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HYROXは現代版の合コン? 仲間と楽しむ"ソーシャルスポーツ"新潮流

文・張替美希

HYROX大阪大会の様子

2026年1月に開催されたHYROX大阪大会の様子

Image by: FASHIONSNAP

HYROX大阪大会の様子

2026年1月に開催されたHYROX大阪大会の様子

Image by: FASHIONSNAP

HYROX大阪大会の様子

2026年1月に開催されたHYROX大阪大会の様子

Image by: FASHIONSNAP

 仕事終わりに仲間と集まり、体を動かし、終われば食事をしながら次の予定を決める。近年、運動を通じたこうしたつながりに重きを置く都市生活者が増えている。背景にあるのは、健康志向だけではない。働き方の多様化やリモートワークの定着を背景に、職場以外での人間関係を求める人が増え、スポーツが新たなコミュニティの入り口となっているのだ。競技成績や勝敗だけでなく、人との交流やコミュニティへの参加を目的や楽しみとして行われるスポーツ活動は"ソーシャルスポーツ"と呼ばれ、令和のライフスタイルを語る上で重要なキーワードになっている。ソーシャルスポーツのなかでも注目を集めているのが、ランニングとファンクショナルトレーニングを組み合わせたフィットネスレースの「HYROX(ハイロックス)」。ソーシャルスポーツの潮流を取材した。

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HYROX大阪大会の様子
HYROX大阪大会の様子
HYROX大阪大会の様子
HYROX大阪大会の様子

2026年1月のHYROX大阪大会から

出会いの場にも 急拡大するHYROXの輪

 HYROXはいま、グローバルで急速に熱量を高めている。1kmのランニングと8つのファンクショナルトレーニング(重りを押して前進させるエクササイズやボート漕ぎマシン、重りを担いだランジエクササイズなど)を交互に繰り返すドイツ発祥のフィットネスレースで、世界80ヶ国以上で開催されている。日本には2025年夏に初上陸し、2026年8月に行われた千葉大会では参加チケットが数分で完売。国内で過去最大の約1万2000人が出場するなど、その規模は主要マラソン大会に迫る勢いだ。

 8月の千葉大会後は、参加者がSNSにHYROXの華やかな写真を多数投稿。それを見てHYROXを知った層から、「HYROXって一体なに?」「いつの間にこんなに盛り上がっているの?」といった声があふれた。

 ランニングとファンクショナルトレーニングを組み合わせたレースは、「スパルタン(Spartan)」や「デカフィット(DEKA FIT)」、「アスエックス(ATHX)」など他にもあるが、HYROXはなぜ、ここまで人気を集めているのか。東京都在住の赤松和紀さん(28歳)は、出場を機にHYROXに魅了され、専用ジムの立ち上げを計画するまでに至った。赤松さんに話を聞くと、初心者からトップアスリートまでを引き込むHYROXのレース構成の魅力と、非日常の楽しさ、人とのつながりがキーワードに浮かび上がってきた。

赤松さんは8月の千葉大会では、婚約者とミックスダブルスに出場。同投稿は大きな反響があったという

 HYROXは、制限時間が設けられていないことや、ダブルスや4人制のリレーなど、仲間と共にさまざまな形で参加できることから、初心者を取り込みやすいとされている。一方で、「運動経験が豊富な人にとっても大きな魅力がある」と赤松さんは言う。「私は大学まで野球一筋でしたが、大人になってからも『もっと良い記録が残せたんじゃないか』とどこか不完全燃焼な思いを抱えていました。日々、ジムでのトレーニングを継続する中で、HYROXに挑戦することでトレーニングの成果をタイムという形で定量化できること、始めたばかりでもプロと同じ土俵で戦えること、単純なように見えて意外と奥が深く、改善を重ねてタイムを上げていくというプロセスが楽しくて、どんどん沼にハマっていきました」。

 練習を通してHYROXの魅力に触れた赤松さんは、今年4月のシンガポール大会でHYROXデビュー。会場では常に音楽が鳴り響き、音楽フェスのような空間が広がる。「HYROXはもはや単なるレースというより、一種のエンターテインメント。SNSで“映える”仕様だからこそ、拡散されて、さらに注目を集めるというループが生まれています。当日しか味わえない高揚感や、一緒に練習を重ねてきた仲間と応援し合う感覚は『第二の青春』のようで、何事にも代え難いです」。

 今夏の千葉大会時には、HYROXがXで「新しい合コン」というキーワードと共にトレンドに浮上するなど、出会いの場としての側面も持ち合わせている。赤松さん自身も、HYROXトレーニングの一環として参加したランニングコミュニティで現在の婚約者と出会い、千葉大会ではともに出場した。「恋愛に限らず、人とのつながりが生まれやすい構造になっています。HYROXのトレーニングは一人でやるよりも、誰かと一緒に高め合うことでストイックに追い込めますし、何より楽しい。『体を動かしたい』『新しいことに挑戦したい』という人たちが集まった結果、出会いや仲を深めるきっかけになっています。当たり前ですが、やる気がないと続かないので、いわゆる出会い目的だけで始める人は少ないと思います」。

今年1月に開催された大阪大会の様子。ダブルスでは、声を掛け合いながらゴールを目指す参加者の姿が多く見られた。

LVMH系ファンドが出資、ブーム定着へ?

