアで分けている理由は?
リスク分散ですね。政治問題や感染症などの影響で、1ヶ所だと生産がストップする怖さもあるので。それぞれ自社工場ではないですが、中国の方は僕らの靴だけを作る工場にシフトしていけないかと、今話し合いを進めているところです。「ミキオサカベ(MIKIO SAKABE)」と「ジェニーファックス(Jennyfax)」の商品もその工場で生産していければなと考えています。
ー数年で数十億の規模という立ち上げ当初に話していた目標の実現化まであと少し。
売上10億円を目前に、ヨーロッパのメゾンのようなブランドを目指していきます。今以上にグローバルで展開していって、理想としてはヨーロッパにあるメゾンのようなブランドを目指していきたい。そのために、組織づくりとブランディング強化が肝になってくると考えています。上場は、売上100億円という規模になってから検討していきたいですね。
「人間像の構築」生命とファッションの繋がり
ー改めて、クリエイションで追求していきたいことは?
先ほどお話しした日常の延長の追求と、靴を軸に作る人間像の創造です。今のファッションデザインは顔や頭が軸ですが、足を軸で作る人間像の方が面白いなと思うんですよね。現代は個人を大事にする時代ですが、そのままでは連帯が生まれないのでゆくゆくは外との関係性が大事な時代になるはず。だから、描きたい人間像というのは関係性を作れる人間です。 人間の部位で外と繋がる、触れているといえば、それは地面と接点がある足ですから、足を軸にデザインすることが新しい人間像の創造に繋がるんじゃないかなと。
ー大地といえばドストエフスキーを想起させますが。
ドストエフスキーが大地をどう捉えていたかは判別つきませんが、僕としてはあくまで大切なのは関係性ですかね。少し脱線しますが、生命は細胞からできていて、細胞というのは核と膜でできている。一般的に細胞が存在するために核はなくてはならないものですが、実は核が欠落したとしても膜の細胞を結びつける機能が働くという一説もあります。そこから、関係性の中にこそ本質があるのではないかと考えて、ファッションにおいてもそれが言えるのではないかと。つまり関係性にフォーカスしたほうが、物質にフォーカスするよりも本質的で、面白いものが作れる気がしているんです。
ーそれを体現するためにグラウンズがあるのでしょうか?
グラウンズに限らず、僕のファッションデザイン活動全てに関わることですかね。グラウンズの場合は結構チームワークでやってるところがあって、僕はディレクターとしてこういう方向でやりたいって話はもちろんシェアするけど、ディテールに関してはかなりの部分を任せています。気に食わないデザインがあっても、その隣にあるものとのバランスがよければ関係性という視点ではOKで、それ故に単体を見てダメだという決断はしませんね。全体像の中ので立ち位置がちゃんとあるものだったら、気に食わないものでも必要じゃないですか。実際僕が気に入らないものの方が人気が出たりするので(笑)。ビジネス面でもクリエイション面でも、関係性は大事。そのためにはやはりファッション性が必要なんですよ。だからこそグラウンズでは、来年のパリでのプレゼンテーションをきっかけに、シューズを軸として新たな人間像を創造していくというのを形にしたいなと考えています。
■旗艦店「grounds STORE 001」
営業時間:12:00~19:00
休業⽇:⽔曜⽇、⽊曜⽇
所在地:150-0001 東京都渋⾕区神宮前 5-18-14
grounds:公式オンラインストア
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