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【インタビュー】21歳の鬼才、映画「バックルームズ」ケイン・パーソンズが語るSNS社会

聞き手&文橋本知佳子

Image by: FASHIONSNAP

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 16歳でYouTubeに発表した短編動画「The Backrooms(Found Footage)」が話題を集めたことをきっかけに、17歳で映画化を企画、19歳でA24とタッグを組み長編映画監督デビューを果たした映像クリエイターのケイン・パーソンズ(Kane Parsons)(現 21歳)。映画版「Backrooms(バックルームズ)」は、今年5月の全米公開後、初週末で興収8100万ドル(約129億円)を突破した。この数字は、前週に公開された「スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー」を上回り、初週全米1位を獲得。初週末の世界興収は1億1800万ドル(約188億円)に達し、世界興収ランキングでも1位を記録した。

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 全米・世界興収ランキング1位の映画を生み出した史上最年少監督であるパーソンズは、YouTube発のクリエイターとして今、映画史を大きく塗り替えている。日本国内でも公開を待ち望む声が聞かれた同作は、本日9月4日に公開された。FASHIONSNAPでは、公開を記念して初来日したパーソンズ監督を取材。東京は「世界で一番見た目が好きな街」だと話す同氏に、東京を歩きながら話を聞いた。

ケイン・パーソンズ:独学で映画制作とVFXを学び、2022年にYouTubeで公開した短編「THE BACKROOMS(FOUND FOOTAGE)」は、シリーズ累計で1億9000万回以上の再生回数を記録。インターネット発の新世代ホラークリエイターとして確固たる地位を築いている。

── 今回が初来日とのことですが、東京の印象はいかがですか?

 ずっと身近に感じてはいましたが、おそらく世界で一番見た目が好きな街ですね。建築が素晴らしいです。私は人々の往来と調和しているような「インダストリアル」で「ブルータリズム」的な空間に惹かれるのですが、東京にはそういった場所がたくさんありますね。

── 「バックルームズ」は、英語圏のネット掲示板「4chan」に投稿された画像を発端とするインターネット上の都市伝説「The Backrooms」をきっかけに制作されました。作中に登場するどこまでも広がる空間からは、パーソンズさんの建築への関心と同時に、誰かがいるはずなのに孤独を感じる「インターネット空間」を想起しました。

 まさにその通りで、この映画のアイデアの発端にもなっているのですが、人々が感じている「文化的な不安」の多くは、極端なつながり(インターコネクテッドネス)からきていると思います。すべてがオープンエンドで、何事にも終わり(クロージャー)がない。ある意味で、情報過多に陥っている状態です。あまりにも色々な情報がありすぎて、この先どう進めばいいのか、明確な道筋が見えなくなっている。1人の人間が1000回人生をやり直しても把握しきれないほどの情報があふれている場所だと思います。

4chanに投稿された画像 © 2026 Backrooms Rights LLC, PC Films, LLC. All Rights Reserved.

── 日本では最近「ドーパミン中毒」という言葉が流行しています。ファッション業界などでもアテンション(関心)を惹きつける刺激的なコンテンツがマーケティングで多用されており、クリエイションの本質とずれるのではないかと賛否両論がありますが、こうした刺激的なコンテンツについてはどう思われますか?

 ファッション業界のことはよくわかりませんが、ネット上でそうした考え方やコンテンツが蔓延しているのはよく知っていますし、ドーパミン中毒というのは、その延長線上にある現象ですよね。現代は、社会として「情報伝達の摩擦」を極限まで減らすツールを手に入れました。その結果、コミュニケーションのスピードが上がり、最小限の努力で素早く報酬(刺激)を得られるサイクルが極端に短くなり、超高速で繰り返されるようになりました。個人的には、そうした罠に陥ってしまった人にとっては刺激的なだけのコンテンツは化学的な意味で有害であると考えます。もちろん私は神経科学者ではありませんが、ドーパミン中毒が問題視されているのは日本に限った話ではないと思います。抗うことは非常に難しいですが、こうした手軽なドーパミンの罠を意識的に避ける努力は重要だと思います。

── ケインさんご自身は、SNSとどのように向き合い、距離を置いていますか?