 「HYROXは一過性のブームで終わる」という声もあるが、赤松さんはさらなる盛り上がりを見込む。「今後、マラソンと同じように定着するのではないかと思っています。初心者でも参加しやすい一方、記録を伸ばすほど競技の奥深さを感じられる。仲間と練習しながら挑戦を続けられることも、定着につながるのではないでしょうか」。赤松さんは今年12月1日、皇居周辺にHYROX専用ジム「ARQ GYM」をオープン予定。9月にオープンを発表してからわずか1週間で、50人以上の会員が集まったという。

 個人の挑戦を可視化するレースでありながら、仲間と鍛え、応援し合い、つながるための場にもなっているHYROX。その熱量は大会参加者にとどまらず、スポーツブランドや投資家の関心も集めている。現状、「プーマ(PUMA)」が大会のグローバルスポンサーを務め、専用シューズやアパレルアイテムを展開しているが、「ナイキ(NIKE)」や「アディダス(adidas)」といった主要ブランドも、HYROXを意識した商品を続々と打ち出している。

 大会規模の拡大を受け、今年9月にLVMHグループ系の投資会社 Lキャタルトン(L Catterton)が主導する投資家連合が、HYROXの過半数株式を取得したことも大きなニュース。取得価額は非公表だが、海外メディアでは約7億ドル(日本円で約1100億円)規模と報道されている。市場としての注目度は高まる一方だ。

シューズ
スポーツブラ
シューズ

プーマのハイロックス専用シューズ

Image by: プーマ

 HYROXの広がりは、スポーツが「一人で続ける健康習慣」から「集い、仲間と切磋琢磨し、自己表現する体験」へ変化していることの表れでもある。次の定番スポーツとして根付くか、その行方は、レースの拡大だけでなく、熱量を共有するコミュニティをどこまで育てられるかがカギを握っている。

◆競技人口は前年の7倍、盛り上がりを見せるピックルボール

 HYROXと共に、ソーシャルスポーツの文脈で今注目を集めているのがピックルボールだ。テニス、バドミントン、卓球の要素を組み合わせたラケットスポーツで、1965年に米国で発祥。ルールが比較的シンプルで未経験でもラリーの楽しさを味わいやすいことから、気軽に始められるのが魅力。また、コートサイズがバドミントンと同等でテニスと比較してコンパクトなため、既存の公共体育館や商業施設の空きスペースを活用したコートの整備がしやすいことも特徴として挙げられる。

ピックルボールコート

今年7月、池袋にオープンしたピックルボール専用大型施設「Sansan ピックルボールコート池袋」

Image by: FASHIONSNAP

 ピックルボールワンの調査によると、国内の競技人口はこの1年で急速に増え、前年の約7倍に当たる約33万人となった。従来、ビジネスパーソンの社交のためのスポーツと言えばゴルフだったが、ピックルボールは、都心部でも始めやすく、比較的短時間でプレーできる。運動の後に会話を交わす時間も含め、気軽に関係を築く場として機能し得る。

 実際に、そうした需要を狙って、名刺管理サービスなどを手掛けるsansanもピックルボールコートの運営に参入。2026年7月に東京・池袋にオープンしたSansan ピックルボールコート池袋は、リモートワークに対応するワーキングスペースやバーカウンターを備えたラウンジに加え、ビジネス利用にも対応する会議室を設けるなど、プレー前後の利用も想定した設計となっている。同コートは開業前から予約が1800件を超えるなど、話題を呼んでいる。

【連載:ソーシャルスポーツ 2026】

 FASHIONSNAPでは“スポーツの秋”に合わせて、「ソーシャルスポーツ 2026」と題した連載を掲載します。競技成績や順位を競うのではなく、人とつながる・交流することが主目的になっている令和のスポーツのあり方や、スポーツ×ファッションに関連する話題をお届けします。

第1回:HYROXは現代版の合コン? 仲間と楽しむ"ソーシャルスポーツ"新潮流
第2回:【ソーシャルスポーツを楽しむ人たち #1】Bunka Running Club
第3回:大事なのは「誰とどう楽しむか」 盛り上がるスポーツ観戦市場
第4回:【ソーシャルスポーツを楽しむ人たち #2】URBAN YOGA
第5回:甘いだけじゃない! 選んで楽しいプロテイン
第6回:野田クリスタルがプロデュースするクリスタルジムに行ってみた
第7回:ファッションとしても大注目 大人から始めるバレエレッスン
第8回:【ソーシャルスポーツを楽しむ人たち #3】あつまれテニスラバー
第9回:東京レガシーハーフマラソンでおしゃれランナーをSNAP

※掲載内容やタイトルは変更する可能性があります

最終更新日:

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