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【インタビュー】アン・ハサウェイとメリル・ストリープに聞く、映画「プラダを着た悪魔2」の舞台裏

左からメリル・ストリープ、アン・ハサウェイ

左からメリル・ストリープ、アン・ハサウェイ

左からメリル・ストリープ、アン・ハサウェイ

 腕に抱えたホットコーヒー、華やかな衣装部屋、そして悪魔のように冷たいボス──ファッション業界の華やかさと過酷さを鮮やかに描き、“働く女性のバイブル”として世界的な熱狂を生んだ映画「プラダを着た悪魔」の世界が、今再び動きだす。

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 続編の舞台は、SNSの台頭と雑誌離れによって大きく揺らぐ現代のファッション業界。トップファッション誌「ランウェイ」の存続が危ぶまれる中、アン・ハサウェイ(Anne Hathaway)演じる記者アンドレア・サックス(Andrea Sachs、以下アンディ)と、メリル・ストリープ(Meryl Streep)演じるランウェイ編集長ミランダ・プレストリー(Miranda Priestly)が再びタッグを組む。

 ニューヨークやミラノで行われた撮影はクランクイン直後から情報が広まり、ロケ地には撮影風景を一目見ようとファンやパパラッチが集結。着用ブランドも瞬く間に特定されSNS上で拡散されるなど、公開前から異例の盛り上がりを見せている。5月1日の映画公開を前に、アンとメリルが来日。ホテルの一室で、撮影の裏側やパート1のトリビアを語ってくれた。

メリルは1作目で登場した「セルリアン・ブルー」カラーのスーツを着用

──今回20年ぶりにアンディとミランダを演じるにあたり、どのような準備をしましたか?

メリル・ストリープ(以下、メリル):どのような話だったかを思い出すために、作品を観返すところから始めました。だって20年も経っているんですもの。ミランダがどのような人物だったか、演じていたときの感覚が曖昧になるには十分な時間でした。でもアンは、一度も観返さずに撮影現場に来たと言っていたわよね?

アン・ハサウェイ(以下、アン):ええ。でもそれには理由があります。映画の制作が決まって、7月に撮影が始まると知りワクワクしていたのですが、公開が翌年の5月だと聞いて。これは映画の制作期間としては非常に短い期間なんです。だから私は、「役をじっくり探っている時間はない。飛び込むしかない」と自分に言い聞かせ、最初から監督にすべてを委ねることにしました。

 その上で役作りの助けになったのは、セオドア・シャピロ(Theodore Shapiro)が手掛けた1作目のオープニング音楽でした。あの弾むような音楽を聴いた瞬間に、アンディのリズムが蘇ってきて、スムーズに役を取り戻すことができました。ただ正直なところ、1作目ではアンディを完全には理解できていなかったんです。それでも、監督が素晴らしい編集で、まるで素晴らしい演技をしているように仕上げてくれました。だから今回も彼がどうにかして良い形にしてくれると思っていたので、プレッシャーはあまり感じませんでした。

メリル:私はミランダのウィッグを被った瞬間に「あ、彼女はこういう人だった」と完全に思い出すことができました。そして衣装や靴、そして隣にいるアンの存在。そういった外的なものが、役に戻るのを大いに助けてくれました。

六本木で開催されたジャパンプレミアでの仲睦まじい一コマ

Image by: FASHIONSNAP

──パート2には、前作以上に多くのトップブランドや企業が参加しています。セットや衣装を目にして、前作とのスケールの違いを感じましたか?

メリル:まったく違いました。1作目は、衣装に割ける予算が今回と比べて本当にわずかだったんです。資金面の問題もありましたが、多くのデザイナーが私たちとのコラボレーションをためらっていたのだと思います。おそらく、アナ・ウィンター(Anna Winter)を怒らせたくなかったのでしょうね(笑)。

 実際、「ヴァレンティノ(VALENTINO)」以外で衣装の貸し出しに応じてくれたブランドは、ほとんどありませんでした。そのため衣装デザイナーのパトリシア・フィールド(Patricia Field)と、当時アシスタントで今作では衣装デザインを担当したモリー・ロジャーズ(Molly Rogers)は、ニュージャージーの倉庫まで足を運んで誰も見向きもしないようなヴィンテージ品までかき集めなければならなかった。それで最終的にあれだけ素敵な衣装を揃えたのですから、大したものです。一方、今回は違いました。前作が成功した途端、みんな急に協力的になったんです。成功すると、こんなにも“友達”が増えるのかと驚きました(笑)。

アン:今回私たちが直面した課題の一つが、撮影中にパパラッチや大勢の見物客に囲まれてしまうことでした。私たちが着ている衣装が、映画公開前にSNSで拡散されてしまっていたんです。そこで撮影方法を工夫しました。外から見えない閉鎖された場所でさまざまな衣装を次々に見せる「ファッション・モンタージュ」を撮影したんです。なので観客の皆さんには、「心配しないで、まだ全部は見えていませんよ」とお伝えしたいです(笑)。

──パート2の中でお気に入りの衣装を教えてください。

メリル:ヘリコプターのシーンで着ていたグリーンのスーツ。でも正直に言うと、私の一番のお気に入りは撮影終わりに部屋で履いていた「アグ(UGG)」のもこもこのスリッパです。一日中ヒールを履いて歩き回った後に、あれを履く瞬間が本当に最高だった。あれほど愛おしいファッションアイテムは他にありません。まあ、衣装ではないのだけれど(笑)。

