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なぜ東南アジアでは合同展示会が少ないのか|コラム-ジャラン ジャラン アジア

Image by: 横堀良男

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なぜ東南アジアでは合同展示会が少ないのか|コラム-ジャラン ジャラン アジア

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東南アジアの最新情報を綴るコラム「ジャラン ジャラン アジア」。1年間の3分の2以上を東南アジア諸国で過ごし、契約バイヤーのほか、ポップアップショップ、展示会出展、ファッションショーの代理店などを行う横堀良男氏が現地の情報をレポートします。

(文・横堀良男)

 早くも6月も後半になりました。ゴールデンウィークが明けた頃から、今まで海外出張ができなかった日本の企業の人たちが、海外出張を再開し始めたそうです。これからスムーズに海外に行けるようになると良いですよね。とはいえ、今は航空券の燃油サーチャージが跳ね上がっていますが......。

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 今回の話は、ファッション業界に寄った内容です。ちょうど時期的に、海外展開に関する各種補助金が出ていることもあり、最近はよくこんなことを聞かれます。

 「海外展開を考えているのだけれど、東南アジアだとどこの合同展示会が良いですか?」

 今回は、この質問に対する内容です。そもそも、日本にはファッションや雑貨の合同展示会がたくさんありますよね。

 パッと思い浮かぶだけでも、

・rooms

・JUMBLE TOKYO

・Fashion World

・PROJECT TOKYO

・PLUG IN 

 など、いろいろあります。個人的には、最近始まった新しい合同展示会「ニュー エナジー(NEW ENERGY)」はとても良かったです。

補足:NEW ENERGYとは、roomsを運営していたチームが独立し設立したBlue Marbleがキュレーションする、展示会、マーケット、メディアを内包した複合型イベント。2022年2月17〜19日の三日間に新宿住友ビル三角広場で初開催された。

NEW ENERGY:公式サイト

 若手ブランドやクリエイターたちはまず合同展示会に出展する、ということが私たちの業界ではよくあることだと思います。また、バイヤーの視点から見ても、新しいブランド、もの、ことを探すには、合同展示会は一度に数十〜数百のブランドや事業を見ることができますから、とても便利なイベントです。あと、シンプルに楽しい。意外なブランドが見つかったり、久々に会う人がいたり、あっという間に時間が過ぎてしまうイベントでもあります。

 それで、よくある質問「海外展開を考えているのだけれど、東南アジアだとどこの合同展示会が良いですか?」についてですが、私は「東南アジア諸国ではファッションや雑貨の合同展示会が非常に少ないので回答が難しい」と伝えています。

 今は各種イベントがちょうど復活し始めたタイミングではありますが、もともとコロナの前から東南アジア圏内では合同展示会は少なかったです。ヨーロッパやアメリカ、東アジア圏では合同展示会はスタンダードなプラットフォームですが、なぜ東南アジア圏では合同展示会が少ないのでしょうか?あくまで個人的な見解ですが、大きく3つの理由があると考えています。

2019年の上海ファッションウィークの合同展、MODE SHANGHAIの入り口。

1-他の商圏と季節感が合わない

 欧米や東アジアでは、季節によって大きな気温差があります。しかし、東南アジア圏は常夏です。雨季や乾季はありますが、気温はいつも暖かく、日本の冬用のアウターなどは当然不要です。そうなると、他国からブランドが入ってくることが難しく、海外からの出展を当てにした合同展示会ビジネスは厳しいでしょう。ビジネスとしての合同展示会は、スムーズに成長しなかったと考えられます。東南アジアの商品構成は、特別な観点が必要です。これについても、またどこかでお話しできたらと思います。

2-来場するバイヤーが少ない

 数少ない東南アジアの合同展示会に行ったり、出展したりして私自身で実感しましたが、他の商圏の合同展示会に比べて、バイヤーが明らかに少ないです。来場者が少ないのではなく、バイヤーという職業の人が少ないのです。シンガポールでも、タイでも、フィリピンでも、インドネシアでも同様です。これは最近になって理由がわかったのですが、他の商圏では経済が成長すればするほどセレクトショップや百貨店は増え、それに伴いバイヤーが増えていきます。しかし、東南アジア圏は、特にここ10年ほどで急成長した商圏です。このタイミングはインターネットの、特にECやSNSの成長期と同時期です。若手ブランドは「合同展示会に参加してバイヤーを探すこと」よりも、「SNSで発信して、自社ECで販売すること」を選んだのだと考えています。実際に合同展示会の参加を検討するどころか、卸価格が元々ないブランドも多いのが実態です。

3-合同展示会モデルとD2Cモデルがマッチしていない

 現在の日本でも、D2Cはどんどん主流のビジネスモデルになってきていると感じますが、東南アジアで伸びているブランドはほとんどがD2Cです。他の商圏では合同展示会がブランドの登竜門として重要な役割となっていますが、東南アジア圏ではその役割を担っていないのです。それは卸売りを伸ばすことがブランドの売上拡大に直結していないから、と考えることができます。現地のブランドは、卸売に力を入れるより、SNSの発信に力を注いでいます。

 上記の3つの理由は、私が個人的にこの10年間で感じてきたことのまとめです。

2019年まで開催していた、ジャカルタファッションウィークの合同展「Fashionlink」にて、デザイナーたちと。

 では、他の商圏で合同展示会に当たる役割を東南アジアでは何が担っているのでしょうか?それは「ポップアップショップ」だと考えています。ブランド単独で行う「ショップ in ショップ」の形態をはじめ、百貨店・ショッピングモールなどでも頻繁にポップアップショップが行われています。特にインドネシアでは、合同展示会の代わりに、100や200以上のブランドが集まる大型ポップアップショップイベントが急成長しているのです。

 ポップアップイベントにはバイヤーも来場し、その場で商談も行われますが、メインは新規顧客の獲得です。新規のお客さんとの出会いがあり、その場でSNSをフォローしてもらいます。その後ブランドのことや新しい商品をSNSで発信することで関係性を築いていくのです。このポップアップショップイベントについては、今度詳しくお話ししたいと思います。

コロナ前の2019年10月にジャカルタで開催されたポップアップショップイベントの様子、4日間で来場者は8万人だった。

コロナ前の2019年10月にジャカルタで開催されたポップアップショップイベントの様子、4日間で来場者は8万人だった。

 現在の東南アジアは、誰もが無視できない大きな市場になりつつあります。東南アジア圏でも、特にシンガポール、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピンは小売市場が急成長しています。また、上記の5ヶ国を追うように、ベトナムやミャンマーなどもどんどん成長しています。そして、現地に進出している日本企業や日本の政府のODAなどによって、日本のブランドや商品に対して、良いイメージを持つ人は多いです。そろそろ海外にも行けるようになってきましたし、東南アジアでポップアップショップを行う日本企業が増えてきたら嬉しいな、と思っています。

横堀良男

Yokobori Yoshio

東京都江東区出身。高校在学中からアパレル業界で働き始め、 その後、アッシュ・ペー・フランス株式会社に入社。27歳で若手ブランドの営業代行業、showroom SIDEを設立、代表に就任。 32歳で海外進出、現在は1年間の3分の2以上を東南アジア諸国で過ごし、契約バイヤーとして活動。 日本からアジア・アジアから日本のポップアップショップ、展示会出展、ファッションショーの代理店も行う。

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