 私自身も他の人と同じように「ドゥームスクローリング(ネガティブな情報を延々と読み漁ってしまうこと)」の罠に陥ることが度々あります。できる限り自分を律しようとはしていますが、克服するのは難しいし、良いアドバイスもできません。ただ私の場合は、幸いにも今仕事がとても忙しく、強制的にオフラインになって作業しなければならない時間が多いので、それがSNSから引き離してくれています。それでも、インターネットと共に育ってきた世代にとって、インターネットやSNSを完全に生活から排除するのは難しいことだと思います。

 ── お忙しい中で、今一番興味を惹かれている現象やコンテンツは何ですか?

 仕事としては、引き続き“IPとしての「バックルームズ(The Backrooms)」”の開発に取り組んでいます。同時に、今はまだ詳細を明かせないのですが、いくつか特別なプロジェクトも進行中です。広い意味で説明すると、私たちが文化的・社会的に構築してきたシステムと、「現代と古代の心理学」との関係を探求することに興味があります。現代のテクノロジーそのものいうより、現代のネット中心の生活を送る人と、5000年前に生きていた人との間にある「不変の要素」は何か、人類の進化の歴史全体を貫くより大きなテーマは何なのかということに興味があるんです。少し大袈裟に聞こえるかもしれませんが、単なる空想の物語やファンタジーのシナリオを作るのではなく、私たちが今生きている現代の状況を形作る、より「根本的な要素」を見つけ出したいんです。ノンフィクションが好きなんですよ。

── そうした人間の進化や心理、社会システムに興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?

  元々SF作品に惹かれる傾向があったのですが、大人になり社会に関わる時間が増えるにつれて、世界中の人々の生活の中にある極度のストレスや痛み、不安に気づくようになりました。私にとって重要なのは、根拠のない楽観主義でも、単なる批判で終わってしまう悲観主義に陥るのでもなく、結論や「正しい前進の仕方」を見つけ出すことです。もしこの世界のシステムが壊れているのなら、人間の心における「不変の要素」は何なのか、そしてどんなシステムが脳のどの部分を利用して、現在の経済や統治の形を文化として定着させているのかを理解することが不可欠です。そうした思考がどのように進化してきたかを理解しない限り、現在のカオス(混沌)やノイズを理解することは不可能です。だからこそ、私は歴史、特に「心の生物学的な歴史」に深い関心を持っています。世界を批判するからには、なぜそうなのかを理解し、最後に何か意味のあるものを提示したいと考えているからです。

── 不安定な時代の中で、ファッション業界では「プラダ(PRADA)」のようにクリエイションに、過激さではなく「穏やかさ」を求める傾向もあります。「バックルームズ」が現代社会に対して提示するのはどういったスタンスですか?

 「バックルームズ」というコンセプト、特に映画版には、その両方の側面が含まれています。極度に複雑で多様性に満ちた、私たちに苦痛を与える「ノイズ」のすべてを含みつつも、ノスタルジックで親しみやすい穏やかなヴィジュアルという「衣装」の裏に隠されているのです。戦争や経済不安などがあると、文化として巨大な「自己鎮静(心を落ち着かせること)」の期間が生まれます。それは特定の悪徳企業が企んだ陰謀などではなく、無意識の文化的な現象です。しかし、これも結局は企業が商品を売るためのマーケティング・サイクルの一部であり、経済を回すための手段だったりします。ある意味で、それは巨大なシステムが身にまとった「偽物の衣装」のようなものですね。「バックルームズ」は、こうした非常に控えめで、日常的で、穏やかとも言える見せ方をすることで、その背後にある構造や商業的な側面を指摘しているのです。

photography: monami

◾️バックルームズ

STORY
ある日、自らが営む家具屋の地下から異次元へと迷い込んでしまったクラークは、不条理な世界で怪異に直面する。セラピストのメアリーもまた、彼の行方を追ってバックルームズへと足を踏み入れる。この空間はなぜ存在するのか。ここで一体何が起きているのか。

監督:ケイン・パーソンズ 
出演:キウェテル・イジョフォー、レナーテ・レインスヴェ、マーク・デュプラス、フィン・ベネット他

9月4日(金) TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
公式サイト

最終更新日:

聞き手&文・橋本知佳子

Chikako Hashimoto

FASHIONSNAP 編集記者

東京都出身。映画「下妻物語」、雑誌「装苑」「Zipper」の影響でファッションやものづくりに関心を持ち、武蔵野美術大学でテキスタイルを専攻。大手印刷会社の企画職を経て、2023年に株式会社レコオーランドに入社。ファッション小物・アクセサリー、繊維企業を中心に取材。

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