アン:私のお気に入りは、予告編にも映っている、ミランダがミラノのガレリアを歩くシーンで着ていたブラックのコートです。このシーンは朝の2時に撮影された、最後のカットでした。真夜中の静まり返ったガレリアを、きらめくコートをまとったメリルが歩いていくんです。その姿があまりにも完璧で、本当に息をのむというか、「これがミランダだ......」と圧倒されてしまって。ただ見とれていましたね。これまで見てきた中でも、間違いなく一番ゴージャスで、忘れられない瞬間の一つです。

 そしてもう一つ、どうしても外せないのが、アンディが映画のラストで着た衣装です。観ていただければきっと共感してもらえるはず。真のスタイルとは何かを教えてくれると思います。

──プラダを着た悪魔はファッション業界の裏側を描いた作品として注目を集めましたが、パート2ではその世界の変化も描かれています。お2人はファッション業界や時代の変化をどのように感じていますか?

アン:やはりSNSの影響力の拡大は、とても大きいと思います。特にファッションのように視覚的な要素が重要な分野では、その影響は計り知れません。1作目はiPhoneが登場する前に撮影されたので、作品にはスマートフォンは出てきませんが、今作では誰もがスマホを片手に仕事をしています。

 1作目の頃はファッション業界はどこか閉鎖的で、誰がその世界に入れるのか、誰がトレンドセッターになれるのかを決める“ゲートキーパー”のような存在があったように思います。でもSNSの登場によって、その構造は大きく変わったと感じています。個人的には、その変化はとてもポジティブなものだと思っていて、ファッションはより民主化されて、個々のスタイルが自由に表現されるようになりましたし、おしゃれの形も一つではなくなりました。今は、自分自身をどう表現するかが、より個人に委ねられている時代だと感じています。とても喜ばしいことです。

メリル:パート2を撮影する中で強く感じたのは、雑誌という存在が大きく変わっているということです。1作目が公開された頃からすでに厳しい状況にあったことは知っていましたが、今ではオンラインへ誘導するための広告のような存在へと変わってきているように感じます。

 そこから見えてきたのは、ファッション業界全体の構造の変化です。流行は、かつてのように上から提示されるものではなく、ストリートから生まれるものへと変わり、業界のキュレーターたちはそれに必死で追いつこうとしています。これは、1作目で描かれていた世界とはまったく異なります。さらに、収益の上げ方も変化しています。今回の映画でも描かれているように、広告主の重要性はこれまで以上に増している。これはファッション業界に限らず、多くのビジネスに共通する流れだと思います。

ジャパンプレミアにて

Image by: FASHIONSNAP

──“お仕事映画”として愛されてきた本作ですが、今回の撮影でお互いの仕事観から影響を受けたことはありますか?

アン:私にとって大きかったのは、メリルさんがミランダの「地に足のついた人物像」を演じているのではなく、ご本人が本当にそういう人なのだと知ったことです。そのことに、とてもインスピレーションを受けて、俳優である以前に一人の人間として等身大であり続けたいと思うようになりました。

 私は幸運なことに、メリルさんのお子さんたちを皆知っていて、友達なんです。3度もアカデミー賞を受賞している彼女を見ると、つい普通の人ではない特別な存在だと思ってしまいがちですが、公私ともに彼女の人生に触れる中で、彼女が本当に地に足のついた人なのだと、改めて感じています。

メリル:嬉しいわ、ありがとう。娘が3人と息子が1人いるので、私はまだまだ働き続けないといけないの(笑)。

 私はいつも、現場ではスポンジのように周囲からスキルを吸収しています。演技に「正解」はありません。だからこそ、他の人がどう向き合っているのかを見て、常に学び続けているんです。アンからは、オープンでいることの大切さを教えてもらいました。彼女はいつも新鮮な気持ちで現場にいて、すべての瞬間を彼女らしく生きている。繊細さや傷つきやすさも、ときには少しやりすぎなくらいに隠さないんです。シーンに対してオープンであり続けるのは簡単なことではありませんが、アンはそれを自然に体現している。それは、俳優としてとても大切なことだと思います。彼女は私の子どもたちと同じくらいの年齢ですが、私の子どもたちにも、あなたのように物事に向き合ってほしいと思っています。聞いてくれているかは分かりませんけれど(笑)。

──最後に、作品のファンに向けてメッセージをお願いします。

メリル:完成版を観たとき、観客の一人として満足できるか、自分に問いかけたんです。その答えはイエスでした。きっと多くの方に愛していただける作品になっていると思います。

アン:撮影現場やプロモーションでファンと接する中で、この作品が本当に多くの人にとって特別な意味を持っているのだと実感しました。関わる人たちが大切に作り上げた作品であると同時に、観る人それぞれが自分自身の経験や価値観と重ねて受け取っている。だからこそ、この作品は長く愛され続けているのだと思います。パート2も素晴らしい作品になっています。ぜひ、劇場へ足を運んでいただけたら嬉しいです。


最終更新日:

FASHIONSNAP 編集記者

菅原まい

Mai Sugawara

2002年、東京都生まれ。青山学院大学総合文化政策学部卒業後、2025年に新卒でレコオーランドに入社。中学生の頃から編集者を志し、大学生時代は複数の編集部でインターンとして経験を積む。特技は空手。趣味は世界中の美味しそうなお店をGoogleマップに保存すること。圧倒的猫派で、狸サイズの茶トラと茶白を飼っている。

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