2011年からパリコレに参加し、もはや常連組にも数えられるようになった阿部千登勢の手掛ける「サカイ(sacai)」。10月2日(現地時間)に披露された2024年春夏ウィメンズコレクションは、昨シーズンに引き続きパリ南西部の15区にある立体駐車場が舞台だ。馴染みのグラフィティ・アーティスト エリック・ヘイズ(Eric Haze)による"SACAI"のタグがボムされた壁を横目に、49体のルックが無機質な空間を練り歩く。
「シンプルになればなるほど、わたしたちはより完全になるのだ」
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阿部デザイナーは毎シーズン、フィナーレで何らかのメッセージがプリントされたTシャツを着用しているが、今シーズンは"近代彫刻の父"と称されるオーギュスト・ロダン(Auguste Rodin)の名言「The more simple we are, the more complete we become(シンプルになればなるほど、わたしたちはより完全になるのだ)」を背負い姿を現した。コレクションルックにも登場した名言が示すように、従来とは違ったアプローチを見せる。
特異と定番をほど良いバランスで
「見慣れた服から新しいシェイプを彫り出す」というプレスリリースの言葉通り、ファーストルックではアウターとショーツからなる円形のシェイプを披露。この手法はトップスで多く見られ、後ろ身頃にはワトーのようなディテールを設けることで、前後左右から見ても球体のようなシルエットに。このような特異なパターンを定番のアイテムや素材で提案することで、ほど良いバランスに着地させている。
足し算から引き算の美学に
「サカイ」といえば異素材を組み合わせた難解で複雑な"ハイブリッド"をシグネチャースタイルとしてきた。しかし、昨シーズンから影を潜め、アイテムを"破壊"することで新たな境地を見出していたが、今シーズンはさらなるシンプル化に挑戦。「余計なことを考えずに洋服を作った」と、足し算のその先に引き算の美学を見出したかのような、色味を抑えカッティングの妙が光るミニマルなスタイルがベースとなった。
十八番のハイブリッドをレイヤードで表現
それでも「サカイ」らしさを感じさせるのは、重層的なハイブリッドの手法をレイヤードで表現しているからだろう。今シーズンのトレンドであるシアー素材はキーファブリックのひとつで、レイヤードのアクセントとして取り入れると同時に、スカートやパンツ、ソックスなどを仕立てる一部に。
もちろん十八番のクリエイションは健在で、コートやシャツといったトップスに、直接キャミソールやスリップドレスをドッキングすることで、立体的で着崩しているかのような意外性のあるシルエットを提案している。
全てオリジナルで挑んだアクセサリーとシューズ
アパレルを追随するかのように、シーズンを重ねるごとに人気が右肩上がりのアクセサリーとシューズは全てオリジナルだ。アンクルストラップ付きサンダルやサイドジップ付きブーツは、ヴィブラム(Vibram)ソール仕様のボリューミーなフォルム。アクセサリーもシューズ同様、ミニマルなルックで映えるハードな雰囲気を放つ。
これまで築き上げてきた手法や表現方法からあえて距離を置きながら、軸をブラさないのは明確なアイデンティティがあるからこそ。来シーズン以降は、引き算の美学の流れを加速させるのか、はたまた足し算の美学に立ち戻るのか。どちらにせよ、「サカイ」のこだわりは進化の一途。天井知らずだ。
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